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Padfoot
"誰しも心の中に光と陰の面を持っている。大事なのはどちらの道を選ぶかだ。人間はそこで決まる"—シリウス・ブラック[出典]
シリウス・ブラック3世(1959年11月3日~1996年6月18日)とはパッドフットやスナッフルズ(動物もどき状態の時)の名前でも知られた純血の魔法使いであり、オリオンとヴァルブルガ・ブラックの息子、レギュラス・ブラックの兄である。ブラック家の跡取りだったが一家の純血主義に反発し、1971年から1978年まで通ったホグワーツ魔法魔術学校ではスリザリンに組分けされるという家族の伝統を破ってグリフィンドールに入った。彼以外は一族皆スリザリンであり、シリウスははぐれ者だった。
親族との関係が悪くなる中、彼は生涯の友となるジェームズ・ポッター、リーマス・ルーピンらと出会った。ピーター・ペティグリューとはその後10年間友人だった。マローダーズとして知られたこの4人は第一次魔法戦争中不死鳥の騎士団に参加しヴォルデモート卿と死喰い人との戦いに参加した。シリウスはジェームズとリリー・ポッターのひとり息子ハリー・ジェームズ・ポッターの後見人に指名された。ピーター・ペティグリューがポッター家の情報をヴォルデモートに売ると、シリウスは復讐のために彼を追いかけた。しかし、ペティグリューは裏切りの罪をシリウスになすりつけ12人のマグルと同時にシリウスに殺されたように見せかけた。
シリウスはアズカバン送りになり、その後12年間で唯一アズカバン脱獄を成し遂げた人物となった。彼は動物もどきの能力で「死神犬」と間違えられる黒い犬に変身して牢を破り、旧友のリーマスと被後見人のハリーにペティグリューの裏切りを明かした。1995年にヴォルデモートが復活すると再び不死鳥の騎士団に加わった。神秘部の戦いでいとこのベラトリックス・レストレンジに殺され、その後無実が魔法界に広く公表された。
1998年5月2日、蘇りの石によって彼はハリーの前に姿を現した。ジェームズとリリー、リーマスも一緒だった。ハリーは後に生まれた長男をジェームズ・シリウスと名付けた。
シリウス・ブラックは1959年11月3日、イングランド、ロンドン自治区イズリントン区に誕生した。両親のオリオンとヴァルブルガはともに闇の魔法使いにして又いとこの子どもであった。シリウスは有名な純血の家系であるブラック家の血筋の最後の生き残りとなった。シリウスにはレギュラスという名の弟がおり、彼は1979年にヴォルデモート卿を裏切って分霊箱を破壊しようとして死亡した。シリウスは知らなかったが、レギュラスは分霊箱のひとつを守っていた亡者に襲われて命を落としたのであった。シリウスはレギュラスを「自分よりも良い息子だった」と表現していたことからあまり良い関係性ではなかったと思われる。
「シリウス」はブラック家では馴染みの名前であり少なくとも3世代にわたって受け継がれてきた。星、星座、銀河に関する名前をつけるという伝統に則った名前である。「シグナス」、「アークタルス」、「レギュラス」という名前も少なくとも2回使われている。興味深いことにたったひとりのシリウス(当項目の曾祖父)しか子孫を残していない。その血筋もこのシリウス・ブラックが子孫を残さなかったため終わってしまった。
1970年代のブラック家
ブラック家は純血の優越性を強く支持していた。一族はマグルやマグル生まれ、スクイブ、血を裏切る者との婚姻を禁止していた。シリウスの大おじマリウス・ブラックのようなスクイブのメンバーは一族から勘当された。家族のメンバーは由緒正しい純血の家系のみと婚姻を結ぶことを要求されていた。この信念のため彼らはいとこ婚を繰り返すことになった。一族はまた、闇の魔術に畏敬の念を抱いていた。
シリウスはこのような価値観を拒否し一家と軋轢が生じた。彼は一家との違いを強調し両親を苛立たせるため、自分の部屋の壁にグリフィンドールのバナーやビキニ姿のマグルの女性、バイク、自分とグリフィンドールの友人たちの写真をチャームで永久固定していた。いとこのベラトリックスやナルシッサがそれぞれロドルファスとルシウスと結婚して立派な純血婚を成し遂げるとシリウスは彼女たちを軽蔑した。一番仲の良いいとこアンドロメダがマグル生まれの魔法使いテッド・トンクスと結婚すると「血を裏切る者」として一家から勘当された。
