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イノセンス | |
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INNOCENCE | |
Original Japanese Poster | |
監督 | 押井守 |
脚本 | 押井守 |
製作 | 石川光久 鈴木敏夫 |
出演者 | 大塚明夫 田中敦子 山寺宏一 大木民夫 仲野裕 ほか |
音楽 | 川井憲次 |
主題歌 | 伊藤君子 『Follow Me』 |
配給 | 東宝 アメリカ合衆国の旗ドリームワークス |
公開 | 2004年3月6日 Flag_of_Canada.svg2004年9月9日 2004年9月17日 Flag_of_South_Korea.svg2004年10月8日 2004年10月14日 Flag_of_Sweden.svg2004年12月25日 2004年12月1日 Flag_of_Belgium.svg2005年1月12日 2005年4月5日 Flag_of_Germany.svg2005年7月31日 2005年10月28日 Flag_of_Finland.svg2005年11月18日 2006年8月4日 |
上映時間 | 100分 |
製作国 | Flag_of_Japan.svg 日本 |
言語 | 日本語 |
製作費 | 3億円 (推定) |
IMDb | |
表・話・編・歴 |
Original English Poster
『イノセンス』 (INNOCENCE) は、押井守監督の日本のアニメーション映画。2004年3月6日に全国東宝洋画系で公開された[1]。内容は、1995年公開のアニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の続編にあたる。押井守の約9年ぶりのアニメーション監督作品である。
2004年、第25回日本SF大賞受賞。第57回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にて上映された(アニメーション作品がカンヌのコンペ部門に選出されるのは史上5作目、日本のアニメ作品では初[2])。
前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のラストで少佐こと草薙素子が失踪してから4年後の2032年が舞台。少佐の代わりにバトーがメインキャラクターをつとめる。ただし、九課のチーフ役はトグサが継いでいる。本編のストーリーのベースは、漫画版『攻殻機動隊』の第6話「ROBOT RONDO」。
少女型の愛玩用アンドロイド[3]「ロクス・ソルス社製 Type2052 “ハダリ(HADALY)”」[4]が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者とメーカーの間で、示談が不審なほど速やかに成立し、被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9課で捜査を担当することになり、公安9課のバトーは、相棒のトグサとともに捜査に向かう…
本作品は士郎正宗の原作によるものではあるが、パンフレットおよび本編冒頭で引用されている通り、ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』の強い影響下にある。台詞は、斎藤緑雨、ロマン・ロラン、月庵宗光、旧約聖書、論語、ジョン・ミルトン他からの引用が多用され、そもそも、台詞全体が何故斯くも膨大な引用から成り立っているかの理由も『未来のイヴ』においてうかがい知る事は可能であるが[5]、『未来のイヴ』では機械人形を作る理由は所与の問題であったのに対して、本作品では「人間はなぜ自分の似姿を、それもその理想型において創造しようとするのか」と、さらに根源的に問いかけている。
本作品は士郎正宗の原作における『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』『攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE』のように、前作で消息を絶った素子が再び姿を表し、主役として大活躍するような(乱暴な言い方をすれば「前作を見た観客の多くが望むような」)作品にはならなかった。押井によれば、終わった後の今の目で見ればそのような展開でも良かったかもしれないと思えるが、当時は自然と本作品で選択した方向性以外に考えられなかったと語っている。また、本作品で直接は描かれなかった「その後の素子」に関しては、テーマとして容を変えて押井の次回作以降で語られるだろうとしている(必ずしも続編としての『攻殻3』を製作するという意味ではない)。
押井守はインタビューや関連書籍にて、この映画に関して「究極の身体論」を語っている。
バトーとトグサが捜査の中で出会う多くの人物達は、天才クラッカーから少女に至るまで、それぞれに身体に対する確固たる哲学や主張を持っており、引用がちりばめられた会話によって身体論は複雑になっていく。だが、どの主張も一見して筋が通っている反面、理論はそれぞれの個人的感情を越えるに至っていない。他者の思想を肯定することも否定することもできないまま、主人公であるバトーにも答えは見出せず、ただひたすらに個人的な葛藤や職務と戦い続けるばかりである。
バトーが「守護天使」と呼んで特別な感情を抱いている草薙素子との数少ない会話においても、「個人を超越してしまった存在である素子という他者」という定義の難しい存在とのつながりへの淡い期待が残る程度であり、それによってバトーの心が救われたかどうかは最後まで定かでない。しかし、押井守が監督した映画の中で、ここまで主人公が他者への期待や依存を露わにする場面も珍しいとも言え、それは押井が常に映画の中で疑いを投げかけてきた「巨大であやふやな他者」への仄かな期待と受け取れるかもしれない。
