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テンプレート:漫画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(きしべろはん るーう゛るへいく Rohan au Louvre)は、フランスのルーヴル美術館と、フュチュロポリス社が2005年より実施してきたBD(バンド・デシネ)プロジェクトの第5弾として2009年に発表された荒木飛呂彦の漫画作品。
123ページのフルカラー作品であり、物語は短編作品『岸辺露伴は動かない』シリーズ同様、岸辺露伴を中心に展開する。『ウルトラジャンプ』掲載のインタビューには、露伴が主人公となった理由について「新しくキャラクターを描き起こせばその人物紹介だけで何十ページも消費し、なかなかルーヴルの物語に入っていけないが、作者がキャラクターをわかっていれば、露伴を知らない読者にもスッと提示できる。」と説明がされている[1]。
また、荒木がフルカラーで漫画を制作するのも本作品が初めてである。フルカラーにした理由について、荒木は「BDプロジェクトに出展された4作品が全てフルカラーだと聞いたから。[2][1]」「そういう機会はめったに無いから。[2]」と説明しており、従来の色使いで全編構成すると読み手が疲れると判断した荒木はエンキ・ビラルやニコラ・ド・クレシー、マルク=アントワーヌ・マチュー等の作品を参考にフルカラー用の色彩感覚を学んだという[1]。
執筆の発端は、荒木が2007年1月27日 - 4月8日に東京都美術館で開催された『オルセー美術館展/19世紀 芸術家たちの楽園』の手伝いで三菱一号館美術館初代館長の高橋明也と対談を行った事であり[1]、そのきっかけを作った新聞社を通じてBDプロジェクトに日本の漫画家の参加を希望していたルーヴル美術館出版部副部長、ファブリス・ドゥアールよりオファーが舞い込み、荒木はこれを快諾した[2]。
その後ドゥアールが来日し、ミーティングが行われたがルーヴル側からの意向は「ルーヴル美術館を題材に、オリジナルの作品を制作すること。取材や資料提供などの協力は惜しまないので、あとはイマジネーションの赴くままに物語を描いて欲しい。」というシンプルな条件の提示に留まり、避けるべき描写に関する質問にも「特に無し。物語のテーマに我々が共感し、必要と感じる描写であれば、禁止する理由はない」という回答がなされ、荒木は連載のかたわら、物語の構想に入った[2]。
2008年秋、荒木は取材と打ち合わせの為に2003年のパリでの個展「JOJO IN PARIS」開催以来5年ぶりにフランスへと渡り、ルーヴル美術館を訪れた。取材は2日間に及び、初日は普段入れないルーヴルの地下や屋根裏などに特別に立ち入りが許可され、休館日であった2日目には貸し切り状態で内部の取材を行えることとなった。また、この時にBDプロジェクトで編集作業を担当したフュチュロポリス社とページ数や本の形態、開きの方向、描き文字の扱いなどの打ち合わせを行っている[3]。
ルーヴルでの2日間にわたる取材で着想を得た荒木は、企画展示用に物語のイメージを伝えるイラストと、作品の冒頭部分に先行して着手した。出来上がったネームは翻訳され、プロジェクト責任者のドゥアールに加え、ルーヴル美術館館長アンリ・ロワレットも目を通し、最終的なOKが出された事により、いよいよ原稿の執筆に入ることになった[2]。
そして2009年、連載のスケジュールを調整し、時間を確保した荒木は初となるフルカラー作品の執筆に入る。ルーヴルのチェックを受けながら順調に作業は進み、執筆当初は60ページ程度の予定であった作品はデビュー前の露伴のエピソードなどを追加した事により、最終的に123ページという読み切り作品としてはかなり大規模なものとなった[2]。
作品の冒頭ページの複製原稿は2009年1月22日 - 4月13日にルーヴルで実施されたテーマ企画展『小さなデッサン展-漫画の世界でルーヴルを-』に展示された。日本の漫画家の漫画作品が展示されるのは、ルーヴル美術館史上初の出来事である。
