グローバル・ポジショニング・システム

ページ名:グローバル・ポジショニング・システム
ファイル:Navstar-2.jpg

Navstar=GPS衛星(図は初期のBlock-I衛星)

ファイル:Global-Positioning-System.jpg

GPS受信機(航海練習船銀河丸にて)

グローバル・ポジショニング・システム (GPS: Global Positioning System) は、全地球測位システム、汎地球測位システムとも言い、地球上の現在位置を調べるための衛星測位システム。元来は軍事用のシステム。ロラン-C (Loran-C: Long Range Navigation C) システムなどの後継にあたる。

目次

概要[]

アメリカ合衆国が軍事用に打ち上げた約30個のGPS衛星のうち、上空にある数個の衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、現在位置を知るシステムである。

GPS衛星からの信号には、衛星に搭載された原子時計からの時刻のデータ、衛星の軌道などが含まれている。GPS受信機にも正確な時刻を知ることができる時計が搭載されているならば、GPS衛星からの電波を受信し、発信-受信の時刻差に電波の伝播速度(光の速度と同じ30万km/秒)を掛けることによって、その衛星からの距離がわかる。3個のGPS衛星からの距離がわかれば、空間上の一点は決定できる。

実際のGPS受信機に搭載されている時計はクオーツなどを利用しているため、あまり正確ではない。時刻の誤差がたとえ100万分の1秒であったとしても(この精度で時計を維持することは非常に難しい)、距離の誤差は300mにも及んでしまう。そこで、4つのGPS衛星からの電波を受信し、GPS受信機内部の時計の校正を行ないつつ測位を行なう。

GPS衛星は約20000kmの高度を一周約12時間で動く(静止衛星ではない)。軌道上に打ち上げられた30個ほどの衛星コンステレーションで地球上の全域をカバーできる。中軌道なので信号の送信電力としても有利であり、ある地域からみても刻々と配置が変化するため、全地球上で誤差を平均化できる(地域によってはカバーする衛星の個数が常に少ない場合もある)。GPSは地上局を利用するロラン(LORAN)-Cと異なり、受信機の上部を遮られない限り、地形の影響を受けて受信不能に陥る事が少ない。

原理[]

3次元測位[]

GPS衛星と受信機がともに正確とみなせる時計をもっていれば、送信時刻と受信時刻の差の時間に光の速度を掛け、距離がわかる。

  • 1個の衛星からの電波が受信でき距離が決定できたとすると、そこから距離が一定である点は球面上のどこかになる。一定の長さの糸におもりをつけて振り回すと、おもりは糸の長さを半径とする球面上のどこかにいることになる。
  • 2個の衛星からの距離が決定できた場合、空間中の円上のどこかにいることになる。2本の糸におもりをつけて振り回すと、おもりは円を描いて回る。
  • 3個の衛星からの距離が決定できれば、空間上の一点は定まる(数学的には2点だが、片方は明らかに地球上にない)。三脚は3本の脚(長さは異なってもよい)があるため固定できるのと同様である。

GPS衛星には原子時計が搭載されているため、時刻は正確とみなせる(この原子時計も相対性原理による時刻の遅れが生じるが補正されるし、原子時計の個体誤差も地上からの観測・指令により補正される)。一方、GPS受信機は原子時計ほど正確な時計をもたず、通常のクォーツ時計程度の精度である。そこで4つ目の衛星を使い現在時刻を知ることが必要となる。

  • 4個の衛星からの距離差がわかっている場合(絶対的な距離はわからないとしても距離の差はわかる場合)、まず2個の衛星A・Bをとると、一定の距離差になる点の集まりは空間上の双曲面になる。つぎに衛星B・Cをとって双曲面を描くと、最初の双曲面と交わる線が描ける。最後に衛星C・Dからの距離の差で双曲面を描くと、線との交点が求められる。

実際のGPS受信機の内部での演算では、受信機の空間上の座標 (x, y, z) および時刻tの4つの変数が未知で、4つの衛星からの時刻差が与えられるため、方程式を解くことによって x, y, z, t の値を決めることができる。

SS変調による測距[]

GPS衛星からの情報を変調する方式であるSS (spread spectrum) 変調方式(CDMA: code division multiple access方式などともよばれる)は、人工的に作った(真の乱数と区別が付かない)コードである擬似雑音系列に送信データを掛けて送信信号を生成する。

このため、FMやAM変調などに比べて広いバンド幅で低電力で送信でき、秘話性(擬似雑音系列がわからなければデータを復調できない)や秘匿性(白色雑音と区別がつかないため送信していること自体がわからない)、同一バンドを異なる擬似雑音系列で多重利用できることなどの特徴がある。

