座頭市_(2003年の映画)

ページ名:座頭市_(2003年の映画)

座頭市

監督

北野武

脚本

北野武

製作

森昌行
斎藤恒久

出演者

ビートたけし
浅野忠信

音楽

鈴木慶一

撮影

柳島克己

編集

北野武
太田義則

配給

オフィス北野/松竹

公開

2003年9月6日 日本の旗

上映時間

115分

製作国

日本

言語

日本語

興行収入

28億5000万円

『座頭市』(ざとういち、ZATOICHI)は、北野武監督、ビートたけし主演の2003年制作の日本映画である。謎の盲目のやくざ・市(いち)の活躍を描いた時代劇である。上映時間は115分。劇場公開は2003年9月6日。第28回トロント国際映画祭ピープルズ・チョイス・アウォード、第36回シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリ受賞。興行収入28.5億円。

目次

概要[]

勝新太郎の代表作として高名な人気時代劇『座頭市』を題材にした、北野の監督映画で初の時代劇で初の娯楽映画である。主人公の市は金髪である。「なぜ金髪なのか」と疑問視する意見もあったが、極めて斬新な設定で従来の市のイメージを大胆に塗り替え、北野独自の市の確立に成功した。北野は「『キル・ビル』(『キル・ビル Vol.1』)も『ラストサムライ』も全くの偽物。本作こそ正真正銘の本物」と皮肉交じりに自負した。それでも「勝さんは超えられない」と謙遜していた。公開時のキャッチコピーは「最強。」。

観客動員数は国内で200万人で北野映画に於いて最大のヒット作となった。これまでの北野映画は評価は高かったがヒットはせず、一般的に知名度は低かった。それに対し本作は絵に描いた様な無敵の侍が登場する正統的な時代劇で、勧善懲悪のシンプルで分かりやすい話であり、北野映画のファン以外の人からも熱く支持された。北野自身、或る知人から初めて映画を絶賛されたと吐露している。また、本作製作の動機としても、自らを料理人になぞらえ「あんた、うまいんだかまずいんだかわかんないようなもんばっかり作ってるけど、うまい親子丼とか作れんの?」と思っている人達に対する「じゃあ親子丼作ってやろうじゃないの」という思いがあったと語っている。

農民が鍬で畑を耕す音や田を足で慣らす音、大工が家を建てる音等にリズムをつけて、独特の面白い音楽を演出している。終局の祭りでは大人数で下駄を履いてタップダンスを披露する。ミュージカル的要素も含まれた映画となった。これは黒澤明監督作品「隠し砦の三悪人」の終盤シーン“山名の火祭り”へのオマージュであると考えるのが妥当であろう。

北野は劇場公開時に「今後は『一心太助』、『笛吹童子』、『鞍馬天狗』、『ターミネーター対座頭市』も監督する」と冗談とも本気ともとれる発言をしていた。同時に「次はいつも以上に分かりにくい難解な映画を作る」と野心的な発言もしていた。次回作『TAKESHIS'』は宣言通りに難解で、大衆的な本作とは完全に違う性質の映画となった。

なお、この映画は公開当時、R-15指定だった。(地上波でのテレビ放映時は、放送コードに抵触した一部のシーンやセリフがカットされている。WOWOWではR-15指定とし、そのまま放送)ただしビデオおよびDVDは15歳未満でもレンタルできる。

出演者[]

  • ビートたけし(市)
  • 浅野忠信(浪人の服部源之助)
  • 夏川結衣(服部の妻)
  • 大楠道代(おうめ)
  • 大家由祐子(芸者姉妹の姉のおきぬ)
  • 橘大五郎(芸者姉妹の妹のおせい・本当は弟、清太郎)
  • ガダルカナル・タカ(おうめの甥の新吉)
  • 岸部一徳(銀蔵一家宗家の銀蔵)
  • 石倉三郎(扇屋)
  • 柄本明(居酒屋の的屋の主人)
  • 樋浦勉(的屋の老人)
  • 六平直政(冒頭で市に絡むやくざ)
  • つまみ枝豆(的屋の客)
  • 芦川誠(的屋の客)
  • THE STRiPES(農民)
  • 三浦浩一(大名)
  • 津田寛治(おせいから買春した男)
  • 吉田絢乃(おきぬ 子供時代)
  • 早乙女太一(おせい 子供時代)
  • 國本鍾建(山路伊三郎)

物語[]

盲目のやくざ・市が或る宿場町に到着した。その町はやくざの銀蔵一家に支配され、人々は苦しい生活をしいられていた。ここで市は、幼少時に両親を何者かに殺害され親の仇を探して旅をしている芸者の姉妹と出会う。脱藩して職を失った浪人もこの町にたどりつき、剣術の腕を買われて銀蔵一家の用心棒を勤める。とある飯屋で市と浪人は出会い、互いに相手の剣術の凄さを見抜くのだった。市は賭場で遊び人の新吉と出会い、それが縁で新吉の叔母・おうめの家にやっかいになる。ある日市は賭場の博打のイカサマを見抜いたことから、やくざと大殺陣を演じてしまう。

