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2001年宇宙の旅 | |
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2001: A Space Odyssey | |
2001uchuu.jpg | |
監督 | スタンリー・キューブリック |
脚本 | スタンリー・キューブリック アーサー・C・クラーク |
製作 | スタンリー・キューブリック |
出演者 | キア・デュリア ゲイリー・ロックウッド ウィリアム・シルベスター ダグラス・レイン |
撮影 | ジェフリー・アンスワース ジョン・オルコット |
編集 | レイ・ラヴジョイ |
配給 | メトロ・ゴールドウィン・メイヤー |
公開 | 1968年4月6日 Flag_of_Canada.svg 1968年4月11日 |
上映時間 | 141 分(途中休憩含まず) |
製作国 | Flag_of_the_United_Kingdom.svgイギリス アメリカ |
言語 | 英語 |
製作費 | $10,500,000 |
次作 | 『2010年』 |
allcinema | |
キネマ旬報 | |
AllRovi | |
IMDb | |
表・話・編・歴 |
『2001年宇宙の旅』(にせんいちねん うちゅうのたび, 2001: A Space Odyssey)は、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックがアイデアを出しあってまとめたストーリーに基いて製作されたSF映画および小説である。映画版はキューブリックが監督・脚本し、1968年4月6日にアメリカで初公開された。
遠い昔、ヒトザルが他の獣と変わらない生活をおくっていた頃、謎の物体がヒトザル達の前に出現する。やがて1匹のヒトザルが謎の物体の影響を受け、動物の骨を道具・武器として使う事を覚えた。獣を倒し多くの食物を手に入れられるようになったヒトザルは、反目する別のヒトザルの群れに対しても武器を使用して殺害し、水場争いに勝利する。
時は過ぎ、月に人類が住むようになった現代。アメリカ合衆国宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士は、月のティコクレーターで発掘した謎の物体「モノリス」を極秘に調査するため、月面クラビウス基地に向かう。調査中、400万年ぶりに太陽光を浴びたモノリスは強力な信号を木星(小説版では土星)に向けて発した。
18か月後、宇宙船ディスカバリー号は木星探査の途上にあった。乗組員は船長のデビッド・ボーマンとフランク・プールら5名の人間(ボーマンとプール以外の3名は出発前から人工冬眠中)と、史上最高の人工知能HAL(ハル)9000型コンピュータであった。
順調に進んでいた飛行の途上HALは、ボーマン船長にこの探査計画に疑問を抱いている事を打ち明ける。その直後HALは船の故障を告げるが、実際には問題なかった。ふたりはHALの異常を疑い、その思考部を停止させるべく話し合うが、これを察知したHALが乗組員の殺害を決行する。プールは船外活動中に宇宙服を破壊され、人工冬眠中の3人は生命維持装置を切られてしまう。
唯一生き残ったボーマン船長はHALの思考部を停止させ、探査の真の目的であるモノリスの件を知ることになる。
ひとり探査を続行した彼は木星の衛星軌道上で巨大なモノリスと遭遇、驚愕の体験を経て人類を超越した存在・スターチャイルドへと進化を遂げる。
(続編の映画『2010年』冒頭によると、月のモノリス発見が1999年、ディスカバリー号内の出来事が2001年の出来事とされている)
役名 / 吹替役名 | 俳優 | 日本語版 |
---|---|---|
デビッド・ボーマン船長 | キア・デュリア | 堀勝之祐 |
フランク・プール | ゲイリー・ロックウッド | 小川真司 |
ヘイウッド・フロイド博士 | ウィリアム・シルベスター | 小林昭二 |
HAL 9000(声) | ダグラス・レイン | 金内吉男 |
スミスロフ | レナード・ロシター | 坂口芳貞 |
ミラー | ケビン・スコット | 阪脩 |
キューブリックが異星人とのファーストコンタクトを描く映画を撮影すると決めたときに、その科学考証や共同脚本などをクラークに依頼をした。
