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新種クアドトリティケール | |
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制作順No. | 60342 |
本国初放映 | 1967年12月29日、第44話 |
Kirk surrounded by Tribbles.jpg | |
脚本 | デイヴィッド・ジェロルド |
監督 | ジョセフ・ぺヴニー |
宇宙暦/西暦 | 4523.3/2268年 |
惑星の領有権をめぐって対立が巻き起こる中、エンタープライズは宇宙ステーションへと呼び出される。そこで彼らを待っていたのは、宇宙艦隊のイヤなお偉方と穀物と、クリンゴンとの諍い。そして、今までに見たこともないような、小さくて、たまらなくキュートで、果てしなく大食らいで、あっという間にたくさんの数に増えるモコモコした生き物だった。
エンタープライズは、連邦とクリンゴンによる惑星の領有権争いに関する問題解決のため、要請を受けて宇宙ステーションK-7へと向かっていた。最も近いクリンゴンの宇宙基地に1パーセクまで接近するコースであり(チェコフ曰く、「臭いが嗅げそうですね」)、問題の星であるシャーマン惑星はそのすぐ近くであった。
カーク、スポックおよびチェコフは、任務に先立ってブリーフィングを行っていた。オルガニア平和条約では、より効率的に惑星を開発できると認められた側に領有権が与えられる、と定められていたのである。
ブリーフィングの途中、突如ブリッジからの連絡が入り、K-7が、敵の攻撃を受けていることを意味する第一級遭難信号を発していることが伝えられた。最大ワープ速度でステーションへと向かい、戦闘準備を整えるエンタープライズ。だが、戦闘が行われている様子はどこにもなかった。カークは転送でステーションに入り、責任者のルリー所長に事情の説明を求めようとした。そこには、シャーマン惑星開発計画の指揮官であるナイルズ・バリスが来ており、第一級遭難信号の発信は彼の命令によるものであった。
バリスと、彼の助手であるアーン・ダーヴィンによると、この基地にはクアドトリティケールと呼ばれる穀物が大量に貯蔵されており、この穀物のシャーマン惑星への輸送をクリンゴンが妨害する恐れがある、とのことであった。クアドトリティケールはシャーマン惑星で唯一成長する穀物であり、惑星の領有権を勝ち取るための重要な鍵であるという。バリスは、貯蔵庫にあるこの大量の穀物の警備をカークに要請する。第一級遭難信号を穀物の警備のために濫用するという彼らの態度にカークは憤慨し、2名の保安要員だけを警備に充てて、非番の乗組員全員に休暇を与えた。ステーション内のバーでは、銀河中の珍しい品物を売り歩く商人のシラノ・ジョーンズが、トリブルというフサフサした毛に包まれた小さな生き物を売り込んでいるところだった。彼は、宣伝になると見込んで1匹のトリブルをウフーラに譲った。
カークは、宇宙艦隊のフィッツパトリック提督からの通信で、バリスの要請に可能な限り応えるようにという命令を受け、渋い顔をする。そこへ、面倒に輪をかけるようにクリンゴンの戦艦、IKSグロスが現れ、指揮官のコロス艦長が部下の休養のためにステーションに滞在したいと申し出た。条約で定められている権利ということで、カークは渋々ながらも承知するが、滞在は一度に12名、それぞれに1名ずつ見張りをつけるという制限を加えさせた。
一方、ウフーラが譲り受けたトリブルは、一晩で何匹もの数に増えていた。ペットができたことで喜ぶクルー達。マッコイは興味をそそられ、1匹を借りて分析してみることにした。クリンゴン兵に対する見張りの数を増やせと要求するバリスにほとほと嫌気がさしたカークが医療室に来た時、その数は11匹になっていた。マッコイによると、トリブルの代謝機能の50%は繁殖のためのものであり、エサをたらふく食べることにより、腹を空かせた子供が次々と生まれるという。
ステーションのバーには、エンタープライズとクリンゴン艦の乗組員がそれぞれ集っていた。シラノ・ジョーンズは彼らに更にトリブルを売り込もうとするが、トリブルはクリンゴン人には懐かず、近づくと甲高い鳴き声をあげて騒ぎ出す始末だった。やがて、歓談中のチャーリー・スコット達にクリンゴン人士官のコラックスが因縁をつけてきた。カークを執拗に侮辱するコラックスにチェコフが手を出しそうになるのをスコットは抑えていたが、今度はエンタープライズを馬鹿にされたためスコットは憤慨し、ついにはコラックスを殴り飛ばした。バー内はたちまち大乱闘の場と化した。
カークは止むを得ず、双方の乗組員の休暇を取り消し、艦に帰させた。当事者全員を集め、最初に手を出したのは誰かと問い質すが、誰も答えようとしない。カークは全員に禁足を言い渡し、監督役だったはずのスコットからやっと事情を聞きだした。スコットは、コラックスがカークのことを侮辱し、それに対してチェコフが手を出しそうになったのを止めたが、カークではなく、エンタープライズが侮辱されたことで怒りが頂点に達したというスコットに、カークの心境は複雑だった。
