ワンダーランド諸島

ページ名:ワンダーランド諸島

 ワンダーランド諸島は、魔界に存在するとされている地域の一つ。魔界の東部にあり、赤の女王と呼ばれる魔族が統治を行っているとされる。

 1755年の調査の結果、アークランド王国本土とは6時間程度の時差があるとされた。

 

エニグランド航空71便事件

 ワンダーランド諸島の存在が明らかになったのは1750年、アークランド王国の旅客機、エニグランド航空71便が消息を絶った事件が起きた時である。

 1750年7月4日の午前9時(アークランド標準時。以降時刻は全てアークランド標準時)、エニグランド航空71便(ウォレス363B型、第46号機)はオーツェリア連邦デンテラント飛行場を目指し、アークランド王国のオックスカウ飛行場から飛び立った。機器のトラブル等もなく、定刻通りの離陸であった。午前11時過ぎ、ケルヒ海を航行中だったオーツェリア海軍の巡洋艦「ムティシア」が「自機の現在地が分からない」という通信を傍受。「ムティシア」は周辺を捜索したがそれらしき航空機は確認出来ず、オーツェリア海軍セレングラード基地とオーツェリア海洋警備隊ノルトオーツェリア州管区隊に応援要請を出した。午後2時、巡洋艦「ムティシア」からの通報を受けて西魔海近辺に調査に赴いたオーツェリア海軍駆逐艦「ルドベキア」の対空レーダーによって、西魔海へと飛んでいく航空機が確認される。同時に「自機位置情報喪失」の救難信号も受け取っており、「ルドベキア」は西魔海へと突入したが羅針盤の不具合発生により引き返した。午後3時、予定時間を大幅に過ぎているにも関わらず71便がアプローチしてきていないことをデンテラント飛行場が周辺の各飛行場とオックスカウ飛行場に問い合わせている。午後4時半頃、オーツェリア海軍の各艦からの報告がデンテラント飛行場とオーツェリア運輸省に上がり、オーツェリア政府はこれについてエニグランド航空71便が消息不明となったものとして発表した。

 アークランド側では午前10時にアークランド空軍の中距離レーダーの探知範囲外に出てから消息不明となっており、オーツェリアに到達していないことが判明するとこれを失踪事件とした。

 機体が発見されなかった為、複数の専門家の推測となるが、消失の原因は「自機の位置を失ったことによる、所謂迷子」と結論付けられた。71便はそのまま魔界へと入ってしまったものと見られ、乗客乗員合わせて32名の生存は絶望的と思われた。

 しかし7月11日、ケルヒ海にて1699年に行方不明となっていたオーツェリア海軍の掃海艇が発見され、調査に入ったオーツェリア海洋警備隊が「71便に乗っていたがここに戻ってきた」というアークランド人の少女アリス・リリエンソールを保護し、彼女の証言と、彼女が乗客と思しき男に託されたという71便のフライトレコーダーの内容によって、その事件の全容が明らかとなった。

 フライトレコーダーの記録によると午前10時半頃、71便は針路を北西ではなく北北西へと取り始め、10時50分頃に針路修正の為に針路を西へ変更した。機内での会話の記録を調べる限りでは、針路を誤ったことに気付いた機長はセレニア諸島を基点に針路を南南西に取ろうとし、目視でセレニア島を確認して針路を一旦西に取っている(セレニア島を基点に西、セレニア島から西に15km程の位置にあるペトラ島を基点に南南西に取るつもりだった)。一方セレニア島のオーツェリア空軍セレニヴォストーク基地と、近隣を航行中だったオーツェリア海洋警備隊の哨戒艇「ザフィール」、そして複数の民間船が同時刻に「ペトラ島上空で針路を西に取る旅客機」を目撃しており、機長はセレニア島とペトラ島を見間違えて変針してしまったものと思われる。

 午前11時過ぎ、ペトラ島を発見出来なかった71便は周辺の船舶・航空機に対して「自機の現在地が分からない」と発信。通信を傍受した巡洋艦「ムティシア」はケルヒ海を捜索したが発見には至っておらず、この時71便がどこに居たのかは不明である。正午から午後3時にかけて、71便は救難信号を発信し続けており、午後2時には駆逐艦「ルドベキア」の対空レーダーが西魔海へと入っていく71便を捉えている。

 午後4時55分、71便は緊急着陸した。機内の会話記録によると機長と副機長は深い霧の中に島を発見し、燃料が不足したこともあって緊急着陸を決行し、比較的広めの草地に不時着している。衝撃で副機長と乗客数名が負傷したが、いずれも軽傷であった模様。

 乗員乗客達は救難信号を発信しながら機内で一夜を明かしたが、無線に応答もなく、救助等の見込みも薄かった為、翌朝には動ける乗客の中で志願者を募り、機長をリーダーとして10名程で島の探索に出かけた。

