第一世界の街
水晶公 :
さて、さっそく私の執務室に移動してもいいのだが……ふむ。
込み入った話をするためにも、
あなたにはまず、我々の実情を知ってもらいたい。
いくつか街の主要な施設を紹介するので、
そこの顔役たちと話し、「この世界についての話題」を、
集めてきてはくれないか?
ここからまっすぐに進むと……
あなたならご存知だろう、エーテライトがある。
恐らくだが、正しい形で召喚されたあなたならば、
己の通ってきた道を辿り、
原初世界の地脈とも繋がれるかもしれない。
顔役たちを訪ねる前に、一度試してみるといいだろう。
エーテライトの左隣にある階段を上り、建物を出ると、
この街の職人たちが集う「ミーン工芸館」がある。
顔役は「カットリス」という女性だ。
階段を上らず、左側の通路を進むと、
つきあたりが「博物陳列館」……巨大な書庫だ。
顔役は「モーレン」という青年さ。
エーテライト・プラザの右側に進むと、市場に繋がっている。
流通を取りしきるのは、顔役の「ブラギ」だな。
以上が、あなたに回ってもらいたい場所だが……
行き方は、概ね伝わっただろうか?
完全に理解した
水晶公 :
さすがだ。
拡張を重ねている街だから、どうにも構造が複雑なのだが……
あなたならば、心配ないだろう。
複雑すぎる……
水晶公 :
すまない、拡張を重ねている街だから、
どうにも構造が複雑でね……。
それでも、実際に歩いてみれば慣れるはずだ。
……ああそうだ、ひとつだけ注意してもらいたいことがある。
さきほどの関所でもそうだったように、
この世界に生きる民は、普通、別世界の存在を知らない。
あなたの素性は、彼らには理解しがたいものだろう。
ゆえに、身元を問われた際には、
水晶公の同郷人だと答えるといい。
この街において、それは詮索無用を意味する言葉になる。
それでは、ひと回りしたら、
街中央にある大きな広場で落ち合おう。
……また後程。
モーレン :
あ、あの……!
住民名簿に載っていない方とお見受けしますが、
もしや、外からいらしたんですか!?
ででで、でしたら、何か本や書類など……
いっそ紙切れでもいいので、お持ちではないでしょうか!?
あ……すみません、つい悪い癖が……。
僕は、モーレン。
この「博物陳列館」の司書をしています。
ここは、ご覧のとおり、
あらゆる書物を蒐集し、保管する場所です。
モ「光の氾濫」によって、多くの土地や命が失われたことで、
あまたの知識も失われてしまいました……
僕たちは、さらなる知の喪失を防ぐため、活動しているんです。
それで……あなたは、どうしてこちらに?
もしかして、何か調べたいことが……!?
世界の現状を知りたいですって!?
すばらしい、当たり前のことでも学びなおしてみると、
新たな発見があるものですよね、わかりますとも!
それじゃあ、せっかくなので、初歩の初歩から……
近代史を児童向けにまとめた絵本があるので、持ってきます。
少々お待ちくださいね。
モーレン :
お待たせしました。
それでは、いかにして世界が今に至ったか、
お話しいたしますね!
およそ100年前のこと……。
「光の戦士」と呼ばれる大罪人たちが、
世界の闇を司る、「影の王」を殺してしまいました。
するとまもなく、どこからともなく光があふれだし、
巨大な波となって、世界を呑み込みはじめたのです。
これが「光の氾濫」と呼ばれる災害……。
呑み込まれてしまった場所は、生命が存在することのできない、
まっさらな無の大地になってしまいました。
ついに世界の9割が呑み込まれ、
波が、最後に残ったここ「ノルヴラント」の地に迫ったとき、
人々の前に「光の巫女」が現れました。
巫女は迫りくる光の波をとめ、光の氾濫を収束させました。
こうして、ノルヴラントだけが消滅せずに残ったのです。
……しかし、悲劇は終わりませんでした。
無の大地から、ノルヴラントに向けて、未知の化け物……
「罪喰い」が侵入してきたからです。
罪喰いが放つ、強い光の力によって、
ノルヴラントからは夜の闇が失われてしまいました。
そしてそれらは今も、残ったわずかな人類を喰らい、
脅かし続けているのです……。
以上が、この世界の現状です。
もし復習したくなったら、いつでも僕にお声がけください。
それから……その……
今後は同じ街の仲間として、よろしくお願いいたします!