「身体」と言う言葉と「人体の理想系を模した人形」、そしてその2つの中間にある「サイボーグ」という三つのモチーフの対比は、それぞれの登場人物の様々な生活風景や台詞によって深く表現され、まさしくこの映画は「人は何を寄る辺に生きていこうとしているのか」という現代が抱える魂の問題に深く踏み込んでいる。
作品名は当初『攻殻機動隊2』だったが、制作協力したスタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫の提案により『イノセンス』となった。主題歌として「Follow Me」を提案したのも鈴木である[6]。
原作および前作のタイトルでもある『攻殻機動隊』シリーズとは電脳化・義体化などの基本設定など、切っても切り離せない関係にあるが、国内展開上は『攻殻機動隊』シリーズの新作である事は意図して強調されず、ほぼ独立した作品かのようにプロモーションがなされた[7]。
アメリカのメジャー映画会社は、『イノセンス』制作にあたって押井との交渉の席で、大衆受けを狙わない姿勢や、話を聞くだけではにわかに理解できない作品内容について難色を示した。それでも説得のため熱弁を振るう押井に、幹部全員が退いてしまい資金捻出を渋ったという。しかし、前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』がアメリカでヒットしていた事もあり、一定の興行収入を得られるとみた映画会社は、『GHOST IN THE SHELL 2』と明記することを条件として最終的に契約を結んだ。
プロデューサーの鈴木敏夫は、本作のメインキャストに大物俳優の起用を立案していて、草薙素子役には山口智子を挙げていた。しかし、押井と山口の反対により、田中敦子が続投した。
また、DVD発売時のTVCMには、本作品に出演していない藤原竜也と宮崎あおいが起用されている。
押井守は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の際に既にアニメ映画の方法論は決したとして、アニメをこれ以上作ろうとは考えていなかったが、『Avalon』でアニメの方法論を実写に取り込み、実写の方法論をアニメに持ち込んでこの映画を制作しようと考えた。即ち、3Dでモデリングされた空間にカメラを持ち込み、それを切り出して(ロケーション・ハンティング)映像を制作しようと考えたのである。
だが、3D担当者はそれは不可能であると言い、テスト段階のコンビニエンスストアのシーンにおいて、想像以上のデータ量の前にその目論見は崩れ去った。現に公開されたものでもこのシーンは分割してレンダリングしたものを後に合成するという方法でレンダリング時間を短縮している。本編映像、特に中盤の大祭のシーンは、カメラマップと呼ばれる手法を利用した映像となっている。
また、アニメはキャラクターをセルで描くため、画面をセル画が占拠すると画面内の情報量が失われがちだが、江面久を筆頭とするエフェクトチームがAfterEffects等を駆使してそれに対処し、処理速度が停滞すればPower MacG5の大量導入でこれに対処した。
以上の紆余曲折もあり、アニメ映画では初めて、全編にわたってDomino[8]による映像処理が施されたが、それによってセル画が浮いて見えるという評価もあった。これについて押井守は認識していたが、CGによって描きこまれたディテールを損なうフィッティングをあえて行わなかった事を後のインタビューで述べている。ちなみに、IMAXシアターで公開された際にはオープニングのガイノイドの眼球に表示される文字列など細部を見る事ができた。
前作のコンピュータ画面が「緑」で統一されていたのに対し、今作では「橙」で統一されていたり、前作の舞台が「夏」に対して今作は「冬」と、映像に差別化が見られる。
以前より劇伴作曲家として押井作品に関わってきていた川井憲次による、本作の第2のメインテーマともいえる「傀儡謡」のコーラスは75人の民謡歌手を集め(前作では3人)、更にクライマックスに使用された傀儡謡ではコーラスを4回収録し、それを同時に流す事によって音に厚みを持たせた。
劇中で使用されたオルゴールの曲は、予めオルゴールから機械録音しておいたものを、大谷石採掘場跡の地下空間で再生し、再度録音したものが使われた。
また音響効果編集は『Avalon』同様スカイウォーカー・サウンドで行なわれ、迫力の音響世界が創造された。サウンドデザインはアカデミー音響編集賞受賞者のランディ・トムが担当した。この関与は「プリミックス」であり、音楽や台詞素材を含む整音は日本国内で行なわれている。
同社の音響製作の可能性に感銘を受けた押井は、『Avalon』で組んだサウンドデザイナーで『ローレライ』や『少林少女』も手がけたスカイウォーカー・サウンドのトム・マイヤーズに『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』のサウンドデザイン、2008年の『攻殻機動隊2.0』の音響リニューアルを委ねている。
批評家の東浩紀は、本作がアニメ技術の最高峰に位置する見る価値のある作品であることを認めながらも、押井守のそれまでの作品にみられた「過剰な記号や意味」が煩雑に盛り込まれているという特徴が本作では欠落していると指摘している。そして、主題(人間と人形の差異)と物語の結びつきも弱く、監督の映像作家として力量に感嘆はするもののそれ以上の感想は抱けないと述べている。[9][10]
2004年、山田正紀によって前日談に当たる小説「イノセンス After The Long Goodbye」が発表される。
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