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ハーロックは、松本零士原作の漫画、アニメ作品などに登場する架空の人物。本項ではキャプテンハーロックとして知られる宇宙海賊のハーロックを中心に解説する。
松本の漫画世界において、メーテルと双璧をなす重要な人気キャラクター。商業誌で初めて登場したのは、1968年に『プレイコミック』に掲載された『冬眠惑星』(短編集『火星令嬢』に収録)である。
松本作品において眼帯と頬に傷がある姿で登場することが多く、単にハーロックという場合、大抵は『宇宙海賊キャプテンハーロック』などに宇宙海賊として登場するハーロックをさす。この宇宙海賊のハーロックは、『銀河鉄道999』などでエメラルダスと共に重要な脇キャラクターとして活躍し、特に『999』劇場版では数々の名言を残している。また、星野鉄郎や台羽正などの少年キャラクターに対し、彼らの憧れであり人生の師となる大人のキャラクターとして位置づけられている。
『宇宙海賊-』発表以前にも、『ガンフロンティア』、『ダイバー0』など、「ハーロック」という名前のキャラクターが登場し、容姿もほぼ同じであるが同一人物というよりは、ハーロックというキャラクターを使ったスター・システムに近いものであった。『宇宙海賊-』から設定がほぼ固まり、やがて『999』や『わが青春のアルカディア』など同一人物としてのハーロックの物語が松本の他作品とリンクしながら描かれていくようになった。
ハーロックという名前を思いついたのは松本の少年時代であった。当初は人名ではなく、少年時代に描いた漫画作品『冒険記』の主人公でハーロックの原型的なキャラクター「キャプテン・キングストン」と、その仲間達同士の掛け声が「ハーロック」であった。その言葉を思いついた当時の少年松本は、嬉しさのあまりずっと「ハーロック、ハーロック」と繰り返していたという。その後、来日していたハーロックというドイツ人が事故にあった新聞記事を読んで人名であることを知り、自作のキャラクターとして用いるようになった[1]。
40人の乗組員[2]と共に海賊戦艦アルカディア号を駆り、全宇宙を股にかける宇宙海賊。『宇宙海賊-』の設定では、推定年齢28歳[3]。親友はアルカディア号設計者である大山トチローとその恋人にして同じく宇宙海賊のエメラルダス。『999』などの作品では、メーテルや鉄郎とも知己である。故郷である地球を含めて如何なる勢力・組織にも属さず、黒地に白のドクロを染め抜いた自由の旗の下に生きることを信条としている。
背は高く、ハンサム系の容姿で描かれているが隻眼で黒い眼帯をしており、頬には縫い痕も露わな古い傷痕がある。アニメ映画『わが青春のアルカディア』および続編のテレビシリーズ『無限軌道SSX』では、キャラクターデザインを担当した小松原一男により口1つ分だけ口の位置が上になり、顎も太めに描かれたことで『宇宙海賊-』や『999』劇場版よりも男らしさを強調した容姿となっている。
黒地に白抜きのドクロが大きく描かれた戦闘服と黒いマントを着用し、マントの裏地は赤。ズボンは『宇宙海賊―』では水色だが、『999』劇場版などの作品では上半身と同様に黒となっており、ブーツと併せて黒で統一されている。腰にはドクロのバックルがついたホルスター付きのベルトを2本締めており、右足側にはトチロー手製のハンドガン[4]、左足側に重力サーベル(サーベル銃)を吊るしている。
『わが青春のアルカディア』では恋人マーヤを庇い、右目を撃ち抜かれて失明したと語られたが、この作品と『コスモウォーリアー零』、『宇宙交響詩メーテル 銀河鉄道999外伝』などでは、両目が健在であるハーロックが描かれている。
アルカディア号の私室で、ミーメのハープを聞きながらワインを飲んでいることが多い。アニメではミーメの演奏に合わせて手製のオカリナを吹く姿も見られた。超一流の海賊として名を馳せる一方、同じ信念を持つ同志に対しては義を貫く男の中の男であり、『999』劇場版ではエメラルダスと共に若者達の憧れの存在であることがメーテルの弁で語られている。銃や重力サーベル、戦闘機の操縦などあらゆる戦闘術に長けており、艦長としても一流で仲間達の信頼も厚い。寡黙でストイックな一方で、宇宙のあらゆる酒を水の如く呑み干す酒豪であるなど豪放な一面もあり、「広大な宇宙を渡り歩くのに必要なこと」として、搭乗員にも非戦闘時には怠惰な生活やバカ騒ぎも許す寛容さも持ち合わせている。これは「やるべき時にだけやるべきことをやればよい」、「自分の艦は同時に乗組員の家でもあるから、家の中でまでかしこまっている必要はない」という、ハーロックの考えに基づくものである。
