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『座頭市』(ざとういち)は、盲目のやくざである座頭市が諸国を旅して悪人を斬るアクション時代劇である。1962年より何度も映画・テレビ番組・舞台が作られた。勝新太郎の代名詞とも言うべき作品として知られる。
原作者は子母沢寛。子母沢は江戸時代に活躍した房総地方の侠客を取材するべく当地を旅した際に、盲目の侠客座頭の市に興味を覚え、彼について原稿用紙にして十数枚に書き記した。これが『座頭市』の原作となった訳だが、子母沢は、市についてこの十数枚しか書き記しておらず、現在巷間に伝えられる座頭市の人となりは、大部分が勝新太郎主演で座頭市の物語が製作された時に作られたものである。また、原作の長ドスを仕込み杖としたのも勝である。
平手造酒との甘えのない男同士の友情を底流とする1作目『座頭市物語』は三隅監督の作品となっているが、5作目以降は宿命を負わずニヒリズムも拒否した、ある種の「諦観」が勝の味となっている。
勝の主演での劇場版最大のヒット作は1970年の『座頭市と用心棒』。それまで大スターの共演はなかった座頭市シリーズだが、この作品には世界の三船敏郎と若尾文子が出演している。黒澤明の『用心棒』『椿三十郎』で好演した三船敏郎演じる用心棒と、勝新太郎の座頭市とが、敵味方に対峙して出演。当初、三船敏郎は友情出演程度のオファーであったと思っており、本当に対決するとは思わず、タイトルに「用心棒」と入っていた事に大変驚いたという。当時は「時代劇ビッグスター・頂上対決」として、大きな話題となった。
絶大な人気を勝ち得た理由は、瞬速の居合い斬り・大立ち回りにあるといっても過言ではない。仕込み杖・逆手刀殺法・盲目といった、特殊条件下による殺陣は、やはり特殊な風格を生み出す。また、このような殺陣を実現するには、かなりの武道の技量が必要となり、その技がより一層リアリティを引き立てている。目にも止まらない早業で敵を切り倒す座頭市のアクションと、シンプルにして人情悲喜劇としての要点もおさえたストーリー、そして豪華な演者達は多くの者を魅了してやまない。
1960年代の映画シリーズの音楽の殆どは伊福部昭が担当した。伊福部のダイナミズムと繊細さを巧みに使い分けた音楽は、勝が演じる座頭市の殺陣の迫力と人情味というキャラクターをそのまま投影している。
1989年には座頭市をベトナム帰還兵に置き換えたルトガー・ハウアー主演の『ブラインド・フューリー』(『座頭市血煙り街道』がベース)が制作された。
1989年には勝新太郎の監督による『座頭市』が公開された。それまでのシリーズの名場面を盛り込んだだけものであるとの批判も一部にあったが、衰えないアクションにファンは喝采を浴びせた。しかし、立ち回りの撮影中に真剣が出演者の頸部に刺さり、頸動脈切断で死亡事故が起きたり、公開翌年には勝新太郎が逮捕されるなどして、映画(および勝)の周辺にはトラブルが絶えなかった。『座頭市2』の企画がしばしば話題に出ることがあったものの、勝の逮捕が影響してか新作企画はいずれも頓挫したようであり、本作が勝新太郎による最後の制作映画となった。
勝新太郎の没後、中国・香港の「武侠映画」ブームに乗って、日本でも2003年に北野武が『座頭市』を監督、自ら座頭市を演じた。北野は同作でヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞する。
2007年には三池崇史演出、哀川翔主演により舞台版「座頭市」が制作され、12月3日からの東京・新宿コマ劇場を皮切りに、大阪・梅田芸術劇場、愛知厚生年金会館の三都市にて上演された。
2007年3月、ニューギン社より発売のパチンコ台「CR泉谷しげるの座頭市物語」の中では泉谷しげるが座頭市に扮しヒロイン・おたね役の宮地真緒と共演した。
(参考:座頭市の世界)
※いずれもフジテレビ系列で放映された。
2007年、座頭市物語から第3シリーズまでの全作品がそれぞれDVD-BOXで発売決定している。
1992年篠山紀信撮影による勝新太郎演じる座頭市のグラビアが週刊現代に掲載された。太地喜和子や勝の父である杵屋勝東治などらも参加したフォトセッションであり、中には東京都庁をバックに撮影されたものも含まれている。このときの作品数点は、篠山の2000年に発表された写真集『アイドル』に収められている。
勝新太郎主演の座頭市は、海外でも高い評価を得た。後に、勝がハワイで、パンツの中にコカインを入れて逮捕された時には、国外退去処分が決まるまでの間、マスコミ等から逃れるために、座頭市を捩った、サトイチと名乗って、雲隠れしていたといわれる。
子母澤寛の原作についてはさまざまな噂があった。ある者は、原作が「盲目で居合い抜きの名人やくざがいた」という1行だけのものであったと唱え、この噂は三隅研二はじめ映画制作スタッフを賞賛するエピソードとして広がった。
しかし、子母澤寛の随筆集『ふところ手帖』(中公文庫 ISBN 4122002435)の中に短編小説「座頭市物語」が収録されていることから、「1行だけ」という噂は誤りとされている。「座頭市物語」は、中公文庫版では10ページの掌編小説である。ただし、映画制作にあたって提供されたのは掌編小説「座頭市物語」そのものだったのか、それ以外のなんらかのスクリプトが提供されたのかなど、わからないことが多い。
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