シリウスは自らの信念を貫き続け、親族から軽蔑され憎しみを抱かれることもあった。しかしのちに、彼はいとこの娘ニンファドーラ・トンクスや代子ハリー・ポッター(シリウスは息子として愛していた)、ハリーの親友ハーマイオニー・グレンジャーとロン・ウィーズリー(シリウスのみいとこ)、縁戚に当たるウィーズリー家と友好関係を築いた。
"美しいな。初めて城に入ったときのことは忘れない"—シリウス・ブラック[出典]
シリウスは不幸な少年時代を送った。成長するに従いシリウスは親族のほとんどを嫌うようになり、その中でも母親ヴァルブルガといとこベラトリックス・ブラックを憎んでいた。ブラック家の他のメンバーは全員スリザリン寮に組分けされたが、シリウスは1971年の組分け儀式でグリフィンドールに選ばれた。学校に入った時点で家族と価値観を異にしていたことが窺える。シリウスはグリモールド・プレイス12番地の実家の部屋中にグリフィンドールのバナーを貼り付けて家族に自分が違うことを見せつけた。グリフィンドールのバナーの他、部屋は同年代のマグルの少年が好むようなもので埋め尽くされていた。彼はバイクや戦闘機、ビキニの美女の写真を貼り付けていた。マグル文化の礼賛は家族を苛立たせたが、それ以上にマグルの女性の魅力について話すシリウスに母親は激怒した。
Marauders.jpg狼状態のルーピンと行動を共にする動物もどき状態のマローダーズ(シリウスは黒い犬)
それとは対照的に、彼はホグワーツでの学校生活を3人の大親友たちと常に行動を共にして大いに楽しんだ。それはジェームズ・ポッター、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティグリューであった。3人はやがてリーマスが狼人間であると知った。彼を助けるため、シリウス、ジェームズ、ピーターは秘密かつ非合法的に動物もどきとなった。これにより3人はリーマスの変身時にも安全に行動をともにすることが可能となり、彼を抑えることができた。シリウスの動物状態の姿は大きな黒い犬(死神犬に似ている)であり、パッドフットというニックネームが付けられた。ジェームズは牡鹿(プロングス)、ピーターはネズミ(ワームテール)に変身した。4人に親友同士は自らをマローダーズと呼びそれぞれのニックネーム「ムーニー、プロングス、パッドフット、ワームテール」(パッドフット、プロングス、ワームテールは動物もどき、ムーニーは狼状態)で呼び合った。4人はまた、ホグワーツ城で誰がどこにいるかが表示される忍びの地図を作った。この地図のおかげで彼らは教師を避けて自由に動き回ることが可能になった。
シリウスはのちにこの時期の自分を「愚か者」と見なしたが、彼とジェームズは非常に人気があった。教師たちはシリウスの優秀さ(行動ではなく)を高く評価し女子生徒たちはそのハンサムな外見を好んだ。シリウスは強い反抗心によりそういった相手を無視し、女子生徒たちは不良性や外見を褒めて機嫌を取らなければならなかった。多くの教師たちはシリウスとジェームズをトラブルメーカーかあるいは実践的ないたずらっ子と考えていた。ルビウス・ハグリッドはふたりをいたずら好きの双子フレッドとジョージ・ウィーズリーと比べ、ウィーズリー兄弟ならふたりと張り合えると話した。
MaraudersPickingOnSnape.jpg5年目、スネイプをいじめるシリウスとジェームズ
しかしながら、シリウスは誰からも好かれるわけではなかった。ジェームズ・ポッターとセブルス・スネイプの間で憎しみが芽生えるとシリウスは率先してジェームズの味方をした。そのためスネイプは生涯シリウスに対して態度を和らげることはなかった。スネイプは遺恨からのちにシリウスの死を喜んだ。シリウスはスネイプは始めて会ったころのスネイプについて「闇の魔術にはまり込んでいた小さな変わり者」と回想した。シリウスはスネイプを嫌っていた数多くのうちのひとりであった。
シリウスとジェームズはよくスネイプをいじめて楽しんだ。スネイプの憂いの篩に納められたある記憶を見たハリー・ポッターは、ふたりが単に退屈しただけという理由でスネイプに身体的な攻撃を加える場面を目撃している。シリウスは彼とジェームズがまだ15歳だったという点を指摘して正当化を試みたがハリーは自分も15歳だと答えた。自分とジェームズが傲慢な愚か者であったことと良くない行いをしたことは認めたが、行動で償いを試みたことは一度もなかった。シリウスとジェームズはやがてスネイプに対する攻撃を行わなくなったが謝罪はしていない。ジェームズが唯一いじめを止めたのはホグワーツ卒業後に結婚するリリー・エバンズが近くにいたときだけであった。
