隕石

ページ名:隕石
曖昧さ回避この項目では、天文現象について記述しています。プロレス技については「頭突き#隕石」をご覧ください。

隕石(いんせき、meteorite)は、地球以外の天体の小片が地上に落下したものである。「流星が燃え尽きずに地表に落ちたもの」と説明されることもあるが、隕石の起源天体と流星物質の起源天体は必ずしも同種ではないので[1]、正しい表現ではない。

目次

隕石の分類[]

金属鉄(Fe)とケイ酸塩鉱物の比率で大きく3つに分類される。

鉄隕石(隕鉄) iron meteorite主に金属鉄(Fe-Ni合金)から成る隕石。数百万年の時間スケールでの冷却によって生じるウィドマンシュテッテン構造が特徴的な模様として現れる。地域によっては、農具などに利用されていた。稀に、刃物に加工されることがあるが、通常の鋼材と違って焼き入れが難しいため、刃物には向かないとされる。また、日本式の「鍛錬」(詳しくは日本刀を参照)は困難である。石鉄隕石 stony-iron meteoriteほぼ等量のFe-Ni合金とケイ酸塩鉱物から成る隕石。固体惑星に似た組成の小天体のうち、概ね直径100km以上のものは内部が融解し得ると考えられている。小天体の内部で融解が生じれば、重力によって成分分離が起こり、密度の大きい金属が中心に集まってとなり、これをより密度の小さい岩石質の物質が包んでマントルとなる。このような小天体が、相互衝突などによる何らかの外力を受けて破壊されたものが、隕石として地表に落下してくる天体小片であると考えられる。中心核が鉄隕石であり、マントル部が石質隕石である。小天体の中心核とマントルは明瞭な境界があるのではなく、境界領域では金属鉄と岩石が混在する。これが石鉄隕石の起源物質であると考えられている。石質隕石 stone meteorite主にケイ酸塩鉱物から成る隕石。石質隕石は更にコンドルール(chondrule)を含むか含まないかで大別される。含む物をコンドライト(chondrite)、含まない物をエイコンドライト(achondrite)と呼ぶ。

日本の保有する隕石[]

日本は国土が狭いため、国内に落下した隕石の数はそれほど多くない。隕石と認定されたものは50個ほどである。

しかし、南極地域観測隊が1969年にやまと山脈のふもとに集積していた9個の隕石を採集したことに端を発し、その後、南極の特定の、ある条件を満たした場所(基本的には山脈のふもと)に隕石が集積するシステムが明らかになり、現在まで16,700個(極地研より)の隕石を発見・回収した結果、日本は世界でもっとも多くの隕石を保有する国となった。南極で発見された隕石の大半は国立極地研究所の南極隕石研究センターが保管しており、分類と研究が進められている。

なお、日本の隕石のうち最古のものは、861年5月19日(貞観3年4月7日)に福岡県直方市に落下し、須賀神社に保存されている直方隕石(0.472kg)である。これは、落下記録が残っている隕石で、現存するものとしては世界最古のものである(従来は1492年11月7日にアルザスのエンシスハイム(Ensisheim)に落下したもの(127kg)だった[1])。

隕石の命名[]

慣行として、落下地点における配達を受け持つ(郵便区とする)集配郵便局の名がつけられる。隕石が落下中に分解した場合、最も質量の大きい破片が落下した地点を郵便区とする郵便局の名がつけられる。

郵便局の名にすることにしたのは、発見者の名をつけることにした場合、誰が発見者かが争われる場合があるためである。隕石はどこに落ちるか分からず、例えば砂漠の只中に落ちた場合、その地域を管轄する警察署や消防署は存在しない場合がある。しかし、その地域を郵便区とする郵便局だけは、どこの国でも必ず存在する。このため、配達受け持ち郵便局の名を隕石の名とすることが世界的な慣行になっている。

