葛飾北斎(浮世絵師)

ページ名:葛飾北斎_浮世絵師_

登録日:2019/09/02 Mon 15:47:15
更新日:2024/05/09 Thu 13:39:51NEW!
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己六才より物の形状を写の癖ありて
半百の此より数々画図を顕すといえども
七十年前画く所は実に取るに足ものなし
七十三才にして稍 禽獣虫魚の骨格
草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み
九十才にして猶其奥意を極め
一百歳にして正に神妙ならん与欠
百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願くば長寿の君子予言の妄ならざるを見たまふべし


「富嶽百景」跋文
















葛飾北斎(宝暦10年9月23日〈1760年10月31日〉? - 嘉永2年4月18日〈1849年5月10日〉)は江戸後期の浮世絵師。
化政文化の一翼を担い、その圧倒的な画力は近代になってから世界中の人々を驚かせた。
代表作は『富嶽三十六景』『北斎漫画』『百物語』『諸国滝廻り』など多数(後述)。



略歴(年齢は諸説あり)

0歳:武蔵国葛飾郡本所割下水(現在の東京都墨田区亀沢)の川村家に生まれる。幼名時太郎。後に鉄蔵と名乗る。
因みに、住んでいた場所は北斎の偉業を記念して「北斎通り」と名付けられ、北斎の作品が至る所に飾られている。



5歳:幕府御用達の鏡師・中島伊勢の養子となる。この頃から絵に興味を持ち始めていた。



14歳:彫刻師の弟子となって版木彫りの仕事に就く。



19歳:浮世絵師・勝川春章に弟子入り。勝川春朗を名乗る。
勝川春章は役者絵や相撲絵を得意とする「勝川派」の開祖であり、北斎もそれに倣って役者絵を描く一方で、この時から既に様々な題材、流派の絵を(こっそり)描いていた。



20歳:役者絵「瀬川菊之丞 正宗娘おれん」でデビュー。



35歳:他流派の絵を描いていたことがばれて勝川派を破門される。


同年、「北斎宗理」を名乗る。
この「宗理」は「風神雷神図」等を描いた俵屋宗達によって開かれ、「紅白梅図屏風」を描いた尾形光琳によって発展した「琳派」の頭領が使用する画号のことである。



39歳:「宗理」の号を門人・琳斎宗二に譲り、琳派から独立。自らは「北斎辰政」を名乗る。
「北斎」及びこの名は北極星および北斗七星を神格化した日蓮宗系の北辰妙見菩薩信仰に因んだ名前である。


この頃に、どの流派にも属さないことを宣言した。



43歳:狂歌絵本『画本東都遊』刊行開始。



46歳:「葛飾北斎」を名乗る。この「葛飾」は上述の生まれの地が下総国葛飾領だったからだと言われている。



51歳:「戴斗」を名乗る。



53歳:秋頃、名古屋の牧墨僊邸に逗留、その後、関西(大坂、和州吉野、紀州、伊勢など)方面へ旅行する。



55歳:『北斎漫画』初編刊行。



58歳:名古屋に滞在し10月5日、名古屋西掛所(西本願寺別院)境内にて縁日の余興として120畳(約200平方メートル)大の達磨半身像を描く。



61歳:「為一」を名乗る。



64歳:『富嶽三十六景』製作開始。



72歳:『富嶽三十六景』出版。



74歳:『富嶽三十六景』完結。



75歳:「画狂老人」「卍」を名乗る。
同年、『富嶽百景』の初版刊行。



87歳:自分の画法を若い画家達へ伝える為に、絵の具の使い方などについてまとめた『絵本彩色通』を出版。



90歳:江戸・浅草聖天町にある遍照院(浅草寺の子院)境内の仮宅で没する。
この時、「天我をして十年の命を長ふせしめバ」「天我をして五年の命を保たしめバ、真正の画工となるを得べし」
(せめて10年、いや5年生き永らえれば真の絵描きになれるのに…)
と呟いて息を引き取ったという。辞世の句は
「悲と魂で ゆくきさんじや 夏の原」
(人魂になって夏の野原に気晴らしに行こう)
墓所は台東区元浅草の誓教寺。法名は南牕辺院奇誉北斎居士。生誕二百年記念碑がある。