フランス語版単行本は2010年3月下旬にルーヴル美術館内の書店と、ブックフェアでの先行販売が開始され、4月8日に一般発売になった[3]。日本でも一部書店やネット書店がフランス版単行本の予約受付を開始した[4]が、その反響は受注を一時中止せざるを得ないほど大きかったという[2]。
その後日本語に翻訳されたものが全123ページを『ウルトラジャンプ』2010年4月号 - 6月号の3号に分割してモノクロで掲載され、掲載に付随して、企画に参加した経緯などの作者へのインタビューも3号に渡って掲載された。この事に加え、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ通算100巻到達を記念して、小冊子「JOJO'S BIZARRE ADVENTURE VOL.100.5」が付録として収録されたことにより、『ウルトラジャンプ』4月号は初版7万部に加え、3万部が緊急重版される事態となった[5]。掲載当時、単行本化については『ウルトラジャンプ』掲載のインタビューにて「準備中」と説明されており、発売日時については今後『ウルトラジャンプ』誌上、及び『ウルトラジャンプエッグ』で告知が行われる予定とされていた[1]。その後、『ウルトラジャンプ』2011年5月号において2011年5月19日に本来のフルカラーで発売される事が告知され[6]、予定より一週間遅れの2011年5月27日に発売された。
漫画家としてデビューを目指していた岸辺露伴は、新人コンテスト用の漫画原稿を書くために祖母の経営するアパートに2ヶ月ほど厄介になる。そこでアパートに入居した女性、藤倉奈々瀬と一つ屋根の下で暮らす事になり、そこで奈々瀬の故郷の地主の家からルーヴル美術館へと買い取られていったこの世で最も黒く、最も邪悪な絵の話を聞かされる。その後奈々瀬は失踪し、露伴もデビューが決まって仕事に夢中となり、10年もの間その絵の事を忘れていたが、仗助らとの世間話をきっかけにその事を思い出し、その絵に対する好奇心と青春の慕情から、その絵を見るためにルーヴル美術館を訪れる。
主人公の露伴を含め、一部の登場人物は『ジョジョの奇妙な冒険』のPart4(第4部)、「ダイヤモンドは砕けない」(以降、Part4と表記)と共通であるが、登場人物の設定にはPart4と食い違っているものが有る。この件について荒木は同誌掲載のインタビューの中で「今回はルーヴル用のキャラで書いていて、『ジョジョ』用に描いてるのとちょっと違うんですよ。[1]」と説明している。
岸辺 露伴(きしべ ろはん)杜王町に住む人気漫画家。27歳(2007年時点)。デビュー前の17歳の時、祖母の経営するアパートに入居した女性、奈々瀬から聞いたこの世で最も黒い絵を見るためにルーヴル美術館を訪れ、その絵に隠された怨念と奈々瀬の秘密を知る事となる。スタンドは対象を本にして、記憶を読んだり命令したりできる「ヘブンズ・ドアー」。デザインは『岸辺露伴は動かない -六壁坂-』同様、ロボット風のデザインとなっている。Part4では16歳の時にデビューし、20歳の時に虹村形兆から矢で射抜かれた事でスタンドが発現した設定であったが、今作では17歳の時点でまだデビューしておらず、この時点でスタンドを使用している。藤倉 奈々瀬(ふじくら ななせ)露伴の祖母の経営するアパートに入居してきた女性。21歳。既婚者の為、露伴の祖母が定めた入居条件に合致していないが、離婚して一人で住む予定であるということで特別に入居を許可された。気さくな性格でアパートに泊り込んで漫画を描いていた露伴とも次第に打ち解けていき、露伴も彼女に自分の描いた漫画を見せたりスタンドで心を読む事をためらうなど、彼女には特別な感情を抱いていたことを窺わせる行動をとっていた。一方で、携帯での通話中に涙を流しながらアパートを飛び出して、数日後に戻ってきた時には涙を流しながら突然露伴に抱きついたり、露伴が奈々瀬をモデルにして描いた漫画を見せた際には「重くてくだらなすぎる」「くだらなすぎて安っぽい行為」と激昂して原稿をズタズタに切り裂いたりするなど、やや情緒不安定な一面を見せることもある。