擬似雑音系列の開始位置の時刻を定めておけば、復調時に精度よく送出時刻を知ることができることも特徴のひとつで、GPSではこの特徴を活かして測位とデータ(衛星の位置・軌道情報やその他の情報が含まれる)の送信を同時に行なっている。

GPS衛星からのL1電波 (1.57542GHz) には公表されているC/Aコードを擬似雑音系列に用いた信号と、公表されていない擬似雑音系列であるP(Y)コードの2種類の信号が載せられている。P(Y)コードは軍事目的を想定しており、系列の生成多項式の次数が大きい(擬似雑音系列が一巡するのに長時間かかる)ため、精度は非常に高く(16cm程度)、ミサイルや誘導爆弾の誘導に用いられている。

民生用に利用が許されている暗号化されていないC/Aコードのデータを用いると、95%以上の確率で正確な緯度経度から10m以内の座標が得られる程度の精度となる。これは短時間での精度であり、長期間受信し続けることにより精密な測量も可能である。

測位法[]

GPSの測位方法は、コード(搬送波の変調)に基づく方法(コード測位方式)と、搬送波の位相に基づく方法(搬送波測位方式)に分けられる。一般にはコード測位が用いられているが、高精度の測量には搬送波測位が用いられる。

単独測位コード測位。誤差10m程度(民生用)。DGPSDifferential GPS(相対測位方式)。コード測位。測位対象となる移動局のほかに、位置のわかっている基地局でもGPS電波を受信し、誤差を消去する方法。基地局で生成された補正情報を送信し、移動局で受信すれば、実時間でDGPSの補正処理を行うことができる。日本国内では、海上保安庁の中波ビーコンにより補正情報を送信しており、これを使用するのが一般的である。誤差数m。RTK測位Real Time Kinematic GPS。干渉測位方式。DGPSと同様に、電子基準点から受信する電波の位相差を計測し、測位計算。測位時間1分以下、誤差数cmが可能。測量地点では、基準受信機を参照基準点(既知)に設置し、(複数の)移動受信機で測位。高速スタティック測位干渉測位方式。測量地点で、複数のアンテナを固定設置し、測位時間30分以下、誤差1cm以下が可能。VRS-RTK測位Virtual Reference Station RTK-GPS。RTK測位の弱点(初期待ち時間、複数の受信機が必要、移動範囲が限定、電子基準点から電波が届かない等)を改良。仮想基準点方式。複数の電子基準点と通信回線を結ぶVRSセンターがあり、測量地点では、1つの移動受信機から得られるデータを、携帯電話等によりVRSセンターと送受信し(データを持ち帰り後日計算も可能)、RTK測位を実施。

精度[]

GPS受信機の測位精度には、原理的な誤差による要因・人為的要因などさまざまな要因がある。ここではその他の不具合も含め列挙する。

下記のうち誤差要因については、GPS受信機である程度推定し表示することができる。GPS受信機がある円内にいる確率が50%であるところの円を、CEP(Circular Error Probable、確率誤差円)とよぶ。地図を表示するタイプのGPS受信機では、この円も同時に表示し利用者への参考としているものもある。

電波伝播経路の特性[]

GPS衛星からGPS受信機まで電波が達する経路では、電離層や対流圏での電波特性の変化により、若干の電波伝播速度の遅延が生じる場合がある。これによって、計算で定めたはずの空間上の一点の信頼性が損なわれる。一般的に受信機からみてGPS衛星が低仰角の場合、この誤差は増加する傾向がある。これは大気中を電波が伝播するときの遅延による影響が、高仰角 (薄い大気を通過する) よりも低仰角 (厚い大気を通過する)で大きいからである。またそもそも低仰角衛星からの信号は減衰が大きい)。

このための補正手段として、正確な時計をもち座標のわかっている固定局を設置し、GPS受信データから計算した位置と固定局の位置の差から、精度を上げるなどの仕組み(ディファレンシャルGPS、Differential GPS、DGPS)も確立されている。DGPSの補正信号は、FM放送の利用されていない帯域で送信するシステム(JFN系列の放送局で実施されている)があり、カーナビなどでの利用には有用である。また、WAASやMSAS (MTSATを利用した日本の運用) では、静止軌道の衛星からDGPSの補正信号を各受信機に送信している (WAAS/MSAS静止衛星自体もGPS衛星同様、測位にも使われる)。