ブリッジは既にトリブルだらけだった。マッコイの分析によると、トリブルは、生まれたときには既に体内に子供がおり、「繁殖するために生まれてくる」ということであった。ステーションに戻り、ジョーンズを問い詰めるカークとスポック。バリスとダーヴィンは、ジョーンズにはクリンゴンのスパイの疑いがあると主張するが、カークは一笑に付した。
エンタープライズの艦内で、トリブルは更に増え続けていた。やがてカークは、トリブルがステーション内の換気ダクトを伝って移動している可能性に気付いた。ダクトは貯蔵庫のエリアにも繋がっているはずだった。貯蔵庫へと赴き、頭上のハッチを開けたカークに、雪崩を打って降り注いだのは、穀物を食べ尽くしたトリブルの群れ……。「大惨事になった!」とバリスは激怒しながら、カークを査問会議にかけると喚き散らすが、スポックとマッコイは、積もり積もったトリブルの多くが既に死んでいることに気付く。マッコイはトリブルと穀物の分析を始め、カークはジョーンズを尋問のために呼び出した。
間もなく、バリス、コロス、コラックス、ジョーンズが一堂に会した。コロスは、自分の部下をカークが不当に扱ったことを非難し、謝意の表明を要求する。そこへ入室したダーヴィンに対し、トリブルが突然、クリンゴン人に対するのと同じ敵対的な反応を示した。カークは、ジョーンズ、スポック、バリスらにトリブルを近付けながらトリブルの反応を確かめていたが、コロスとコラックスに近付けた途端、トリブルは騒ぎ出した。そして、ダーヴィンに近付けると、やはりトリブルはコロスたちの時と同じ反応を示した。マッコイがダーヴィンを調べると、ダーヴィンはクリンゴン人であった。口を割らないダーヴィンにトリブルを押し付けると、ダーヴィンは観念したように穀物に毒を仕掛けたことを認めた。この、栄養分の吸収を妨げるウィルスが、トリブルが死んだ原因であり、カークが言うには、「食べれば食べるほど、腹を空かせて死ぬ」ということであった。ダーヴィンは逮捕され、クリンゴンは連邦の領域からの退去を言い渡された。カークは、トリブルが少しずつ気に入ってきたような気がしていた。ジョーンズは、放免される代わりに、ステーション内のトリブルを始末することを命じられた。スポックの計算では、終わるまでに17.9年かかるとのことだった。
カークがエンタープライズに戻ったときには、艦内のトリブルは一掃されていた。一体どうやったんだとスポックやマッコイ、スコットに聞くが、一向に要領を得ない。口ごもるスコットをカークが問い詰めた。やっとのことでスコットは、クリンゴンの戦艦がワープする前に、エンジンルームにトリブルを一匹残らず転送してやったことを明かすのだった。「素晴らしいプレゼントです」
(カッコ内は、日本語吹き替え版の宇宙暦)
「ちょっと、冗談を言ったまでです」
「非常に低俗な冗談だ」
「おや、クアドトリティケールですね。何かで読んだことはあるんですが、見たのは初めてですよ」
「知らなかったのは私だけだったのかな?」
「そうじゃなくて、これはロシア人の発明なんです」
「また技術専門誌を読んでるのか?」
「はい、船長」
「たまには遊んだら?」
「これが遊びですよ」
「ドクター、トリブルにもひとつ、いいところがありますよ」
「何だね?」
「口をきかないことです」
「カーク船長、警備体制に対する君の態度は言語道断だ! 連邦にとって重要極まりないこの計画を、君はあまりにも軽く考えすぎとる!!」
「とんでもありません、非常に重要な計画だと考えてますよ。あなたが気に入らんだけだ」
「現在断言できるのは、この動物の新陳代謝の50%は繁殖用のものだってことだよ。こいつに、うんとエサを与えるとどうなると思う?」
「太るのかな?」
「いや…腹を空かせた子供がどんどん生まれるんだ」
「この際どうだ? いい機会だから、産婦人科を開設したら」
「いつになったらミルクを卒業するんだ?」
「これは、ウォッカです」
「俺の故郷じゃそんなのはソーダ水だ。これぞ、男の飲み物さ」
「スコッチが?」
「そうだ」
「それを作ったのは、レニングラードの婆さんですよ」
「あれはボロボロの木で作ったゴミ箱みてぇなもんだ。確かゴミ箱用に作ったんだろ? そら宇宙中が知ってるぜ。だから皆クリンゴン人が好きなんだとさ!」
「ミスター・スコット!!」
「君…言い直したらどうなんだ…? 今言ったことを」
「その通り、言い直そう。エンタープライズがボロボロの木で作ったゴミ箱だってのは嘘でしたよ。そうじゃなくてゴミだから早いとこゴミ箱に棄てちまうといいって話だ!」
※「だから皆クリンゴン人が好きなんだとさ!」の部分は、原語では"that's why they're learning to speak Klingonese!(だから皆クリンゴン語を覚えたがるのさ!)"
