■はじめに
トラカレでははじめまして。サークルEverSphere Methodの雨月です。
いつもトライナリーの本を制作しています。
2020年も1年中トライナリーの本を制作していました。
今回はそぉいさん企画の「拡張少女系トライナリー Advent Calendar 2020」に参加させていただいています。
いつもアドカレに参加したいなぁと思いつつも、トライナリー本の入稿時期と重なっているので参加できないと見送っていたのですが、今回は最終日ならトラカレの原稿が間に合いそうということで参加することにしました。トラカレに無事投稿できているということは、つまり、本の入稿が無事済んだということです。そんな近況なので、この記事の最後で、直近で制作した本の話もさせていただきたいと思います。
■これまで制作してきたトライナリー本
ご覧の通り、2018年から制作を初めて、これまで何冊ものトライナリー本を制作してきました。たくさんの人に協力していただき、これだけの本を制作することができました。ご協力どうもありがとうございます。
こうして並べてみると、机いっぱいになって、なかなか圧がありますね(何冊かトライナリーではないものも混じっていますが……)。
さてさて、上の写真をよく見ると、何か見覚えの無い本があると思います。もちろん、全部見覚えの無いという方もいると思いますが、この写真の中には今回がWEB上で初めて公開する本もいくつか入れています。
この記事ではこの初出の本を取り上げて普段どうやって本を作っているのか簡単に紹介できたらと思います。
■2018年試作の旅
△2032年ココロの旅 表紙比較写真(左:最終版 右:試作版)
こうして並べてみると、その違いがよくわかると思います。この2種類の本、何が違うかというと、片方が試作(試し刷り)でもう片方が正式発行版です。表紙の色合いや裏表紙のオブジェクトの配置が違うのがよくわかると思います。
本に限らずなんでもそうですが、まずは作ってみて現物の仕上がりを見てみないとどうすべきか方向性が見えませんよね。私はそんな方針でいつも本を制作しているので、自宅のプリンタで試しに出力したり、印刷所に試し刷りを1冊発注したりして、仕上がりを確認して修正を繰り返す作業を何度も行います。まあその分お金と時間はかかってしまうんですけど、これも必要経費です。
△2032年ココロの旅 比較写真(左上:最終版 右上:試作版 下:試作版の本文ページ)
ちょうど上の写真のような感じでちょっと色味を変えたバージョンをいくつも作って試し刷りをしたりするんですよ。緑や紫の色合いが違うのがよくわかると思います。
あ、よく見ると、この試し刷りを行った時は、タイトルの2032年が最初に来ているんですね。この本のタイトルはある有名なSF映画『2001年宇宙の旅』のタイトルから着想を得ています。なので初期は『2032年拡張少女系トライナリーココロの旅』だったんですね。それから編集会議をやって『拡張少女系トライナリー2032年ココロの旅』の方が響きがいいとかそんなことを太陽神.rarが言い出して、最終的なタイトルが決まりました。それはそうとBotさん的には『2001年宇宙の旅』を見るのもオススメです。ソイルトンのようなAIも出てきますしね。あ、こんなことを言ったらソイルトンに怒られますね、HAHAHA!
せっかくの機会なので『2032年ココロの旅』より前のタイトルをひとつ。古いバージョンのパワーポイントから発掘してきました。タイトル候補は他にも十数個あって、個性的なものもいっぱいあるのですが、その中のひとつをここで公開します。
このタイトルだとトライナリーというよりどこかの新劇場版アニメですよね。最初期なので、デザインも結構適当です。よく言われるのですが、「お前の作るソイルトン(Botアイコン)は何か違う」と、こうして見ると確かに違いますね。横に並べて制作しているのにこうも違うとは……ソイルトンが構ってくれなくなりそうですね。
上の画像はトライナリーの本を作ろうということで、トライナリーらしい本にしたいとデザインしている過程の表紙です。表紙をデザインする中で、トライナリーらしさって何だろうと考えて、アプリを起動してみるのですが……このタイトル画面のひとつ先より進めず、タイトル画面をずっと見つめていたらこんなデザインになりました。「終わらないメンテ」「オフライン化希望」の文字列は当時の私の想いを表していますね。それから背景画像を見ると、2018年8月31日のデイトラの画像と似たような画像を探し出してきています。サービス終了日のデイトラは当時の自分のココロの中でとても大きな存在だったようで……。思い返すと、あのデイトラは自分の中に深く刻まれていて、今でも本を作る原動力になっています。
■トライナリーの緑が再現できない……
思い出話はほどほどにして、本の制作の話に戻りましょう。この『2032年ココロの旅』の制作時は初めて本文フルカラーの本を出すということで、印刷でどんな色が出るかに恐々としていたんですよ。ディスプレイの色はRGBカラーで印刷後の本の色はCMYKカラーなので、同じ色を再現させることができないんですね。そのため、いくつものカラーサンプルを試し刷りの原稿の中に紛れ込ませて、理想の印刷色を探っていきます。特に危惧していたのが、トライナリーの「WAVE」や「DATA WINDOW」カラーの緑色です。これがどうなるか、試し刷りを行い、実験した結果がこちら。
△DATA WINDOW画面 見本
トライナリーアプリの「DATA WINDOW」「WAVE」の緑は印刷で再現できない!
