火の鳥_(漫画)

ページ名:火の鳥_(漫画)

テンプレート:漫画『火の鳥』(ひのとり)は、手塚治虫著の漫画。火の鳥(不死鳥)をモチーフにした一連の作品からなっている。

目次

概要[]

手塚治虫が漫画家として活動を始めた初期の頃から晩年まで手がけられており、手塚治虫がライフワークと位置付けた漫画作品[1]。古代からはるか未来まで、日本を主とした地球や宇宙を舞台に、生命の本質・人間の業が、手塚治虫自身の独特な思想を根底に壮大なスケールで描かれる。物語は「火の鳥」と呼ばれる鳥が登場し火の鳥の血を飲めば永遠の命を得られるという設定の元、主人公たちはその火の鳥と関わりながら悩み、苦しみ、闘い、残酷な運命に翻弄され続ける。
雑誌「COM」以降の連載作品では過去・未来・過去・未来と交互に描き、手塚本人が死亡した瞬間に作品が完結するという構想が練られていた[2]

この作品に多くの漫画家が影響を受け、数多くの映像化・アニメ化・ラジオドラマ化が行われた。

作品の構成[]

火の鳥は「〇〇編」と名の付く複数の編から成り立っている。

最初に連載されたのは1954年(昭和29年)、学童社の『漫画少年』の「黎明編」だったが、学童社はその後約1年ほどで倒産、この「黎明編」は未完に終わる。 その後、1956年に雑誌『少女クラブ』に「エジプト編」・「ギリシャ編」・「ローマ編」が連載された、そこから期間を空け1967年に雑誌『COM』に新しく書かれた「黎明編」から複数の編が連載され雑誌COMは休刊になる。その後1976年に雑誌『マンガ少年』で「望郷編」から「異形編」が連載されマンガ少年も休刊、1986年に『野性時代』で「太陽編」が連載された。

基本的には多数ある「〇〇編」はどれも一つの物語として完結しているため、朝日ソノラマ出版版や角川版などの一部では、どの作品から読んでも楽しめるように第一巻・第二巻のように「〇〇巻」と付けずに「〇〇編」とだけ付けて販売している。主人公・時代もそれぞれ異なる。そのため短編作品として捉えることができるし、人類の誕生から終焉までを描いた壮大な長編作品として捉えることもできる。「〇〇巻」と巻数表記されてない単行本については過去から未来まで順番を並べ替えて読むこともできる。順番を入れ替えると過去だと思っていた編が全て未来になり、未来だと思っていた編が全て過去になる仕掛けが施されている。

手塚本人が描いたものとしての火の鳥は野性時代の「太陽編」が完結したことにより終了しているが、実際には太陽編の後も構想が練られていた。火の鳥は過去、未来、過去、未来、と交互に「現代」に近付いて描かれるが、手塚は「自分の死亡時刻」を現代と置いており、「現代編」を死ぬ瞬間に描くと公言していたが[2]、手塚は死ぬ直前に何かを描こうとするも実現には至らなかった。

しかし、火の鳥を一つの長編作品として捉えた場合の最終的な結末は「未来編」で先に全て描かれており、NHKでアニメ化された時は最終的な結末を「未来編」で見せ物語が幕を閉じる。また「未来編」は物語の始まりである「黎明編」に続くため作品自体が無限に繰り返すような作りになっている。(この「未来編」は一番過去としても受け取れ、一番未来としても受け取れるため、最初に読んでも最後に読んでも物語が繋がるというあまり他の漫画には使われていない特殊な形態をとっている。巻数表記のない単行本を入れ替えて読む場合は第一巻にも最終巻の役割にもなる。)

1980年の手塚存命中に手塚が手がけた映画に「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」が存在する。これは漫画の映像化ではない個別に完結した物語であり、火の鳥全体を総括するような内容になっている。本作は火の鳥の世界の結末の一つが描かれている。

手塚死去のため描かれなかった内容はセガから発売された2003年のゲーム「ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-」や2006年の「ブラック・ジャック 火の鳥編」などに一部着想が生かされている。

手塚治虫の代表作の一つに『ブッダ』が存在するが、これは雑誌COMの休刊時に「火の鳥 東洋編」として出版社から企画されたものであった。[3]そのため作風・テーマ性が共通し、鼻が大きな人物(猿田彦)など共通の登場人物が数人出てくる。