露伴に「黒い絵」の存在を教えた張本人であり、露伴の漫画を切り裂いた後で謝罪の言葉を残して姿を消し、その後二度とアパートには戻る事は無く、消息は分からなくなる。その10年後、ルーヴルでの体験と山村仁左衛門に関する調査結果から、露伴はその正体が処刑された仁左衛門の妻、山村奈々瀬(旧姓、岸辺)であり、自分の遠い子孫である露伴に「黒い絵」に宿った夫の怨念を止めてもらうために姿を現したのではないかと推測している。露伴の祖母露伴の母方の祖母。かつて杜王町で旅館を経営していたが夫(露伴の祖父)の死去をきっかけに廃業し、建物を賃貸アパートとして貸し出していたが、「喫煙は不可。夫婦は不可。子供連れはもっと不可。ペットは不可。料理は不可。家具の持ち込み不可。バイクは不可。楽器及びマージャン不可。ドライヤーは不可。門限は夜10時まで。」と異様に厳しい入居条件を出していたため、アパートに入居者はほとんどいなかった。2007年時点での露伴のセリフによると、2006年に死去した模様。山村 仁左衛門(やまむら にざえもん)本作のキーワードとなるこの世で最も黒い絵の作者。言い伝えによると仁左衛門は彼しか知らない種類の樹齢一千年以上の大木の幹の中からこの世で最も黒い「漆黒の黒」を発見し、それを顔料として絵を描いたが、仁左衛門はその大木を切り倒した罪で領主の怒りを買い、処刑されてしまう。彼によって描かれた絵は呪いが噂された為に全て焼き捨てられたが、仁左衛門が生前に隠していた事により一枚だけ奈々瀬の生まれ故郷の地主の家に現存しており、その一枚はルーヴルに買い取られていった。東方 仗助(ひがしかた じょうすけ)広瀬 康一(ひろせ こういち)虹村 億泰(にじむら おくやす)Part4の主人公とその友人たち。杜王町に住む、露伴の数少ない理解者。彼らとの会話をきっかけに露伴はかつて聞いた「黒い絵」の事を思い出す。ちなみに、Part4の時代設定から計算すると、彼らは2007年時点では23~24歳という事になるが、全員Part4当時と同じ学ラン姿で登場している。野口(のぐち)ルーヴル美術館の出版部職員で、日本語通訳の担当。ルーヴルを訪れた露伴の問い合わせに応じて山村仁左衛門の作品について調べ、その所蔵場所に不審な点があったことから東洋美術学部門に連絡をとり、そこの責任者であるゴーシェらの調査に自らも同行する。ピエールという名の息子がいたが、公園で忘れ物を取りに行く時に目を放してしまい、その間に池に落ちて溺死してしまっている。Z-13倉庫にて、「黒い絵」の影響によって現れた溺死したはずの息子と再会し、思わず触れてしまったことで溺死してしまう。ゴーシェルーヴル美術館東洋美術学部門の責任者。野口からの報告を受けて山村仁左衛門の作品の実態を確認する為、所蔵場所のZ-13倉庫へ調査に乗り出す。しかし、露伴を含めた調査団しかいないはずのZ-13倉庫で消防士の一人が怪死し、同時に現れた無数の人影にうろたえていると今度は自分が突如車に轢かれたような傷を負い、死亡する。消防士ルーヴル美術館に常駐する警備管轄の消防士2名。山村仁左衛門の作品の所蔵場所とされるZ-13倉庫がある区域は老朽化が進んでおり、かつ迷路のような構造となっている事から安全確保のために調査団に同行する。しかし、そのうち一人は「黒い絵」に近付いた際にどこからか銃撃を受けて死亡し、もう一人もZ-13倉庫に現れた、かつて同じ戦場にいたと思しき人物に触れられた際に体を蜂の巣にされて死亡する。なお、この2人は荒木飛呂彦がルーヴル美術館で取材した際に同行した実在の消防士がモデルであり、劇中において探索を行ったメンバー構成(漫画家と美術館のスタッフ、通訳に消防士2名)は荒木がルーヴル美術館で取材した時のメンバー構成そのままである[3]。
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