ソフトフォーカスレンズはソフト量固定タイプと可変タイプがある
ソフト量固定タイプはいわゆるベス単タイプが知られており、
ベス単はもともとコダック社のレンズ固定型小型フイルムカメラ「ベストポケット・コダック・カメラ」に使うための結像レンズとして1群2枚構成の単純なレンズ構成で設計された。この単純な構成であっても球面収差の補正を切り捨てることで球面収差以外の補正をある程度良好にできたのである。このレンズは2枚のレンズを接合したものだが、外見上1個のレンズ塊に見えるため通称・愛称として「ベストカメラの単レンズ」「ベス単」と言われるようになった。球面収差以外を良好に補正した上で、F値を暗くすることで、球面収差を抑制し単純安価な光学系で良好な結像を得るというコンセプトで設計されたものであった。ところが光線をカットしF値を暗くするために取り付けていたフード・絞り部品が容易に取り外せる構造となっていたため、これを取り外して使用するユーザーが現れ、そうするとF値を暗くすることで抑制されていた大きな球面収差が写真に現れることとなる。このレンズは前記経緯で球面収差以外は良好に補正されていたことから、球面収差のみが残存した面白い写真が撮れるということで話題になり「ベス単フード外し」として流行した。そのためこのベス単の写りを各社が独自に再現したベス単タイプのソフトフォーカスレンズが商品化されることになる。ここで再現されるべき特性とは「球面収差の意図的残留」球面収差以外の良好な補正」であり、単に「写りの悪いレンズ」ではない。特に非点収差や像面湾曲の残留は周縁部のボケの汚さを引き起こしてとしてソフトフォーカス効果を台無しとするためその除去は重視される
特開平01-211712 旭光学 2群4枚
また球面収差の残し方としては3次収差を残存させるタイプと高次収差を残存させるタイプとがある。後者はF値が大きくなると加速度的に大きな球面収差が現れる傾向があり、逆に絞り込むと急激に像が鮮鋭になるので、ピント合わせが比較的容易だが、高次収差を生じさせるため曲率の強い局面が必要となり製造コストが高くなりやすい欠点があるベス単タイプのソフトフォーカスレンズは前者に含まれる。
また白黒写真向けに球面収差アではなく色収差を意図的に残存させてソフト効果を得る製品もあるが、カラー写真では色にじみが汚く表れるので現在では廃れている
ベス単タイプのレンズは一般的にソフトフォーカス量の調整は絞りの開閉により行う。このタイプのレンズは一眼レフやミラーレスカメラにおけるピント調整に本質的困難さを抱えている欠点がある。絞り開放では球面収差が大きすぎピント合わせが困難となる。そこで絞りを絞り込めば球面収差が抑制されてシャープになるが被写界深度の深さやファインダーの暗さのためやはりピント合わせが困難となる。そこで絞りとは別に、ソフト量調整リングなどを搭載しそれを回すことによってレンズ群を光軸に沿って可動とするなどによってソフトフォーカス量の可変機構を持たせた製品が開発されるようになった。
ソフト量可変タイプの特許出願の例として、ミノルタが出願した特開昭56-095208がある
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