第1シーズン/メイキング

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メイキング


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The Making of
‘Thomas the Tank Engine’

『Model Railway Constructor』の1984年12月号。

目次

The making of THOMAS

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冬の操車場シーンのトーマスアニーとクララベル

本文:クリス・リー/写真:クリアウォーター・フィルム社(特記以外)

10歳未満の子供を持つ一部の読者は、火曜日午後の『きかんしゃトーマスとなかまたち』の放送開始に気付いていないかもしれません。このシリーズは年間75万冊以上の売り上げを記録する、ウィルバート・オードリー牧師の『汽車のえほん』を原作としています。この人気絵本シリーズを、サウサンプトンを拠点に活躍するプロデューサーのブリット・オールクロフトは、リンゴ・スターのナレーションによる約5分のモデル・アニメーションとして、26話のエピソードを制作しました。撮影にあたって、機関車やセットなどのたくさんの模型を製作する必要がありました。では、どのようにシリーズを制作し、どのような模型製作技術があったのでしょうか?

筆者は調査の末、クラパム・ジャンクション駅近くの小さな工業施設の並びにある、TVシリーズの製作会社であるクリアウォーター・フィーチャーズを訪ねました。模型製作者のデヴィッド・ペインジェミー・ジャクソン・ムーアに迎えられ、ワークショップやスタジオ横の倉庫にトーマスと仲間たちがきちんと並べられているのを確認しました。

同社はアニメーションや特殊効果の仕事を得意としていて、TVコマーシャル用のロボットや、歌ったり踊ったりするレモンなどの日常的なキャラクターによる作品を制作したことがありました。デヴィッドとジェミーは、“特殊効果の模型製作者”を自称し、トム・ヴァインや他のスタッフと共に機関車やセットを製作しました。

スケールには様々なギミックの搭載が可能な「1番ゲージ」が採択されました。機関車はメルクリン製品を改造した下回りと、原作の挿絵を参考に製作されたボディで構成されていました。車輪やシャーシを除くと殆ど製品の原形を留めていないため、完成した模型からはメルクリン製品であったと認識することはできません。このシーズンでは、2台の小さないたずら機関車の「トーマス」と「パーシー」、「ゴードン」や「ヘンリー」、「エドワード」に「ジェームス」、そして路面機関車「トビー」の計7台の機関車が作られることになりました。

模型製作者の誰もが鉄道模型の改造経験がなく、7台の機関車の製作にはおよそ6週間かかりました。透明アクリル板「Perspex」でフルスクラッチされた機関車のボディを取り外すと、“ジェームズ・ボンドの車”と同じくらい複雑なギミックが搭載されています。煙室の裏側には、ラジコンで上下左右に動かす事ができる一対の目玉があり、目玉を動かすサーボモーターと受信機とが接続され、動力源となる4つの充電式電池を余ったスペースに搭載していました。撮影には頑丈で高品質なメルクリンの線路が採用され、9ヶ月という長い撮影期間使用されたことから、同社の製品が耐久性に優れていることがうかがえます。

動力機構にはダイヤフラムポンプを使ったスモークユニット(発煙装置)が接続されていて、車輪の動きと連動して煙を噴出することで、リアルな蒸気を再現することができます。ただし、停止している機関車から蒸気を噴出させる際には、線路の下に隠された発煙装置を使用するなどの簡略化も図られました。

機関車のボディは原作の挿絵の特徴をよく捉えていますが、電子機器を内臓する関係上、多少の調整が行われています。絵本を丹念に調べると、挿絵毎に形状が変わっていることさえありますので、驚くほどの変化ではありません。もちろんトーマスは“ずんぐりむっくりな煙突とボイラーと屋根”を備えた0-6-0Tで、パーシーは小型サドルタンクの0-4-0ST。本線の機関車は、内側シリンダーのジェームスや青い大きな“パシフィック”のゴードン。

(*印=写真:クリス・リー)