RGB蛍光色の緑はCMYKでは無理!
この事実に愕然としました。「これではトライナリーらしさを出せない、どうしよう?」となってしまいました。けれど、コミケという名の参加料1万円の締め切りは目前に迫ってきているので、数ある緑のサンプルの中から最も良い緑に妥協しました。編集に限らずモノを創ること全般の話ですが、締め切りというものはどうしても存在します。品質向上のための延期は喉から手が出るほどやりたいんです。でも期限は存在するのです(自分への戒め)。
妥協とは言っても、WAVE形式のデザインのインタビュー自体はトライナリーっぽさがあっていいですよね。トライナリーだからこその表現ができて個人的には良かったと思っています。
■トライナリーらしさを目指したメカニカル設定資料集の制作
おっと、小話のつもりが長話になってしまいました。『2032年ココロの旅』の話はこの辺にして、次の本の話をしましょう。
次はこれですね。
△メカニカル設定資料集(左:試作 右:完成版)
『拡張少女系トライナリー情報誌Zoltaxian別冊メカニカル設定資料集Vol.1』です(長文タイトル)。
これは12ページの中綴じ本を作るのが初めてというのと、ARアプリの動作確認用に試し刷りを行いました。こうして見ると試作の表紙はトライナリーらしさが足りないですよね。表紙に掲載している情報自体はどちらもだいたい同じなのですが、単純にデザインが違うだけで、こうも最初に見た際のインパクトが変わってしまいます。せっかくの機会なので、この表紙をどうやって作っていったか紹介していきましょう。
私の場合、何か誌面をデザインする際には最初にどんな情報を掲載する必要があるかを抽出していきます。メカニカル設定資料集の場合だと、
・タイトル(メカニカル設定資料集)
・3Dモデル実物
・AR
・対応OS(バージョン)
・3DモデルをARで表示!
・ガブリエラ
・Introduction(概要)
上記情報が必要と考え、プラスしてデザインの方向性としては、
・3Dモデルのカッコよさをアピール
・ARアプリを強調
・ガブリエラらしさ
・トライナリーらしさ
こんな感じの要件が必要であると仕様を組み立てていきます。表紙に必要な情報を列挙し、表紙の大きな目的というか方針を打ち出して制作していきます。方針が言語化できるほど明確化されているので、最初の目的からぶれず、堅実な仕上がりが期待できる制作スタイルです。それとは逆に、デザインセンスのある人は先にデザインから入っていくので、きれいなデザインの誌面ができあがるんですけどね。私の場合はデザインよりも掲載する情報そのもの(文章や画像のパーツ)を重視するので、例えば雑誌風の表紙だとか、情報量多めの記事のデザインや文章の組み版は得意です。けれど、ポスターのような情報量少なめのものや漫画や小説の表紙など、デザインセンスが何よりも重要視されるモノは苦手だったりします。
△試作表紙
さてさて、試作段階では必要な情報の抽出までしかできていない状態ですが、ここからデザインを作り上げていきます。要件のうちの3Dモデルのかっこよさ自体は、既にモブ整備兵さん制作の3Dスナイパーライフルが十分にカッコイイのでこれで良く、ARであることも最後に文字を目立たせるだけです。では、ガブリエラらしさとは何なのか?、ということで、記録映像のガブリエラと銃器が登場するシーンをリストアップしたファイルを眺めてみました。
Act2 Episode2のガブリエラのスナイパーライフルを構えるシーン(メカニカル設定資料集表紙)いいなぁという感想は出るのですが、表紙のデザインは思いつきません。このままではまずい……。
このメカニカル設定資料集、諏訪さんにメカ考察をお願いしたら、銃器やマルザンナ伝承に関してすごく調べ上げられた考察が上がってきたし。とある隊員さんは、3Dモデルが表示できるARアプリを様々な手段を検討して制作している……。これはまずい……。
△メカニカル設定資料集 ARアプリで撮影した3Dモデルの写真
このままでは冊子の制作担当の私の立場が無い……ということで、手元にあるガブリエラの画像を手当たり次第にあたります。
△「これじゃない……」
△「これでもない……」
△「トライナリーがわからなくなってきた……」
△CH.3 カットイン「やっぱりトライナリーと言えば、これ!」
トライナリーアプリの中で一番好きな演出と言えば、私はこのチャンネル切り替えのシーンをあげます。このチャンネル切り替えの一連の流れ、とてもいいですよね。改めてこのカットインの画像だけ眺めても、あのカットインシーンの美しさが頭の中に思い浮かびます。アプリプレイ当時は特に用も無いのにチャンネルを何回も切り替えた覚えがあります。というわけで、私の中でトライナリーらしさを感じるこのカットインのデザインをメカニカル設定資料集で採用することにしました。
さらに今回は3DモデルのARアプリを売りにしたいので、背景にポリゴンっぽさがある画像を入れこんで、3Dらしさを演出します。テーマ色はもちろんガブリエラのMindColorのPeppermintです!