クラークはすでに、宇宙人と人類のファーストコンタクトを描いた『前哨』という小説(ハヤカワ文庫の同名短編集などに収録)を1948年に発表していた。のちにクラークが発表した『失われた宇宙の旅2001』によると、キューブリックとクラークがアイデアを出し合い、まずはクラークが「小説」としてアイデアをまとめあげ、その後キューブリックが脚本を執筆している。
このため、小説版が原作として先に書かれたものであると勘違いされることが多いが、小説は映画の公開の後に発表されている上、その小説にはクラーク独自の解釈がかなり取り入れられていることからも、小説版と映画版は明確に区別する必要がある。
映画と小説版では若干ストーリーが異なっており、例としてディスカバリー号の目的地は、小説版では土星だが、輪の特撮が困難ということで、映画版では木星となった(小説ではクラークの意向により、木星を利用したスイングバイという設定を用い、土星と木星両方にディスカバリー号を行かせている)。
HAL 9000 の反乱の要因やラストの展開も、小説版は論理的に説明づけられているのに対し、映画版は謎めいた展開となっている。これは当初、映画冒頭に科学者らが人類の進化など作中の話題に関して語るインタビュー映像が予定され、また全編にわたってストーリーを解説するナレーションを入れる予定であったものが、過剰な説明が映画からマジックを奪うことを恐れたキューブリックが、インタビューもナレーションもすべて削除してしまったため、何の説明もない映像が映画全編にわたり続くことになったからである。
また、ヒトザルとモノリスの遭遇は小説では300万年前という設定だが、映画では400万年前とされているなど、細かな点の相違は多い。
後にクラークが執筆した『2010年宇宙の旅』はパラレルワールドとされ、ストーリーの多くの部分は続編の形を取りながら、主な舞台は木星周辺となっており、そこだけは映画版と同一になっている。「宇宙の旅」シリーズは4作執筆されており、シリーズ作品全ての作中設定は前作までの多くの部分を踏襲してはいるが、基本的にはパラレルワールドであるとあとがきやまえがきで触れられている。
映画版は、70mmシネラマ規格で制作された。キューブリックは映像表現にシネラマスクリーンでの上映効果を最大限に狙っている。シネラマスクリーン以外の映画館やビデオでの鑑賞は監督の意図にないため、現代の日本においてはキューブリックの意図した映像表現を存分に感じられる環境にない。
制作は1965年に開始し、イギリスのメトロ・ゴールドウィン・メイヤー BRITISH STUDIO で撮影された。翌1966年5月までに俳優の演技シーンを撮り終えたが、SFXシーンの完成までさらに1年半以上を費やした。アメリカ大都市での試写会の結果、キューブリックはフィルムの19分間をカット。一般公開は当初予定の1966年から1年4か月遅れ、アポロ11号が月面着陸を果たす前年の1968年に公開された。予算は予定の600万ドルを超過し1,050万ドルに達した。
公開当時、台詞や説明を極力省き、視覚表現で観客の意識に訴えるという作風は極めて斬新であった。映像のクオリティーや「人類の進化と地球外生命の関係」という哲学的なテーマを賞賛する声の一方、抽象的な内容や非常に難解な結末を批判する意見もあり、賛否両論の渦が巻き起こった。公開直後は興行成績が悪かったが、再公開を経て評価が高まり、現在では世界映画史に残る不朽の名作のひとつとして認識されている。日本の文部科学省が「特選」に指定している、唯一のSF映画としても知られている。
公開前の試写の段階では公開直後よりもさらに評判が良くなく、キューブリックは再編集を余儀なくされた。また、台本の段階と比較しても様々な点に変更が加えられている。
例えば、『美しく青きドナウ』に乗って現われる地球軌道上の人工衛星は、最初の台本では各軍事大国の「核爆弾」であった。それらをスターチャイルドが除去するラストシーンが予定されたが、キューブリック監督の前作『博士の異常な愛情』の有名なラストシーンを連想させることもあり変更になった。なお続編の小説『2010年宇宙の旅』では、地球に出現したスターチャイルド(ボーマン)が戯れに軌道上の核爆弾を爆発させるシーンがある。
また、当初のアイディアでは、モノリスは実際の作中のような黒い石柱状の物体ではなく、透明なものにする予定だった。しかし当時はまだ、透明度を保ったままアクリル板を繋げる技術に限界があったため、やむなく却下された。また、大元である『前哨』では、異星人が月に残していった装置はピラミッド型だった。