さらに漫画作品ではないが、手塚治虫が死を目前にした病院のベッドの上で彼自身が手がけたものに舞台劇「火の鳥」が存在する。これは西暦2001年の時代設定であり、個別に完結したストーリーである。本作は1989年2月8日にスペース・ゼロにて公開されたが、皮肉にも翌日である2月9日に手塚が亡くなったため公開二日目にして追悼公演として上演されるようになった[4]。手塚の訃報を知ったスタッフが午後7時の公演時間に合わせてお悔やみの場内アナウンスをすると、観客席からの嗚咽が漏れ、舞台の最中にも止まらなかったという。現在この舞台劇版「火の鳥」は講談社から発売されている「手塚治虫漫画全集 386巻 別巻手塚治虫シナリオ集」や朝日新聞社から発売されている「ぜんぶ手塚治虫!」、樹立社の「手塚治虫SF・小説の玉手箱」等でシナリオ原稿を読むことができる。この舞台劇「火の鳥」は手塚存命中に発表された作品としては最後の作品であり、手塚の遺作の一つになった。

テンプレート:ネタバレ

主な登場人物[]

ここでは複数の編にまたがり登場する人物等を紹介する。

火の鳥人智を超えた存在で、100年に一度自らを火で焼いて再生(幼くなる)する事で永遠に生き続ける。元々は天界で飼われていたが、地上界に逃げ出した。人語を解し、未来を見通す。また、その生血を飲めば、永遠の命を得る事ができるという。呼称は鳳凰・火焔鳥・フェニックス(不死鳥)など。時空を超えて羽ばたく超生命体として描かれる。モデルは実在のキヌバネドリ目キヌバネドリ科の鳥ケツァール。その身体は宇宙生命(コスモゾーン)で形成されており、関わった人々の魂をも吸収して体内で同化し生かし続ける事も可能。話によっては人との間に娘を得ていたりもする。なお、『ブラック・ジャック』等の手塚作品において「フェニックス」等の名前でしばしば出演しているが、基本的には普通の鳥として出演し、言葉は話さない事が多い。猿田猿田彦、猿田博士、我王、鞍馬の天狗など、共通して大きな鼻の持ち主と運命付けられているが、それぞれの編の世界観に合わせ名前やキャラ、何ゆえにそのような大きな鼻を持ったのかの由来が少しずつ異なる[5]。作者自身がモデルという説もあるが、作者自身の自画像とは懸け離れている(作者自身をモデルにしたキャラは、乱世編に手塚太郎光盛として登場。おそらく同姓であるからと思われる)。猿田彦の犯した数々の悪行を清算する為に来世達は酷い目にあう宿命にあるが、罪の清算が終わりつつある結果として『鉄腕アトム』のお茶の水博士が設定された(アトム作中でお茶の水博士が事件に巻き込まれ酷い目にあったり果ては死にかけたりするのはまだ罪が残っている為、らしい)。ムーピーいかなる厳しい環境にも耐えうる生命力を持つ不定形生物。巧みな変身能力を有し、人型をとり人間の社会に溶け込むこともできるが、その能力から人気が高く、狩られてしまうため、どこかの星で集団でひっそりと暮らしている。「未来編」では一種のテレパシー能力を用いた「ムーピー・ゲーム」が人類をスポイルするとして、保有を禁止されたペットであったが、主人公・山之辺マサトの恋人タマミはそのムーピーであった。寿命は人間より遥かに長く、500年位は生きられる。「望郷編」では人間とムーピーのハーフが繁栄する。ロック35世紀における都市国家メガロポリスヤマトの中央本部に勤務する1級人類戦士。エリートで、同期でありながら総合審査によって自分の部下となった「未来編」の主人公マサト(2級で宇宙飛行士である)に対して辛く当たるが、「未来編」において人間の愚かさを見事に演じ切ったキャラクターでもある。試験管ベビーとして誕生したので両親はいない。強いて言えば自分を生み出した精子と卵子を選んだ中央コンピュータ「ハレルヤ」が親。「大地編」では主人公として登場する予定だったようである。ロビタ26世紀、「復活編」にて主人公のレオナとチヒロが結ばれて誕生。臀部のベアリング(?)で滑るように動き(電子頭脳が大きくなりすぎてバランスが悪く、二足歩行を断念)、腕は2本指であり、構造は非常に単純。一方でレオナの記憶を受け継いだため、普通のロボットと違い人間臭い感情を持つ。稼動限界の後に業者が引き取って、その構造を模して記憶をコピーした物が量産される。技術の進歩によって、より精巧なロボットが造られても、ロビタはその人間臭い感情によって多くの人間に好まれ、数世紀にわたって量産されるが、その一方でロボットを人間の道具と考える人間にとっては極めて不快な存在でもあった。31世紀において、農場に迷い込んだ子どもを殺した罪(冤罪)で有罪の判決が下された際に、裁判官が個体ナンバーを特定できなかった為に、その時に農場で働いていたロビタ全員が溶解処置される。同胞をそのような形で失った世界中のロビタは集団自決を行い、稼動可能な物は全て溶鉱炉に身を投じる。月にいて集団自決に参加できず、エネルギー切れによる自決を選んだ最後の一体のロビタは、35世紀に猿田博士に救助され、「未来編」では猿田博士の助手として働く。牧村五郎「宇宙編」で登場するアストロノーツ(宇宙飛行士)。生まれた時からアストロノーツとなる事を宿命づけられ、外宇宙に地球由来の細菌を持ち込まないために、無菌室で成長する。初恋の女性に裏切られた事がトラウマとなり、女性に手が早くかつ冷淡である。その初恋の女性の幻に惑わされる形で異星人を虐殺し、その罪により火の鳥から永遠に生きる刑罰を受けている。「望郷編」において(おそらく刑罰を受ける前)、地球に帰郷する途中のロミと出会う。チヒロ精密機械局で作られた量産型の事務ロボット。2545号は「望郷編」にて地球に不法侵入したロミとコムを助け、61298号は「復活編」でレオナと出会い愛の感情を得る。チヒロ型の仲間は13,692,841体、ほかの型もあわせると世界に1,277,554,539体の仲間(おそらくロボットの総数)がいる。八百比丘尼「異形編」において無限に繰り返す時間に閉じ込められる。「太陽編」では、霊界の戦いで傷ついた妖怪の手当てを行う。自分で自分を殺すという宿命を負っている。

