まモード

ページ名:まモード

 

 

 

 

 

現時刻を以てあなたは特別心理対策局情報取扱管轄、『奇書院』の審査部門に就任されました。

前任者として、簡易ではありますがこれからあなたの触れるものについて説明します。

審査部門の業務とはざっくりと言えば、この派閥においての様々な申請を、それに必要な知識を踏まえたうえで吟味し、最も合理的な形で承諾あるいは却下の判断を下すことその一点に集約されます。

それらは例えば……治療の見込みのない夢現災害被災者への安楽死の検討。防衛線を維持するため、水底へ沈む集落の選択。人肉団子で悪夢餌付けする。だとかそういった道義的な責任を伴うようなものをです。また、『それを判断するのに必要なだけの十分な知識を得る機会』が与えられるのです。これらは通常義務であり、それを困難にさせる何等かの理由(視聴覚の障害などです)がない限り免除されることはありません。

そしてそれがあなたが選ばれた理由でもあります。非認可情報をアクセスすべく、ハッキングに踏み込んだとき、幾つかの大悪夢の記録が書警を通じてのような特殊な保管方法ではなく、通常のデータベースに置かれていたのを不審に思わないわけではなかったでしょう?でも知識欲に勝つことはできませんでしたね。これは批難ではありません。あなたのその極めて旺盛な好奇心と潔白すぎない倫理観を人事部は評価したのです。

奇書院を1つの人体と例えるなら、審査部門は瞼のない眼球だと言えます。剥き出しであるがゆえに常に直視することを強いられ、私達は少しずつ乾いていくのです。そして乾き切った、あー、つまりは悪夢を生み出しかねない位精神汚染を受けた職員は、最終的にこの部門を異動することになります。実際、私がそうでした。

私達は、あたなは消耗品になるということを忘れず、そして覚悟していてください。

 

ようこそ、そしてこれからヨロシク、新人クン。

あー、送付された文書はこっそり読ましてもらったんだが………随分とおどかされてて正直少し笑ってしまったな。

まあ、彼女は間際まで苦しんでいたからね。無知なる新たな生贄だと君のことを憐れみ忠告したくなる気持ちもわからないわけじゃあない。ああ、本当に。所長の珈琲には角砂糖3つとミルクを忘れずに、と新人に指導するときは僕だって彼女と同じくらい深く強く、念入りに忠告するだろう。(これはジョークだけど嘘でもない。君が彼に目を付けられないよう助言する僕の100のアドバイスの一つだ。)

だけどね、審査部門は彼女が言うほどしんどいだけの場所でもない。『それを判断するのに必要なだけの十分な知識を得る機会』である限り、君は殆どの奇書院の部署をそれ相応の立場を与えられた状態で渡り歩くことができる。そして、その基準を決めるのは同じく審査部門の権限にあるんだ。……どうだい?少し楽しみが生まれたんじゃあないか。

 

というわけで、僕からは君の新しいピクニック先になる部署達のことを軽く手ほどきしようと思う。

まずはじめは管理部門。院長をはじめとしたお偉いさんたちの老人会で、唯一僕らが入り込めない聖域だ。予算の最終的な決定と人事をどんな風に割り当てるかを決めるところで、君をここに選んだのも彼らだ。基本的には彼らは成果を重視している。僕たちが相応の結果を出し続けていれば口を出してくることはそうはない。ごくたまに強権を振るってくることもあるが、それは言わば災害みたいなものだから抗おうとは思わない方が賢明だろうな。

次に記録部門。奇書院が保有する夢界関連の書籍・データを管理するところであり、一昔前まではこの部署が最も規模が大きかった。いくら読み込んでも資料は尽きないから飽きないというか暇潰しには向いているね。大半の人員は非ダイバーだし、通常書籍は図書館として一般公開もしているから、一番牧歌的なところとも言える。普段の業務に心が擦り切れそうになったらここで休むのもよいだろう。

はてさて第三に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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