「ついた~!首都港から30分!つかれた~!」
「まだついたばかりですよ?ずっと船内で話してたからじゃないですか」
「あはは~♪喋ってないと酔っちゃうし眠くなっちゃうから!それに、マテューくんと会うの久しぶりじゃん?」
「まあ…たしかにそうですけど…僕も退屈はしなかったし…というか、アップさんでも乗り物酔いしちゃうものなんですか?」
「う~~~~ん?どうなんだろ?自分で飛ぶのと飛んでるのに乗ってるのとではちがうというか…?
…あ!ほらみて!あれが溟月の塔だよ!」
「ん?わ~~~…すごい…クロスタグラムでみたのと迫力が違いますね!」
「私達これからあそこのてっぺんに向かうんだよ!たしか…104階!」
「104階!?そんなに高いところにあるんですか!?」
「うん♪絶景だよ~!島ぜ~んぶ見えちゃう!楽しいよ~!」
「それは…貴女が高いところ慣れてるからでしょう…そんなところにいるヒトに会いに行くって…」
「あれ?高いところ苦手?高所恐怖症???あはは!ま~大丈夫だって!あ!ほら!入り口が見えてきたよ!」
「……!」
「マテューくんきてきて!きれいな夕焼け!
は~~~…久しぶりの海楽しかったな~!この部屋も休暇中はずっと借りてもいいって言ってたし、戻ってきてよかったねマテューくん!」
「ふふ、そうですねアップさん」
「…ねえ、こういうときこそさ…おねえちゃんって、呼んでくれても良いんだよ?敬語もやめてさ、」
「うーんまたその話ですか…そんなに呼んでほしいですか?」
「あはは…私一人っ子だから、お姉ちゃんとか呼ばれるのなんだか憧れちゃってさ~ほら、一応血はつながってるんだし」
「…うん。でも僕にはそんな…僕は天使族じゃないし、魔法も未だに使いこなせない。…あのことはもう許容されかけてる話だけど、やっぱり僕には同じ家系を名乗る資格なんて」
「大丈夫だって。魔法が使える使えないなんて関係ないよ。私だって飛べるようになるの周りより遅かったし!いつかちゃんと魔法も使いこなせるようになる日も来るって!」
「…そうなのかな」
「そんな気に病まなくたっていいよ。一族の純粋な血統が~とか私達にはもう関係ないって。たとえ羽がなくてもマテューくんにはちゃんと天使族の血が流れてる。あの心優しかったひいおばあちゃんの心をちゃんと受け継いでるよ。…私信じてるよ。」
「うん…ありがとう。でもさすがにいまからお姉ちゃん呼びは…恥ずかしいかな…」
「いいじゃ~ん呼んでくれたって~!まあいっか~じゃあご飯食べに行こ?マーちゃん♪」
「その呼び名もちょっと」
「ええ~!そんな~!!」
「やあ。聞こえるかな?あーあー」
「バッチリだよ~!あの二人がわかりやすく教えてくれたわ。ところでこれすごいね~。さわれないあなたが立ってるわ」
「ああおもしろいだろう?最新仕様のホログラム投影型通信機だ。ちゃんと脚まで映せる仕様にしたんだぞ。んで今時間は大丈夫なのか?」そんなに触られると反応に困るんだが…
「大丈夫よ!さっき温泉入ってきたところなの。ところでなんでこれを私に?私なにかコンテストに入賞した覚えは無いけど?」
「いつもどおりで良かった。それはいつもクロスタグラムをご贔屓にしてくださってる巨大インフルエンサー様へ、シグ社からのささやかなプレゼントですよ。これでいつでもサンディアークのここへホログラム通信をかけられる。サンディアークの特殊な魔石を風に乗せて産地直送してるんだ。どうだ?気に入ってくれたかな?」
「うふふ。ありがとう~そんなこと言ったら1日1回あなたの部屋に幽霊プリメラちゃんが現れちゃうわよ?」
「それは面白い。ただ実体が来てくれるのが一番ありがたいけども。」
「実体がそっちへ行けないからの配慮ってことなのね?ふふ…ところでこんな豪華な通信装置をあの子たちにわざわざ持ってこさせるなんて、あなた相互なんだからいつでもクロスタグラムでチャットできるじゃない。」こんな重いもの、輸送で送ってこればいいのに。わざわざあの二人なのはどうして?
「残念ながら文字を考えて打ち込むのは苦手なんだ。まあそういう理由もあるがもう一つ理由がある。半年前の夜想祭での出来事についてなんだが。」…まあ、親しい仲から渡されたほうが嬉しいかなとね…ハー…やはり不自然すぎたかな?