このほか、ビル街や谷山ではマルチパス (ひとつの衛星からひとつの受信機までの電波経路が反射などによって多数存在すること・テレビのゴースト現象同様)により、信号の時間差が生じたりS/N比が低下し、精度が落ちる。

受信可能な衛星の個数・配置による影響[]

通常日本(本州)では、理想的に空がひらけている場合、受信可能な衛星は6~10個程度である。位置の計算に最低必要な4個より多い衛星がみえている場合は、複数の衛星からの情報で測位精度を向上させることができる。それぞれの衛星からの信号強度(S/N比)を観測したりDGPS情報から衛星ごとの信頼度を与え、また4つ組みの取り方をなるべく計算誤差が大きく出ないように取ったり、さらに複数の測位結果の信頼度が低いものを棄却・平均化するなどの方法がとられる。

受信可能な衛星の個数・配置により、電波伝播の誤差が大きくきいてくる場合がある。原理での三脚でのたとえを用いると、三脚の脚が固定の長さではなく、ある程度伸び縮みしたとしよう。すると三脚の頭が動く範囲(推定誤差範囲)は、三脚の脚の開き具合によって異なる。計算に用いる衛星のみかけの位置が接近していると、計算に用いる推定誤差が大きくなる(脚を閉じた三脚ではぐらつきが大きい)。また計算に用いる衛星が一直線に並んでいたりする場合は、ある方向への信頼度が大きく低下する (三脚の脚が並んでいると垂直方向にぐらつきが大きい)。

補助手段による精度の向上[]

GPSは原理的には最低4つの人工衛星がみえていることが必要であるが、空がひらけていない場合などは、補助手段で精度を向上させることも可能である。

まず、GPS受信機内部の時計が正確な時刻に校正された後の一定時間は、時刻情報は内部の時計を用いて3つの衛星で3次元の位置を知ることができる (#原理参照)。ただしクォーツ程度の進み遅れがあると、これも数分で信頼できない時刻になってしまう。

また、地球の形がわかっており、地表(あるいは一定の高度)を移動していると考えられる場合、さらに1つの衛星からの距離を省略しても位置は求められる。地球の形(平均海面)は球体ではなく赤道付近が膨らんだ回転楕円体であることは知られているが、これをよく近似した3次元曲面(WGS84など)を多くのGPS受信機がデータとしてもっている。

さらに受信機のドップラーシフトを観測すると、C/A信号の1ビット送信時間未満の距離の観測もできる。衛星と受信機の距離が接近または乖離している場合、ドップラー効果により受信周波数の上昇または低下(これは信号の位相変化として観測される)がおきる。これを用いれば、受信機が等速直線運動しかしていないかそれ以外の方向に動いたかも推定できる(1つないし2つの衛星からの信号でもある程度の位置は推定できる)。なお長時間の位相観測によりC/A信号の精度限界以上に精度を上げる方法は、測地用のGPS受信機などでも用いられている。

またカーナビなど大きなGPS受信機では、GPSで初期位置を決定した後は、ジャイロ・加速度センサなどから得られる情報で自律位置推定できるGPS受信機もある。この場合完全に空が塞がれている状態(トンネル内に入ったとき)などもある程度の位置はわかる。航空機の慣性航法装置と同様であるが、精度は3桁程度低いため、数分程度の自律位置推定で測位は大きく外れる。

登山用のGPS受信機では、気圧高度計で高度方向の位置推定の補助手段としたり(GPS信号の信頼度が高いときには逆に気圧を校正したり)、磁気コンパスを併用するものもある。なおもともとGPSでは、高度方向は精度が低い場合が多い。空間の(x, y, z)方向の誤差は均等であるが、前述のようにGPS受信機の多くは地表に沿って動く(地表と鉛直方向には動かない)ため、計算アルゴリズムを工夫して、地表に沿った方向の位置推定の精度を上げる代わりに高度方向の位置推定を犠牲にしているためである。

GIS情報を補助手段として用いる場合もある。カーナビでは地図を搭載しているため、道路情報と照らし合わせることで誤差を修正しているものもある(車は道路以外を走れないという制約を利用している)。

測地系[]

地球上の位置は緯度・経度・高度で特定できるとはいえ、各国が地図を作り始めた経緯により、基準点がずれている場合がある。これを測地系というが、GPSでは座標系を変換し多数の測地系で緯度・経度を表示できる事が多い。GPS受信機に直接緯度・経度を入力してナビゲーションする場合、測地系をあわせることにも注意したい。例えば日本測地系(Tokyo)とWGS84では、数百m程度の誤差がある(日本国内でも場所によって異なる)。

