病院坂の首縊りの家

ページ名:病院坂の首縊りの家

テンプレート:文学『病院坂の首縊りの家』(びょういんざかのくびくくりのいえ)は推理小説家横溝正史の執筆した長編推理小説(『野性時代』1975年~1977年連載)、およびそれを原作にした映像作品。2006年1月現在で映画とテレビドラマが1作品ずつある。「金田一耕助最後の事件」として知られる。

テンプレート:ネタバレ

目次

ストーリー[]

原作版[]

昭和28年。港区高輪に所在する本條写真館の長男・直吉はある晩、廃墟で撮影するという奇妙な結婚記念写真の撮影を依頼される。廃墟での撮影に不安を感じた直吉は金田一耕助に調査を依頼する。そして数日後、再び撮影の依頼を受け旧法眼邸を訪れた直吉は、そこで男の生首を発見した。

事件は迷宮入りし、発生から20年後の昭和48年。金田一耕助は、警視庁を定年退職し秘密探偵事務所を開設した等々力大志の元を訪れる。事件に関連して本條直吉が何者かに命を狙われているという話があり、金田一は、等々力とともに直吉の身辺警護にあたるが、その矢先、直吉は殺されてしまう。

金田一耕助をもってしても解決までに20年を要した、金田一最後の事件で、最後に金田一は全財産を寄付し、米国に姿を消す。この事件の解決をもって、金田一は消息不明となる。

映画版[]

ある日、吉野市の先生(横溝正史)の所へ名探偵金田一耕助(石坂浩二)が訪ねてくる。そこで金田一はしばらく旅に出るつもりである事を告げる(劇中、横溝正史が「この人は名探偵でね」と言えば「そう言えばおじさまの小説の中の探偵さんみたいね」といった、現実と虚構が入り混じる場面がある)。

パスポートの写真を撮る為に、先生が薦める写真館へ赴く金田一。そこから事件が始まる。

写真館を訪れた金田一にその写真館の主人・本條徳兵衛(小沢栄太郎)は殺されそうになったので調査して欲しいと依頼する。金田一が写真を撮ったその日、美しい女性(桜田淳子)が写真館を訪れる。その女性は「結婚写真を撮りたいのである場所に夜来て欲しい」と告げ、消えて行った。そのある場所とは他に正式な名前がありながらある時から「病院坂」と呼ばれる様になった場所にある誰もが空き家と考えていた家であった。

その日の夜、男(あおい輝彦)が写真館を訪れその廃屋とも呼べる場所で写真を撮る。そして写真が出来上がる日、廃屋を再び訪れた写真屋の若主人・直吉(清水紘治)は風鈴のように吊り下げられたその男の生首を発見する事となる。

警察では捜査本部が設けられ、等々力(とどろき)警部(加藤武)の指揮のもと捜査が開始される。写真に写り、殺されていた男は山内敏男でジャズバンドのメンバーであった。そのバンドメンバーとして妹の小雪(桜田淳子)、吉沢(池畑慎之介)などの名前が浮かんでくる。等々力警部の捜査が続く中、写真館の主人本條、バンドメンバーの吉沢などが殺されていく。自分に調査を依頼していた本條の死を聞いた金田一は呆然とする。写真館で下働きをしていた黙太郎(草刈正雄)の協力の下に金田一の推理は少しずつ繋がりはじめていく……。

そこで浮かんできたのは、昔ながらの風習と人の業によって苦しめられた、様々な人達の悲しい人生であった。

殺された法眼家の娘由香利と山内敏男の妹小雪が瓜二つ(桜田淳子の2役)だと言うトリックやその2人の出生の秘密などの謎が絡み合い、そして物語は悲劇的結末へと向かっていく。

解説[]

「病院横町の首縊りの家」という題で書かれた短編作品が元となっている。物語は2部構成になっており、生首風鈴事件が発生し、迷宮入りになるまでが第1部(角川文庫版・上巻)、20年後、新たに連続殺人事件が発生し全てが解決するまでが第2部(角川文庫版・下巻)となっている。

市川崑監督による、石坂浩二が金田一耕助を演じる映画版シリーズでは第5作目で、シリーズ最終章となっている。

原作の舞台は東京・高輪であるが、映画版では舞台を奈良県吉野に移しているほか、原作のように一旦迷宮入りはせず、事件発生から解決までが滑らかに流れるように物語が改められている。

出演者のうち、小林昭二・草笛光子・三木のり平は石坂・加藤と共にシリーズ連続出演を達成。ヒロインを演じた桜田淳子はアイドル歌手としてのデビューから7年を経ていたが、本作では充実した演技を見せている。