火の鳥の各編[]

黎明編(漫画少年版)[]

  • 初出:『漫画少年』(1954年7月号~1955年5月号)未完

エジプト編[]

  • 初出:『少女クラブ』(1956年5月号~1956年10月号)

天国で飼われていた火の鳥が、ある日脱出に成功し下界へと降り立つ。

ギリシャ編[]

  • 初出:『少女クラブ』(1956年11月号~1957年7月号)

エジプト編の続き。

ローマ編[]

  • 初出:『少女クラブ』(1957年8月号~1957年12月号)

ギリシャ編の続き。

黎明編[]

  • 初出:『COM』(1967年1月号~1967年11月号)

3世紀の日本。ヤマタイ国とクマソ国の争いを舞台に、ヒナクとナギの姉弟、ヒナクと結ばれるヤマタイの間者グズリ、防人の猿田彦たちの数奇な運命を描く。ヤマタイ国がクマソを攻略した裏には、老いた卑弥呼が火の鳥の生き血を欲していたという事情があった。大和朝廷の成立については江上波夫の騎馬民族説を採用している(本作品執筆時には話題になった説だが、現在ではほぼ否定されている。作品中でも邪馬台国と大和朝廷の風俗が似通っているなど、矛盾した描写も見られる)。

未来編[]

  • 初出:『COM』(1967年12月号~1968年9月号)

西暦3404年。地球は滅亡の淵にあり、地上に人間はおろか生物はほとんど住めなくなっていた。人間たちは地下都市“永遠の都”ことメガロポリスでコンピュータに自らの支配を委ねた。メガロポリス「ヤマト」と「レングード」の対立に端を発した戦争勃発で、あらゆる生物が死に絶える。独り生き残った山之辺マサトは火の鳥に地球復活の命を受ける。マサトは生物が絶滅してしまった地球で、再び生命が誕生し、進化を続けて再び人類が、人間が誕生する日まで見守り続けることを永い永い孤独の中で決意しなければならないことを悟った。ラストが黎明編へ繋がるような展開となっており、「火の鳥」全編の構成を示唆している。

ヤマト編[]

  • 初出:『COM』(1968年9月号~1969年2月号)

古墳時代の日本。クマソ国王の妹カジカと、ヤマト国の王子オグナの間に芽生えた許されざる愛の物語。オグナはヤマトタケル、クマソ国王はクマソタケルがモデル。『古事記』・『日本書紀』の日本武尊伝説と、日本書紀の垂仁紀にある殉死の風習廃止と埴輪にまつわるエピソードも下敷きにしている(埋められた殉死者のうめき声が数日にわたって聞こえたという元の伝承を、火の鳥の生き血の効果であるとし、期間も1年にわたっての事としている)。石舞台古墳造営にまつわるエピソードがあるが、史実ではもっと後代の古墳であり、殉死者が埋められているという事も無い。手塚治虫はあくまで『古事記』・『日本書紀』は伝説であって、実在の天皇家とは何も関係は無いとコメントしている。

宇宙編[]

  • 初出:『COM』(1969年3月号~1969年7月号)

西暦2577年。ベテルギウス第3惑星から地球へ向かう宇宙船は、操縦者である牧村五郎の自殺によって事故に逢う。生き残った乗務員は宇宙救命ボートで脱出する。だが、自殺したと思われた牧村五郎には、火の鳥もかかわる因縁めいた過去があった。乗務員間の切ない愛憎のドラマ。

