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動脈列島(どうみゃくれっとう)は、1975年に東京映画が製作、東宝が配給した日本の社会派サスペンス映画。原作は清水一行の同名小説。
本作と同年に東映が製作・公開した『新幹線大爆破』は、日本の大動脈である新幹線の設備を破壊しようとする者と捜査陣との対決、というあらすじの根本が共通している。ただし本作は当時社会問題化していた騒音公害を題材にした社会派作品であるのに対し、『新幹線大爆破』はエンターテイメント性を追求したパニックムービーという違いがある。
名古屋市熱田区。東海道新幹線が住宅密集地にもかかわらず時速200キロ近い高速で走り抜けていく。そのすさまじい騒音ゆえに付近に住む老婆は、新幹線の音をB-29の音と間違えておびえだすほどに精神に異常をきたし、医師である秋山宏(近藤正臣)と、その恋人である看護師・君原和子(関根恵子)の懸命の介抱も空しく息絶えてしまった。老婆を死に至らしめた国鉄に怒りを覚えた秋山は復讐を誓った。秋山は恋人に、わけも話さずに病院からニトログリセリンを少し盗み出すように言い、それを持って恋人にはヨーロッパに旅行すると伝えて行方をくらませた。
次の日、新幹線ひかりの車内のトイレがつまり、原因を探るとニトログリセリンと脅迫状が入れられた袋が出てきた。脅迫状の趣旨は国鉄に対する騒音対策の実施要求と、要求を受け入れなければ10日以内に新幹線を転覆させるというものだった。翌日には豊橋駅でこだま号が脱線させられた。下手すれば脱線したこだま号に後ろから来たひかり号が追突するほどの危険な状況であり、秋山はあえてそのタイミングをねらったのだった。
警察庁は犯罪科学捜査研究所所長の滝川保(田宮二郎)を捜査本部長に任命し、数人の新幹線の沿線の県警の人間と共に極秘捜査を開始する。滝川は脅迫状の内容が名古屋新幹線騒音公害訴訟団の要求と同じであったことから、訴訟団が主張の根拠としていた論文を書いた秋山に注目する。しかし当の秋山は失踪中であった。だが秋山の指紋と脅迫状にあった指紋が一致したことから捜査陣は秋山を犯人と断定し、極秘ながらも捜索を開始する。
そのころ東京に潜入していた秋山は秋葉原の電気街にいた。音波発信機を製作した彼は国鉄に「もう一度新幹線をストップさせてみせる」と予告した。一方国鉄・警察にはこの一件をかぎつけた大手マスコミが駆けつけ、極秘にしていたことを非難し、公開捜査を要求した。そこで滝川は次のストップ予告を阻止できなければ公開すると約束した。しかし、警察の検問をかいくぐった秋山は新幹線と並行する東名高速道路をレンタカーで列車と並走し、スピード0(停車)の電波を発信、またも新幹線を止めてしまう。この手口を予想できなかった滝川ら捜査陣をマスコミは責めるが、ついに滝川は公開捜査に踏み切り、秋山宏を全国指名手配にした。
一方、秋山は医学界に失望した元看護婦のアパートにかくまわれていたが、大胆にも国鉄総裁宅に出向き、直接要求をした上、その会話を録音したテープをマスコミにリークした。
秋山は予告当日に備え、坂野坂トンネル付近にブルドーザーを停車させた。一方捜査陣も、犯行は秋山の実家から近い静岡・愛知県内で行われる可能性が高いとして県内の新幹線線路に等間隔に警官を配置し厳重に警戒させた。
犯行当日、当初はこの日の勤務を拒否していた国労・動労を説得した上で新幹線は平常どおり運転した。秋山は献血輸送車を盗んで検問を突破、坂野坂トンネルに向かう。一方滝川らもヘリコプターからブルドーザーを発見し、取り囲んだ。これで犯行は不可能に思われていたが突然無人のブルドーザーが動き出した。リモコン操作されていたのだ。しかし勇敢な刑事が乗り込みキーをはずしてブルドーザーはストップ、秋山は手も足も出せなくなった。既に身柄を確保されていた恋人の和子に説得され、付近のみかん畑から力尽きた秋山が姿を現した。互いに抱き合う秋山と和子。その後ろを何事もなかったように新幹線は走り続けていくのだった…。
なお、原作もほぼ映画どおりであるが、原作では、無人ブルドーザーが実際に線路に突入している。しかし、事前に警察側も犯人の行動を察知し、新幹線は事前に停止し脱線転覆は避けられている。電波で列車を停止させるシーンは、劇中では静岡県内の東名高速という設定だが、実際の撮影地点は岐阜県内の名神高速である。(高速道路と新幹線が間近で並行し、しかも自動車で追い抜けるほど列車が減速する場所は、岐阜羽島駅の東方しかない。木曽川橋梁がはっきり確認できる)
当時、公害に対する市民の意識が高まっていた。1974年には名古屋市の新幹線沿線住民が、名古屋地方裁判所に騒音公害に対する訴え(名古屋新幹線公害訴訟)を起こしている。
そうした事情に加え、毎年の恒例行事同然になっていた国鉄のストライキや順法スト、相次ぐ値上げで、市民の国鉄に対する反感もまた大きくなっていた時期であった。そうした背景があって「動脈列島」は製作されたのである。
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