2002年4月1日、測量法及び水路業務法の一部を改正する法律の施行により、日本の緯度、経度の座標系が日本測地系(Tokyo)から世界測地系に変更され、米国独自の測地系であるWGS-84と大きな座標のずれはなくなった。

相対性理論効果による原子時計の遅れ[]

受信機側での信号処理には、さまざまな要因によるものが含まれるが、その中には、物理学の相対性理論による補正もある。高速で運動するGPS衛星の運動による発振信号の時間の遅れ(特殊相対論効果)と、地球の重力場による時空の歪み(一般相対論効果)である。後者は、衛星軌道の擾乱や信号到達距離の湾曲、発振信号の時間の遅れなどを引き起こす。時間の遅れに関して簡便に要約すると、GPS衛星上の時計と地上の時計では、特殊相対論効果と一般相対論効果との双方の時間の遅れの影響を受けるということである。地上の時計は、まず、特殊相対論効果により、結果的にGPS衛星の時計より早く進むことになる。一方、地上での重力の影響が上空のGPS衛星より大きいので一般相対論効果により地上の時計は、逆にGPS衛星の時計より遅れることになる。このように特殊相対論と一般相対論における時間の遅れの効果が相反的に影響を及ぼすことになるが、結果的には地上の時計がわずかに遅れるので、GPS衛星の時計は、地上の時計の遅れを補正するため遅く進むように設計されている。
アインシュタインが一般相対性理論を1916年に発表して以来、重力による空間の歪みという概念は、人間の社会生活に影響することはないと考えられていたが、GPSで相対論による補正がないと正しい測定結果が得られないという事実は驚きでもある。

これとは別に、GPS時刻 (GPS衛星がもっている基準時刻系)では、数年に1度加えられる閏秒 (UTとTAIの差が大きくならないように挿入される秒) を修正したことがないため、GPS時刻はUTから18秒進んでいる(2006年1月1日の修正後)。この差はGPS信号の中に含まれているため、受信機ではこの差を補正して時刻を出力している。

人為的に加えられた誤差[]

1990年から2000年までは、米国の軍事上の理由(敵軍に利用されることを防止する)で、C/Aコードにおいて民生GPS向けのデータに故意に誤差データを加える操作(Selective Availability,略称 SA)が行われ、精度が100m程度に落とされていた。

SAが加えられていたときから既にGPSは民生用として有用であることが知られていたため、2000年5月2日に米国はGPS技術を広く役立てて欲しいという主旨でこれを解除した。競合技術であるガリレオ(EUが主体となって推進している)が提案された理由のひとつに、GPSのSAによる誤差により民生用で精度が上がらないということがあるが、これに対して優位を保ち続けリーダシップを取るという米政府の意図も含まれている。SA解除以降は、民生GPSでもC/Aコードの技術的な限界までの精度が得られるようになっている。ただし今後も米国の政策上の必要に応じて、有事があった際など特定地域において精度低下の措置がとられるとされている。

1999年8月21日問題[]

1999年8月21日問題 (GPSの時計が桁溢れする日) などが1024週ごとにある。これは、GPS衛星に搭載されている時計の週の積算データが10ビットで管理されているため、GPS時計の周期開始日である1980年1月6日から1024週後の1999年8月21日(日本時間では1999年8月22日午前9:00)にリセットされて内部で0週に戻ってしまう仕様となっていたのを無視してカーナビゲーションシステムを製造したために、発生した問題である。当時、対応が迫られていた2000年問題と同根の問題であることもあり、こう呼ぶ。

日本国内において修正ミスが原因の不都合が、一部のカーナビゲーションシステムで生じた。

次にGPSの週の積算が0になるのは基点から2048週間後の2019年4月7日午前9:00(JST)である。

応用[]

ファイル:KyotoTaxiRide.jpg

民生利用(2004年7月16日京都)

民生用GPS受信機は当初航空機、船舶、測量機器、登山用 (個人携帯等) に利用されてきたが近年は自動車(カーナビゲーション・システム、以下カーナビ)や携帯電話などにも搭載し利用されている。

  • カーナビゲーション
  • 携帯端末(ハンドヘルドGPS、PDA、携帯電話、PSP用GPSレシーバー)
  • ノートパソコン
  • レーダー探知機
  • ECOエリート

登山用・個人携帯用[]