The_Marauders.pngホグワーツ最後の年、ティーンエイジャーのシリウス、ジェームズ、リーマス、ピーター
ホグワーツの6年目、シリウスは命を落としかねない悪ふざけをスネイプに仕掛けた。彼はスネイプに暴れ柳の下の叫びの屋敷に通じるトンネルに入る方法を教えたのであった。スネイプは知るよしもなかったが狼状態のリーマスは叫びの屋敷に隔離されていた。スネイプは満月の中そこに行き、ジェームズが救出せざるをえなかった。シリウスは、スネイプが知りたがっていた情報を一番大切な部分を省いて教えただけだと説明して行動の言い訳をした。彼はまた、スネイプにとっては当然の仕打ちをしたとも話した。このときスネイプがシリウスに抱いた恨みは決して消えなかった。ホグワーツ在学中にシリウスとジェームズがいじめたのはスネイプだけではなかった。ふたりはバートラム・オーブリーという名前の少年に違法なヘックスをかけ、オーブリーの頭部を通常の2倍に肥大させた。ふたりがヘックスをかけた理由は不明である。
16歳の時、シリウスはついに家族のもとを離れてジェームズやその両親(フリーモントとユーフェミア)の家で暮らすようになった。ポッター家はシリウスを息子のように快く迎え入れた。激怒したヴァルブルガ・ブラックは一族の優越主義に背いた者を勘当するという伝統に従ってシリウスを家系図から消した。シリウスの叔父でヴァルブルガの弟アルファードはシリウスを不憫に思い多額の遺産を彼に残した。これが理由であるか不明だが、アルファードも家系図から抹消されている。叔父の気前の良い遺産のおかげでシリウスは経済的に自立しやがて自分の住居を手に入れた。
ホグワーツ卒業後、シリウスはヴォルデモート卿の反対陣営に加わりやがて不死鳥の騎士団のメンバーになった。1977年ごろ、シリウスとジェームズはバイクに乗ってふたりの警察官に追跡された。このチェイスは最初ちょっとした楽しみであったが、箒に乗った3人組に攻撃されるとふたりは少し真剣さを増した。シリウスとジェームズが杖を使って追跡してきたパトカーを持ち上げると箒の襲撃者たちがそれに衝突した。イギリス魔法省に注意を受けたかは定かではない。[2]
1979年のあるとき、シリウスの父親と弟が死亡した。オリオンの死因は不明である。レギュラスはヴォルデモートの分霊箱の破壊しようとエメラルドの水薬を飲んだことで耐えようのない乾きに悩まされ、水を飲もうとしたところを亡者に引きずり込まれて死亡した。しかしシリウスがレギュラスの死の詳細を知ることはなかった。
シリウスは変わらずジェームズの親友であり、ジェームズとリリー・エバンズの結婚式には花婿付添人として出席した。ふたりは息子のハリーが生まれるとシリウスを後見人に指名し、自分たちに何かが起きたら代わりに保護者になるよう依頼した。シリウスはハリーの1歳の誕生日プレゼントにおもちゃの箒を送った。
不死鳥の騎士団に加わったのち、ヴォルデモートの大いなる恐怖によりシリウスは気がつくと不信感とストレスに苛まれていた。1981年10月までには、旧友リーマス・ルーピンを重要な情報を隠しているスパイであると疑って信用できなくなるという実害も出ていた。ところがシリウスはピーター・ペティグリューを信頼していた。彼はその後一生この決断を後悔することになったのである。
1981年、ポッター夫妻はハリーが、騎士団の仲間であるアリスとフランク・ロングボトムの息子と同様、ヴォルデモートの特別な標的になっていることに気づいた。アルバス・ダンブルドアはポッター夫妻に忠誠の術を使って身を隠すように助言し、自身が秘密の守人になろうとした。しかしジェームズは、シリウスなら情報を吐くよりも喜んで死を選ぶであろうと信じて彼を秘密の守人にすると頑なに断った。自分がヴォルデモートに狙われる可能性が高いと考えたシリウスは敵を欺く策を考え出した。リーマス・ルーピンやアルバス・ダンブルドアなど他の誰にも言わず、シリウスを囮として、ポッター夫妻は密かにピーター・ペティグリューを秘密の守人に選んだのであった。
1981年、ハロウィーンの夜、ペティグリューの隠れ家に行ったシリウスは彼の姿がないことに気づいた。争った形跡がないことに不安を感じたシリウスは大急ぎでゴドリックの谷に向かい、ポッターの家が破壊され友人の死体を見つけた。幼児のハリーだけがまだ生きていた。ダンブルドアの指令を受けたルビウス・ハグリッドがハリーを引き取りに現れるとシリウスは、ジェームズとリリーの死によって正式な保護者となったことから自分が連れて行くと申し出た。しかしハグリッドはダンブルドアがハリーをリリーの姉ペチュニアのもとへ送る手配をしたと話して断った。問答の結果シリウスが折れ、もう必要ないからとハグリッドに空飛ぶバイクを譲った。ハグリッドはハリーを届けたらシリウスにバイクを返すつもりであったがそのチャンスは訪れなかった。
