「なぁ、文車。」
「んん。どしたの銀ちゃん?そっち呼びは珍しいね」
「お前、前に神社のこと『それなら貸しといてあげる。精々80年くらいでしょう?』って言ってたよな」
「あぁ~、懐かしいけど恥ずかしいね。ちょっと威厳出したかったときのやつ」
「初対面の籠をケツで踏みつぶしてる時点で威厳もクソもなかったけどな」
「ひどぉい。」
「でまあ、最近それでふと思ったんだ。俺が死んだ後どうするんだ?って」
「えーっ。銀ちゃんがそれ言うの?どうせあの世にゃ持っていけはしねえとかばっか言うのに?」
「いつ死ぬかわかったもんじゃないから金は惜しまないって話であってだな、それとこれとは別だ。」
「というか、それがいつ来るかわからないからこそのほほんとしてるお前が気掛かりなんだよ」
「えっ何それ……”愛”じゃん……」
「どつくぞ」
「ごめんって。だから女の子にグーはやめよ、グーは。」
「……ったく。実際どうするつもりなんだ、生きてる間にできることがあるなら、考えないこともない」
「新しい宿主も探すなら早いほうがいいだろう」
「そう?じゃあ特心対主催のオタクダイバー合コンに銀ちゃんの名前で応募しておくね」
「いったぁ!!!」
「拳骨くらいで四の五の言うな。茶化しやがって。」
「拳骨も十分DV……いやもうやめとこう。頭に鏡餅できちゃう」
「うーん。案外深いこと考えてなかったんだよねぇ。」
「おいおい……」
「銀ちゃんが死んだら、私もついでにそっちにいこっかなーとか思ってからさ」
「待て。……神社を回収するんじゃなかったのか?」
「嘘は吐いてないよ。『貸す』としか言ってないもん」
「叙述トリックかよ……。言っておくが、俺は道連れなんて一つも望んじゃいないからな」
「私だって銀ちゃんの為に死のう、だなんてこれっぽちも思ってないよ。自意識過剰だよ」
「なら」
「私は『人が人へと向けた』恋文の夢だからさぁ。真似したり、学んでみたりしたいんだよね、愛を。」
「……だからってなぁ。そりゃ、ドラマとか、映画に染まり過ぎなだけだろう」
「そんなんじゃないよ」
「変にきっぱり言うじゃねえか」
「だって夢が生まれた動機に向かうのは、本能に従ってるだけ。百足が我が子に身を食べさせるみたいなもの。献身的に見えるけれど、ただ、本能に刻まれたグロテスクな習性に逆らえないだけなんだよ」
「私もそう。添い遂げる愛を知りたいって本能に、なんだかんだ許してくれそうな銀ちゃんを巻き込もうとしてるの。だって、それはきっとまた無味無臭の300年をやるよりは、絶対楽しい終わり方だもん。」
「……」
「ね。頷いてくれるとは思ってないけど、否定もしないよね。……銀ちゃん優しいから。」
「というわけで!さっきの話に繋がるんだよね。私は銀ちゃんに色んな愛を見知って欲しい。そして、願わくば。私はそれを眺めてたいの」
「……あぁ、その……なんだ……それ本気で言ってるんだろうな?」
「もちろん」
「……後で要綱をよこせ。検討だけする」
「やった!きゃー、どうしよ、生で『すぷりんぐ☆ふぃーるど』先生に会える日が来るなんて!恥ずかしくない恰好で行かなきゃ……!」
登場人物
その後頭に鏡餅ができた。
その後頭に鏡餅を作った。
「なぁ、文車。」
「んん。どしたの銀ちゃん?そっち呼びは珍しいね」
「お前、神社のこと『それなら貸しといてあげる。精々80年くらいでしょう?』って言ってたよな」
「あぁ~、懐かしいけど恥ずかしいね。ちょっと威厳出したかったときのやつ」
「初対面の籠をケツで踏みつぶしてる時点で威厳もクソもなかったけどな」
「ひどい。」
「でまあ、最近ふと思ったんだ。俺が死んだ後どうするんだ?って」
「えーっ。銀ちゃんがそれ言うの?どうせあの世にゃ持っていけはしねえとかばっか言うのに?」
「いつ死ぬかわかったもんじゃないから金は惜しまないって話であってだな、それとこれとは別だ。」
「というか、それがいつ来るかわからないからこそのほほんとしてるお前が気掛かりなんだよ」
「えっ何それ……”愛”じゃん……」
「どつくぞ」
「ごめんって。女の子にグーはやめよ、グーは。」
「……ったく。実際どうするつもりなんだ、生きてる間にできることがあるなら、考えないこともない」
「新しい宿主も探すなら早いほうがいいだろう」
「そう?じゃあ特心対主催のオタクダイバー合コンに銀ちゃんの名前で応募しておくね」
「いったぁ!!!」
「拳骨くらいで四の五の言うな。茶化しやがって。」
「拳骨も十分DV……いやもうやめとこう。頭に鏡餅できちゃう」
「うーん。案外深いこと考えてなかったんだよねぇ。」
「銀ちゃんが死んだら、ついでに付いていこうかなと思ってたからさ」
「おい、神社を回収するんじゃなかったのか?」
「嘘は吐いてないよ。『貸す』としか言ってないもん」
「つってもなぁ……。言っておくが、俺は道連れなんて一つも望んじゃいないからな」
「私だって銀ちゃんの為に死のう、だなんてこれっぽちも思ってないよ。自意識過剰だよ」
「なら」
「私は『人が人へと向けた』恋文の夢だからさぁ。真似したり、学んでみたりしたいんだよね、愛を。」
「……だからってなぁ。そりゃ、ドラマに染まり過ぎなだけだろう」
「そういうのじゃないよ。夢が生まれた動機に向かうのは、百足が我が子に身を食べさせるみたいなものだよ。慈しみとか、母性じゃなくて、ただグロテスクな本能に従ってるだけ」
「私もそう。添い遂げる愛を知りたいって本能に、なんだかんだ許してくれそうな銀ちゃんを巻き込もうとしてるの。また無味無臭の300年をやるよりは、余程楽しい終わり方だから」
「……」
「ね。頷いてくれるとは思ってないけど、否定もしないよね。……そんな風に悲しそうな顔するとも思ってた」
「というわけで!さっきの話に繋がるんだよね。ほら、私、子への愛もまだ未履修だから興味あるの。銀ちゃんがもしも私の前から居なくなっても、まだ生きるだけの中身がある数十年になる」
「あぁ、その……なんだ……それ本気で言ってるんだろうな?」
「もちろん」
「……後で要綱をよこせ。検討だけする」
「やった!きゃー、どうしよ、生で『すぷりんぐ☆ふぃーるど』先生に会える日が来るなんて!恥ずかしくない恰好で行かなきゃ……!」
次百の頭上に痛々しい鏡餅ができたのは、言うまでもない。
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