塗仏の宴 宴の支度(小説)

ページ名:塗仏の宴 宴の支度_小説_

登録日:2011/05/26(木) 04:34:54
更新日:2023/08/10 Thu 14:55:41NEW!
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小説 妖怪シリーズ 画図百鬼夜行 百鬼夜行シリーズ 京極夏彦 鳥山石燕 指ぬきグローブ 静岡県 伊豆 塗仏 支度 始末 終わりの始まり 不老不死 太歳 津山三十人殺し 完結編 妖怪 塗仏の宴 ぬっぺっぽう うわん ひうすべ わいら しょうけら おとろし ※一部ネタバレ注意 宴の支度



「知りたいですか」






●塗仏
……。





■塗仏の宴 宴の支度


『ぬりぼとけのうたげ うたげのしたく』京極夏彦の小説作品。
妖怪シリーズ」の第六作にして、第七作『塗仏の宴 宴の始末』と併せた前後編の前編に当たる作品である。
これまでは、書き下ろしと云う体裁で描かれた同シリーズとしては初めて幾編かの雑誌掲載を経て刊行されており、
98年に加筆、書き下ろしを加えた新書版が「講談社ノベルス」から発売。
現在は文庫版も存在する。


シリーズとしては初となる一冊では完結しない(如何なるページ数を使おうとも)、前後編と云うスタイルを執っているのみならず、
前作『絡新婦の理』で最高潮を迎えたと云って良い「京極堂」の世界観を、作者自身が一度“破壊”してしまおうとしているかの様な内容となっているのが特徴。
各々が重なり合い乍らも、別の起点を持つ六つの物語により構成されている。




【概要・登場人物】





●ぬっぺっぽう


昭和二十八年五月……。
作家・関口巽は雑誌「實録犯罪」の編集長・妹尾友典の訪問を受け、元警官の光保公平と云う男の奇妙な体験談を聞かされる。
調査を依頼された関口は、面会した光保自身から直接に奇妙な体験……「山中から消えた村」の情報を聞くと共に、自ら調査に向かう事を決意する。
紆余曲折を経て……現場となる伊豆・韮山の若い駐在である淵脇、そして郷土史家を名乗る男……堂島静軒と共に韮山山中の「消えた村」に分け入る関口……。


……そして、光保の語る「佐伯家」の奥座敷に辿り着いた関口は意識を失なってしまい……。



……吊された裸体の女を視つめていた関口は……警察に勾留されてしまうのだった。



作家。
「消えた村」の調査を依頼される。


  • 光保公平

「消えた村」=「戸人村」の駐在だった男。
奇妙な体験談を関口に語る。


  • 淵脇

「消えた村」の隣村に当たる韮山の若い駐在。
関口と共に韮山に分け入るが……?


  • 堂島静軒

「消えた村」周辺の郷土史を纏めている和装の男。




●うわん


……逗子の事件の後、静岡に越していた佐田朱美は、ある日の夕暮れ、村上と名乗る奇妙な自殺志願者と出会う。
行掛り、村上の命を救った朱美だったが……彼女が僅か、目を離した隙に男……村上兵吉は再び自殺を計ったのだった。



  • 一柳朱美

狂骨の夢」のヒロイン。
静岡は沼津の千本松原に移っていた彼女は、再び奇妙な事件に巻き込まれる。


  • 松嶋ナツ

朱美の隣人。
「成仙道」の勧誘に悩まされている。


  • 村上兵吉

「理由」も無く自殺を繰り返す男。
かつて人獲いに遭う経験を持つ。


  • 尾国誠一

置き薬売り。
朱美の良人に商売の手解きを教えた人物……だが。


  • 刑部昭二

「成仙道」の道士。
村上兵吉を救うと語るが……尾国に邪魔される事となる。




●ひょうすべ


昭和二十八年の始め……。
友人の中禅寺宅で、古書肆「薫紫亭」の主人・宮村香奈男と出会った関口は中禅寺共々、宮村が懇意にしている元雑誌編集者・加藤麻美子の相談に乗る事になる。
邂逅の中で、関口は麻美子こそが巷で噂の謎の女流歌人・喜多島薫童では無いかと云う事に気付く。
麻美子が畏れる「不幸をもたらす魔物」=“ひょうすべ”こと「みちの教え修身会」の会長・磐田純陽。
彼女に託宣を下していた、鳥口の追っていた霊媒師・華仙姑処女……。
そして、その陰で暗躍する者の正体とは……?