Pettigrew_Kills_Muggles.jpgジェームズとリリーの死についてシリウスに問い詰められ12人のマグルを殺害するペティグリュー
ゴドリックの谷を離れたシリウスは怒りと悲しみに襲われ、ペティグリューを殺すと誓って復讐のために捜索を始めた。しかしペティグリューはブラックより上手だった。街の通りでシリウスと対峙したペティグリューはポッター夫妻を裏切ったのはシリウスだと叫び強力な爆発呪文で大爆発を引き起こした。その結果12人のマグルが巻き込まれて死亡し、ペティグリューは証拠として指一本を切断してその場に残し動物もどきの状態で逃げおおせたのであった。生き残ったマグルはシリウスが12人とペティグリューをカースで殺したのを見たと確信しており、コーネリウス・ファッジ魔法事故惨事部副部長はシリウスが現場で狂ったように笑い続けるのを見たと証言した。シリウスはペティグリューが間違って自分を殺したと勘違いしてそれを笑っていた可能性がある。
シリウスは魔法法執行部により逮捕され、爆発呪文で13人を殺した罪とポッター夫妻の居場所を明かして死に追いやった罪、ヴォルデモート卿に仕えた罪で、裁判もなくバーティ・クラウチ・シニアによりアズカバンでの終身刑を言い渡された。生き残ったマグルたちはオブリビエイトされマグル対策口実委員会により爆発呪文の代わりにガス爆発が起きたという記憶を与えられた。現場から指が発見されたことからペティグリューはシリウスに立ち向かったとされ、不当にマーリン勲章勲一等を「死後」受賞した。その指は遺品としてペティグリューの母親に渡された。時が経つにつれ話に尾ひれが付き、多くの人はブラックが杖を抜きペティグリューが杖を抜く前に殺したと信じるようになった。残ったマローダー、リーマス・ルーピンでさえもシリウスが親友を裏切ったと考えていた。
Sirius_Black_imprisoned_in_Azkaban_PM.jpgアズカバン収監中のシリウス
囚人ᛈᛉ-390とマークされたシリウスは独房に収監されアズカバンの守衛、吸魂鬼たちのなすがままになった。狂気に流されそうになっても自分の無実に集中し続けることで正気を保った。のちに叫びの屋敷で「幸せ思い出よりもむしろ執着」と振り返っている。吸魂鬼はこの執着を感知することはできず、シリウスは自我を保って監房で動物もどきの状態に変身する力を取り戻した。吸魂鬼は動物の単純な感情を読み取ることが難しいためシリウスはイヌの状態でいればそれほど苦しめられることはなかった。ベラトリックス・レストレンジや他の死喰い人の様な収監されている他のすべての囚人と同じく正気を失っていると見なし吸魂鬼も気にすることはなかった。
そして友人の死への後悔とペティグリューの裏切りもまた執着のひとつとなっていた。これはハリーがなぜヴォルデモートの攻撃を生き延びたのか様々な仮説をを収監中の死喰い人たちに聞かされたからでもあった。多くの死喰い人はペティグリューが闇の帝王を裏切ったことで彼が力を失ったと信じていた。これはペティグリューが投獄を逃れた半数のヴォルデモート支持者たちに復讐されるのを恐れてネズミのまま隠れていることを示唆していた。生きていることが判明すれば殺され、判明しなければ主人のもとへ帰れるからである。シリウスはペティグリューがヴォルデモートの新しい情報をつかむために魔法族の一家にペットとして紛れ込んでいる証拠が牢獄に届くまで待ち続けた。その間にもイギリス魔法省に保管されている杖がなければ吸魂鬼を追い払うことができないため、体は弱り続けていった。
1985年までにシリウスの母親も死亡した。ブラック家の屋敷には屋敷しもべ妖精のクリーチャーだけが残され廃墟同然になった。
アズカバン脱獄ホグワーツやホグズミードなど魔法界の各所に張られた指名手配ポスター
1993年、シリウスは初めてアズカバンを脱獄した人物とされるようになった。査察に来たコーネリウス・ファッジ魔法大臣から「日刊予言者新聞」を受け取ったシリウスは記事を見て、ペティグリューがロン・ウィーズリーのペット、スキャバーズとして動物もどきの状態で隠れていることを知った。復讐への欲求とハリーへの心配から動物もどきの状態(栄養不足からやせ細っていた)で監房の柵をすり抜け吸魂鬼の横を通り過ぎた。シリウスは北海を泳ぎ切って本土に戻り自由を手に入れた。