やがて姉妹の親の仇が銀蔵一家だと判明した。姉妹は復讐を遂げるために銀蔵の家に乗り込む。

従来の北野映画との差異[]

本作は従来の北野映画と比較すると差異が目立つ。

  • 台詞の量が異なる。北野映画は台詞が非常に少ない。主役すらほとんど喋らず常に寡黙である(例として『HANA-BI』の夫婦、『Dolls』の恋人の二人)。ナレーションもモノローグも無く説明を極端に省いているため、慣れないとかなり分かり辛い。それに対し本作は登場人物の台詞が多い。おうめが姉妹の親の仇を推理する場面や、家の建築を見守るおうめ達の会話等は過度に説明口調である。
  • 暴力の表現が異なる。北野映画は暴力描写が多い。それは決して痛快でも派手でもない、冷酷で北野独特の表現である(例として『HANA-BI』の駅内での犯人銃殺、『Dolls』のやくざの事務所での抗争)。それに対し本作は市の雨降りの決闘、浪人の原っぱの決闘、やくざの家での決戦は次々に敵を倒していき、豪快で派手な見せ場となっている。また、コメディアン・コメンテーター・監督というイメージが強かった北野自身が、迫力あふれる殺陣を自ら演じたことは、ファンにとっては嬉しい驚きであった。(殺陣の相手は、「監督がどんどん本気になっていくうちに、逆手抜きの刃の刃風が顔に当たるほどの勢いで、怖かった」と発言している)
  • 音楽監督が異なる。北野映画は第3作『あの夏、いちばん静かな海』から前作『Dolls』に至る7作品を、一貫して久石譲が音楽を務めてきた。北野映画と久石の音楽は一体化していたとも言える。それに対し本作はムーンライダーズ以降はTVCMの活動がメインであった鈴木慶一が音楽を担当した。「なぜ久石ではないのか」と不思議に思った人は少なくなかった。

市の正体[]

市は身元も年齢も全く不明である。やくざの親玉のみが「座頭市」とのあだ名を知っていて、冒頭で叫んだのみ。後は「按摩さん」としか呼ばれていなかった事から、知る人が限られた謎の存在であることがわかる。蓮實重彦は市を異星人と位置づけている([1])。

スタッフ[]

  • 監督、脚本: 北野武
  • 原作: 子母沢寛
  • 企画: 斎藤智恵子
  • 編集: 北野武、太田義則
  • 撮影: 柳島克己
  • 音楽: 鈴木慶一
  • 美術: 磯田典宏
  • 衣装: 黒沢和子
  • 衣装監修: 山本耀司
  • 助監督: 松川嵩史
  • タップダンス指導: THE STRiPES
  • 特殊メイク:藤原鶴声
  • プロデューサー: 森昌行、斎藤恒久
  • 配給: 松竹、オフィス北野
  • 制作: バンダイビジュアル、TOKYO FM、電通、テレビ朝日、斎藤エンターテイメント、オフィス北野

受賞[]

  • 第36回シッチェス・カタロニア国際映画祭
    • グランプリ(最優秀作品賞)
    • 最優秀映画音楽賞(鈴木慶一)
    • 観客賞
  • 第60回ヴェネチア国際映画祭
    • 監督賞(銀獅子賞)、オープン2003賞、観客賞
    • フューチャー・フィルム・フェスティバル・ディジタル・アウォード
  • 第28回トロント国際映画祭ピープルズ・チョイス・アウォード
  • 第16回日刊スポーツ映画大賞監督賞
  • 第13回東京スポーツ映画大賞
    • 作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞(岸部一徳)、助演女優賞(大楠道代)、振付賞(THE STRIPES)
  • 第27回日本アカデミー賞
    • 優秀作品賞、優秀助演男優賞(浅野忠信)、優秀助演女優賞(大楠道代)、最優秀音楽賞、最優秀撮影賞、最優秀照明賞、最優秀録音賞、最優秀編集賞、優秀美術賞

補足[]

北野は以前、自身のコント番組で座頭市のパロディをやったことがある。また、映画『みんな~やってるか!』内でも主人公役のダンカンが『座頭市』のパロディをしている。

1992年、勝新太郎と北野は文芸春秋誌上で対談を行う。その中で勝は北野に座頭市のワンシーンのイメージを語った。〜 怪しげな煙の中で足をバタバタさせながら握り飯を喰う百姓、そこに現れる市、やがて追っ手の足音が聞こえ百姓の足音と重なり一つのリズムとなる。市は踊りだし旅人風の追手と殺陣を繰り広げる 〜 「たけし。百姓か、旅人姿か、どっちかで出るかい?」

外部リンク[]

  • 座頭市:ZATOICHI(公式)


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