カットリス :
……これだけ物が集まってるのは、珍しいだろう?
よそじゃ、なかなかお目にかかれない光景さ。
見ない顔だと思ったが、新入りだね?
ようこそクリスタリウムへ。
あんたはいい街を選んだよ。
罪喰いが攻めてきても、水晶公が障壁を張ってくれるから、
外よりはいくらか安全なんだ。
その内側では、あたしたち「ミーン工芸館」の面々が、
協力して資材を調達し、物づくりをすることで生活を支えてる。
ここは、クリスタリウムの製造業の中心なのさ!
ただし!
ユールモアの街みたいに、贅沢三昧とはいかないよ。
働かざる者、食うべからずってね。
あんた、見るからに働き盛りって感じだけれど、
もともとは何をしてたんだい? 出身は?
なに、水晶公と同郷だって?
それは……へぇ……あんたがねぇ……。
だったらなおさら、ここの住民として、歓迎しなくちゃね。
なんといっても、この街は公のおかげでできたんだから。
水晶公は、本当に偉大な魔法使いなんだ。
この街の中心にある「クリスタルタワー」も、
あの方が、どこからともなく喚び出したものらしい。
「光の氾濫」以降、人は住む場所を追われる一方だったから、
難民となった大勢の人々は、ワラにもすがる思いで、
その塔のもとに集まりはじめた……。
それを公が受け入れたのが、クリスタリウムのはじまりだ。
以降、塔の中から発見される不思議な道具の助けも借りながら、
この街は発展してきたってわけさ。
ちなみに、それから何十年も経ってるが、
水晶公の容姿はちっとも変わっていないらしい。
それも含めて、謎の多い人だけれど……
あたしたち住民は、みんな、公に感謝してるんだ。
彼のすべてを暴かずとも、信頼は揺らがないよ。
ということで、あんたがその同郷だって言うなら、
誰も余計な詮索はしないだろうよ。
ただ、もしあんたが何かの職人なら、
その腕前には興味津々さ!
いずれ機会があったら、また訪ねてきておくれ。
ここは人々の生活を照らす、ミーン工芸館!
あたしは館長のカットリス!
改めて……これからよろしくね。
ブラギ :
ずいぶんと、物珍しそうだな……。
ということは、新入りか……。
ここは「ムジカ・ユニバーサリス」……
大仰な名前がついているが、つまりは市場だ。
俺は、ここの市場長をやっている……。
お前のような、エルフ族の装備も取り扱っているから、
好きに利用するといい……。
エルフ族……?(第一世界での種族名が出る)
ブラギ :
うん……?
俺は何かおかしいことを言ったか……?
エレゼン族の間違いでは?(原初世界での種族名が出る)
ブラギ :
うん……?
聞きなれない響きだな……どこかの方言か……?
そこの、手前で話しているふたりのうち、
背の低い方が「ヒュム族」……。
相手の、背が高い方が、お前と同じ「エルフ族」……。
向こうにいる屈強そうなのが、
「ガルジェント族」で……
角が生えているのは、「ドラン族」だ。
そして、長い尻尾とウロコの肌を持つのが、
牧畜を得意とする「ズン族」なのだが…
……どうやら、お前はそう呼んでいないようだな。
種族の呼び方が違うなんて、方言にしても珍しいが……
いったいどこの出だ……?
ああ……なるほど……。
水晶公の同郷だったか……。
ならば納得だ。
ここ数年、同じように名乗る者がここに来ることがあったが、
皆とても賢い反面、妙なところで非常識でな……。
ならばお前も、そういうものなのだろう。
……これからも、わからないことがあったら聞いてくれ。
水晶公 :
どうだろう、この世界のことについて、
皆の話は聞けただろうか……?
ああ、どれもそのとおりだ。
こちら側の状況を把握してもらえて、本当にありがたい……。
ちなみに、皆はクリスタルタワーがどこから来たか知らないが、
これはもちろん、そちらの……原初世界から喚んだものだ。
あなた方の召喚に先駆けた、最初の試みだったから、
どこの時代から喚んでしまったのかさえ、わからないがね……。
この塔が来たことで、運命が大きく動き出したのだ。
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