登山用はもともと数値的に経度と緯度を表示するだけのものであった。これは経度と緯度が細かく記してある正確な地図がなければ役に立たない。この種のものはトラッキング(移動経路)を記録することができるものが多く、登山のみならずグライダー等での競技にも用いられている。最近では登山用でも、白黒の低解像度の地図を内蔵するものから比較的詳細なカラー地図を表示できるものへと進化が進んでいる。いずれにしても電池切れや故障に備え地図と磁気コンパスを携行することは必要である。

一方ナビゲーション用途とは別に、アスリート用に走行距離、ラップなどを表示する、腕時計のような形態の非常に小型の製品も実用化されている。

携帯電話にGPSを組み合わせた製品も出現している。この種の製品では、地図情報・GIS情報をサーバ側にもつことにより詳細な地図を提供したり付加サービス(例えば最寄のフランス料理店を検索し電話を掛けて予約する)の可能性が拡がっている。また情報を送信できないGPSと送受信機である携帯電話を組み合わせ、セキュリティ(児童誘拐や徘徊老人対策等)への応用も拡がっている。

携帯電話との組み合わせならではの技術として、空が開けていない場所でも携帯電話の基地局の位置情報を補助情報として利用する方式があげられる。また位置計算が高速でできない携帯電話のために、測距情報をホストに送り、緯度・経度・高度情報を携帯端末に送り返してもらうというシステムも存在する。

船舶[]

船舶にとってGPSは重要な航法支援設備である。航空機同様、陸から離れたら目印をもたない海上において、遭難・衝突や座礁を免れるために、精度の良い航法支援システムを利用することは重要であった。そもそもGPSはロラン-Cに取って代わるためにつくられたシステムである。

漁業用や個人用のレジャーボートに搭載されるGPSでは、魚群探知機と組み合わせ、漁場をマークするなどの機能が付加されているものもある。

カーナビ[]

カーナビはGPSの実装において技術的に有利な応用である。自動車からは安定した大容量の電源が供給でき、GPS用アンテナを良い位置に設置することができる。また本体が大きくてもよいため、詳細なカラー地図を内蔵することができる。

近年では地図のみならず他のGIS情報(例えば電話番号やレストランのリストなど)まで内蔵するようになり、ROMなどで固定データを本体に内蔵するのは不利になる。そのためハードディスクやDVDの利用により地図情報その他を更新できるものも増えてきた。

レーダー等による速度規制取締りを行なっている場所(その他シートベルト着装取り締まり等を含む)の緯度・経度をデータとしてもち、その近辺で警告を発する機器も存在する。(レーダー探知機の項を参照)

航空分野[]

GPSやGLONASSなどの位置情報を航空機にも使用することが促進されている。

従来の航空機航法は、VOR・DMEなどの地上後方支援施設を用い、いわば電波の灯台への方位・距離を測定して現在位置を知る方法だった。これに対し、衛星が4個以上みえていればある程度の精度で絶対位置がわかるGPSは、航空機向けの測位方式であるともいえる。

しかしながら、GPS信号をそのまま航空航法に使用するには 測位の安全性・信頼性・精度等に問題がある。具体的には、低高度、特に精度がもっとも必要とされる着陸寸前の地形による遮蔽・マルチパス、機体の姿勢変更に伴いロックした衛星(測位に用いている衛星)が変化すること、一般にGPSによる測位では航空機にとって重要な高度方向の精度が緯度・経度方向の精度より低いこと (しかしこれは計算方法にもよる)、などである。

ただし、大型機ではINS(慣性航法装置)や従来の測位方式などと併用すること、小型機ではVFR(有視界飛行方式)が主であることなどから、実際の運用では(制度上認められていない)機長判断の参考として用いられている場合が多かった。

こういった流れを受けて、また近年では航空機運行の高密度化により定められた以外の航空路を飛ぶための一手段として、GPS情報を航法に利用することが国際民間航空機関(ICAO)や国土交通省航空局(JCAB)で検討されてきた。その成果として日本では、一部の空港の離着陸手順においてRNAV (GPS)航法の実施が2007年9月27日より開始された[1]。航空機はウェイポイントとよばれる架空の点を結ぶ線を経路とするように飛行する。従来のVOR/DME航法では、VOR/DMEの位置、あるいは1つまたは2つのVOR/DMEから一定の方位角・距離にある架空の点をウェイポイントとしていた。これに対しRNAV航法では、地上施設に拠らない自由な点をウェイポイントとして定めることができるため、飛行経路の短縮による運行時間の短縮、燃費の節約などが見込まれる。

航空機での精度向上を一次目的とした、静止衛星型衛星航法補強システム (SBAS: Satellite Based Augmentation System) の運用が以下の各国で開始されている。