ThomasSeason1Model2
樹脂製の顔パーツを付けたトーマス*
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スプラッシャーの間にある目玉駆動用のサーボ、スモークユニットとダイアフラムポンプを搭載したシャーシ*
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カメラと背景布の前に作られた機関庫のセット
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まっ赤な機関車のジェームスと、ちびっこ機関車のパーシー*
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大きな機関車のゴードン*

表情を変化させるために、レジンキャストの顔パーツは撮影シーンの間に交換され、両面テープのようなもので固定されていました。キャラクターの顔パーツは、異なる表情が全部で約70個製作され、目の動きに加えて、表情をより豊かにすることができました。

多くの子供番組で採用されているストップモーション・アニメーションは動きがぎくしゃくしてしまいますが、このシリーズはモデル・アニメーションであったため滑らかなで説得力のある動きが可能となりました。そのためには車輪やレール、装置を清潔に保ち、バッテリーの充電を完備しておく必要があり、9ヵ月の撮影期間中、ジェミーはそれらの仕事を担っていました。

ジオラマセットは、高さ3フィート(1ⅿ弱)の台上に作られました。セットには業界の技術を応用していて、たとえば草原は、八百屋などで見られるプラスチック製の芝生シートを流用したもので、リアルに見せるために改造が施されていました。セットは、そのジオラマが登場する全てのシーンを撮影した後、解体されて新たなセットに置き換えられました。原作絵本を読んだことがある人なら、たくさんのセットが必要になることの見当がつくかもしれません。トップハム・ハット卿や機関士などの人間キャラクターは、機関室や客車の側面の拡大模型に合わせた大きなサイズで作られ、腕の位置を変えることで運転している様子などを表しました。

機関車とは別に、客車や貨車などの鉄道車両を用意する必要があり、その殆どがTenmille社の1番ゲージ車両キットやパーツを使用して製作されました。また、バスのバーティーとトラクターのテレンスなどの自動車キャラクターも製作し、テレンスは撮影スタッフから“Drac the Trac”(ドラク・ザ・トラック)と呼ばれていました。

『きかんしゃトーマスとなかまたち』は、プロデューサーのブリット・オールクロフトによる5年間の集大成です。監督はデヴィッド・ミットンが務め、劇伴はマイク・オドネルジュニア・キャンベルによって作曲されました。英国での放映権はITVセントラル、VHSの販売権はギルド・オーガニゼイション社が獲得しました。

苦労した模型製作者達は、シリーズが『マジック・ラウンドアバウト』や『ポストマン・パット』などような人気番組になることを期待しています。これらと同様に『きかんしゃトーマスとなかまたち』でも、グッズや玩具、模型が発売される可能性があります。シリーズに基づいた列車セットは子供たちを引き付けると共に、鉄道模型市場に新たな風を吹かせてくれるかもしれません。今のところ、それらの商品は検討している最中です。

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ジェームスとトーマスの操車場シーンの準備中。中央には改造されていないメルクリン機関車が見えます。

筆者は、模型製作者と話をして、写真撮影のために彼らが機関車の何台かを持ってきた時の、クリアウォーターの他のスタッフの反応を見るのが面白かったです。小さい機関車達は、撮影終了後の少しの間、展示されていましたが、撮影を目撃した何人かのスタッフは笑顔でした。これらの小さなキャラクターは、彼らを製作し、一緒に働いた人々に慕われていましたか?私は、トーマスの前に列車を見たことがない人々に出会ったのではないかと思いました。

注:『きかんしゃトーマスとなかまたち』の完成後、模型製作者達は“ペニコット、ペイン&リリー社”を設立し、映画とTVの模型や特殊効果を提供しています。

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支線が廃止になって悲しそうなトビーを撮影する頭上のカメラ
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ジェミー・ジャクソン・ムーア[左]はトーマス、アニーとクララベルがテレンスを抜いてトンネルへ向かうのを見ています。

外部リンク

  • Model Railway Constructor December 1984 - The Making of Thomas the Tank Engine
  • Articles(SiF)
  • “The making of THOMAS(PDF)”. 2017年11月15日時点のオリジナルよりアーカイブ
  • “TVシリーズ制作裏①(PPT)”. 2015年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ


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