鳳凰編[]

  • 初出:『COM』(1969年8月号~1970年9月号)

奈良時代。権力に翻弄される2人の仏師、茜丸と我王の宿命の戦いを吉備真備と橘諸兄による奈良東大寺の大仏建立を絡めて描く。火の鳥は我王に悪行のせいで子孫達が持つ事になる宿命を語り、怒りを奮起させる事で彼の腕をより上達させる。一方、悪党だった頃の我王に傷つけられた過去を逆手に取り、彼に罰を与えて都から追放する事で栄華を得た茜丸には、二度と人間には生まれ変われないという残酷な運命を彼の死の直前に告げる。苦しみに耐え続けながらも最後にはそれを肯定する我王、権力の庇護を得慢心に陥ってしまった茜丸の対比。人間の名誉と愛を望む醜さ、そして真の幸福とは何かと言った非常に深い題材を取り上げ、この「鳳凰編」を『火の鳥』全編中の最高傑作とみなす向きは非常に多い。ただし史実では橘諸兄によって重用されている吉備真備が、この作品では政敵として対立しているなど、史実の改変も多々見られる。K&Mにてフィギュア化されたのもこの話。

復活編[]

  • 初出:『COM』(1970年10月号~1971年9月号)

西暦2482年。科学の力で生き返ることが出来た主人公の少年レオナは、電子頭脳のために無機質なもの以外、生命体として認識できない(逆にロボットが人間に見えるようになったため、ロボットであるチヒロに恋心を抱いてしまう)。生命に細工を加えてしまった人間の罪と罰。主人公の事故死の背景には、アメリカにおいて主人公がフェニックス(火の鳥)の生き血を入手したという過去がからんでいる。

なお、レオナは頭の手術を受けたため一時的に坊主頭となっているが、NHKのテレビアニメ版では包帯を巻いただけの描写となっており、その点がぼかされていた。

羽衣編[]

  • 初出:『COM』(1971年10月号)

10世紀、三保の松原。天の羽衣の伝説を元に描いた小編。

全編が、舞台で演じられる芝居を客席から見たようなアングルで描かれたものになっている。非常に短い作品であるが、放射能障害についての表現についての問題や、作者の意向があり、1980年まで単行本化されなかった。本来は「望郷編(未完)」と関連する話であるが、1980年に単行本化される際、描き直された後は全く独立した話になっている[6]

望郷編(COM版)[]

  • 初出:『COM』(1971年12月号)・『COMコミックス』(1972年1月号)

城之内博士が育て上げた「第二の地球」で生活する少年コム。COMの休刊によって[7]、未完のまま中断される。放射能障害を描いたCOM版「羽衣編」を前提としているため、「羽衣編」改稿に伴い、構想を新たにした『マンガ少年』版「望郷編」が描かれ[8]、この版は未完のままで長く単行本に収録されることがなかった。

乱世編(COM版)[]

  • 初出:『COM』(1973年8月号)

後の「乱世編」の元となる話であるが、『COM』が再び休刊したことにともない連載中断している。弁太のキャラクターがスマートに描かれており、猿と子犬のエピソードは『マンガ少年』版に流用されている。

望郷編[]

  • 初出:『マンガ少年』(1976年9月号~1978年3月号)

八丈島のタナ婆伝説(あるいはそれと共通する西南太平洋各島の妊婦創世伝説)を下敷きとしている。エデン17という小さな星で子孫の繁栄のために健気に生きる地球人ロミ。老いた彼女は地球への望郷の想いを募らせる。『COM』版の「望郷編」(未完)との関連はほとんどなく、唯一、被爆した少年コムだけが、ムーピーと地球人との混血児という設定で再登場している。何度も描き直されており、雑誌掲載版、角川書店版、朝日ソノラマ版・講談社版では、内容が異なり、例えば、中盤以降登場する宇宙船に宇宙人が搭乗したり、地球に向かう途中に立ち寄る星に違うものがあったりする。

乱世編[]

  • 初出:『マンガ少年』(1978年4月号~1980年7月号)

平安末期。木こりの弁太(弁慶)と田舎娘おぶうは源平の抗争に巻き込まれ、すれ違いの運命を送っていく。源平の抗争や源頼朝・義経兄弟の相克には、火の鳥の争奪が関わっているという筋立て。弁慶伝説を下敷きとする。「鳳凰編」の我王のその後(義経の師匠鞍馬天狗になった)も語られる。実体化状態の火の鳥は本編では登場せず[9]、作中で火の鳥として登場するのは実は孔雀であった。何度も描き直されており、雑誌掲載版、角川書店版、朝日ソノラマ版・講談社版はかなり細部が異なる。英雄として名高い義経が、本作では目的の達成のためには何物をも犠牲にして憚らぬマキャベリストとして描かれる。[10]

