幸福の黄色いハンカチ

ページ名:幸福の黄色いハンカチ

幸福の黄色いハンカチ(しあわせのきいろいハンカチ)は、1977年10月1日に公開された日本の映画である。松竹作品。

目次

解説[]

家族』『故郷』『砂の器(脚本のみ)』『男はつらいよ』シリーズなど、数多くのヒット作を手がけた山田洋次監督による北海道を舞台にした、日本のロードムービーの代表作である。高倉健、倍賞千恵子といったベテラン俳優から、映画初出演となる武田鉄矢、さらには脇役に渥美清、桃井かおりを据えるなどこれ以上ない布陣で臨んだ同作品は、俳優陣の演技はもちろんのことシンプルながら観衆の心情に深く訴えかけるストーリーが高い評価を得、第1回日本アカデミー賞や第51回キネマ旬報賞など、同年の国内における映画賞を総なめにした。

後にTBSにてキャスティングを変えて、ドラマ化もされた。また、米国でもウィリアム・ハート主演で「The Yellow Handkerchief」のタイトルでリメイクされ、2009年日本公開予定である(後述)。

あらすじ[]

テンプレート:ネタバレ

ファイル:MHV Mazda 323 1st Gen 01.jpg

4代目FRファミリア

失恋して、ヤケになった花田欽也(武田鉄矢)は真っ赤なファミリア(4代目のFRファミリア)を購入、失恋の傷を癒すため、フェリーに乗り、北海道を目指す。釧路から網走にやってきた欽也は駅前で片っ端から女の子に声をかけはじめる。一方、網走刑務所からは、刑期を終えた一人の男、島勇作(高倉健)が出所してくる。郵便局に寄った勇作は葉書きを一枚書いて出していく。欽也はどうにか一人の女の子朱美(桃井かおり)をナンパしてウキウキとドライブを始める。海岸にやってきた2人は勇作に写真を撮ってもらった縁で3人旅を始めることになる。

その晩、阿寒湖温泉の宿で、まんまと朱美と同室になった欽也は朱美を口説き始める。「キスだけ」といいながらも朱美にのしかかっていく。抵抗していた朱美は急に動かなくなり、泣き始める。そこに勇作が現れ、事無きを得る。

3人のトリオは崩れそうになりながらも続いていく。その夜、ある農家に泊まることになり、同室になった勇作と欽也が九州出身ということがわかってくる。そして車の中の会話から、勇作は夕張に向かっていることが明らかになってくる。帯広の駐車場で、ヤクザ風の男(たこ八郎)に因縁をつけられるが、勇作の機転で難を逃れる。しかし勇作が運転していたことで、物語は大きく前進していく。一斉検問に引っかかり、勇作が無免許ということから刑務所に入っていたことがわかってくる。最寄の警察署に連行されるが、昔勇作の事件を担当した渡辺係長(渥美清)の温情で事無きを得る。刑務所帰りがばれた勇作は汽車で行くというが、結局は3人旅は続いていく。

車の中で勇作は自分の過去を語り出す。スーパーのレジ係だった光枝(倍賞千恵子)との出会い、結婚、そして幸せな新婚生活。光枝が妊娠したらしい、ということで喜ぶ勇作。医者に行くという光枝が「もし、妊娠が本当だったら、竿の先に黄色いハンカチをあげておく」という言葉に勇んで仕事に出て行く。竿の先にはためく黄色いハンカチを見つけた勇作は天にでも上る気持ちだった。しかし力仕事をした光枝は流産してしまう。病院で勇作は、光枝の過去を知ることになる。5年前の流産。絶望した勇作はヤケになり夜の繁華街に繰り出す。絡んできたチンピラ(赤塚真人)との喧嘩で相手を死なせてしまう。刑務所に入った勇作は離婚を決意する。面会に訪れた光枝に勇作は「今ならお前はまだ若いし、その気ならいい男もいるかもしれん」と諭す。不器用な生きかたしかできない、彼流の男の愛情表現だった。

