糖果劫案 / Candy Snatcher


良い祝祭とは、思い切り羽目を外すための口実になるものを指す。
祭りがどれほど人々に愛されるかを決めるには、その由来が特に重要だ。
あまりにも小さな祝日――たとえば「植樹を奨励する日」や「間抜けなモグラを愛でる日」などでは、心ゆくまで楽しむ理由にはならない。
かといって、あまりに大きな祝祭では、格式ばかりが目立ち、自由が利かない。
カレンダーを一冊まるごとめくって、マーフィーが一番心待ちにしているのは、この「巡聖の祝日」だ。
この心のこもった祝祭には、夜のパーティーが標準装備でついてくる。
誰もが奇抜で滑稽な装いに身を包むこともできる。
そして何より重要なことはーーこの日は、ミサゴのあらゆる場所が、甘味とお菓子で埋め尽くされるということだ!
リキュール入りキャンディ、フルーツグミ、ミント、トフィー、ミルクキャンディ、色とりどりのチョコレート……
ふふっ!これはもう、淑女のために用意された祭日なのではないかしら?
マーフィーは意気揚々と尖った魔女帽をかぶり、ふわふわのパンプキンスカートに着替えた。
そして真剣に選び抜いた特大のカボチャバスケットを手に、扉を押し開けた。
「ええっ?このお菓子は、子ども専用ですって?」
両手いっぱいにお菓子を抱えて帰っていくジェンキンの背中を見送りながら、淑女は信じられないというように眉を吊り上げた。
スカートの下から伸びた触手が、苛立ったようにびくびくと揺れる。
ぎり、と噛みしめる歯。
彼女は冷笑を浮かべると、カボチャバスケットをカウンターにドンと叩きつけた。
「もらえないっていうのね?ならいいわ、今のわたくしは子どもじゃないーー強盗よ!三つ数えるわ!その間にこのお菓子、ぜ~んぶ包みなさい!早く!」
冷や汗をかいた給仕は泣く泣くキャンディコーナー空にし、溢れんばかりのバスケットを手にした淑女が、高笑いとともに堂々と立ち去るのを見送った。
その不気味な笑い声は、学園のあちこちにこだまし、夜通し止むことはなかった。
そして後日、ミサゴ大学にはこんな噂が広まったーー
巡聖の祝日の夜、スイーツを持ち歩いている者は、幽霊に取り憑かれた「キャンディ狩りの魔女」に必ず見つかる。
彼女の恐ろしい手から逃れるには、すべてのお菓子を捧げるしかないだ、と。