本作の持つ、それまでのSF映画に対する認識を根底から覆すような高品質なSFX技術は、後のSF映画全てに影響を与えていると言っても過言ではない。オープニングなどではモンタージュが駆使された。カメラマン出身で撮影技術に長けたキューブリックは、SFX撮影スタッフと共に「フロントプロジェクション」や「スリットスキャン(スリット越しに被写体を、シャッターが開いた状態で撮影する技術)」といった新たな撮影方法を考案。本作は1968年のアカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞、また1969年のヒューゴー賞も受賞した。
1968年の日本初公開時は70mmフィルムの大画面方式で上映し、東京のテアトル東京、大阪のOS劇場などの大規模映画館ではシネラマ方式で上映された。また名古屋の中日シネラマ劇場ではオーバーチュアの部分に3色のライトを回しながらスクリーンに写し出すと言うオリジナルには無い演出をした。更に、テアトル東京の劇場前広場には、公開から暫らくして、黒色モノリスのほぼ実物大の模型が宇宙服の人形と共に展示された。興行的にはヒット作とは言えなかったが、その年の暮れ、多くの新聞・雑誌の年間ベスト10で高評価され、翌春、「凱旋興行」と銘打ってテアトル東京で全席自由席・入れ替え無しで再上映された。
なお、公開当時、日本のSF作家の反応はかなり冷淡だった。筒井康隆は「大愚作」と断じた後、星新一から「退屈だったなあ(シネラマの一部を切り抜いて、のべつCMを流しておけば)もっとおもしろくなっただろうなあ」と言われたとエッセイ『欠陥大百科』に記している。
その後、初公開から10年後の1978年に再びロードショー上映され、折からのSFブームをフォローアップする形となった。作品の設定年である2001年にも「新世紀特別版」としてノーカット版で公開されている。このヴァージョンでは35mmフィルムで70mmサイズを再現している。
初公開の年の暮れ、1968年12月、アポロ8号が史上初めて月の裏側を廻って帰還したが、その時撮影された月面入れ込みの地球の写真が本作のそれにそっくりで、改めて本作の特撮のクオリティが示された。また、そのアポロ8号の船長の名がフランク・ボーマンで、本作の登場人物のふたり、フランク・プールとデヴィッド・ボーマンを合成したような名前であることが、偶然とはいえ話題になった。
公開からかなり時間が経った後も、本作品は高く評価され続けている。「AFIアメリカ映画100年」シリーズでの順位は、10年間で7つ、ランクが上がっている。
また、
などの評価がある。
1991年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。
日本での評価
映画版では、全篇にわたってクラシック音楽の名高い楽曲が数多く用いられている。
それまで、未来的イメージの電子音楽などが用いられることが多かったSF映画で、これ以後通常のオーケストラ音楽が主流になるきっかけとなった。
キューブリックは当初、自分の監督作品『スパルタカス』の音楽を手がけたアレックス・ノースに作曲を依頼し、前半部分まで完成したスコアの録音まで完了していた(この最中にノースは過労で倒れてしまった)。しかし、それ以降は一切の連絡もないままノースの音楽を没にし、リヒャルト・シュトラウスなどの音楽に差し替えてしまう。ノースがそのことを知ったのは、試写会の会場であった。ノースはこれに激怒し、訴訟寸前にまで至った。ノースの死後、友人のジェリー・ゴールドスミスは没になった彼の音楽を録音して世に出した。日本でも1993年に『2001年~デストロイド・ヴァージョン』としてCDが発売されている。
また、リゲティには一切映画についての説明や承諾もないまま、彼の曲を4曲も採用した。リゲティが印税を受け取ったのは、1990年頃になってからだという。
なお、(1) メインタイトル、(2) 「人類の夜明け」、(3) ラストと合計3回使われている《ツァラトゥストラはかく語りき》の演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルのデッカ録音だが、デッカ(1968年当時は日本国内ではロンドン・レーベル)が演奏者名を出さない事を許諾の条件としたので、映画のエンド・クレジットでは曲名しか表示されていない。