生命編[]

  • 初出:『マンガ少年』(1980年8月号~1980年12月号)

西暦2155年。視聴率を上げようと焦るTVプロデューサー青居は、クローン人間による殺人番組を考案する。クローン技術の本場であるペルーに向かうが、ペルーがクローン技術の実用化に成功したのは、火の鳥の血を引く女性の影響があった。雑誌掲載版と朝日ソノラマ版以降では、エンディングがまったく異なる。

異形編[]

  • 初出:『マンガ少年』(1981年1月号~1981年4月号)

戦国の世。残虐非情の父を恨み、その復讐のため尼を殺した左近介に恐ろしい因果応報が巡ってくる。八百比丘尼伝説を下敷きにしている。

太陽編[]

  • 初出:『野性時代』(1986年1月号~1988年2月号)

千年の時代を隔てた2人の主人公により、2つの物語が並行して進行していく。白村江の戦いで新羅に敗れ、狼の顔を被せられた主人公、百済国王一族の少年ハリマは、飛鳥時代の日本に漂着して犬上宿禰(いぬがみのすくね)と名乗り、やがて壬申の乱に巻き込まれてゆく。一方、21世紀の日本は光一族に支配されており、地下世界(シャドー)に住むもう1人の主人公、坂東スグルは工作員として生きていた。

単行本化の際に連載版の未来側のストーリーが大幅に変更され、かなりのカットがなされている点である。連載版の未来側では火の鳥が登場したり、猿田が罰を受けるなどがあったりしたが、これが省略されている(古代側では火の鳥は傍観者に徹しており、その一方で未来において直接介入するのは行動が矛盾しており、それを整合させるためと思われる)。また、NHKのテレビアニメ版では未来側の物語が省略されている。

大地編(シノプシスのみ)[]

  • 初出 : 『月刊ニュータイプ5月号付録「手塚治虫MEMORIAL BOOK」』(角川書店/1989年刊行)、その他にも証言複数有り。

日中戦争時の上海を舞台に、関東軍の戦意高揚のため、中国大陸に伝説の仙鳥の探索を計画する。シノプシスには間久部緑郎(ロック)、猿田博士が登場。

後述のミュージカルによる『火の鳥』上演のための原作として、上記内容で新作描き下ろしを連載をする予定であったが、よりSF的な内容にとの希望があったためペンディングとなった。『野性時代』に1989年春から掲載されるはずだったとも言われるが[11]、手塚が病床に倒れたことから執筆されることは無かった。ただし、『野性時代』の編集部は『火の鳥』の続編ではなく『シュマリ』の続編を望んでいたという。

アトム(再生?)編(構想のみ)[]

  • 初出 : 連続ラジオ小説「火の鳥 乱世編」(NHKラジオ第1放送 1980年3月21日)、その他にも証言複数有り。

本編OA後に手塚治虫自身が21世紀が舞台であるので『鉄腕アトム』の外伝を描いてみたいと構想を語っている。具体的な構想があったわけではないが、断片的なアイデアとして、「アトムはロボットであり、不死の存在と言える。その魂は、最終的には、火の鳥に救われるのではないか」と言うことと、「意識していたわけではないのだが、お茶の水博士はその容貌からして、猿田の血を引いていると思う。彼はアトムの最期を見届けることになるだろう」と語っている。この構想の一部が2003年のゲーム「ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-」に生かされている。

現代(完結)編(構想のみ)[]

  • 初出 : 『ニュータイプ100%コレクション 火の鳥』(角川書店/1986年刊行)、その他にも証言複数有り。

角川春樹との対談の中で、手塚治虫自身が「現代編」の構想を語っている。手塚は「現代」というものの解釈を「自分の体から魂が離れる時」だとし、その時こそ「現代編」を描く時だとした。ほかに「1コマ」「ひとつの話」「火の鳥の終末になっていること」、と「現代編」の構想を語った。しかし、残念ながら「現代編」が描かれることはなかった。『ブラック・ジャック』の一編である「不死鳥」において、現代社会の中の「火の鳥」が描かれているが、手塚自身がこの作品を封印していたこともあり(「火の鳥」の「現代編」との兼ね合いを考えての措置だったと言われている)、「現代編」との関連は薄いと見るべきであろう。

休憩 INTERMISSION[]

  • 初出:『COM』(1971年11月号)

手塚自身が登場し、本作のテーマや完結時期、死生観等について語るエッセイ風の短編。ストーリー上の関連は無い。

火の鳥2772 愛のコスモゾーン[]

  • 初出:『マンガ少年』(1980年2月号~1980年4月号)