同一郵便区内に2個以上の異なる由来の隕石が落下した場合、(a)、(b)、(c)とアルファベットの符号をつけて区別する。

南極の隕石の命名[]

南極で発見された隕石は、総称して南極隕石と呼ばれる。

このうち、日本の南極地域観測隊がやまと山脈で発見した隕石は、総称してやまと隕石(Yamato meteorites)と呼ばれる。当初は命名規則どおり、(a)、(b)、(c)などの符号をつけて識別していたが、数が膨大になったため、現在は「やまと75105」などと番号で呼ばれる。5桁の数字の上2桁は発見年を示し、残りの3桁はその年に発見された隕石の通し番号を示している。この隕石はやまと山脈で1975年に発見された105番目の隕石であることを意味している。この命名は、正式な命名規則が決定するまで、暫定的に国際的に認められることになっている。

隕石発見時に行う手続き[]

隕石は落下時に、地球の重力によって激しく分解され、大気との摩擦で激しく発熱する。このとき隕石表面が融け、溶融殻(Fusion crust)が出来る。この溶融殻があるかないかが最も簡単な隕石の見分け方であろう。しかし、一般に隕石かどうかの判定は専門家でないと困難である。また、落下直後ならば見つけやすい。屋根を突き破って落ちてきたり、木の枝が折れていて下に見慣れない岩石があったときは隕石である可能性が高い。また、火球が観測された翌朝に発見されることも多い。

しかし、実際に隕石が発見されるのは極めて稀である。山中や川原などで隕石のように見える石を見つけても、ほとんどは地球上に存在する鉱物、岩石、もしくは鉄鉱石を人間が加工した人工物である。

いずれにしても鑑定するには大学の研究室やそれに類する研究機関に送付する必要がある。実際の鑑定としては、落下直後ならば、隕石中に含まれる放射性核種の壊変(崩壊)に伴う放射線の測定。また、酸素同位体測定、希ガス同位体測定などの同位体比測定は地球上の物質と地球外物質を区別することが出来る強力な手段である。しかし、これらの測定は破壊分析のため用いる試料が微量(数μg~数mg)必要となる。隕石は大気圏突入前まで宇宙線に曝されているため、エネルギーの高い宇宙線による隕石構成元素の核破砕反応によって様々な核種が生成される。これらには当然放射性核種も含まれる。中には極めて短寿命の放射性核種も存在するため、落下直後(数時間以内)に測定を行うことは、核宇宙化学にとって非常に重要である。

隕石と称して岩石を売る業者(国内外問わず)があるが、本物である可能性は極めて低い。これも鑑定が困難なことに起因している。

日本では、一般に、最初に拾い上げた人物が所有権を主張することができるとされる。ただし、私有地において見つけた(拾い上げた)場合、地面にめり込んでいるかいないかで所有権が分かれ、埋まっている場合は、土地の所有者の物とされ、埋まっていない場合、拾い主に権利がある。この場合の私有地は山や、空き地ではなくアパートなどの共同で使用する場所である。土地の所有者が真剣に所有権を主張した場合、この限りではない。

海外では、隕石や化石の国外への持ち出しを禁じている国もあるので、海外で隕石や化石を手に入れた場合はその国の法律を確認し、注意して取り扱う必要がある(海外で業者から購入する場合も同様)。

隕石に纏わる地名[]