当初のサウンド・トラック盤(ポリドール)には映画とはまったく違うカール・ベーム指揮ベルリン・フィルの録音が収録されており、「オリジナル・サントラ盤」という看板に偽りがあったが、1999年発売のEMI盤には映画通りの演奏が入り、その名に違わぬサウンド・トラック盤となっている。
「序曲」および「間奏曲」の《アトモスフェール》、「退場曲」の《美しく青きドナウ》は、ビデオソフトとしては完成25周年記念のレーザーディスクBOX発売まではカットが慣例化。休憩のクレジット自体も初期のソフト化ではカットされていた。
終盤、ボーマン船長が年齢を重ねていくシーンでは、BGMに《南極交響曲》を使用したバージョンも作られた。
ピンク・フロイドの1971年のアルバム『おせっかい』に収録の24分に及ぶ大曲「エコーズ」を「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」のテロップが表示されたタイミングに合わせ再生すると、ラストシーンまで同期する。
視覚効果ではキューブリックの前作『博士の異常な愛情』でB52の特撮を担当したビーバーズのほか、トランブル、ペダースン、ハワードなど少人数しかクレジットされていないが、実際には巨大なプロジェクトであり、視覚効果デザインの上で科学考証に多くの科学者、研究者が参加している上、撮影でも10年を経てイギリスで特撮チームを率いる事になるブライアン・ジョンソン(『エイリアン』1、2)、ゾラン・ペリシック(『スーパーマン』)、マット画合成を担当したリチャード・ユリシッチを含むデザイナー、撮影や現像、合成、アニメーションのスペシャリストが多数参加している。
『オズの魔法使』の特撮マンを父に持つダグラス・トランブルはフロント・プロジェクション、スリットスキャンといった視覚効果を考案・実用化を行ったにも関わらず、ノミネートは4人までという規約があったためアカデミー賞の視覚効果部門の受賞者候補になれない(このため、キューブリックがその生涯唯一のオスカー像を受け取った)など疲弊は大きく、画質に徹底的に拘るキューブリックのポリシーには賛同しつつ「もう一職人として特撮はやらない」と決意。ユリシッチと組み視覚効果や映画全体の監督としてSF映画を作って行く。ペダースンはドキュメンタリー映画を作っていたロバート・エイブルとともに視覚効果制作会社を設立する。
特殊メイクアーティストのディック・スミスは本作のスチュアート・フリーボーンから俳優の皮膚に貼り付けるアプライエンスパーツの素材について相談を受けた。『小さな巨人』でダスティン・ホフマンに老人メイクを施すよう依頼されたスミスは逆に猿人および老人のメイク法や手順をフリーボーンに訊ねている。フリーボーンから手順を教えられたスミスは『2001年』では見られなかった細かな顔の動き(老人になり横たわるボーマンのまぶただけはケア・デュリア本人のものと判る)に完全に追従するメイク法を開発、以後『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランド、『アマデウス』のF・マーリー・エイブラハムなど老人化の特殊メイクでアカデミー賞を幾度も受賞する。またスミスの門下生のひとりリック・ベイカーは『スター・ウォーズ』でフリーボーンとともにエイリアンマスクの制作を手がける。
キューブリックは飛行機恐怖症のため猿人達のシーンをアフリカでは撮影出来ず、撮影班をアフリカに送って大面積のスチル写真を撮影し、スタジオでフロント・プロジェクションを使った合成を行っている。スターゲートの映像の中には色彩が加工されたモニュメント・バレーの空撮映像も含まれており、アメリカで行われるプレミアのため、キューブリックはアメリカに向かう船の中で編集作業を行った。
どの宇宙船も宇宙に浮かぶ地球や月や木星を画面内で滅多に横切らない。合成の簡略化を狙ったと思われる。
作中の各所にワイヤーフレームCGが登場するが、当時CGはまだ研究室レベルの段階であり、電卓すら黎明期で一般には手が出ない時代だったため、これらの画像は計算尺で計算し、手描きにより作図された。
SFは「サイエンス・フィクション」の略であるが、科学考証(SF考証)に耐えうる作品はその一部しかなく、映画では特に少ない。本作は例外的と言えるほど、科学的に正しく描写されているという主張がある。