エピソード[]

原作の舞台は東京都港区の高輪であるが、原作内の「病院坂」の描写に正確に符合する坂道が実際にある。高松宮邸のすぐ脇、魚籃坂下方向へ向かって下る急な坂道で、原作における付近の建物(作中では高松宮邸は名こそ明記がないが、門の位置などが符合)及び路地の描写、近隣の交番(高輪二丁目交番)の位置などが正確で、横溝が当地を取材した状況が伺える。この坂道には特段の名称はないが、付近住民にとっては、坂下に所在するスーパーマーケット「ピーコック」の名をとって「ピーコック坂」の名が定着している。映画版では東宝が「病院坂」の“坂のロケ地”を募集したが、最終的に東宝から10分位の場所にある「病院坂」(としてはうってつけの坂)をロケ地に決定した。

一方、「病院坂」の名称は、劇中で病院の由来にちなんだ設定が登場しているものの、東京・世田谷区成城の、原作者・横溝正史の自宅から徒歩で10分程度のところに、実際に「病院坂」と呼ばれる坂が存在する。位置的には区立砧中学校の裏手であり、付近住民であれば「病院坂」の名で通るくらい浸透している。ところがこの地には現在もかつても病院が存在したことがなく、その名前の由来については諸説あって、現地に長く暮らす住民でも首を傾げるのが実情である。地元では、横溝正史はこの「病院坂の首傾げ」から「病院坂の首縊り」という題名を発想したのではないか、という説もあるぐらいテンプレート:要出典である。

家系図[]

      法眼       五十嵐     ┬琢磨┬       剛蔵     │  │ _宮坂   │ 桜井  │  │/ すみ ┌─┴─┐ 健一┬千鶴 鉄馬──┬──朝子  猛蔵┬千鶴(戦死)│       │        │(再婚)   弥生      │      ┌─┴─┐    佐藤    [宮坂]    [桜井]  │    田辺┬山内─冬子┬……… 琢也 ──┬──弥生  泰蔵─┬─光枝│     │  [吉沢]   │         │敏男    小雪  三郎─┬─万里子       透┬…        (婿養子) │            │             │            │            由香利           滋[]内は旧姓映画版では三郎・万里子・透が省略されている。

映像化リスト[]

映画[]

病院坂の首縊りの家 (1979年、東宝 監督:市川崑)出演:石坂浩二(金田一)、佐久間良子(法眼弥生)、桜田淳子(法眼由香利・山内小雪)、菊地勇一(法眼琢也)、入江たか子(五十嵐千鶴)、三条美紀(田辺光枝)、河原裕昌(五十嵐滋)、萩尾みどり(山内冬子)、小林昭二(三之助)、あおい輝彦(山内敏男)、久富惟晴(五十嵐猛蔵)、ピーター(吉沢平次)、林ゆたか(佐川哲)、早田文次(秋山武彦)、山本伸吾(原田雅美)、小沢栄太郎(本條徳兵衛)、清水紘治(本條直吉)、草笛光子(雨宮じゅん)、白石加代子(宮坂すみ)、三谷昇(石切鑑識課員)、常田富士男(権堂)、三木のり平(野呂十次)、横溝正史(推理作家)、草刈正雄(日夏黙太郎)、加藤武(等々力警部)、岡本信人(阪東刑事)、大滝秀治(加納巡査)、中井貴恵(妙ちゃん)、林一夫(花園大尉)、他。

テレビドラマ[]

病院坂の首縊りの家 (1992年、TBS系列)出演:古谷一行(金田一)、山本陽子(法眼弥生)、川上麻衣子(法眼由香利・山内小雪)、宇梶剛士(山内敏男)、あいはら友子(山内冬子)、西園寺章雄(法眼琢也)、梅津栄(本條徳兵衛)、光石研(本條直吉)、河原崎建三(法眼滋)、ハナ肇(等々力警部)、他。

関連項目[]


Smallwikipedialogo.pngこのページには、クリエイティブ・コモンズでライセンスされたウィキペディアの記事が使用され、それをもとに編集がなされています。使用された記事は病院坂の首縊りの家にあり、その著作権者のリストはページの履歴に記録されています。


特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

龍村仁

龍村 仁(たつむら・じん、1940年-)はドキュメンタリー監督、元NHKディレクター。有限会社龍村仁事務所代表。目次1 経歴2 作品2.1 ドキュメンタリー2.2 CM2.3 その他3 参考文献4 外...