『宇宙海賊-』アニメ版におけるミーメの弁によれば「どんな小さな約束でも必ず守る男」であり、アニメ第1話では地球政府によって厳重な警戒網が敷かれているにもかかわらず、ハーロックはトチローの忘れ形見である少女・まゆの誕生日に地球を訪れている。仲間を大切にしており、乗組員の台羽が人質にとられたときには敵の罠が仕掛けられていることも省みず、その救出に全力を尽くしている。義侠心にも厚く、『999』劇場版では自分に代わって親友トチローの死を看取って墓を建てた鉄郎を救援すべく、機械帝国の機械化母星メーテルに赴き、自らアルカディア号の舵をとって機械帝国の宇宙戦闘機ガニメデや戦闘衛星との空中戦に及んでいる。
寡黙なキャラクターという印象が強いが、『宇宙海賊-』原作においてミーメはトチロー存命中のハーロックについて「もっと陽気で朗らかだった、もっとよく笑った」「かけがえのない親友(トチロー)を失ってからは(中略)笑わなくなった」と語っている。『クイーン・エメラルダス』原作のラストに登場する“黒衣の戦士”こと若い頃のハーロックは砕けた口調で話すうえに、トチローを侮辱した相手をただちに重力サーベルで射殺するなど、『宇宙海賊-』での人物像とは印象が異なる。
『宇宙海賊-』原作では海底ピラミッド内のマゾーンの遺体を見た際に「信念の赴くままに死にたい」とする旨と語っているほか、台羽に対してはアルカディア号の艦橋へと案内した際に「多分ここで死ぬ」と語り、艦橋を死に場所と決めているようである。アニメ版においては、監督のりんたろうにより「生きるということにはそれほどの望みはないが、生きるのであれば自分の死に場所を求めて生きる男」という性格付けが行われ、劇中でもマゾーンのスパイである波野静香に対し、そうした自分の望みをハーロック自身が語っている。最終回ラストでマゾーンとの戦いを終えた後に仲間を船から降ろし、ミーメ、トリと共に地球を去るハーロックの最期についてりんは「どこかでノタレ死にだろう」、脚本を担当した上原正三は「死に場所を求めての旅立ちではないかと思う」といった趣旨の発言をしている[5]。
『冒険記』でのキャプテン・キングストン誕生後、後の諸作品においてあるときはドイツ軍の軍人、またあるときは『光速エスパー』での悪役ドクトル・ハーロックと様々な姿で登場しデザインや容姿もそれぞれに異なっていた。商業誌での初登場作品『冬眠惑星』では日本人という設定で顔に傷や眼帯はない。『パイロット262』でのハーロックはドイツ空軍大尉でMe262乗りという設定でこの作品でも顔に傷や眼帯はなかった。現在の「左頬に刀傷、右目には眼帯」というイメージが定着したのは『ダイバーゼロ』と、1974年放送のテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』準備稿でのデザインからである。
ヤマト準備稿において、行方不明となった古代守が「ハーロック」を名乗り、ヤマトをサポートするという予定だったが、放送短縮によりこの企画は幻となっている。松本のコミカライズ版では全身黒ずくめで頭からマントをかぶって顔を隠し、半ばサイボーグ化した古代守がハーロックとして登場する。松本以外にひおあきらによるコミカライズや石津嵐によるノベライズ版にもハーロックは登場しており、ひお版ではアニメ用におこされた眼帯と傷がある本来のハーロックに近いデザインが使用されている。
『大海賊ハーロック』ではモスランド星系元軍人の海賊として登場し、地球軍の若者佐渡を自分の後継者として拾い、デスシャドウ号と愛妻や部下達を託しているが、この時は頬に傷がなく、眼帯は左目。月刊プリンセスに読切作品として掲載された『エメラルダス』では比較的現在に近いデザインだが、同様に左目眼帯である。この作品ではエメラルダス所有の「絶対秘密、宝の地図」の片割れを持ち、海賊飛行船デス・ハーロック号(クィーンエメラルダス号と同型艦だが、ゴンドラが異なる)を駆る空中海賊として登場した。『ワダチ』では機械化人となったハーロックも出ている。
本来のハーロックはドイツ系とみられ、原作者の松本によればハーロック一族の故郷は「ハイリゲンシュタット」であるという[6]。第二次世界大戦・太平洋戦争を舞台にした『ザ・コクピット』(戦場まんがシリーズ)中の一編『わが青春のアルカディア』[7]に、そっくりなハーロック姓のドイツ空軍パイロット・ファントム・F・ハーロックが登場し、愛機「メッサーシュミットBf109」に「アルカディア」のパーソナル・ネームを冠していた。その際、台場という日本の技術士官と出会っている。劇場アニメ『わが青春の-』には、2人の「ハーロック」が血縁であると思わせるイメージが挿入されている。
なお、前述のとおり『ヤマト』で第12話、第14話にハーロックとして古代守が再登場していれば広川太一郎が演じることになったとみられる。広川は『宇宙海賊-』アニメ化の際、ファンに後押しされる形で声の担当を打診したが採用されなかった旨を、当時ラジオ関東でパーソナリティを勤めていた番組『男たちの夜…かな!?』で語っている。
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