シリウスはまず、リトル・ウィンジングに行き、ティーンエイジャーとなった代子の様子を一目見た。動物もどきの姿がハリーを驚かせ夜の騎士バスを呼び寄せてしまった。悪名高い牢獄から初めて脱獄者が出たことでシリウス脱獄のニュースは未曾有のパニックを巻き起こしていた。多くの人がハリーを殺してヴォルデモート卿を復活させることが脱獄の目的であると信じていた。魔法省に特別隊として仕えるウィッチ・ウォッチャーズはシリウスを捕まえる対策を講じたが空振りに終わった。マグルの当局にもシリウス・ブラックは危険人物であると通達された。
Sirius-Black-tunnel.jpg叫びの屋敷に向かう通路を渡るシリウス
シリウスはホグズミードや禁じられた森に身を隠したが何度か目撃されハリーに死神犬と誤解された。彼はハーマイオニー・グレンジャーのペット、クルックシャンクスと知り合った。クルックシャンクスはシリウスがイヌではないことを見抜いており、ピーター・ペティグリューの正体も知っていた。クルックシャンクスはピーターをシリウスに引き渡そうとしたがロンはそのペットをうまく守っていた。シリウスはまた、叫びの屋敷にも潜伏しどのようにしてペティグリューを捕まえるかを考えた。
1993年10月31日、半分正気を失い絶望していたシリウスは叫びの屋敷から古いトンネルを通ってホグワーツ城に忍び込み、グリフィンドール塔に入れることを拒まれたため太った婦人の肖像画を切り裂いた。その後彼はグリフィンドールとハッフルパフのクィディッチ戦を観戦した。試合中、シリウスはハリーの素晴らしい飛行技術を目の当たりにし、のちにジェームズと同じ能力だと話した。やがてクルックシャンクスがネビル・ロングボトムから盗んだ合い言葉のメモを使ってシリウスはグリフィンドールの談話室に侵入し、「スキャバーズ」を探してロンのベッドカーテンを切り刻んだ。シリウスの脱獄を知っておびえたスキャバーズはすでに姿を隠していたため見つけられなかった。
6月、シリウスはそれまでルビウス・ハグリッドの小屋に隠れていたスキャバーズを抱えるロンを捕まえた。シリウスはロンとネズミを暴れ柳の下のトンネルに引きずり込んで叫びの屋敷に連れて行った。両親への裏切りについてシリウスを問いただそうとするハリーとハーマイオニー・グレンジャーが年齢と能力の明らかな差にもかかわらず後を追った。しかし逃亡生活で弱っていたシリウスは杖もなく、クルックシャンクスの助けも空しく容易に少年に圧倒されてしまった。
Scabbers_transformation.jpgペティグリューを人間の姿に戻すシリウスとルーピン教授
ハリーがシリウスを押さえ込むと、没収した忍びの地図でピーターの名前を見たリーマス・ルーピンが現れた。リーマスはハリーを武装解除すると旧友を暖かく迎えた。シリウスとルーピンはふたりでピーターの正体を暴き出した。ふたりともジェームズとリリーを裏切った復讐にピーターを殺そうとしたが、ハリーはピーターに正当な裁きを受けさせ吸魂鬼に引き渡すべきだと考えてふたりを止めた。ハリーは父親の友人を殺人者にしたくなかった上に、父親がピーターを殺すことを望まないと考えていたのである。
一行が城に戻ろうとしたとき、シリウスはハリーが育ての親である伯父や伯母と暮らしたくないのではないかと考え、ためらいがちに自分と暮らしてはどうかと尋ねた。ダーズリー家と離れて本当の家ができると考えたハリーは強く賛成した。ところが不運にも、暴れ柳を通り過ぎた後にペティグリューの登場でトリカブトの薬を飲み忘れていたルーピンが満月を見て狼状態に変貌してしまった。
Harry-potter3_pass_out.jpg黒い湖で吸魂鬼に襲われて気を失うシリウスとハリー
ルーピンからハリー、ロン、ハーマイオニーを守るためにシリウスがイヌに変身している隙にペティグリューが逃げてしまった。狼状態のルーピンと戦ったことで弱っていたシリウスはホグワーツ城を警護する吸魂鬼たちが到着したとき自分の身を守ることができなかった。シリウスを追いかけてきたハリーとハーマイオニーは意識を失ったシリウスをフードを被ったこの生物が取り囲んでいるのを目撃した。ハリーは守護霊の呪文を使おうと試みたが失敗した。シリウスは吸魂鬼に危うく魂を抜かれそうになったがそのとき牡鹿のような強力な守護霊が現れ彼らをすべて追い払った。