勇作は1人で夕張に向かおうとする。勇作は葉書きを出したことを告白する。「もし、まだ1人暮らしで待っててくれるなら…黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ、それが目印だ、もしそれが下がってなかったら俺はそのまま引返して、2度と夕張には現れないから…」それを聞いた欽也達は一緒に夕張に行くことを決心する。

ゆれる男の気持ちと、それを励ます2人。1度は引き返そうとするが朱美の一言で再び夕張に向かう。車は夕張の町に入っていく。勇作はもう外を見ていられない。朱美が景色を説明する。勇作が答える。やがて車は止まり欽也と朱美は外へ出て回りを見まわす。「ほらー、あれ!」叫ぶ朱美。視線の先には何十枚もの黄色いハンカチがたなびいている。力強く勇作の背中を押し出す2人。2人の再会シーンには言葉は要らない。みつめあう2人、仲良く家の中に消えていく。それを見届けた、欽也と朱美は車の中で強く抱き合い、今度は愛情のこもったキスをする。男の純情、そして軽薄さの象徴であった欽也にもやさしい感情が芽生え、初めて朱美をいとおしいと思った。男と女が本当に愛し合い、相手の人生を大切にする、という純な愛を見せつけた作品であった。

テンプレート:ネタバレ終了

スタッフ[]

  • 製作 : 名島徹
  • 原作 : ピート・ハミル『幸せの黄色いリボン』
  • 脚本 : 山田洋次朝間義隆
  • 撮影 : 高羽哲夫
  • 音楽 : 佐藤勝
  • 美術 : 出川三男
  • 録音 : 中村寛
  • 調音 : 松本隆司
  • 照明 : 青木好文
  • 編集 : 石井巌
  • スチル : 長谷川宗平
  • 監督助手 : 五十嵐敬司
  • 装置 : 小島勝男
  • 装飾 : 町田武
  • 衣裳 : 松竹衣裳
  • 現像 : 東洋現像所
  • 進行 : 玉生久宗
  • 協力 : 東洋工業・マツダグループ
  • 製作主任 : 峰順一
  • 監督 山田洋次

出演[]

  • 島勇作:高倉健
  • 島光枝:倍賞千恵子
  • 花田欽也:武田鉄矢
  • 小川朱美:桃井かおり
  • 帯広のヤクザ風:たこ八郎
  • 旅館の親父:太宰久雄
  • ラーメン屋の女の子:岡本茉利
  • 検問の警官:笠井一彦
  • 農夫:小野泰次郎
  • チンピラ:赤塚真人
  • 渡辺係長:渥美清

受賞[]

第1回日本アカデミー賞[]

  • 最優秀作品賞
  • 最優秀監督賞:山田洋次
  • 最優秀脚本賞:山田洋次・朝間義隆
  • 最優秀主演男優賞:高倉健
  • 優秀主演女優賞:倍賞千恵子
  • 最優秀助演男優賞:武田鉄矢
  • 最優秀助演女優賞:桃井かおり
  • 優秀音楽賞:佐藤勝

第51回キネマ旬報賞[]

  • 日本映画ベスト・テン第1位
  • 監督賞:山田洋次
  • 脚本賞:山田洋次・朝間義隆
  • 主演男優賞:高倉健
  • 助演男優賞:武田鉄矢
  • 助演女優賞:桃井かおり
  • 読者選出日本映画第1位
  • 読者選出日本映画監督賞:山田洋次

第32回毎日映画コンクール[]

  • 日本映画大賞
  • 監督賞:山田洋次
  • 脚本賞:山田洋次・朝間義隆
  • 男優演技賞:高倉健
  • 音楽賞:佐藤勝
  • 録音賞:中村寛

第20回ブルーリボン賞[]

  • 作品賞
  • 監督賞:山田洋次
  • 主演男優賞
  • 助演女優賞

第2回報知映画賞[]

  • 作品賞
  • 主演男優賞:高倉健

リメーク版[]