「あ~…なるほどね。それならこっちのほうが話しやすいかも。で、何が聞きたいの?」そういうところ、本当に不器用なんだから。
「謎の紫の破片についてだ。夜想祭中に起こった原生生物が凶暴化するこの事象はあれから一度も確認されていない。天衣神宮で起きた産神の暴走でも確認ができなかった。で、あのときもらったサンプルの精密検査を試みてとりあえず判明したことを話しておこうと思う。」
「そうね…あの件があってから国民たちに注意勧告は行ってはいたけど、目撃情報や感染情報は全くなくて、原生生物も国民たちも一応平和よ。相変わらず寒いけど。とりあえず聴かせて?」
「そうか…この石はこの星で全く見たことのない謎を秘めた石だ。侵食した生命の体内魔力を特殊な力で増幅させる。だが、人それぞれ許容量の違い、常に均衡を保っている体内魔力が爆発的に増えるとどうなるか…それが、夜想祭で起きたことだな。更に厄介なことに、体内魔力を保有できない体質の生命にも、この石が体外魔力の受け皿となり一定時間ながらも魔法が扱えてしまう体質となる。それがいかに ヤバイ か。ソルシエ協会が厳しく扱う魔法を取り扱っている理由の一つに、
{魔法は正しく使わなければ時に体を蝕み毒となる。}
という教えがあるだろう?つまりこの石によって魔力を得たとしても正しい使い方がわからなければ、ただ身を滅ぼすだけになる。さらに体ももともと魔力を持つためにできていないから、やがてアレルギーとして体の症状に現れ、最悪死だ。…まるで天使族の呪いみたいだな。
まあここまでのことは君もわかってただろう。だが新たな事実はここから。研究でわかったのが、この石は独立状態の時、空気中の魔力を微量ながら引き寄せ、吸収している。この仕組が、まるでこの世界に生きる私達ソルシエの体内構造とそっくりであることだ。これは偶然なのか、この星の生物の必然なのか、はたまたスターなんたらの{模倣}なのか…
この石は少なからず「意志」を持っている………この石自体が生きているかもしれないし、はたまだ何者かの体の一部かもしれないということ。ダジャレじゃないぞ。
この紫の破片、私達は{アンジェオーラ}と名付けた。とりあえず、このアンジェオーラを見つけた場合は、素手で触らないように厳重に隔離することだ。こんなものかな。とりあえず以上だ。」
「生きてる…か~夢みたいな話ね。そんな面白いものがこの世界にあるのね…まあ、この世界にファントムが確認されてる世界だもの。夜想祭のときにもいろんな子がいたし…もう驚かないわ。」そういえばあのキラキラしたカーバンクルちゃんも…
「ああ。実に興味深い。この石にはまだまだ秘密がたくさんある。だが…こんなものがこの世界にあってはならない。この星のものだろうがなかろうが、この星の生命を脅かす者には対処が必要だと考えている…まあこの石が意思を持っているなら毎日語りかけて友達になってもらうほうが手っ取り早くていいかもしれないが。」カーバンクル?その個体はこの石と関係が有りそうなのか?
「あはは!面白いね~!じゃあ私その子に毎日話しかけに行ってあげるね!いいガールフレンドができたじゃない」あの子の周りに流れてたあの空気…同じようで違うような…はたまた正反対のような…この石と関係があるかどうかは分からないけどね。
「気にはこの子が私のガールフレンドに見えるのかい?面白い発想だ。」ほう…魔法使いの直感といったところか。興味深い。実に面白いことを聞かせてもらった。
「見た目は宝石…触れたらキケン…とっても夢があるじゃない♪ アンジェオーラか~…じゃあその子の名前、{アンシエ}ちゃんで!」
「ネーミングセンスのない私が1週間悩みながら考えたんだぞ?この子の名前が決まる前にもっと早く君にお披露目に行けばよかったかもしれないな。」
「ね~あなたが悩んで名づけた娘との対面…♪?もっと気軽にそっちに行けたらいいのにな~」
「もしここに来れたとしても君はこの娘に触れないだろう?」
「確かに。ふふ。でもあなたは素手で触れちゃうのね。あなた一応ソルシエで通してるんでしょ?」
「まあ、この事情を知ってるのは君ぐらいしかいないからな。」
「…どう?戻れそうなの?」
「ああ、何度も言ってると思うが戻りたいわけではない。もう私は私だ。この道にしか生きていけない。だが私は諦めない。試験も順調に行っている。もう少しだ。…もうこれぐらいでいいだろう?」
「ええ。あなたが元気にやれてるなら私は嬉しいわ。ふふっありがとね~じゃあね!」
「ああ。ではまた。明日。」
「やっほ~♪調子どう?なんかやってた?」
「ああ、10秒前まで口を動かしてた。」
「あら、危うく食事を邪魔するところだったわね。」
「まあ別に構わないが…またいつものあれか?」