日本では、隕石を信仰していた例もある。このため、地名などにその名が散見される。

  • 隕石の落下に纏わる物
    • 星崎(愛知県名古屋市南区星崎)
      • 星宮社は、舒明天皇の時代にこの地へ星が降り、それを祭るために創建されたといわれる。8世紀、13世紀にもこの地方に隕石が落ちたという言い伝えがある。星宮社から南西700mほどにある喚續神社の記録では、寛永9年8月14日(1632年9月27日)の午前0時過ぎ、南野村に隕石が落ちた。石は喚續神社へ寄進され長く社宝として祀られていた。1976年に国立科学博物館の村山定夫によって隕石と確認され、南野隕石と命名される。現在は国立科学博物館に所蔵され、日本で2番目に古い隕石とされている。
    • 星田(大阪府交野市星田)
      • 星田妙見宮では星降る信仰があり、北斗七星も信仰する。そこを東へ上ると、磐船神社があり、巨岩信仰をしている。
    • 美星(岡山県井原市美星町星田)
      • 星田川近くにある星尾神社に3つの隕石が落下した伝説を基にしている。また町内には美星スペースガードセンターがあり文部科学省の補助金によって、財団法人日本宇宙フォーラムにより2000年に建設された。観測業務はNPO法人日本スペースガード協会が行っている。
    • 星居山(広島県神石高原町阿下)
      • 孝徳天皇の時代の大化元年(645年)元旦の夕方に一帯を真昼のごとく照らし流星が落ちる事象が長く続いたので、この評判を聞いた天皇はこの年の8月、自らも星居山へ行幸し体験、「星ノ居山」と命名。
    • 槻之屋(島根県雲南市木次町)
    • 星岡町・天山町(愛媛県松山市星岡町・愛媛県松山市天山町)
      • 天から山が降ってきた地とされ、円状に5つの岡が並んでいる。「世々を経て幾代になりぬ久方の天下りけん星岡の山」との歌も伝えられている。
    • 星之浦(愛媛県今治市大西町)
    • 星原町(愛媛県新居浜市星原町)

今ではイスラム教の聖地であるカアバ神殿の御神体は、もともと「月からの隕石」であると伝えられていた。

脚注[]

[ヘルプ]
  1. 渡部潤一他編 『シリーズ現代の天文学9 太陽系と惑星』 p.140, p.163-164、日本評論社、2008年、ISBN978-4-535-60729-3

関連項目[]

ウィキメディア・コモンズ
ウィキメディア・コモンズには、隕石に関連するカテゴリがあります。
  • 隕石の一覧
  • 地球近傍小惑星
  • クレーター
  • 火球
  • トリノスケール
  • プロレスラーの泉田純至の使う、変形のダイビング・ヘッドバットを「隕石」という。

参考文献[]

  • 森本信男 『造岩鉱物学』 東京大学出版会、1989年、ISBN 4-13-062123-8。

外部リンク[]

  • 国立極地研究所 南極隕石センター
  • 隕石ハンター


特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

龍神温泉

♨龍神温泉ファイル:Ryujin Spa1.jpg.JPG日高川沿いに並ぶ旅館温泉情報所在地和歌山県田辺市龍神村交通アクセスバス - 龍神バス:バス停「龍神温泉」・「季楽里龍神」車 - 高野龍神スカイ...

鼓川温泉

♨鼓川温泉温泉情報所在地山梨県山梨市牧丘町交通アクセス車:中央自動車道 勝沼ICより、国道140号を経由して乙女高原方面へ鉄道:中央本線塩山駅より牧丘町塩平方面行きバス、鼓川温泉下車泉質単純温泉泉温3...

黒薙温泉

♨黒薙温泉ファイル:Kuronagi-onsen01.JPG混浴露天風呂(2007年)温泉情報所在地富山県黒部市宇奈月温泉交通アクセスアクセスの項を参照泉質単純温泉泉温97.2 セルシウス度|テンプレ...

黒羽温泉

♨黒羽温泉温泉情報所在地栃木県大田原市黒羽交通アクセス鉄道 : 宇都宮線西那須野駅よりタクシー・車で約35分車 : 東北自動車道西那須野塩原インターチェンジより40分、那須インターチェンジより約30分...

黒石温泉郷

黒石温泉郷(くろいしおんせんきょう)は、青森県黒石市(旧国陸奥国)の奥座敷に位置する温泉の総称(温泉郷)である。浅瀬石川沿いに長寿温泉、温湯温泉、落合温泉、板留温泉の4つが存在。前述の4温泉から山間部...