逸話

  • 引っ越し回数の多さ

生涯に93回も引っ越し、1日に3回引っ越したこともあるという。
その理由は絵を描くことに集中する為とか、紙で部屋が散らかるたびに引っ越していたからだとか、借金取りから逃げる為だとか言われているが詳細は不明。


  • 号(画家が本名の他に用いる名)の多さ

略歴からも分かるが、とにかく号が多い。
世間一般で知られる「北斎」という名も、使用頻度が比較的多かったからで、その号すらも弟子に譲っている。


  • 手先が器用

米粒にスズメを2羽描くなんてこともしてのけた。


  • 絵?

11代将軍徳川家斉は北斎の画力を聞きつけ、鷹狩の帰りに絵を描いてくれるよう所望した。
北斎は長い紙に墨を付けた刷毛を走らせ、その上に足に朱を塗ったニワトリを歩かせて「竜田川でございます」と言い放った。
やっつけ仕事とか言わない


  • プライドの高さ

北斎67歳、オランダ商館長(カピタン)が北斎に150金で絵を2枚依頼した。
そして絵は完成し、商館長は約束通り150金を支払うが、同伴していた医師シーボルトは半額の75金にしてくれるよう交渉。
しかし北斎は「外国人に日本の絵描きは掛け値の取引をすると思われてしまう」と拒否。
後日商館長は北斎のプライドに感心し、不足分の代金を支払ったという。


  • 晩年

『富嶽百景』の中で「百数十歳まで努力すれば生きているような絵が描けるだろう」と記していた北斎だったが寄る年波には勝てず、晩年は「1匹すら満足に描けない……」と、涙を流して自分の画力不足を嘆いていた。



代表作

富嶽三十六景

まごうことなき北斎の代表作。当時、浮世絵に「風景画」というジャンルはなかったが、本作の登場でジャンルとして確立した。
中でも荒れ狂う高波を生き生きと描いた「神奈川沖浪裏」は「モナ・リザ」に次ぐ「世界で二番目に有名な絵」とも言われる。
ほかにも「凱風快晴(通称:赤富士)」や紙が風に飛ばされる様を写した「駿州江尻」、崖っぷちから網を投げる漁師を描いた「甲州石班沢」も有名。


北斎漫画

北斎の版本スケッチ集。海外では『ホクサイ・スケッチ』という名で知られている。
各地の名所から古今の偉人・妖怪変化に至るまで「描かれていない物などない」と言っても過言ではないくらい様々な森羅万象を網羅している。
最初は初編で終了するつもりだったが爆発的な人気を見せ、北斎没後も刊行され続けた。(なんと明治11年まで続いている。)
ろくろ首の親子と眼鏡を買う三つ目入道の絵や、6つ並んだ変顔の絵が有名だろうか。


百物語

北斎は妖怪変化を絵に捉えるのにも長けた。
霊が提灯から現れた設定を翻案し、
提灯と一体化させた『お岩さん』や、
首が連なった9枚の皿となった蛇女のような『皿やしき』など、
高名な怪談をアバンギャルドな構図で描いている。


諸国滝廻り

『富嶽三十六景』と同じ版元から出版された。
上3つと比較すると知名度はやや劣るが、もちろんそれらに優るとも劣らない水の迫力が際立つ。


喜能会之故真通

北斎随一の問題作。通称『蛸と海女』。当時のペンネームは「鉄棒ぬらぬら」。
海女さんをクンニする大蛸とディープキスする小蛸を描いた触手プレイの祖。
画狂老人・北斎はたかが春画にも大層な気合を入れており、
クンニの効果音や海女さんの喘ぎ声は現代人が読んでも興奮できるぐらいリアル
余談だが、描かれている特徴から、このタコ、雌ではないかと指摘されることも*1


