来ることと帰ること

ページ名:来ることと帰ること

「うん、じゃあ……来るとか帰るとか、説明するね。
 これは大事なことだから、絶対忘れないでよ。
 君が経験したことと、いつか経験することだから」



新しくやって来る人と、

「来た子は、かみさまの近く……そう、階段を降りた所。
 かみさまのすぐ近くにいることが多いよ。そういう子を見つけるのが、管理者の仕事の一つだね。
 うん、かみさま知らせてくれたりしないからね。自分たちで見つけるしかない。
 でもまあ、たいていうるさいからわかりやすいかな。
 あとは……俺たちが見つける子はだいたいまだ喋れない小さい子かな。
 たまーに、喋れないなりに喋ってる子はいるけど。あんまり意味がわかることは喋らないよ」



帰っていく人。

「帰る人も同じ。かみさまの近くに行くよ。
 だんだん帰らなきゃいけない"兆候"が、体に現れるんだ。元気がなくなったり……でも一番わかりやすいのは、輪かな。
 俺のは……これ。この手首の線みたいなのはどんどん伸びてて、これがくっつきそうになったらだね。
 君のはどこかな……まあ、人によるよ。とにかくそうなったら、俺たちはかみさまのところに帰る。
 その時に連れて行くのも、俺たち管理者の仕事のひとつだね。階段を降りて、付き添って……
 かみさまのずっと近く、中心のほうに近づくんだ。それで、触ればいい」


「そうすれば、自然とかみさまが中に入れてくれる。帰れるんだよ」


「それを見送ったら、俺たち管理者の仕事はおしまい。上に戻って、他のもっと大事な……ダラダラするとか、そういう仕事に戻る訳。
 ふねの住民の始まりと終わりはこんな感じ。理解できた?
 ま、帰るまで何年もあるんだからさ。がんばって快適に過ごしなよ?」



生まれて来る人。

「例外だけど、あと、かみさまのところから来ない子もいるよ。誰かから生まれてくる子ね。分かんない?うんうん、もっと大きくなったら教えてあげよう」
「一回俺も立ち会ったことあるけど、大変なんだよねー……本人も周りもね。ま、終わればお祝いでお祭り騒ぎだけど」
「ただまあ、アクシデントというかね……無事に終わらなさそうだったら、かみさまのところに行くことになってるよ。なんとかしてくれるから」


「とにかくそうやって生まれてくる子も、帰るところは同じだよ。みんな最後は、かみさまのところに帰るんだ。君も、俺もね」

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