天正
天正(てんしょう)とは、日本の安土桃山時代の1番目の元号である。天正の年表天正期は、元亀4年7月28日(西暦1573年8月25日)から、天正20年12月8日(西暦1592年12月31日)まで。年西暦出...
群書類聚(和歌部)第251巻に収録。第八十三番歌は小倉百人一首に入選している。
001.吉野山 峯のしら雪 いつ消えて 今朝はかすみの たちかはるらむ
002.難波江に 生ひ出づる蘆の 程みれば 数しらぬよぞ 思ひやらるゝ
003.冬はいかに むすべる滝の 糸なれや けふ吹く風に とくる音する
004.めづらしく けふしも鴨の むれゐるは 池の氷や うすくなるらむ
005.春日野に むれたつ雉の 羽おとは 雪の消えまに 若なつめとや
006.春たちて ほどはへぬらし しがらきの 山は霞に うづもれにけり
007.常磐なる 嶺の松原 春くとも 霞たゝずば いかでしらまし
008.けふきけば 井手の蛙も すだくなり 苗代水を 誰まかすらむ
009.春の日の うら/\にしも 出てみよ 難波さしてか 蜑はくらすと
010.かぜにのみ まかせてはみじ 梅の花 をりて袂に 香をもうつさむ
011.いづれをか 色ともわかむ 春たちて 散りこし梅に 面なれにけり
012.鶯の おのが羽風に 散る花を のどけくみむと たのみけるかな
013.をさなくぞ 春しもとふと 思ひける 花の便りに みゆるなりけり
014.鶯の なく声をのみ たづぬれば 春さく花は われのみぞみる
015.我が宿や 花のさかりに なりぬらむ 道行く人の たちどまるかな
016.青柳の 糸をみぎはに 染めかくる 春の風にや なみはよすらむ
017.花ざくら つもれる庭に 風ふけば 舟もかよはぬ 波ぞたちける
018.みだえせぬ ゐ手の山吹 かげみれば 色の深さも まざらざりけり
019.夏にこそ 咲きかゝりけれ 藤の花 松にとのみも おもひけるかな
020.春の日は ゆきもやられず 蛙なく さほのわたりに 駒をとゞめて
021.花の色に そめし袂の 惜しければ 衣かへうき 今日にもあるかな
022.夏草は 結ぶばかりに なりにけり 野がひの駒や あくがれにけむ
023.かけてだに あふひときけば 千早振 わがねぎごとの 印しある哉
024.卯の花の さける垣根は 宿りせじ ねぬにあけぬと 驚かれけり
025.山城の よどのこぐさを かりにきて 袖ぬれぬとは 恨みざらなむ
026.初声の きかまほしさに 時鳥 夜ふかく目をも さましつるかな
027.夏がりの 萩の古枝も たえにけり むれゐし鳥は 空にやあるらむ
028.春まきし 山田の苗は 生ひにけり もろてに人は ひきも植ゑてむ
029.我が身こそ ふりもせざらめ 五月雨の 同じ空とは 思はざらなむ
030.五月山 ともしにいづる 狩人は おのがおもひに 身をや焼くらむ
031.夏の夜は あり共みえぬ 虫なれど 秋は野もせに ありときゝてむ
032.旅人の たく火とみつる 蛍こそ ゆつにもきえぬ ひかりなりけれ
033.わがてにも 夏はへぬとも 思ふらむ あふぎの風の いまは物うき
034.草の葉も うごかぬ夏の てる日にも 思ふ中には 風ぞ吹きける
035.空蝉の むなしきからは 音もせず たれに山ぢを とひて越えまし
036.(こゑきけば おなじゆかりの むしなれや ひぐらしにこそ せみもなきけれ)
037.さ男鹿の かよふもみえぬ 夏草も しげみなりとは 思はざらなむ
038.夏ぐさの しげみをわけし 君なれど 今は心に 秋ぞきにける
039.秋風は 吹きぬとおとに 聞きてしを さかりにみゆる 常夏の花
040.ゆきなれぬ 道のしげきに 夏草の あかつきおきは 露けかりけり
041.秋くれど 夏の衣も かへなくに ありしさまにも あらずなりゆく
042.天の川 水まさりつゝ 彦ぼしは かへる朝に なみやこゆらむ
043.七夕の わかれし日より 秋風の よごとにさむく なりまさるかな
044.おともせで 思ひにもゆる 蛍こそ なく虫よりも あはれなりけれ
045.待つ人の かげはみえずて 秋山の 月のひかりぞ 袖に入りぬる
046.秋風は 昔の人に あらねども 吹きくるよひは あはれとぞおもふ
047.おぼつかな こゆる山べの 遠ければ 蜩のねに 宿りをぞする
048.荻の葉に 吹く秋風を わすれつゝ 恋しき人の くるかとぞみる
049.秋風の 吹かぬ日だにも ある物を こよひはいとゞ 人ぞこひしき
050.なく鹿の 声きくからに 秋はぎの 下葉こがれて 物をこそおもへ
051.秋のよの 有明の月に ひろへども 草葉の玉は たまらざりけり