また、単に科学的に正しいだけでなく、工学的予測としても秀逸なものもあり、21世紀の目にも堪えうる(例えば、航空機にみられるような航行に必要な情報を集約して表示するディスプレー装置など)。科学的に正しい描写としては、例えば次のような部分が挙げられる。
宇宙空間では音が聞こえない空気のない宇宙空間では、音を伝える媒体が無く、物理的に音が聞こえることは有り得ない。だが、多くのSF映画、『アポロ13』のような実録ものですらも、宇宙船がエンジンをふかしたり宇宙空間で爆発が起きたりすると、なんらかの効果音を付けてしまっている。しかし本作ではその点、科学考証を厳格に守り、船外のシーンでは(BGMを別にして)一切の効果音を排除し、聞こえるのは無線を通じた呼吸音やノイズのみに限定している。ディスカバリー号の全体が細部までよく見える空気のない宇宙空間では、空気の密度の不均一性による光の屈折(不均一性が経時的に変化する場合それは「ゆらぎ」となって現れる)は原理上存在せず、漂う塵による光の散乱も少ない。したがって相当遠方にある被写体であっても、ピント(フォーカス)さえ合っていれば、地球の大気圏内で撮影するよりはるかに鮮明な像となって撮影される(人間の目にも映る)はずである。実際この作品では、宇宙空間を航行するディスカバリー号の映像は、あたかも(宇宙空間上の)遠方から捉えてピントを合わせたかのような細部が全体にわたって均質な克明さで表現されている。撮影に使用されたディスカバリー号の最大の模型は、質感をだす等のために十数mの相当大きなものであった。このような被写体に対して、あたかも遠方からピントを合わせたかのような像を得るためには実際に何百メートルも離れた場所から撮影することも考えられるが、それには撮影スタジオの物理的制限、さらには上述の屈折や散乱が顕著になること等の問題があったことは想像に難くない。この作品では、カメラの絞りを非常に絞り、パンフォーカスの効果によって全体にピントの合ったような像を得るという撮影がされた。絞った為に足りなくなった光量を補うために、1コマあたり10分以上の露光時間で撮影された。これは、1秒分の撮影に、露光時間だけで4時間以上をかけたということである。なお(この作品はそうはなっていないが)船体の一部にピントが合っていて、その他の部分はボケているような映像だったとしても不合理ではない(近傍から撮影した状況を想定するならばそうなるはず)。惑星の分光分析小説版ではディスカバリー号が小惑星帯を航行中、近くを通過する小惑星に重金属の塊をぶつけて分光分析を行う。2005年にはNASAの彗星探査機ディープ・インパクトが同じようなことを実際に行っている。さらに、一見間違っているように見えても、間違っていないところも存在する。
飲みかけの飲料がストローを下ってコップに戻っている無重量状態では起こりえないと考えがちであるが、ストローの液体面が上昇するのは気圧差によるものであり、それがなくなれば液体は表面積を小さく保とうとし、この現象は起こりうるとされている。ボーマン船長がポッドからディスカバリー号へ戻る時に、宇宙服のヘルメットなしで真空中に出るシーンがある一般的には真空中に出ると体が爆発したり血液が沸騰するなどというイメージが浸透しているが、実際は短時間であれば科学的に可能と考えられている。ただし、本作のこのシーンのように、息を深く吸い込んで口を閉じた状態で真空中に出ると、肺の中の空気が膨張し、肺に大きな損傷を与える危険が大きい。真空中に出る際は、口を開け、肺の中の空気が自然に排出されるようにすべきである。もっともこのシーンで息を止めてはいけない事について、クラークは理解しており、デュリアに説明するつもりではいたが、撮影当日たまたまスタジオに居なかったため、その機会がなかった。と後にエッセイで述べている。しかし、一部には間違った描写をしている部分もある。