「アンシエちゃんは元気~?」
「ああ、未だに私に口を利いてくれない。」
「アプローチが強引過ぎるのよ、もっと女の子には優しく接しないと~」
「束縛はだめってか?この子は私の箱入り娘だぞ?」
「過保護なほうだったわ。外に出してあげることも大切よ~ほらアンシエちゃんも外の世界を見たいって。」
「その指摘はあながち間違いではないな。アンジェオーラは落とし主の元へ帰りたいのかもしれない。」
「この子の本当の親が見つかるといいわね♪…って見つかったらそれはそれでまずいねエヘヘ。」
「これがここにある間は油断できないな……で用は済んだか?」
「うん♪あ~あそれにしても研究室の中しか見れないなんて退屈ね~。」
「なんだ?このおもちゃ部屋がつまらないのか?」
「もう同じもの何度も見たわよ…他のところも歩いてみたいな~。」
「…できなくも無いが。」
「え!?」
「ああ。」
「もっとはやく言ってよ!」
「まだ通信機能の実証実験中だったからな。今のところ問題なく動作している。とりあえずクレサントタワー展望エリアあたりまでは拡大できそうだ。…だが外に出られるのはまだまだ先だな。」
「やった~!」
「明日には領域拡大しておく。制限時間付きだがね。まあ、そういうことで、わが子がおねんねの時間なんで、失礼するよ。」
「たのしみ~~~♪ふふ…いい夢見てねアンシエちゃん♪」
「…展望台はいつからお遊戯会場になったんだ」
「私はただ展望エリアを一周してるだけよ?やっぱダメだった?」
「いや、別にいいのだが。…逆に展望エリアの集客数は日に日に増えている。サンディアークでまさかあのプリメラ様に会える!だとか。クロスタグラマーたちがこぞってサインを求めたがペンを握れない、神出鬼没の幽霊姫様だとか。」
「うふふ、次は展望コンサートかしらね♪」
「そういう試みも考慮しておこう。君がそれでいいならな。」
「私はいつだって大丈夫よ。いままでモデルもラジオもテレビも公演もやってきたんだし!それに、今までフロウフローラの外に出るなんて数えれるほどしかしてこなかったし。こんなことできる楽しみなかなかないわ♪」
「なるほど。何百年もよくそのポジティブが続けられるもんだ。」
「あなたもここまで熱心に自分のための研究を続けてきてるじゃない。」
「私は、諦めが悪かっただけだ。」
「でも無駄じゃなかった。あなたの研究は、今では世界中の人たちをときめかせるものになったじゃない。あとは…」
「翼を取り戻すだけ。」
「…そうだ思い出した。明日でいいから、頼みたいことがある。」
「ん?別にいいけど、お姫様の素材なんだからロイヤリティは高いわよ?」
「わかっている。それに個人利用の範囲だ。詳しくは明日説明する。」
「ふふ、なんやら面白そうなこと企んでる…」
「ついでに展望エリアにレッドカーペットでも敷いておけばいいか?」
「すごいおもてなしじゃない!すてき!楽しみにしてるね♪」
若者「クソッ……結局俺は足手まといかよ!魔法使いの奴らめ…どうせ俺なんて…」
???「…ねえキミ」
若者「な、なんだ…どこから…声が…」
???「ねえキミだよキミ」
若者「俺か?!俺になんか用か!…どこにいるんだ!」
???「そうだよ。魔法を使えるやつがそんなに羨ましのかい?ンフフ…それとも、憎いのかい?」
若者「なんだよお前…ああ羨ましいさ!だから憎い!俺から仕事を奪いやがって……そうさ俺は魔法が使えない!ただのブレイブだ!俺に個性なんてねえよ…クソ…」
???「ふ~~~~ん…いいじゃん…面白いじゃんそういうの…!キミはずっと悩んでたんだね…わたしにもわかる。自分の個性は変えられない。能力の有無も大小も、み~んな不平等だ。そんな世界、イヤだよね?」
若者「ああそうだ!だがそんなの誰かが変えられるもんじゃないだろ」
???「もし、成れる。って言ったら?」
若者「え…?」
???「フフフ………キミも、偉大な魔法使いに、なっちゃえよ
「ふう。みんな、やっぱ欲深いんだねえ。石を食べるヤツはよく分からなかったけれどさ…ヒトって弱みを突いてあげればこうも簡単に崩れちゃうんだねえ。オマケに面白そうなことを考えてるヤツもいたし。ふふ…ちょっと面白くなってきたじゃん。」
「そして、もうすでにアンジェオーラを持ってるのがこの島にいる。なんでだろうね。まあ、いいや。特に大きそうなアレはあとで回収しに行こう。」
「なんか島の警備も強化されてきて面倒だけどまあこれだけ騒いでくれれば、あとは…」
「……はあ。アンシエアンシエって。うるいんだよ。」
「」「」さて、問題は素質だけど…今度のはどんなあがきを見せてくれるかな?クフフ…
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