自画像

「画狂老人」らしさを漂わせる肉筆彩色の顔画像と、
杖をついた白黒版本の全身画像がある。


海外への影響

近代になって日本が開国し、欧米諸国に様々な国産品が輸出された。
浮世絵は主に陶磁器などの割れ物の包み紙として使われたが*2
外国人はあろうことか陶磁器なんぞの質よりも浮世絵の質に深く感動した
そしてそれはヨーロッパでジャポニスムに多大なる影響を与えることとなる。
フランスの作曲家クロード・ドビュッシーが、「神奈川沖浪裏」をモデルに交響曲「海」を作曲したのは有名。



北斎または北斎をモチーフとしたキャラクターが登場する作品、北斎にちなんだものごと

百日紅(杉浦日向子)

史実をもとに北斎と娘・阿栄を取り巻く人々を中心に、
江戸庶民の生活を生き生きと描いた名作漫画。
2015年には杏&松重豊主演でアニメ映画化もされた。


Fate/Grand Order

まさかの女体化に見せかけたタコ化。江戸っ子らしく一人称は「おれ」。
詳細は項目にて。


磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~

デザインモチーフは肉筆彩色の自画像。
春画目当てで家回りを荒らしていた磯兵衛を放火魔と勘違い。
その後春画目当てだと分かると「こんな画力不足の昔の絵は見せる気にはならない」と渋る。
そして導入部の跋文を引き合いにいつか「''見ただけで何か出る神の領域の春画''」を見せる事を磯兵衛に約束した*3


だが運命というのは残酷で、数日後志半ばで永眠。
もちろん夢と約束を諦めきれるはずもなく、
なんと孫娘のおきたちゃんに憑依し悲しむ磯兵衛の眼前に現れた。


その後は至高究極の名刀「マサムネ」を描いたり
なんと''アニメーション春画制作''*4にまで手を出したりして腕をますます上げている。


モンスターストライク

キャラデザに成長が顕れており、
進化前・進化後は笠をかぶった江戸っ子風の出で立ちだが、
神化すると青ざめた顔に白髭、『百物語』のお岩さんとこはだ小平治を携えた画狂老人の出で立ちとなる。


タイムボカン 逆襲の三悪人

声優はラピュタの親方でおなじみ糸博氏。
引っ越し93回のエピソードが詳しく語られた。
ダイナモンドを根付として持っており、『富嶽三十六景』の構図を選んでくれた者にあげると宣言。
主人公のトキオとカレンが見事に勝ち取った。
トキオ達がアクダーマに勝利したあとはゴーカブトンに興味を示していた。


鬼灯の冷徹

言及のみ。茄子が鬼灯からの依頼で古くなった壁画の上に新しい壁画を描くよう依頼されたエピソードで、古くなった壁画は葛飾北斎が描いたものだった事が判明。
その事を知った唐瓜はドン引き状態で「訴えられません?」と聞いてきたが、鬼灯曰く「漫画家デビューを控え、それどころではない」らしい。


東京ディズニーランド

パーク内で唯一和食が食べられる飲食店『れすとらん北斎』の名前の由来。
店の看板に代表作「冨嶽三十六景“神奈川沖 浪裏”」がプリントされている他、店内にも「冨嶽三十六景“神奈川沖 浪裏”」の屏風が飾られている。


桃太郎電鉄ワールド〜地球は希望でまわってる!

特定の都市を独占することによって、史実での活躍や功績に由来する能力でプレイヤーを助けてくれるキャラクター「歴史ヒーロー」の一人として登場。日本人では唯一抜擢されており*5、東京を独占することで仲間になる。
ライバルが海路にいる時に「富嶽三十六景」にちなみ大波を起こして数カ月に亘り動きや通行を封じたり、北斎を味方に付けているプレイヤーが所有する博物館や美術館の物件の多さに応じた臨時収入をもたらしてくれたりする。独占には約8,800億円かかるが、その分の働きは期待できる。