フロイド博士らを乗せた(エアリーズ)号がクラビウス基地に降下するシーン地球面の左側が夜なのに、それを遠くに見ながら基地外作業する3人のシーンでは右側が夜、タッチダウンまで12時間かかったのか?月面での重力描写クラビウス基地内の会議シーン、またTMA1へ向かうムーンバス内での人々の挙動はとても地球の1/6の重力下におけるものとは見えない。ディスカバリー号の背景で星が動いて見えるディスカバリー号の速度では、背景の星が動いて見えるはずはないが、動いている。ディスカバリー号の影の部分が見える通常、影の中にあるものを見ることができるのは、周囲の物体で散乱あるいは反射された光が影の部分にも到達しているからであり、周囲に物体のないディスカバリー号は、太陽光およびディスカバリー号自身の光が直接当たらない部分は何も見えないはずである。全方位的な反射光や星の光もないわけではないが、極めて微弱。実際に起こるであろう様は、地球における昼と夜の明るさの差をイメージすればわかりやすい。ボーマンが宇宙艇の扉を爆発させて一気にディスカバリー号に飛び移る時、宇宙艇が動かないように見える艇内の空気を一気に吐き出す反動とボーマンの運動量の反動にくわえ、瞬間的に扉を開ける(あるいは吹き飛ばす)ぶん宇宙艇自体にも反対方向への運動量が与えられるはずだが、ボーマンがディスカバリー号側の扉を閉じる瞬間まで宇宙艇は微動せず浮いているのが画面に映っている(小説『2010年宇宙の旅』には、ボーマンの突入時に宇宙艇ははね飛ばされて、のちに無線でディズカバリー号に呼び戻したという記述がある。クラークはこのシーンの不自然さを気にしていたことがうかがえる)。また、仮に間違っていると気づいていたとしても技術的に間違った描写をやむを得ずせざるを得なかった場合もある。あるいは映像美、観客への配慮のために、一部にはわざと間違っている描写を採用している事例もある。それは、例えば、以下の様な描写である。
ディスカバリー号に放熱板がない宇宙空間での排熱は輻射による方法しかないため、広い放熱板が必要なはずである。放熱板のあるディスカバリー号のデザインも検討されたが、どうしても“翼”に見られ「宇宙空間で役立たない翼がある!」と思われる危険性があったので却下され、精子をモチーフにしたデザインが採用された。月面でのロケット着陸に伴う逆噴射時に、周辺に砂煙が立っている真空状態の月面では、砂など何かの反動で舞い上げられたものはいかに小さくとも、全て空中に漂わず放物線を描くように落下する。これを撮影するには、1960年代というCGなどがない時代ではセット中の空気を抜く必要があるが、技術や予算の問題で不可能であったためと思われている。宇宙ステーションの回転速度がシーンによって異なるBGMの『美しき青きドナウ』の流れに合わせて、宇宙ステーションの回転速度を変化させている。「宇宙船にダンスを踊らせる」という意図に基づくものである。ディスカバリー号のエアロックが大きすぎる『SFマガジン』2001年5月号において、青井邦夫がCGを用い、作中に登場するセットが、全てディスカバリー号に収める事が可能か検証を行った。その際、特にエアロックが大きすぎるため、うまく収容できない。と指摘している。エアロックは乗組員数人が入れる程度の大きさで十分であり、実際に作中ほどの大きさは必要ない。エアロックから進入するシーンを印象的にするためのものである。宇宙服のヘルメットが透明もう少し可視光線の透過率が低くないと、特に出発直後、地球近くで船外活動を行う場合、太陽が眩しい可能性はある。俳優の表情を映し出すのを優先したと思われる。なお、透過率が可視光に対しては98パーセント以上、紫外線に対しては1パーセント以下というガラスやコーティング技術は1970年代に実用化されており、現実の宇宙服でも紫外線の透過は考慮されており、紫外線による火傷はもちろん、日焼けの心配もない。市販の日焼け止めを内側に塗っても良い。モノリスと太陽の位置がおかしい400万年前のシーンで、朝日なのにモノリスの真上に太陽がある。また、月面のモノリスについても同じずれがある。絵コンテでは太陽は横に描かれていたので、印象の強さを優先しての画面構図と思われる。キューブリック作品の特徴として、冒頭シーンも含めシンメトリーは必ずと言って良いほど使われる構図である。木星と衛星群の三日月具合がおかしいか細い三日月姿の木星を映したカメラがゆっくり首を画面上に振る。と、縦一直線に並んだ衛星群が順に現れる。どの衛星も木星と同じ三日月姿。だが木星がか細い三日月だとすると地平線すれすれに太陽がなくてはおかしい。しかもその場合、他の衛星群の昼(三日月)の部分は木星のそれと正反対に向いていなくてはいけない。モノリスへの視線誘導を優先したと思われる。シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。
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