  • 米国: WAAS(Wide Area Augmentation System)
  • 欧州: EGNOS(European Geostationary Navigation Overlay Service)
  • 日本: MSAS(MTSAT Satellite-based Augmentation System)

SBASでは、GPS衛星の補正情報(特に高度情報の補正)や信頼性情報を送信し、またSBAS衛星自体も測位のためのひとつの衛星として働く。さらにSBAS衛星は静止軌道にあるため、中~低緯度地方では天頂に近い高仰角でみえているのも有利な点である (北緯35度では仰角55度)。航空機以外の分野でも、例えばビル街でのカーナビの精度向上にも役立つと考えられている。SBASを補助情報として用いることができるGPS受信機はすでにSBAS対応(WAAS対応)受信機として広く普及し始めている。

日本のMSASについては、航空機でのRNAV運用に伴い、2007年9月27日から試験信号フラグ(MT0)が運用モード(MT2)となり、正式に供用開始となった。ただし初期のWAAS対応機など一部のSBAS対応受信機では、MSASの衛星番号を設定・処理できないため測位に利用できないものがある。

ゲーム・スポーツ[]

  • ジオキャッシング
ジオキャッシングはGPSを利用した遊びである。ネット上で公開されたキャッシュ(宝)の緯度・経度とヒントを元にキャッシュを探すゲームである。キャッシュはバケツなどの容器に入れて隠されており、みつけた人はキャッシュをもらい(その代わり自分で1個キャッシュを入れる)、ログブックに記録を残したりする。
  • パラグライディング競技・パラシューティング競技
これらのスポーツでは、(1) 競技者がGPSを公式な記録として提出することができる、(2) GPSを用いてより良い記録を出すことを目指す、などの利用がなされている。滑空距離や落下位置の正確さを競うこれらの競技では、従来写真による記録や審判員による目視で記録がなされることが多かった。プレイヤーが所有するGPSの記録を提出し、それが改ざんされていないと認められれば、有力な記録の証拠となる。また単体機のGPSレシーバでは、立体的にリアルタイムの移動距離・降下率を計算し、事前に設定した目標へ近づく参考となる機能を備えたものもある。
  • エリア奪取
エリア奪取はauのGPS携帯電話の位置情報サービスを使って、陣取り合戦をするゲームである。地球上を緯度1分×経度1分の四角形で区切ったものを「エリア」と呼び、「エリア」を参加者が奪い合う。ただし、位置情報サービスはEZwebの通信を使っておこなうため、auの電波状態が良好な地域に限られる。逆に、auのEZwebで通信できるなら、険しい山岳や海上も「エリア」となる。
  • 迷路・ビーストハントなど
GARMIN社の単体機GPSレシーバには、GPSを利用したゲームが内蔵されているものがある。ある程度以上広いところでGPSが受信できるならば、実際にプレイヤーが動くことでゲームをプレイする (レシーバが表示した仮想の迷路をプレイヤーが動いて脱出する、など) のゲームを行なうことができる。

その他[]

ラップトップ型のPCやPDA、携帯ゲーム機をカーナビとして使えるようにするGPSユニットとソフトも発売されている。なお単体のGPSユニットは(電源内蔵でない場合、本体から電源を供給されなければ動作しないが)、測位等はすべてユニット内で完結しており、NMEAなどの標準フォーマットで緯度・経度その他の情報を送り出すものが多い。PCやPDA本体ではこれを受信し、地図ソフトなどと組み合わせてカーナビ同様に使ったり、トラックの記録をすることができる。PCやPDAの接続も、かつてはRS-232C (シリアル) 接続やPCMCIA (PCカード)・CFカード規格が多かったが、現在はBluetoothで測位情報を本体に転送するものもある。

登山用・単体モジュールを問わず、NMEA信号を出力することができるGPS受信機は、プロ用一眼レフカメラなどと連動し、撮影記録を自動的に残すためにも使われている。対応機をGPS受信機と組み合わせれば、JPEG画像ファイルなどのExifフィールドに自動的に撮影地の緯度・経度・時刻などが記録される仕組みである。

GPSにまつわる誤解[]

よく言われる以下の言説は、すべて誤解である。

  • GPS衛星はカーナビ搭載車に位置情報を送っている。
  • GPS衛星がカーナビのルートを引いている。
  • GPS衛星は車の位置情報を逆探知できる。
  • GPS衛星とカーナビが通信をしている。

正しくは、GPS衛星は宇宙空間に向けて時報を発し、カーナビ(GPS受信機)側は複数のGPS衛星からの発信電波を受信することで自分の位置を割り出しているだけである。