Harry_Potter_Prisoner_Azkaban_sirius_buckbeak.jpg救出されバックビークに乗って脱出するシリウス
シリウスはスネイプによりしばらくの間拘留された。シリウスには死よりもひどい運命が待ち受ける吸魂鬼のキスの執行が言い渡された。アルバス・ダンブルドアの助言により、ハリーとハーマイオニーは逆転時計を使って奇跡的なシリウスの救出を行った。ダンブルドアがその夜「2つの無実の命」を救えると示唆したとおり、ハリーとハーマイオニーはヒッポグリフのバックビークを処刑から救出しシリウスに移動手段を与えた。シリウス再び指名手配されたが、命は無事で魂を奪われることもなく、ごく少数は彼の無実を知っていた。脱出後まもなくシリウスはハリー、ロン、ハーマイオニーに小さく元気なふくろうを使って手紙を出し、クリスマスにハリーに炎の雷を送ったのは自分であると認め、代父としてハリーのホグズミード行きの許可を与えた。シリウスはまたロンのペットがいなくなってしまったことを詫びこのふくろうを「スキャバーズ」の代わりとするように頼んだ。
逃亡生活"人となりを知るには、その人が、自分と同等の者より目下の者をどう扱うかをよく見ることだ"—シリウス・ブラック[出典]
シリウスはイギリス魔法省の追跡を逃れてヨーロッパに逃亡した。彼はハリーと連絡を取り続けたが場所を明かすことは決してしなかった。しかし外国の鳥を使っていたことからハリーはどこか南国に隠れているのではないかと予想した。ハリーは困難にぶつかるとシリウスの助言を求めるようになっていた。ハリーが額の傷が痛むことを明かすとシリウスはイギリスに舞い戻った。傷が痛むのはヴォルデモート卿の存在や力の印だったのである。
B4C27M1_fugitives_in_the_cave_near_Hogsmeade.pngシリウスが隠れる洞窟を訪れるトリオ
何者かの策略でハリーが三大魔法学校対抗試合に参加させられるとシリウスはホグズミード近郊の洞窟に身を隠し、時折ハリー、ロン、ハーマイオニーが訪問した。シリウスがこの危険を冒したのはこの困難の時にハリーに情緒的なサポートや助言を与えるためであった。シリウスはダームストラング専門学校のイゴール・カルカロフ校長について、かつて死喰い人で自由を得るために多くの仲間を売った人物であると警告した。この密告によりカルカロフは未だにヴォルデモートに忠実な死喰い人に恨まれていた。カルカロフが売った仲間の中にはオーガスタス・ルックウッドがいた。ハリーは第二の課題の手がかりを得るために監督生の浴室に向かっていたとき忍びの地図で「バーテミウス・クラウチ」という名前を見たと話した。彼はその時点で「マッド-アイ」が地図を持っていることは話さなかった。シリウスは何かがおかしいと答えたが、ハリーには目の前の課題に集中しクラウチの「病気」は他の者に任せておくように助言した。
Sirius_in_fireplace.jpg煙突飛行ネットワークを通してハリーと話すシリウス
ビクトール・クラムがハリーを連れ出して禁じられた森の端でハーマイオニー・グレンジャーとの関係について問いただしていたとき、ハリーは錯乱状態のバーティ・クラウチ・シニアに出くわした。ハリーがダンブルドアを呼びに行っている間にバーティ・クラウチが姿を消してしまうと、シリウスはクラウチを校長に会わせたくない者がいるのだとハリーに警告した。シリウスは防衛呪文の練習を続けるようにアドバイスし、危険が迫っているためひとりでは出歩かないようにと釘を刺した。
対抗試合最後の課題ののち、ダンブルドアは辛うじてヴォルデモート卿の手を逃れたハリーに会わせるためにシリウスを呼び出した。シリウスは試練を乗り越えたハリーを休ませようとしたがダンブルドアが却下した。ハリーがその夜の出来事を説明するにつれシリウスは2回話を遮りかけ、仇であるワームテールが代子にしたことに激しい怒りを感じた。シリウスはまた、旧友ジェームズとリリーの魂が戻ってハリーを守ったと聞くと、強い感情を露わにした。
B4C36M1_Snape_Dark_Mark_reveal.png闇の印を見せてヴォルデモート卿の復活を証明するスネイプ