アメリカで「ザ・イエロー・ハンカチーフ(原題)」としてリメークされる(2007年)。オリジナルで高倉健、倍賞千恵子が演じた役をウィリアム・ハート、マリア・ベロらが演じている。2007年、米国版のプロデューサーであるアーサーコーンが来日し、山田洋次監督と会談した。製作発表は2007年2月12日におこなわれた。2007年3月下旬に撮影開始、4月24日に撮影終了。12月に完成予定、2008年春ごろに日本公開予定であるという。

その他[]

  • この映画以降、役者としても新境地を開拓していくことになる武田鉄矢が注目されることとなった作品でもある。歌手としてのキャリアしかなかった当時の武田は監督の山田洋次から相当厳しく演技を教え込まれたようで、撮影後の食事はほとんど喉を通らなかったらしい。が、撮影を終えるといろいろな話を聞かせてもらったといい、そのときの話を後に海援隊で「幸福の黄色いハンカチ」という曲(朗読詩)として披露している(1983年発表の海援隊のライブアルバム「ラストライブ」に収録)。
  • この映画で役者として抜擢されるまでほとんど無名の(「母に捧げるバラード」のヒット以来海援隊もほぼ忘れられていた)歌手だったが、そんな武田になぜ山田洋次からオファーがあったのかは武田自身も未だにはっきりとは分からないという。
  • 撮影当時、武田鉄矢は運転免許を取得しておらず(取得に20年かかったとダウンタウンDXで語っている)、運転するシーンはトレーラーでけん引しながら撮影された。
  • 勇作と光枝の再会シーンについて、山田監督はずっとロングで撮影してロケを終えた。ところが、編集担当者の「やはり、ここで観客が一番見たいのは、ずっと待っていた妻の顔なのでは」という意見を聞き入れ、倍賞千恵子のアップのワンカットのためだけに、倍賞と少数の撮影スタッフだけで夕張での追加ロケを行った。
  • 花田欽也と島勇作が最後に別れるシーンの撮影時、武田は台本通りになかなか泣けなかった。このとき、武田のもとに高倉が寄ってきて長期間の撮影に感謝する旨を述べると、武田は感激してぼろぼろと涙をこぼしたという。この瞬間に別れのシーンが撮影された。
  • 高倉健としても、長年続いたヤクザ映画から久々の人情ドラマであり、また役者として再起を図るために参加しており、転換点となった作品である。
  • 2004年、イラクの復興支援に向かう自衛隊員の安全と活動の成功、そして無事の帰還を願って、この映画をヒントにした、黄色のハンカチを目立つところに掲げる「黄色いハンカチ運動」が旭川常盤ロータリーから旭川市自衛隊周辺を筆頭に広まりを見せた。それに対して映画を監督した山田は新聞の取材に対して「アメリカなどでは戦地へ赴く兵士に対して黄色いハンカチを掲げることもある」としながらも「(自分の監督した)映画のハンカチは夫婦愛の証で、戦争に行く兵士の無事を願うこととは本質的に違う」とコメントをしている。
  • 日本テレビが毎年8月に放送している『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』で出演者が着用しているTシャツのメイン色が黄色なのはこの映画の影響だと言われている。

テンプレート:Movie-stub

Smallwikipedialogo.pngこのページには、クリエイティブ・コモンズでライセンスされたウィキペディアの記事が使用され、それをもとに編集がなされています。使用された記事は幸福の黄色いハンカチにあり、その著作権者のリストはページの履歴に記録されています。


特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

龍村仁

龍村 仁(たつむら・じん、1940年-)はドキュメンタリー監督、元NHKディレクター。有限会社龍村仁事務所代表。目次1 経歴2 作品2.1 ドキュメンタリー2.2 CM2.3 その他3 参考文献4 外...

龍の牙-DRAGON_FANG-

テンプレート:統合文字『龍の牙-DRAGON FANG-』とは、2007年11月22日にDVDが発売される日本の映画。監督は久保田誠二。製作は株式会社クリエイティブ・ホールディングス。目次1 概要2 ...

龍が如く_劇場版

『龍が如く 劇場版』(りゅうがごとく げきじょうばん)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、『着信アリ』『妖怪大戦争』などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2007年3月3日から東映...