カーナビが位置情報をGPS衛星に通知するのは、原理上そもそも不可能である。カーナビ側は、外部に電波を発する装置を有していないからである。つまり、カーナビは受信するだけ、GPS衛星は送信するだけなのである。

この誤解の元となった技術に、運輸業などの車両位置監視システムや、児童・徘徊老人のセキュリティシステムなどがあるが、これらではGPSで測位した位置を許可された人へ通報するために、別に携帯電話等の通信チャネルを使っている。2008年2月5日に岡山市で現金自動預払機(ATM)が盗まれた事件では、事件発生後約45分でGPSによって盗難ATMを発見するという成果を挙げている。このケースでも機器組み込み型の携帯電話モジュールでセキュリティ会社への位置通報をしていたとみられる。

同様の技術・関連技術[]

米国以外で開発されたGPSと同様の目的のシステムとしてGLONASS(ロシア)、Galileo(ヨーロッパ諸国ほか 計画中)がある。

日本[]

現在の日本には3基の人工衛星からなりGPSの位置情報を補正して高精度の測位を可能とする準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System、QZSS)と呼ばれる計画がある。すでに事業化を検討する民間の主体として新衛星ビジネス株式会社が2002年に設立されており、高速で移動する車輛の内部で精度25cmとされる測位精度を用いた各種事業が検討されている。最初の人工衛星は2008年に打ち上げられる予定だが予算の都合で通信・放送との複合機能衛星となっており、それらのサービスのシナジー効果が期待されていた。その後に採算性の面から2006年3月に放送・通信の事業化が断念され、純粋な測位衛星として利用されることになった。

ちなみに日本では2005年第44回衆議院議員総選挙の自由民主党マニフェストである「政権公約2005」の52項目に「国家基盤としての衛星測位の確立と骨格的空間情報の整備」との記載があり、日本独自の高精度な位置測定衛星を打ち上げる可能性が出ている。

日本ではその後、内閣官房に測位・地理情報システム等推進会議が設置され、2006年3月には「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」を発表した。それによると、国家が衛星測位の重要性を認識し、民間の資金負担がないとしても、国家が衛星測位システムを整備することを宣言している。

ロシア[]

旧ソ連は米国との対抗上、GPSと同様のGLONASSを構築しようとしたが必要な衛星を全て打上げる前にソ連が崩壊してしまい、予算の縮小から衛星打ち上げが頓挫した。ロシアになってから計画が再開され、2005年には再開後初の衛星を打ち上げ、2010年までに24基の衛星を打ち上げる予定とされる。2007年11月現在では9基の衛星が運用を開始しており、すでに軌道上にある他の3基が運用準備段階にある。

欧州連合[]

GPSを使用する上で米国に頼る事を嫌ったEUは独自のGalileo(ガリレオ)を計画、中国も計画に参加している。2005年にはロシアのソユーズロケットを用いて最初のジオベ衛星を打ち上げたが、共同事業体の体制がととのわず、民間企業も採算の見込みが立たないと手を引いたため、本格運用開始の目処が立たない状況となっている。

また、中国やインド、ナイジェリア、トルコなどにも他の衛星ナビゲーションシステムの開発の動きがある。

関連項目[]

  • 電子基準点
  • 地図
  • 地理情報システム(GIS)
  • ジオキャッシング
  • 緊急通報位置通知
  • GPS気象学
  • 九州南西海域工作船事件(いわゆる「不審船」が東シナ海に出現し、海上保安庁の巡視船と銃撃戦になった事件。自沈し後に引き揚げられた不審船からは、日本製のGPSプロッターが見つかっている)
  • アビオニクス
    • 広域航法
  • 航空保安施設
  • トレーサーバッジ - 現代のGPSに相当するドラえもんの道具。

外部リンク[]

  • GPSデータクリアリングハウス
  • GPS固定点データ提供サービス
  • 電子基準点データ提供サービス
  • WAAS(英語)
  • MSAS(英語)
  • EGNOS(英語)
  • 「交点プロジェクト」サイト
  • 理解するためのGPS測位計算プログラム入門
































Smallwikipedialogo.pngこのページの内容は、ウィキペディアから取られています。オリジナルの記事は、グローバル・ポジショニング・システムにあります。この記事の著作権者のリストは、ページの履歴を御覧ください。ケータイ wikiaと同じく、ウィキペディアのテキストは、GNU Free Documentation Licenseで提供されています。




特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

電池パック

ファイル:Lithium-ion battery IBM b.jpgIBM用電池パック(リチウムイオン二次電池)ファイル:Lithium-ion Polymer battery Toshiba PA-...