アニメ映画版については火の鳥2772を参照。御厨さと美によるコミカライズ。手塚治虫漫画全集で手塚治虫が描き下ろしで再漫画化する予定もあったが、実現しなかった。その後、太陽編完結後にも描き下ろしをする話があったという[12]

火の鳥で描かれる歴史上の人物・出来事[]

黎明編(神話上の人物・出来事)

  • イザナギ
  • 邪馬台国
  • 卑弥呼(→アマテラス)
  • スサノオ
  • サルタヒコ
  • ウズメ
  • ニニギ
  • 天岩戸
  • 魏志倭人伝

ヤマト編

  • ヤマトタケル
  • クマソタケル
  • ヤマト大王(おおきみ)
  • 石舞台古墳

鳳凰編

  • 良弁僧正
  • 橘諸兄
  • 吉備真備
  • 奈良の大仏
  • ダイダラボッチ-我王

羽衣編

  • 三保の松原
  • 平将門の乱(承平天慶の乱)

乱世編

  • 鞍馬天狗
  • 弁慶
  • 平清盛
  • 源頼朝
  • 源義経(牛若丸)
  • 木曽義仲
  • 手塚太郎光盛
  • 壇ノ浦の戦い
  • 鳥獣戯画
  • 鹿ヶ谷の陰謀

異形編

  • 人魚#八百比丘尼
  • 応仁の乱
  • 画図百鬼夜行

太陽編

  • 扶余豊璋
  • 阿倍比羅夫
  • 天智天皇
  • 大海人皇子
  • 大友皇子
  • 壬申の乱

他のメディア[]

一連の作品の一部はラジオドラマ化、アニメ化、テレビゲーム化、または実写映画化された。

ラジオ[]

  • 連続ラジオ小説「火の鳥 黎明編」(NHKラジオ第1放送 1977年3月21日~3月28日)
出演:羽佐間道夫、沢たまき
  • 連続ラジオ小説「火の鳥 未来編」(NHKラジオ第1放送 1977年3月29日~4月2日)
出演:風間杜夫、高木均、沢たまき
  • 連続ラジオ小説「火の鳥 鳳凰編」(NHKラジオ第1放送 1978年1月4日~1月15日)
出演:ささきいさお、石田太郎、萩尾みどり、米倉斉加年
  • 連続ラジオ小説「火の鳥 乱世編」(NHKラジオ第1放送 1980年3月3日~3月21日)
出演:東野英心、岸田森、森山周一郎
  • 「火の鳥 生命編」(ニッポン放送 1987年1月1日 手塚治虫のオールナイトニッポンスペシャル内ミニドラマ)
出演:小泉今日子
  • オーディオドラマ「火の鳥 永遠の生命」(文化放送 1999年10月~2000年3月)
出演:土井美加

テレビアニメ[]

2004年には手塚プロダクションの制作により、NHK-BSハイビジョン(総合テレビ)にて新作のアニメが放送された。火の鳥を演じた竹下景子はアニメ映画「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」以来24年ぶりの火の鳥での出演である。放送エピソードは「黎明編」・「復活編」・「異形編」・「太陽編」・「未来編」。また、2005年元旦にBSハイビジョンで全編が再放送された。2005年4月からは総合テレビのミッドナイトチャンネル内で土曜深夜0:50~1:15に放送された。なお、このアニメは16:9のハイビジョン制作である。