△メカニカル設定資料集Vol.1 表紙 試作段階2
ただ、このカットインの帯を入れるだけだと表紙にはちょっと物足りないですよね。太陽神.rarがZ構図がどうのこうのと語っていたのを思い出し、少しアレンジしたら表紙っぽくなりました。
△メカニカル設定資料集Vol.1 表紙 試作段階3
ただこれでもちょっと物足りないと感じたので、もう一つ帯を入れて……「どーーーーーん!」
これでデザインが完成です! Z構図ではなくWになってしまいましたが、まあいいでしょう。
それはそうとパワーポイントの左側がなんだかすごいことになっていますね。ここでは完成稿に至るまでにカラーリングやサイズを微調整した時のパーツをスライドの左側に待避しています。プリンタで出力して、良い色が出るまで何度も3Dモデルの色修正をモブ整備兵さんにお願いした覚えがあります。その甲斐あって、最終的には狙った発色になりました。
ちなみにメカニカル設定資料集Vol.3は鋭意制作中です!
2021年に発行予定です。ご期待下さい!
■本の試作のススメ
さて、今回は「本の試作」と「デザインにおけるトライナリーらしさ」の話をしてきましたが、本の試作をする上でのオススメの印刷所を紹介しておきましょう。本の場合は1冊から製本してくれる印刷所は少なく、あったとしても1冊だけの場合は高額なことが多いです。そんな中、1冊だけでも手ごろな価格で製本してくれる印刷所があります。
例えば、よくある同人誌「B5/表紙フルカラーPP付(ラミネート加工)/無線綴じ/本文20ページ」を1冊だけ製本すると、
△製本直送.com 料金シミュレーター
お手頃な価格ですよね。お試しで本を作ってみたいという場合にはもってこいです。自宅のプリンタで印刷するのとそれほどコストも変わらないですしね。何度もトライ&エラーをこなして、クオリティを高めていきましょう。
他にも例えば、昨年発行した情報誌ゾルタクスゼイアン第1号を1冊だけ製本すると……あ、結構お高いですね。分厚いカラー本は印刷代が高いのが悩みの種です。
この印刷所ではさらに納期も最短で入稿の翌日出荷という入稿直前の試し刷りにも対応可能です。ただし、今回紹介したサイトは試し刷りにはオススメですが、サポートが無い分安いという事情があるので、最終版はサポートが手厚い別の印刷所の方がオススメです。印刷所によって微妙に印刷の色合いや品質が異なったり、紙質が変わったりするので要注意です。
■おわりに
以上、長々とお付き合いいただきありがとうございました!
この制作話が少しでも参考になったなら幸いです。
それにしても、トライナリーや本の制作の話だと話題がつきませんね。まだ話し足りないところですが、このアドベントカレンダーは25日中に公開しなければならないということで、この辺りで筆をおきたいと思います。
それでは、最後に冒頭の写真でお見せした初出の本をもう1冊紹介して、この企画を締めくくります。
△2020年冬新刊が含まれている写真
今回の新刊はこの記事で紹介したサイトでA5サイズとB5サイズを試作してみてどちらがいいか検討しました。
今回発行する本の企画に内容に関しては価格上昇分以上にB5サイズが良かったので、サークルEverSphere Methodとしては初のB5フルカラー本を出します!
サークルEversphereMethod 2020年冬新刊 紹介ページ
(2020年12月25日 21時頃リンク公開予定)
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