龍の牙-DRAGON_FANG-

テンプレート:統合文字『龍の牙-DRAGON FANG-』とは、2007年11月22日にDVDが発売される日本の映画。監督は久保田誠二。製作は株式会社クリエイティブ・ホールディングス。目次1 概要2 ...

龍が如く_劇場版

『龍が如く 劇場版』(りゅうがごとく げきじょうばん)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、『着信アリ』『妖怪大戦争』などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2007年3月3日から東映...

龍が如く_〜序章〜

『龍が如く 〜序章〜』(りゅうがごとく じょしょう)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、「着信アリ」「妖怪大戦争」などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2006年3月24日にDVD...

齋藤武市

齋藤 武市(さいとう ぶいち、1925年1月27日 - )は日本の映画監督。埼玉県秩父市出身。早稲田大学文学部卒。1948年、松竹大船撮影所に助監督として入社。小津安二郎に師事する。1954年、先輩の...

黛りんたろう

テンプレート:Otheruses黛 りんたろう(まゆずみ りんたろう、1953年 -)は、NHKのドラマ番組ディレクター、演出家、映画監督。目次1 来歴・人物2 手掛けたドラマ3 劇場公開作品4 著書...

黒部の太陽

テンプレート:予定黒部の太陽(くろべのたいよう)は、木本正次による小説作品、ならびにこれを原作とする日本の映画作品。1968年公開。当時、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いている。目次1 ...

黒蜥蜴

テンプレート:文学『黒蜥蜴』(くろとかげ)は小説。江戸川乱歩の代表作の一つである。宝石等の財宝を盗む女賊と名探偵明智小五郎が対決する推理小説である。初出は連載小説として雑誌『日の出』に1934年1月号...

黒田義之

黒田 義之(くろだ よしゆき、1928年3月4日 - )は、映画監督。目次1 経歴・人物2 主な監督作品(特技監督・助監督含む)3 主なテレビ監督4 主な脚本作品経歴・人物[]1928年、愛媛県松山市...

黒田秀樹

黒田 秀樹(くろだ ひでき、1958年4月30日 - )は、日本のCMディレクター、映画監督。大阪府出身。黒田秀樹事務所代表。目次1 プロフィール2 主な作品2.1 CM2.2 映画2.3 PV3 関...

黒田昌郎

黒田 昌郎(くろだ よしお、1936年 - )は日本のアニメーション演出家。東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東映動画で「狼少年ケン」、「おばけ嫌い」、「ジャングル最大の作戦」、「タイガーマスク...

黒澤明

くろさわ あきら黒澤 明ファイル:Akira Kurosawa.jpg生年月日1910年3月23日没年月日テンプレート:死亡年月日と没年齢出生地日本の旗 東京府荏原郡大井町職業映画監督家族長男・黒澤久...

黒沢清

テンプレート:Otheruses黒沢 清(くろさわ きよし、1955年7月19日 - )は、日本の映画監督、脚本家。東京藝術大学大学院映像研究科教授。兵庫県神戸市出身。六甲中学校・高等学校を経て、立教...

黒木瞳

ののっぺらぼう鏡あべこべの世界絶対ムリ行きたない怖顔合わせおうちで暗い一番怖がりとしてもお願い申し上げください一緒よろしくね↓未来おうちで暗い見たい行きたです特に記載のない限り、コミュニティのコンテン...

黒木和雄

黒木 和雄(くろき かずお, 1930年11月10日 - 2006年4月12日 )は、映画監督。宮崎県えびの市生まれ。宮崎県立小林中学校(旧制)、宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校、同志社大学法学部卒業。少年...

黒土三男

黒土三男(くろつち みつお、1947年(昭和22年)3月3日 - )は、日本の脚本家・映画監督。熊本県熊本市出身。目次1 経歴2 作品2.1 TVドラマ脚本2.2 映画監督・脚本3 関連項目4 外部リ...

黒い雨_(映画)

黒い雨監督今村昌平脚本今村昌平石堂淑朗原作井伏鱒二製作飯野久出演者田中好子北村和夫市原悦子三木のり平音楽武満徹撮影川又昂編集岡安肇配給東映公開日本の旗1989年5月13日1989年9月17日上映時間1...

黒い雨

テンプレート:Otheruses黒い雨(くろいあめ)とは、原子爆弾炸裂時の泥やほこり、すすなどを含んだ重油のような粘り気のある大粒の雨で、放射性降下物(フォールアウト)の一種である。主に広島市北西部を...