ダンブルドアが非常によくしつけられたイヌであるとマダム・ポンフリーを説得したため、シリウスはイヌの姿で医務室のハリーの側にいることが許された。そのためシリウスはコーネリウス・ファッジがハリーを詰問しヴォルデモート卿の復活の信頼性を否定したときもその場にいた。役人がその場を去るとダンブルドアは闇の帝王に対抗する計画を練り始めた。ダンブルドアはシリウスに人間に姿に戻ってスネイプと和解するように頼んだがどちらも不服であった(殺人犯であると信じていたためモリー・ウィーズリーはシリウスを見て怯えた)。ダンブルドアはそれからリーマス・ルーピン、アラベラ・フィッグ、マンダンガス・フレッチャーを招集して指示があるまでルーピンの家でおとなしく待っているように指示を出した。
シリウスはハリーにすぐに再会すると約束しダンブルドアの指示を果たすために外に出た。
グリモールド・プレイス12番地における騎士団の会合
ヴォルデモートが肉体を取り戻すと、ダンブルドアはシリウスを送り込んで昔の仲間を集め情報を伝えて不死鳥の騎士団を再結成した。シリウスはロンドンのグリモールド・プレイス12番地にある実家を騎士団の本拠地として提供した。未だに当局から指名手配されていたためシリウスは安全に外出することができず役に立てないことを苦々しく感じていた。ハリーをホグワーツ特急に見送るために一時的に外出すると、ドラコ・マルフォイがハリーの「ペット犬」の悪口を言った。特急の中での発言と併せて考えるとマルフォイはシリウスの動物もどきの状態を知っていると思われる。シリウスとハリーは学校が始まってからもふくろうや煙突飛行ネットワークで連絡を取り続けたが、一度シリウスは学校の管理を請け負うことになったドローレス・アンブリッジに捕まりかけた。
Order-of-the-phoenix-sirius_harry.jpgキングズ・クロス駅でハリーを見送るシリウス
ハリーの5年目、複数の大人たちがシリウスがハリーの父親になる能力を疑い、ハリーの父親というよりハリーをジェームズの代わりとしてみていることを示唆した。ハリーがアンブリッジとの困難に苦しむ中、シリウスはアンブリッジの学校改革に立ち向かうように勇気づけ、防衛術を教えるハリーの秘密組織ダンブルドア軍団を褒め称えた。彼は熱心にサポートしたが、ハーマイオニーは彼がハリーを通して生きようとしているように映って心配した。ハリーに助言を与える大人たちはハリーが真実を背負うには幼すぎると考えていたが、シリウスは騎士団やヴォルデモートに関するハリーの質問にすべて答えて見せた。彼はまた、もしスネイプ教授が開心術の授業でハリーを傷つけるようなことがあったら自分に言うようにと話した。
騎士団の本部で身動きがとれなかったシリウスはやがて憂鬱な感覚に苛まれるようになった。アーサー・ウィーズリーがナギニに襲撃されたことでハリーとウィーズリー兄妹がグリモールド・プレイスを訪れた時、シリウスのひげは伸びきって夜中でも普段着を着ていた。彼はまた酒を飲んでいたとも思われる。しかしハリーとウィーズリー家が聖マンゴ魔法疾患傷害病院に近いことからクリスマス休暇をグリモールド・プレイスで過ごすことになるとシリウスはすっかり見違えた。「世のヒッポグリフ忘るな」を声高に歌っていることもあった。
神秘部の戦いと死"さあ、来い。今度はもう少しうまくやってくれ!"—ベラトリックス・レストレンジを挑発するシリウス・ブラック、最期の言葉[出典]
Voldemort%27s_false_vision_OOTPF.jpgヴォルデモートは開心術を用いて、ハリーの心にシリウスが神秘部で拷問を受けているという幻覚を植え付けた。ハリーはシリウスが本当に捕まっていると信じてしまった。ハリーはセブルス・スネイプに外部の者にはわからないように状況を伝えアンブリッジを禁じられた森に放り出した。ハリー、ロン、ハーマイオニーに加えダンブルドア軍団メンバーのジニー・ウィーズリー、ネビル・ロングボトム、ルーナ・ラブグッドはセストラルに乗ってロンドンに飛んだ。生徒たちは人のいなくなった魔法省に到着して神秘部に入り込んだがそこに待ち受けていたのは死喰い人たちであった。
Sirius-Black-Bellatrix_Lestrange_duel.jpg死の間でベラトリックス・レストレンジと決闘するシリウス
騎士団のハリーの情報を伝えて彼らの命を救ったのはスネイプであった。シリウス、キングズリー・シャックルボルト、ニンファドーラ・トンクス、リーマス・ルーピン、アラスター・ムーディ、そしてやがてはアルバス・ダンブルドアが魔法省に現れ死喰い人と戦いを繰り広げた。
