かつては大陸のほぼすべてを治めていた頃もあったというが、定かではない。
しかし、その頃の領土を回復しようという領土再占領計画は広く帝国民の理解を得ている。
それも、この国には農地に向かない荒れ地が多く、厳しい冬には雪と氷に閉ざされてしまう、生きるだけで苦しい飢えた国であり、他者から奪うことで自国民の腹を満たしてきた歴史が根強いせいもあるのだろう。
帝都であるザルゼリアには帝国立大学や魔導機械工学研究所など、多くの研究・学問の場が設けられている。
また、教育に力を入れてきた帝国の識字率は七割を超え、王国と同程度かそれ以上を誇る。
その基礎学力に支えられ、職業の選択肢がある帝国では、学問を修めれば魔導学者や加工師、蒸気機関の技師になる道が拓ける。
そのため、貧しい農家でも子どもを大学へ行かせようとする親も多く、帝国の技師にはそうした出自の者が多い。
こうして作られた質の高い魔導具・蒸気機関は西方諸島を通じて南海、南域にも流通している。
しかし、その品質の高さにも拘らず業績が今一つ不振なのは帝国の軍事政策を嫌う他国民が反帝国の立場を崩していないせいだろう。
早くから世襲による統治を否定してきた帝国では、帝国貴族という階級は飾りとしての立場になっている者が多く、ほとんどはなにがしかの実務を持つことで家名を維持している。
その中にあって、皇帝家には非常に強い権威が残っている。
この国の皇帝は血縁よりも能力が重視され、先帝の残した遺言が絶対であり、それによってのみ次の皇帝が選ばれる。
そのためか、選挙制度などはないものの一族による統治という雰囲気はない。
しかし領土再占領の悲願と、亜人排斥政策の二本の柱は帝国政治の中で揺るぎない指針のようで、代替わりが起こっても替えられる気配は今のところない。
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