 

アリス・リリエンソールの冒険

 アリス・リリエンソール(当時11歳)は両親と共にオーツェリアの母の実家へ行く為に71便に乗っていた。父チャールズは不時着時に負傷し、島の探索には赴かなかったが、不測の事態に備えて飛行機の部品から槍を作り、探索隊の帰りを待った。一方、母ハンナは未知の島に不時着した事実による不安で圧し潰されており、アリスの付き添いを必要としていた。

 7月5日の昼頃、探索に出かけたメンバーの内2人が不時着地点に戻ってきた。いずれも乗客の14歳の少年ら(グレン・フィリップスとイーサン・ニコッドと思われる)で、草地から西に3km程の森に入った直後、機長と他のメンバーが苦しみ出した為、森から草地へと引きずり出し、何事もなかった3人の内1人(ジョセフ・クリップスと思われる。この時無事だった3人はいずれも14~16歳の少年であった)を見張りに残して、2人で機長らを運ぶのに使える道具を調達しに来たというので、不時着地点に居たメンバーは飛行機のシートを提供した。

 少年らはすぐにシートを持って駆けていったが、2時間後には3人が意気消沈した様子で戻ってきた。

 ジョセフによれば森に入って苦しみ出した8人全員の体中からキノコが生え出し、やがて体の形がかろうじて分かる程度までキノコで覆われるとゆっくりと起き上がり、一つの大きなキノコのように立っているだけの存在となったという。呼びかけても触れても反応がなく、一方で持ち帰ることも気が引けた為、その場に放置してきたとのことだった。

 少年らの話を聞いた不時着地点のメンバーは島の危険性を確信し、不時着地点への籠城を検討し始めた(アリスの記憶によれば皆「ここから動かないのが安全だとは思うが、ここで待っていて何かが始まるとも思えない」という見解で一致していたという)。

 しかし7月6日の朝、ハンナの悲鳴で目を覚ましたアリスはチャールズを含む十数人がキノコになっているという惨状を目の当たりにする。

 生き残ったのは昨日森から戻ってきた3人の少年と客室乗務員の女性2人、アリスと少年らの母親、見張りの為に機体の外に出ていた副機長と2人の男だけだった(この時副機長がフライトレコーダーに音声を残しており、生き残ったメンバーはジェフリー・ギーズ(副機長)、ジェシー・トウラー(客室乗務員。ハーフメイド)、レイラ・マーチ(客室乗務員。白兎獣人)、レイフ・ハミルトン(副機長と共に外に居た男)、ガス・ハーバート(副機長と共に外に居た男。アリスによると、ジェシーかレイラかは不明だが客室乗務員の女性と仲が悪かった)、ジョセフ・クリップス(アリスによると16歳の少年)、グレン・クリップス(アリスによると14歳の少年。ジョセフの弟)、イーサン・ニコッド(アリスによると14歳の少年。ハーフエルフ)、ソフィー・クリップス(ジョセフとグレンの母親)、ネリー・ニコッド(イーサンの母親。ダーク種エルフ)、ハンナ・リリエンソール(アリスの母親)の11名。一方アリスはそれ以外に機体の上で寝ていたダミアン・エースというダーク種エルフの男も生き残っており、12名と主張している。ただし、71便の乗客名簿にそんな人物は存在しない。71便が出発する数時間前にオックスカウ市内で市議会議員が殺害される事件が発生しており、目撃情報からダーク種エルフの男が容疑者として浮上していたが、この容疑者がダミアン・エースであるとする説もある)。

 副機長が無線でフライトレコーダーに生存者の氏名を吹き込んでから数分後、ギーズ副機長と、彼と外に居た男2人(レイフ・ハミルトンとガス・ハーバートと思われる)も急に苦しみ出し、それから数分後には3人ともキノコと化した。

 この一件によりハンナは完全に発狂。機体から駆け出し、追いかけたクリップス兄弟とその母親ソフィー、そしてレイラと共に行方不明となってしまう。

 ジェシー、イーサン、ネリー、アリスの4人は機体から出て行った5人を連れ戻すかを協議したがジェシーは機体に残ることを主張し、イーサンは連れ戻すことを主張した。アリスもイーサンの意見を支持した。ネリーは連れ戻す連れ戻さないに限らず、島を探索することを主張した。いずれにせよ機体を離れる意見の方が多数となった為、4人は5人が駆けて行った方へと歩き出した(ダミアンがどうしていたのかは不明。アリスはいつの間にか居なくなっていたとしている)。

 ハンナが駆け出した方向には森があり、4人がその森に入って暫く(アリスは「2時間くらい」と主張しているが、後のフライトレコーダーの記録では出発したと思われる午前12時26分から約3時間後の午後3時30分に後述の兵士達の、アリス達を発見した時と思しき声が記録されており、片道の移動時間自体は1時間から1時間半程度と思われる)歩くと木造建築を発見した。