不運なことに、混乱を極めた決闘の中、シリウスは憎んでいたいとこベラトリックス・レストレンジから何らかの呪文を受け、死の間のベールの先に倒れて死亡した。ハリーがようやく後見人を失ったことを受け入れるのにその後1年かかった。シリウスはハリーにとってもっとも父親に近い存在であったとダンブルドアははっきりと述べた。ハリーはシリウスの死について自分を責めた。
絶命して死の間のベールの向こうに倒れるシリウス
シリウスの死によってハリーは怒りと悲しみに襲われ、ヴォルデモートが現れる前にベラトリックスに復讐を果たそうとした。彼は磔の呪いさえ使って彼女を攻撃した。ダンブルドアとヴォルデモートの短い決闘ののち、ヴォルモートは姿を消したがコーネリウス・ファッジや複数の魔法省役人に姿を見られた。これによって彼らはようやくダンブルドアとハリーに対する中傷キャンペーンを中止し、世間に対して真実を認めた。それと同時にダンブルドアは魔法省にシリウスが初めから無実であったことも認めさせ死後すべての容疑が取り下げられた。
ブラックは結婚することもなく子どももいなかった。フィニアス・ナイジェラスの肖像がが話したように古くから続くブラック家の直系の血筋はシリウスの死によって途絶えてしまった。レギュラス・ブラックが生きていれば最後のブラック家の継承者となったが彼は兄のシリウスよりも先にこの世を去っていた。長子相続の権利によればシリウスの相続人はベラトリックス・レストレンジ(もっとも年長の従姉だがシリウスを殺害したことにより無効化)、アンドロメダ・トンクス(2番目に年長の従姉、一族から勘当)、あるいは母親ナルシッサ・マルフォイ(旧姓ブラック)を通してブラック家の次の家長となるドラコ・マルフォイとなる。
しかし権利はブラックの遺志によって否定された。彼はすべての所有物の相続人にハリー・ポッターを指定していた。この遺志によりハリーはグリモールド・プレイス12番地、バックビーク、クリーチャーなどブラックの遺産すべてを相続した。シリウスにとってグリモールド・プレイス12番地には愛着もなく辛い思い出ばかりであったことからハリーは家を不死鳥の騎士団に本部として提供し続けることにした。シリウスの遺志によりハリーに仕えることになったクリーチャーはホグワーツに送られキッチンで働くことになった(それでもハリーに対するクリーチャーの憎しみは全く変わらなかった)。バックビークは「ウィザウィングス」という別名でルビウス・ハグリッドのもとに戻された。
Sirius%27s_file.JPGシリウスのファイル
1997年、ヴォルデモート支配下の魔法省にシリウスのファイル(他の人物も同様に)が保管されていることが判明した。ファイルはドローレス・アンブリッジのオフィスに保管されていた。書類にはシリウスの血統、家族の状態、安全状態が記入されていた。彼は不死鳥の騎士団のために死亡したため彼の写真には赤で大きなXが書き込まれていた。
シリウスは16年前、ゴドリックの谷でポッター夫妻に死を知った後、ハグリッドに空飛ぶバイクを譲り渡していた。幼児のハリーを自分に渡すように頼んでハグリッドに断られたシリウスはバイクを渡してピーター・ペティグリューの追跡に向かったのであった。ハリーの17歳の誕生日直前、ハグリッドはこのバイクを使ってハリーをプリベット通り4番地から騎士団の基地に連れて行った。騎士団は死喰い人の待ち伏せを受けバイクは大破した。テッド・トンクスが破片を回収してアーサー・ウィーズリーに送り、アーサーはのちに修理してハリーに渡した。また、シリウスは1996年にかつてジェームズと話すために使った両面鏡をハリーに渡していた。シリウスの鏡はマンダンガス・フレッチャーの手に渡りやがてアバーフォース・ダンブルドアが手に入れた。アバーフォースはその後この鏡を使ってハリーを助けた。
Harry-potter7-sirius_harry.jpg禁じられた森でハリーと話す蘇ったシリウス
1998年5月2日、死を迎えようとするハリーは蘇りの石を使ってシリウスを含む4人を蘇らせた。シリウスは眠るよりも早く簡単であると話して死は痛くないと代子に保証した。ヴォルデモート卿に立ち向かうハリーに対し、シリウスは同じく復活したジェームズ、リリー、リーマスらと最後の瞬間まで側に付いていると約束した。炎に近づいたハリーは石を手から放したため両親、シリウス、ルーピンの姿は消えた。ハリーはのちに、後見人の思い出を称えるため長男にミドルネームをシリウスと名付けた。ジェームズ・シリウスの性格はシリウス・ブラックによく似ていた。
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