  • キャスト
    • 火の鳥:竹下景子
    • ナレーション:久米明
    • 黎明編
      • ナギ:竹内順子
      • 天の弓彦:寺杣昌紀
      • ヒミコ:来宮良子
      • スサノオ:津田英三
      • グズリ:中尾みち雄
      • ヒナク:玉川紗己子
      • 族長:大塚明夫
      • ウズメ:中谷ゆみ
      • 侍従:辻村真人
      • カマムシ:飯塚昭三
      • ウラジ:屋良有作
      • おばば:瀬畑奈津子
      • おじじ:依田英助
      • 呪術師:宮田光
      • 長老:西川幾雄
      • 原人:幸田昌明
      • 将軍:坂口候一
      • 使者:上田陽司
      • 側近:服巻浩司
      • 側近:小谷津央典
      • 兵士:服巻浩司
      • 兵士:小谷津央典
      • 農夫:宮田光
      • 農民:土屋利秀
      • 男:最上嗣生
      • 女:茂呂田かおる
      • 老婆:定岡小百合
      • 母:平辻朝子
      • 声:近藤孝行
      • 少年:久保田恵
      • 少年:佐藤ゆうこ
      • 少女:中川亜紀子
      • 赤ん坊:樋口あかり
      • 村長:麻生智久
      • 村長:長嶝高士
      • 村人:上田陽司
      • 村人:松本大
      • 村人:保村真
      • 職員:岩尾万太郎
      • 職員:麻生智久
      • 職員:田中完
      • 侍女:出口佳代
      • 侍女:中川亜紀子
      • 兵:近藤孝行
      • 兵:松本大
      • 兵:木村雅史
      • 兵:長嶝高士
      • 兵:小谷津央典
    • 未来編
      • 山之辺マサト:浪川大輔(青年期)、阪脩(老年期)
      • タマミ:冬馬由美
      • ロック:桐本琢也
      • 猿田博士:小村哲生
      • ロビタ:牛山茂
      • アダム:水島大宙
      • フィメール:夏樹リオ
    • 太陽編
      • 犬上宿禰(ハリマ、クチイヌ):松本保典
      • おばば:巴菁子
      • ルベツ:菅生隆之
      • マリモ:内川藍維
      • 大海人皇子:内田直哉
      • 大王天智:池田勝
      • 大友皇子:神谷浩史
      • 大后:小金澤篤子
      • 法弁:大木民夫
      • 蘇我果安:藤本譲
      • 韓国:渡部猛
      • 高市皇子:野島健児
      • 月壇:江川央生
      • 火壇:楠見尚己
      • 日壇:岩崎ひろし
      • 木壇:廣田行生
      • 伊吹丸:郷里大輔
    • 異形編
      • 左近介:浅野まゆみ
      • 八百比丘尼:久保田民絵
      • 可平:島田敏
      • 家老:岸野一彦
    • 復活編
      • レオナ:佐々木望、高木礼子(子供時代)
      • レイコ:大坂史子
      • ニールセン:小川真司
      • ランプ:広瀬正志
      • チヒロ:小林美佐
      • レオナの父:岩尾万太郎

映画(実写版)[]

『火の鳥』1978年8月19日公開/製作=東宝・火の鳥プロダクション/140分
  • スタッフ
    • 監督:市川崑
    • 脚本:谷川俊太郎
    • アニメーション総指揮:手塚治虫
    • 特技監督:中野昭慶
    • 音楽:深町純
    • 衣裳:コシノジュンコ
  • キャスト
    • 猿田彦:若山富三郎
    • ナギ:尾美としのり
    • ヒミコ:高峰三枝子
    • スサノオ:江守徹
    • イヨ:草笛光子
    • ヒナク:大原麗子
    • グズリ:林隆三
    • カマムシ:加藤武
    • タケル:田中健
    • まじない師:伴淳三郎
    • スクネ:大滝秀治
    • オロ:風吹ジュン
    • ウラジ:沖雅也
    • マツロ王:潮哲也
    • ヤマタイ国親衛隊長:小林昭二
    • 女官サヨ:木原光知子
    • 女官ヌサ:ピーター
    • 女官シメ:カルーセル麻紀
    • 丹古母鬼馬二
    • 天弓彦:草刈正雄
    • ウズメ:由美かおる
    • ジンギ:仲代達矢

映画(アニメ版)[]

『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』1980年公開『火の鳥・鳳凰編』1986年公開

火の鳥 鳳凰編

監督

脚本

高屋敷英夫
金春智子

製作

りんたろう
丸山正雄
岩瀬安輝

製作総指揮

出演者

堀勝之祐
池田昌子

音楽

石川光
宮下富実夫

主題歌

渡辺典子

撮影

石川欽一

編集

尾形治敏

配給

公開

日本の旗1986年12月20日

上映時間

60分

製作国

日本

言語

日本語


  • 声の出演
    • 火の鳥:池田昌子
    • 我王:堀勝之祐
    • 茜丸:古川登志夫
    • ブチ:小山茉美
    • 速魚:麻上洋子
    • 吉備真備:大塚周夫
    • ナレーション:城達也
    • その他(役名表示なし):塩沢兼人、田中和実、屋良有作、松井摩味、池水通洋、平野正人、田中康郎、柳沢三千代

OVA[]

  • 「火の鳥・ヤマト編」(1987年)
    • 声の出演
      • 火の鳥:池田昌子
      • オグナ:井上和彦
      • カジカ:鶴ひろみ
      • 川上タケル:屋良有作
      • イマリ:塩屋浩三
      • 第一王子:徳丸完
      • ヤマトの王:岸野一彦
  • 「火の鳥・宇宙編」(1987年)
    • 声の出演
      • 火の鳥:池田昌子
      • 猿田:堀勝之祐
      • 牧村:神谷明
      • ナナ:戸田恵子
      • 城之内:玄田哲章
      • 奇崎:塩沢兼人
      • 隊員:大倉正章

舞台[]