解約_(携帯電話)

携帯電話・PHSにおける解約(かいやく)とは、携帯電話・PHSの回線契約を解除することである。目次1 解約について1.1 番号ポータビリティーでの解約について2 強制解約3 即解約3.1 機能目当ての...

衛星電話

衛星電話(えいせいでんわ)とは、通信衛星と直接通信する電話機を使用した電話網を提供するサービスである。電線(現在は光ケーブルやマイクロ波回線も使う)を使った有線電話(固定電話)や地上の無線通信技術を用...

船舶電話

船舶電話(せんぱくでんわ)とは、船舶に搭載の電話機により海上からの電話を行う移動体通信である。陸上の海岸局(基地局)を使用した公衆交換電話網と接続されたものである。日本では、衛星電話に移行したり、海上...

自動車電話

自動車電話(じどうしゃでんわ)とは、自動車搭載の電話機による移動体通信である。陸上の基地局で公衆交換電話網と相互接続されており、現在の携帯電話システムの元となった。なお日本では、1999年11月から運...

緊急通報位置通知

緊急通報位置通知(きんきゅうつうほういちつうち)は、携帯電話から110番、119番、118番へ緊急通報された際に緊急通報受理機関に対して、発信された場所に関する情報を自動的に通知する機能のことである。...

純増数

純増数(じゅんぞうすう)とは、サービス加入者数など統計値の変化を表す数値であり、「増加数から減少数を差し引いた、純粋な増加数」から採られている。移動体通信業界における純増数[]携帯電話・PHS業界では...

第四世代携帯電話

テンプレート:予定第四世代携帯電話(だいよんせだいけいたいでんわ)とは、ITUが2008年から2009年に策定予定の通信規格に準拠するデジタル方式の携帯電話やその方式のこと。3Gや3.5Gより次の世代...

第二世代携帯電話

第二世代携帯電話(だいにせだいけいたいでんわ)は、第三世代携帯電話よりも以前のデジタル方式の携帯電話のこと。1993年に登場。NTT大容量方式・TACS等のFDD-FDMA-FMのアナログ携帯電話を第...

第三世代携帯電話

第三世代携帯電話(だいさんせだいけいたいでんわ)とは、国際電気通信連合(ITU)の定める「IMT-2000」規格に準拠したデジタル方式の携帯電話やその方式のこと。欧州では、UMTS (Universa...

第三・五世代携帯電話

第三・五世代携帯電話(だいさんてんごせだいけいたいでんわ)とは、第三世代携帯電話(ITUの定める「IMT-2000」規格)の内、高速データ通信規格に準拠したものを特に区別する場合に言う。デジタル方式の...

第一世代携帯電話

第一世代携帯電話(だいいちせだいけいたいでんわ)は、初めて実用化されたアナログ方式の携帯電話のこと。日本ではNTT大容量方式やTACS等のFDD-FDMA-FM方式が、アメリカではAMPSが、ヨーロッ...

着信御礼!ケータイ大喜利

『着信御礼! ケータイ大喜利』(ちゃくしんおんれい ケータイおおぎり)は毎月1回、NHK総合テレビジョンと海外向けのNHKワールド・プレミアムにて深夜に生放送されているバラエティ番組である。目次1 概...

着信メロディ

着信メロディ(ちゃくしん‐)は、携帯電話及びPHSの着信音を単音又は2 - 128音程度の音楽風メロディーにする機能である。略称の「着メロ」は、株式会社YOZAN(旧アステル東京)の登録商標。英語では...

着信ボイス

着信ボイス(ちゃくしんボイス)は、携帯電話の着信音をADPCM等で符号化された音声にする機能。通常芸能人の声や効果音などシンプルな音が使われる。なお、前者の場合は動画として配信されているものもある。最...

着せ替え携帯

着せ替え携帯(きせかえけいたい)とは、付属や別売りのパネルなどで外装が自由に選べる携帯電話の総称である。目次1 概要2 日本の機種2.1 NTTドコモ2.1.1 mova2.1.2 FOMA P90x...

着うたフル

着うたフル(ちゃくうたフル)は、携帯電話で従来の着うたを1曲全体でダウンロードできる、日本国内ローカルの音楽配信サービスである。圧縮率を約2倍に高めたHE-AACを使用することで、AACで圧縮された着...

着うた

着うた(ちゃくうた)は、携帯電話の着信音をMP3やAACなどのフォーマットで符号化された30秒程度の長さの楽曲にするサービス。株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の登録商標である。...