 5人がこの家の中にいるかもしれないと考えたアリス達はその家に入り、そこで初めてこの島の住民と遭遇する。

 (アリス曰く「綺麗な大陸共通語で」)侯爵夫人を名乗るこの人物は4人を見回した後、アリスに自身が抱いている赤ん坊を受け取るように言った。アリスは赤ん坊を抱き上げながら母親と母親を追いかけて消えた4人の行方を尋ねたが、侯爵夫人は「知らない」と一言答えただけだった。

 4人はこの島の住民ならここがどんなところなのか知っているだろうと思い、それぞれ侯爵夫人に質問したが、侯爵夫人が答えたのはアリスの「母親の行方」と「島の名前」だけで、回答はそれぞれ「知らない」「不思議なところ(Wonderland)」だった。

 仕方なく4人は家を出たが、アリスの抱えていた赤ん坊が豚になって逃げ出してしまう。追いかけようとしたが、次の瞬間には近くの木の上に突然猫が出現したことに驚き、豚は取り逃がした。

 木の上に出現した猫は先ほど侯爵夫人の足元に寝ていた猫(ネリーがそう言ったという)で、「女王様のところかもしれないね」とだけ言うとまた消えた。

 ネリーの提案で、ひとまずその「女王様」の居場所を目指そうという話になり、4人は森の中の探索を続けた。

 暫く歩くと今度は大きな帽子を被った男(アリス曰く、人間に見えた)と鼠の獣人、そしてレイラがお茶会をしているテーブルと遭遇した。

 ジェシーがレイラに声をかけたが全く要領を得ない発言しかせず、大きな帽子を被った男(レイラは彼のことを「帽子屋」と呼んでいた)と答えもしないなぞなぞの出し合いか眠ろうとする鼠の獣人を乱暴に起こすかを続けるのみだった為、4人はレイラは気が狂ったものと考え、その場を立ち去ることにした。

 しかしその件でジェシーが気分を悪くした為、一行は少し休憩してから一度墜落現場に戻ることにした。

 アリス達は来た道を戻って森を出たが、墜落現場にはハートやクローバーのマークのついた白装束に赤や黒の槍を持った兵士と思しき集団が集まっており、4人に気付くと数人が駆けてきた。ネリーとイーサンはすぐに森へと逃げ出したが、幼く足の遅かったアリスは遅れてしまい、アリスを庇おうとしたジェシーと共に彼らに取り囲まれた。

 白装束の兵士達は(流暢な大陸共通語で)ジェシーとアリスに対して「女王陛下がクロッケー大会を開催している。お前達も参加せよ」と告げ、2人に歩くように促した。ジェシーは最初拒む姿勢を見せたが、アリスが従うとそれに倣った。兵士達に連れられて歩いている間も彼女はずっとアリスの手を握っており、その手は小さく震えていたが、度々小声でアリスを励ますような言葉をかけてきていたという。

 その後、アリスは兵士達によって大きな城に連れられ、「赤の女王」なる人物と引き合わされているが、何故かその人物と出会った辺りから記憶が定かではなく、城内で何をしたか等を覚えていないとしている。はっきりと記憶しているのは、経緯は不明だが赤いドレス(7月11日にケルヒ海で発見された際、アリスは赤いドレスを着用していた)を身に着けた状態で森を歩き、森を抜けた先の海岸に辿り着いたことと、そこでダーク種エルフの男(アリスはダミアン・エースと主張している)に鉄の箱(71便のフライトレコーダー)を渡され、海岸に漂着していた船に乗せられたことであった。ダーク種エルフの男は船(オーツェリア海軍の掃海艇)を出航させると自分はそのまま飛び降りて島へ戻ってしまったという。

 艇内には「美味しくないビスケット」(オーツェリア海軍の非常食のことと思われる)と水の入ったボトルが何本かあり、アリスは数日間の漂流じみた航海の末、オーツェリア海洋警備隊に保護された。

 

アークランド王国軍とオックスカウ大学による調査

 1755年7月8日、アリスがワンダーランド諸島から持ち帰ったペンダントが突如として発光。アリスは知人を通じてオックスカウ大学へとそれを持ち込み、同大学魔物学教授のアルフ・ザイラーが観察を行った結果、光の帯が常に一定の方角を指していることが判明。

 報告を受けたアークランド政府は、ワンダーランド諸島の領有に興味を示していたこともあり、ザイラーに軍同行でのワンダーランド諸島調査を依頼。ザイラーを団長として、重要人物であるアリス、参謀本部地域調査課の将校、そして護衛に海兵隊をつけたワンダーランド諸島調査団を編成。アークランド王立海軍巡洋艦「チャレンジャー」を旗艦とし、駆逐艦1隻と調査船1隻からなる3隻の船団をワンダーランド諸島へ派遣した。

 

 

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