  • 青二プロシンフォニックドラマ『火の鳥-黎明編』(1979年)
  • オペラ『火の鳥-黎明編』(1985年) 青島広志作曲
  • オペラ『火の鳥-ヤマト編』(1985年) 青島広志作曲
  • ミュージカル『火の鳥』(1989年)。
スペース・ゼロ開館記念として杮落とし公演。出演:沖田浩之、五十嵐いづみ、隆大介、岡本舞、湯浅実、木ノ葉のこ
  • 宝塚歌劇花組公演『火の鳥』(1994年)
宝塚市立手塚治虫記念館開館記念公演。
  • 松竹音楽劇『火の鳥』(1994年)
出演:岡本健一、藤真利子、赤坂晃、つみきみほ、笹野高史
  • ABCミュージカル『火の鳥』(2000年)。演出:マキノノゾミ、音楽:財津和夫
出演:萩原流行、牧瀬里穂、村井国夫、鈴木綜馬、庄野真代
  • 音楽劇『NINAGAWA火の鳥』(2000年)
さいたまスーパーアリーナ開館記念として杮落し公演。脚本:横内謙介、演出:蜷川幸雄出演:今井絵理子、MAKOTO、いかりや長介、手塚千以子
  • 民話芸術座『火の鳥・羽衣編』(2004年)
  • 創作舞踊劇場公演『火の鳥 転生編~炎のむこうにあなたがいた~』(2004年)
  • わらび座ミュージカル『火の鳥 鳳凰編』(2008年)。演出:栗山民也、脚本:齋藤雅文、音楽:甲斐正人、美術:妹尾河童
出演:パク・トンハ、戎本みろ

TVゲーム[]

  • 火の鳥 鳳凰編 我王の冒険(ファミリーコンピュータ、コナミ、1987年)
  • 火の鳥 鳳凰編(MSX2、コナミ、1987年)

その他[]

  • 鈴木英史による吹奏楽曲「鳳凰~仁愛鳥譜」は、鈴木のお気に入りである「未来編」のイメージで作曲されたものである。
  • テレビアニメ『アストロボーイ・鉄腕アトム』(2003-2004年)にゲストキャラクターとして登場している(手塚作品のスター・システムの一環である)。声優はNHKのTVアニメ版と同じ竹下景子である。
  • TV番組『水曜どうでしょう』において、「中米・コスタリカで幻の鳥を激写する!」(2001年)の冒頭、旅の主目的であるケツァールが火の鳥のモデルであると語られている。
  • イギリスのアンビエント・テクノ・バンドのシステム7が、シングル「Hinotori」を含むアルバム『Phoenix』を2007年に発表。これは、手塚治虫の長女・手塚るみ子の呼びかけによるもの。『火の鳥』の内容に触発されて制作された。
  • 阪神・淡路大震災復興活動のシンボルマークとして使われていた。これは悦子夫人が兵庫県に「火の鳥」のイラスト使用権を10年間無償提供した事による。

脚注[]

  1. 雑誌「マンガ少年」連載時の望郷編の扉絵には既に『手塚治虫のライフワーク』と銘打たれていた。
  2. 2.02.1 角川書店ニュータイプ100%コレクション 火の鳥 1986年刊行
  3. 株式会社金の星社「手塚治虫物語―アニメの夢1960~1989 」2009年、P.156
  4. 1989年の2月8日報知新聞 1989年2月10日「ミュージカル火の鳥追悼公演」
  5. 元々醜い顔で、さらに鼻が大きくなった(猿田彦、八百八百比丘尼の父)。元よりそのような顔と鼻(猿田博士)。病で醜くなると同時に鼻も大きくなる(我王)。元より鼻は大きく、さらに醜くなる(宇宙編の猿田)。鼻が大きいだけでそれ以外は醜くはない(生命編/太陽編の猿田)など、作品ごとで異なる。鼻が大きい理由も、猿田彦は蜂によるもの、八百八百比丘尼の父は鼻癌であるが、それ以外は原因不明。
  6. マンガ作品紹介 火の鳥望郷編 手塚治虫ワールド
  7. 中野晴行『そうだったのか手塚治虫』祥伝社、2005年、p169
  8. マンガ作品紹介 火の鳥望郷編 手塚治虫ワールド
  9. 講談社版では義経と清盛が白兵衛と赤兵衛に生まれ変わる際に数ページだけ登場。
  10. なお、作中で義経が行う非道な行為には、平家物語や義経記に扱われているものも多い。(たとえば一の谷の戦いの際に民家に火を放った件や、壇ノ浦の戦いの際に非戦闘員である船の漕ぎ手を射た件)。
  11. 中野晴行『そうだったのか手塚治虫』祥伝社、2005年、p176
  12. 森晴路「手塚マンガあれこれ」『まんだらけ16』まんだらけ出版部、1997年

外部リンク[]

  • 火の鳥公式サイト
  • NHKアニメワールド

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