龍が如く_〜序章〜

『龍が如く 〜序章〜』(りゅうがごとく じょしょう)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、「着信アリ」「妖怪大戦争」などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2006年3月24日にDVD...

齋藤武市

齋藤 武市(さいとう ぶいち、1925年1月27日 - )は日本の映画監督。埼玉県秩父市出身。早稲田大学文学部卒。1948年、松竹大船撮影所に助監督として入社。小津安二郎に師事する。1954年、先輩の...

黛りんたろう

テンプレート:Otheruses黛 りんたろう(まゆずみ りんたろう、1953年 -)は、NHKのドラマ番組ディレクター、演出家、映画監督。目次1 来歴・人物2 手掛けたドラマ3 劇場公開作品4 著書...

黒部の太陽

テンプレート:予定黒部の太陽(くろべのたいよう)は、木本正次による小説作品、ならびにこれを原作とする日本の映画作品。1968年公開。当時、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いている。目次1 ...

黒蜥蜴

テンプレート:文学『黒蜥蜴』(くろとかげ)は小説。江戸川乱歩の代表作の一つである。宝石等の財宝を盗む女賊と名探偵明智小五郎が対決する推理小説である。初出は連載小説として雑誌『日の出』に1934年1月号...

黒田義之

黒田 義之(くろだ よしゆき、1928年3月4日 - )は、映画監督。目次1 経歴・人物2 主な監督作品(特技監督・助監督含む)3 主なテレビ監督4 主な脚本作品経歴・人物[]1928年、愛媛県松山市...

黒田秀樹

黒田 秀樹(くろだ ひでき、1958年4月30日 - )は、日本のCMディレクター、映画監督。大阪府出身。黒田秀樹事務所代表。目次1 プロフィール2 主な作品2.1 CM2.2 映画2.3 PV3 関...

黒田昌郎

黒田 昌郎(くろだ よしお、1936年 - )は日本のアニメーション演出家。東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東映動画で「狼少年ケン」、「おばけ嫌い」、「ジャングル最大の作戦」、「タイガーマスク...

黒澤明

くろさわ あきら黒澤 明ファイル:Akira Kurosawa.jpg生年月日1910年3月23日没年月日テンプレート:死亡年月日と没年齢出生地日本の旗 東京府荏原郡大井町職業映画監督家族長男・黒澤久...

黒沢清

テンプレート:Otheruses黒沢 清(くろさわ きよし、1955年7月19日 - )は、日本の映画監督、脚本家。東京藝術大学大学院映像研究科教授。兵庫県神戸市出身。六甲中学校・高等学校を経て、立教...

黒木瞳

ののっぺらぼう鏡あべこべの世界絶対ムリ行きたない怖顔合わせおうちで暗い一番怖がりとしてもお願い申し上げください一緒よろしくね↓未来おうちで暗い見たい行きたです特に記載のない限り、コミュニティのコンテン...

黒木和雄

黒木 和雄(くろき かずお, 1930年11月10日 - 2006年4月12日 )は、映画監督。宮崎県えびの市生まれ。宮崎県立小林中学校(旧制)、宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校、同志社大学法学部卒業。少年...

黒土三男

黒土三男(くろつち みつお、1947年(昭和22年)3月3日 - )は、日本の脚本家・映画監督。熊本県熊本市出身。目次1 経歴2 作品2.1 TVドラマ脚本2.2 映画監督・脚本3 関連項目4 外部リ...

黒い雨_(映画)

黒い雨監督今村昌平脚本今村昌平石堂淑朗原作井伏鱒二製作飯野久出演者田中好子北村和夫市原悦子三木のり平音楽武満徹撮影川又昂編集岡安肇配給東映公開日本の旗1989年5月13日1989年9月17日上映時間1...

黒い雨

テンプレート:Otheruses黒い雨(くろいあめ)とは、原子爆弾炸裂時の泥やほこり、すすなどを含んだ重油のような粘り気のある大粒の雨で、放射性降下物(フォールアウト)の一種である。主に広島市北西部を...