黒湯

曖昧さ回避この項目では、黒色の温泉について記述しています。秋田県仙北市にある温泉については「黒湯温泉」をご覧ください。黒湯(くろゆ)とは、主に湯船における湯の色が黒色、黒褐色をした源泉のことを指す。東...

黒沢温泉

♨黒沢温泉温泉情報所在地山形県山形市交通アクセス鉄道:奥羽本線(山形線) 蔵王駅より徒歩約10分泉質硫酸塩泉宿泊施設数7 表・話・編・歴 黒沢温泉(くろさわおんせん、Kurosawa Hot Spri...

黒松内温泉

♨黒松内温泉温泉情報所在地北海道寿都郡黒松内町交通アクセスJR北海道函館本線黒松内駅より車で約5分泉質塩化物泉泉温39.9 セルシウス度|テンプレート:℃湧出量400リットル(毎分)宿泊施設数1 表・...

黒川温泉_(兵庫県)

♨黒川温泉ファイル:黒川温泉1.JPG温泉情報所在地兵庫県朝来市生野町黒川交通アクセス車 : 播但連絡道路生野ランプより車で約30分鉄道 : 播但線生野駅から神姫グリーンバス生野駅裏より「黒川」行き終...

黒島_(鹿児島県)

日本 > 鹿児島県 > 鹿児島郡 > 三島村 > 黒島黒島 (鹿児島県)ファイル:Kuroshima of Kagoshima.jpg東方上空より撮影座標北緯30度50分5.6秒東経129度57分20...

黒岳_(大分県)

黒岳標高1,587m所在地大分県由布市位置北緯33度06分20秒東経131度17分34秒山系九重山系ウィキプロジェクト 山ウィキプロジェクト 山黒岳(くろだけ)は、大分県由布市庄内町及び竹田市久住町に...

黒姫山_(長野県)

曖昧さ回避この項目では、長野県信濃町の黒姫山について記述しています。新潟県糸魚川市の黒姫山については「黒姫山 (糸魚川市)」を、その他の黒姫山については「黒姫山」をご覧ください。黒姫山ファイル:Mt-...

黄金崎不老不死温泉

♨黄金崎不老不死温泉ファイル:Furofushi-spa.jpg混浴露天風呂温泉情報所在地青森県西津軽郡深浦町大字舮作字下清滝15交通アクセス鉄道:五能線艫作駅より徒歩約15分。リゾートしらかみ利用の...

黄砂

この記事は秀逸な記事に選ばれました。詳細はリンク先を参照してください。曖昧さ回避オユンナの楽曲およびアルバムについては「オユンナII黄砂」をご覧ください。ファイル:Asian Dust in Aizu...

鹿部温泉

♨鹿部温泉ファイル:Sikabe kanketusen 2005.jpgしかべ間歇泉公園内の間欠泉温泉情報所在地北海道茅部郡鹿部町交通アクセス鹿部駅よりバスで20分。函館市内より車で約1時間。泉質食塩...

鹿塩温泉

♨鹿塩温泉温泉情報所在地長野県下伊那郡大鹿村交通アクセス鉄道 : 飯田線伊那大島駅より伊那バス大鹿線で約50分で最寄バス停鹿塩へ。バス停より徒歩約15分泉質塩化物泉泉温14 セルシウス度|テンプレート...

鷹巣温泉

♨鷹巣温泉温泉情報所在地福井県福井市蓑町22字17番1交通アクセス鉄道 : 福井駅から路線バスで50分車:北陸自動車道福井北ICより45分泉質アルカリ性単純温泉アルカリ性低張性高温泉泉温49 セルシウ...

鷹の子温泉

♨鷹の子温泉温泉情報所在地愛媛県松山市交通アクセス伊予鉄道横河原線久米駅下車徒歩7分泉質単純硫黄温泉泉温38.4 セルシウス度|テンプレート:℃湧出量毎分800リットルpH9.3液性の分類アルカリ性 ...