  • 関口巽

作家。
「京極堂」での宮村との出会いから、加藤麻美子の身に起こった不幸の相談に乗る事になる。


古本屋。
通称は「京極堂」。
先輩である宮村の相談を受け“ひょうすべ”の考察を披露すると共に、麻美子の身に起きた不幸の原因を見抜く。


  • 鳥口守彦

カストリ雑誌「實録犯罪」記者。
霊媒師・華仙姑処女を追っていた。


  • 加藤麻美子

かつて“ひょうすべ”を目撃した後に父親を失い、今また“ひょうすべ”を見た事で生まれたばかりの娘を失った女性。


  • 宮村香奈男

和書、古地図専門の古書肆「薫紫亭」の主人。
「先生」が仇名。
モデルは作家の北村薫と思われる。




●わいら


……中禅寺敦子は取材帰り「韓流気道会」に追われていた女……華仙姑処女、こと佐伯布由と出会い、彼女に“救われる”……。
しかし、尚も彼女らを追う「気道会」の手の者に襲われた二人だったが、三軒茶屋は「条山房」の宮田を名乗る人物に助けられる。
……華仙姑処女こと、布由の悪評を慮った敦子は「薔薇十字探偵社」の榎木津礼二郎に相談してみる事を思い付くが……。



  • 中禅寺敦子

雑誌「稀譚月報」記者。
「京極堂」こと、中禅寺秋彦の妹。
ブラコン疑惑が発覚する。


  • 華仙姑処女(かせんこおとめ)

本名・佐伯布由。
世間を賑わす謎の霊媒師……だったが、彼女自身はその境遇に悩まされていた。
この『塗仏の宴』のヒロイン。


  • 岩井崇

「韓流気道会」師範代。
敦子と華仙姑を追うが……。


「薔薇十字探偵社」の代表。
華仙姑……布由を見て何事かを見抜く。




●しょうけら


房総の事件から少し後……。
木場修太郎は“馴染み”の「猫目洞」主人・竹宮潤子から三木春子と云う女工の相談(ストーカー被害)を受ける。
……当初は乗り気で無かった木場だったが、相談を持ちかけた友人の「京極堂」の講釈を聞いている内に“奇妙な事実”に気付くのだった。



東京警視庁の刑事。
四角いが有能な無頼警官。


  • 竹宮潤子

安酒場「猫目洞」主人。
修ちゃんも頭が上がらない。


  • 三木春子

「条山房」の主催する「長寿延命講」で知り合った工藤信夫と云う男から「付き纏い」被害を受けていた、と語る若い女工。


  • 岩川真司

木場の所轄時代の同僚。
木場曰く「馴れ馴れしく、付和雷同で権威主義的で卑屈」な厭なヤツ。
「藍童子」の導きで出世の道を歩むが……。


  • 藍童子

本名・彩賀笙。
真実を見抜く「照魔の術」を使うと云う美少年。
その霊力で警察に協力し、幾つもの事件を解決していると云うが……?
三木春子を“連れていって”しまう。




●おとろし


家族を失った織作茜は、遠縁の羽田隆三に「蜘蛛の巣館」を売却した後、彼に請われて隆三が私財を投じて立ち上げた「徐副研究会」に協力する事にした。
……その過程で、伊豆は韮山の「ある土地」に纏わる陰謀を聞かされた茜は、
隆三の秘書の津村、中禅寺の紹介で出会った妖怪研究家の多々良……そして、謎の郷土史家との邂逅の中で“ある考え”に思い至るが……。



  • 織作茜

「お試しになられますか……」
絡新婦の理』のヒロイン。
織作家に伝わる二つの神像の奉納場所を探していた。
多々良との邂逅で、その答えを知るが……?


  • 津村信吾

羽田隆三の秘書。
“ある秘密”を知る。


  • 多々良勝五郎

中禅寺の友人で、大陸専門の妖怪研究家。
彼の替わりに茜の相談に乗る。
後の『今昔続百鬼 雲』の主人公。


  • 羽田隆三

「羽田製鐵」顧問。
俗物で下品だが、それだけでは括れない老獪な人物。
「蜘蛛の巣館」ごと、茜を買うと語る。


  • 堂島静軒

自称郷土史家の"不思議"な男。
羽織の下には、胸に籠目紋(六芒星)がついた白い単衣を着ている。












【余談】


シリーズでは初めて明確な「敵」が登場する他、読者のイメージを反故にする様なモノローグを登場人物が語る等、本作は異質な作りが為されている。
……初めて読んだ読者はかなりの不安を覚える事は必至であろう。





※以下、一部ネタバレ。




「まっ待って下さい!」





「わ、私は……織作茜さんを殺したのですか?」




勿論、絶望的な返事が返って来た。







視れども見えず、聴けども聞こえぬ鬼神の盛を“識る”方のみ……追記・修正お願い致します。

















「知り…たいです。」




■支度の完了■

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