「天我をして十年の命を長ふせしめバ」「天我をして五年の命を保たしめバ、真正の項目となるを得べし」


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  • 北斎は黄表紙の挿絵こそ至高。 -- 名無しさん (2019-09-02 15:56:57)
  • Fates -- 名無しさん (2019-09-02 15:58:33)
  • ↑ミス。Fategoでの設定は磯兵衛の設定みたいやね -- 名無しさん (2019-09-02 15:59:37)
  • なんかすごい絵を書いた人、ではキャラ付けしにくいのか大抵春画方面のイメージを持ってこられる人。間違いじゃないけど。 -- 名無しさん (2019-09-02 16:14:44)
  • 当時としては凄い大柄だったとも言われるよね。男子の平均身長が160cmに満たないのに188cm位はあったとか。 -- 名無しさん (2019-09-02 16:41:22)
  • これオリジナルの人物の項目でしょ? だったら項目名は「葛飾北斎(浮世絵師)」じゃなく「葛飾北斎」だけにしたほうがいいと思う。やり方知らないけど。 -- 名無しさん (2019-09-02 19:47:13)
  • 昔世田谷美術館のジャポニズム展で解説していたが、「遠近感というものに囚われず、絵の主役となるモノを"ドカン"と置く手法」は当時の人々の度肝を抜いたらしいね。 -- 名無しさん (2019-09-02 20:47:53)
  • そういえば「王様の仕立て屋」でも老齢に至った職人が、「(一つの道を極めるのに)人生は短すぎる」ってぼやく話があったが、一流の人間は皆こんな風に考えるのかしら。(もっともあっちはフィクションだけど) -- 名無しさん (2019-09-03 00:06:31)
  • ファンキーさを知ってから「北斎」って名前の元ネタを見ると ガイアがもっと囁やけと言ってる感覚で付けたんじゃないかなって疑ってしまう…… -- 名無しさん (2019-09-03 01:45:24)
  • 必殺からくり人富嶽三十六景殺し旅…と思いきや必殺にはSP回にも出演してるんだね -- 名無しさん (2019-09-03 04:17:28)
  • 伴天連XXの北斎がフィクションで初めて見た北斎だった -- 名無しさん (2019-09-03 07:31:57)
  • 緒形拳の「北斎漫画」もすごいぞ… -- 名無しさん (2019-09-03 07:46:36)
  • ↑5 別に一流の人間でなくとも、あるビブリオマニアが「一生かかったって今ある本すら読み切れないんだから人生短すぎる」みたいなこと言ってたしなあ。「意欲にあふれた人間」にとっちゃ人間の一生は短すぎるよ。「死ぬ理由もないから生きてるだけ」みたいな人間には60年だって長すぎるだろうけど。 -- 名無しさん (2019-09-03 13:32:56)
  • ↑2 タイトルが「北斎漫画」なのに北斎漫画に一切触れず、富嶽三十六景描くまでも1分くらいで終わらせて、北斎人生最期の大傑作が「蛸と海女」という物凄い作品だったな……樋口可南子が蛸とヤッてる特撮やりだした時にゃ何を見せられてるのかと思った。緒形拳の北斎はナイスキャストすぎるけども -- 名無しさん (2019-09-03 16:44:33)
  • 商業作品じゃないけど、ピクシブで見つけた北斎版テルマエロマエもおすすめ -- 名無しさん (2019-09-04 08:08:17)
  • 本人出てこなかったが存在に言及したのが鬼灯の冷徹。閻魔庁外壁の壁画を描き直した際、前の絵師が北斎だったというエピソードがある。なお本人はあの世の雑誌にて漫画家デビューを控えているとのこと。 -- 名無しさん (2019-09-04 09:58:09)
  • 個人的には「笑般若」が妖怪画の中で一番怖いと思う。 -- 名無しさん (2023-05-31 20:40:33)

#comment

*1 タコの吸盤が均一な大きさで整然と並んでいるため。雄の吸盤は大小入り混じって歪に並ぶ。北斎がこの点を意識していたのかは不明である。
*2 浮世絵は版画であり、その多くが現代で言うところの新聞紙や広告チラシに近いものだった。
*3 しかしこの会話はピー音だらけの淫猥極まる会話だったため危うく通報されかかった
*4 もっとも北斎は遠近法を研究しているため、アニメの原理を発見していても不思議ではない。
*5 ヒトに限定せず「日本の出身」というくくりなら、犬であるタロとジロも含まれるか。

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