052.(あはれをも しらじとおもへど むしのねの 心よわくも なりぬべきかな)
053.秋風は 旅の空にも 吹きぬらむ せこがころもを かへすらむやぞ
054.白露の おくての稲も 出でにけり かりくる風は うべもふきけり
055.名取河 やそせの波ぞ さわぐなる 紅葉やよりて いとゞせくらむ
056.秋風に しほみちくれば 難波江の 蘆のほよりぞ 舟は行きかふ
057.白雲の おりゐる山の から錦 かさねて秋の きりぞたちける
058.風さむみ やどへかへれば 花すゝき 草むら毎に まねくゆふぐれ
059.白露の おきける菊を 折りつれば 袂ぬれてぞ いろまさりける
060.山城の 鳥羽のあたりを 打ち過ぎて 稲葉の風に おもひこそやれ
061.もみぢ葉の 残れる枝に おく霜の しばしの程を うらむべしやは
062.あさぢふに けさ吹く風は 寒けれど かれ行く人を 今はたづねて
063.さむからば よるはきてねよ 深山より 今は木葉も 嵐ふきつゝ
064.水鳥の 羽におく霜の さむさをば 誰になれてか けつべかるらむ
065.ちはやぶる をみのかざせる 日影にも とけずて霜の よる結ぶ哉
066.霜の上に けさふる雪の さむければ 人を重ねて つらしとぞ思ふ
067.蘆の葉に 隠れて住みし わが宿の こやもあらはに 冬はきにけり
068.我宿に けふ降る雪の 消えざらば いつしか春を またれましやは
069.降る雪に ぬれきてほさぬ 我が袖を こほりながらも 明しつる哉
070.冬くれば つらゝにみゆる 石山の 氷はかたき ものとしらなむ
071.故郷の 垣根の雪し ふかければ 通ひしあとも みえずぞありける
072.信濃なる 浅間の山の あやしきは 雪こそきゆれ 火やはもえなむ
073.たく人も あらじと思ふ ふじの山 雪の中より けぶりこそたて
074.けふみれば あまの小舟も 通ひけり しほみつ浦は 氷らざるらし
075.近江なる やすの入江に さすあみの 氷をいをと けさぞみえける
076.信濃なる いなにはあらず かひがねに ふりつむ雪の とくる程迄
077.数しらず 被ぐときけど わたつ海の 蜑のしわさは 寒げなりけり
078.年をへて 雪ふりうづむ 白山の かゝれる雲や いづこなるらむ
079.山の上を よそとみしかば 白雪は ふりぬる人の みにもきにけり
080.雪つもる おのが年をば しらずして 春をばあすと 聞くぞ嬉しき
081.恋しさを 慰めがてら 菅原や ふしみにきても ねられざりけり
082.思ひやる 我が衣手は 難波女の 蘆のうら葉の かわくよぞなき
083.風をいたみ 岩打つ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
084.打とくる 世こそなからめ 人しれず ふす計りにも あらぬまぞなき
085.松島の をじまの磯に あさりせし あまの袖こそ かくはぬれしか
086.よどのつと みまくさかりに 行く人も 暮にはたゞに 帰る物かは
087.その原や ふせやにとつぐ かけ橋の たがためにかは 我は渡しゝ
088.筑波山 はやましげ山 しげけれど 思ひ入るには さはらざりけり
089.となか川 渡りて作る 小島田を もるにつけつゝ よがれのみする
090.白波の まがきのしまに 立ちよれば あまこそ常に 誰ととがむれ
091.高砂の 尾上の松の われならば よそにてのみは たてらざらまし
092.水の上に うきたる泡を 吹く風の ともに我が身も 消えやしなまし
093.うしと思ふ 心にけさは きつれども たそがれ時は 空しからまし
094.みさごゐる あら磯波ぞ さわぐらし しほやく煙 なびくかたみゆ
095.衣川 みなれし人の わかるれば 袂までにぞ なみはよせける
096.きさかたや 渚にたちて 見わたせば つらしと思ふ 心やはゆく
097.磯はみな しほみちくれど 鳰どりの 波の中にぞ よるもねぬべき
098.いにしへは なみをりきといふ まつ山や おもひかれたる えだもなきかな
099.たけくまの 塙に立てる 松だにも 我がごと独り ありとやは見る
100.水上に 人のみわたる 河なれば 心によゝも たのまれぬかな
101.年ごとに おひそはるてふ やそしまの 松の葉枝は 君やしるらむ
102.やそ島の 松の葉枝を かぞへつゝ 今ゆくすゑの ほどはしるらむ
103.枝わかぬ 春にあへども 埋木は もえもまさらで 年へぬるかな
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