「彼らがそう言ったのを聞いて、君がなぜパンチを出したんだ?」
「いいえ」
「いいえ…?」
「はい、違います。トラブルを防げと言われてましたので」
「なるほど」
「何も、喧嘩するほどの事態ではないと思いまして…それくらいは軽く聞き流せるだけ、こっちは人間が出来てます。でしょ?」
「では、彼らが何を言ったから喧嘩になったんだ?」
「奴らは、エンタープライズをボロボロのゴミ箱だと言ったんです。ホントです」
「そうか…それで、君が…カッとして手を出したのか」
「そうです」
「クリンゴン兵を殴ったのは、エンタープライズを侮辱されたからで、私じゃないのか」
「これは、プライドの問題であります」
「よろしい、分かった。下がれ… あ、それから、指示あるまで、君も禁足だぞ」
「はい、有難うございます。おかげでゆっくり技術専門誌を読めそうです」
「この動物は繁殖するために生まれてくるようなもんだ。生まれたときには既に子供が入ってる」
※後半は原語では、"which appears to be a great time-saver"(大した時間の節約術だよ)
「トリブルなる動物は、自分の意志で自由に繁殖できることはあなたも認識してたはずですよ。その乗数的繁殖力に制限を加えない環境に移した場合、どうなるか予測できたでしょう?」
「何ですって??」
※「何ですって?」は原語では"Well, of cour– what did you say?"(そりゃもちろ…何ですって??)
「なるほど、君の言う通りだ。クリンゴン人は嫌いらしい。ヴァルカン人は好きと見えるな。君も持っていたとは知らなかった」
「トリブルはなかなか鋭い知覚能力を持っていますね」
「何千匹といるじゃないか!」
「万を数えるでしょう」
「全部で、177万1561匹になります。これは1匹のトリブルが平均10匹を生むとして、12時間毎に繁殖すると計算した場合の、過去3日間の合計です」
「トリブルがここへ入ったのを、3日前と予測してか」
※1を最初の数として、10倍した数を加算するという計算を6回繰り返すとその数字になる。
※なお、同じ台詞回しは後に『DS9: 伝説の時空へ』においてジャッジア・ダックスたちが言及しているが、こちらは途中でベンジャミン・シスコに「もういい」と言われて遮られている。
「有罪になるまでは私はまだ船長だ。船長として2つのことを命令する。まず、シラノ・ジョーンズを探せ! …これを、閉めろ」
「船長さん、たかがトリブル1匹が……有害?? カーク船長、友達じゃないですか。こういうことは友達としてほら、話し合いでいきましょうよ。だってトリブルのおかげで麦に毒が入ってることもわかったし、それに、クリンゴンのスパイがわかったのもトリブルのおかげでしょ? みんなの命の恩人じゃないですか」
「ひとつ、君にして欲しいことがあるんだがね」
「なんです?」
「宇宙ステーションのトリブルを、1匹残らず集めたまえ。そうすれば、ミスター・ルリーに掛け合って、宇宙船を返してもらってやる」
「…何年もかかりますよ」
「正確には17.9年になるね」
「17.9…年後…」
「その間、失業しなくて済む」
「船長は冷血動物だ! …あぁ判った、もう負けたよ」
「やるんだな?」
「やりゃいいんでしょ…」
「新しい家を与えたんです」
「どこだ!!!」
「クリンゴンの戦艦です」
「クリンゴンの艦へやった??」
「はい、そうです。向こうがスピードを上げる前に1匹残らずエンジンルームへ転送してやりました。素晴らしいプレゼントです」
※最後の部分の原語は"where they'll be no tribble at all"(もう、トリブル《トラブル》とはおさらばです)
「ミスター・ダーヴィンのことは嫌いだと言ってるぞ、おかしい。ドクター!」
「心臓の鼓動が違う…それに体温も…これは、クリンゴン人だ!」
『新種クアドトリティケール』は、TOSのリマスター版の中では9番目に放映された。初放映は2006年11月4日で、宇宙ステーションK-7のより詳細なショットや、ステーションを周回するD7級のIKSグロスなどが見どころとなっている。K-7を周回するエンタープライズがルリーのオフィスから見える回数も増えており、窓の外を右から左へと横切って移動している。勿論、リマスター版ということで、ディテールアップされたエンタープライズの船体とその正確なショットも注目すべき点である。
次に放映されたリマスター版のエピソードは『TOS: イオン嵐の恐怖』である。
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