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マウナ・ロア山 | |
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サドル・ロードから見たマウナ・ロア山 サドル・ロードから見たマウナ・ロア山 | |
標高 | 4,169m |
所在地 | アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ハワイ州 |
位置 | 北緯19度28分46.3秒西経155度36分9.6秒 |
山系 | ハワイ諸島 |
種類 | 楯状火山 |
ウィキプロジェクト 山 | ウィキプロジェクト 山 |
マウナ・ロア山(マウナ・ロアさん、Mauna Loa)は、ハワイ諸島にある活火山であり、ハワイ島を形成する5つの火山のうちの1つである。マウナ・ロアとは、ハワイ語で「長い山」の意である。山頂にはモクアウェオウェオと呼ばれるカルデラがあり、その表面は大きく露出している。マウナ・ロア山の体積は約75,000 km3であり (富士山は1400 km3)[1]、地球で最も体積の大きい山でもある。
マウナ・ロア山は有史以来、30回を超える噴火が起こっており、1984年の3月から4月にかけて起こった噴火は世界的にも有名である。
マウナ・ケア山とマウナ・ロア山
マウナ・ロアは楯状火山であり、その体積はおよそ75,000 km3と見積もられるが[1]、その山峰は隣のマウナ・ケアより約35 m低い。マウナ・ロアからの噴出溶岩は珪酸に乏しく、非常に粘度が低い。そのために非爆発的なハワイ型噴火になる傾向にあり火山斜面の傾斜は極めて浅い。
火山は少なくとも70万年間にわたって噴火していて、約40万年前に海水準より上に現れた。しかし、岩石の年代測定で知られている最古のものは約20万年前である[2]。そのマグマはハワイ・ホットスポットからきており、このホットスポットは何千万年にも渡ってハワイ列島を作る原因となってきた。太平洋プレートのゆっくりした流動は最終的にこの火山をホットスポットから離れたところへ運び、火山は今から50万年から100万年以内に死火山となるだろう。
マウナ・ロアの直近の噴火は1984年3月24日から1984年4月15日にかけて起こった。この噴火は死者を出していないが、1926年と1950年の噴火は村を壊滅させ、ヒロの都市の一部は19世紀後半からの溶岩流の上に構築されている。人口の中心に向けられた危険の観点から、マウナ・ロアは特定16火山の一つに選定されており、この最も危険な火山の研究を支援している。マウナ・ロアは1912年以来ハワイ火山観測所 (HVO) によって集中的にモニターされている。大気の観測はマウナロア観測所で、太陽の観測はマウナロア太陽観測所で行われていて、両方がその山頂近くに位置する。ハワイ火山国立公園はこの火山の山頂と南東麓をカバーし、別の火山であるキラウエアを含む。
マウナ・ロアを登った最初のヨーロッパ人の記録は、1794年の博物学者アーチボルド・メンジーズ (Archibald Menzies)、ジョゼフ・ベイカー大尉 (当時) (Joseph Baker) ら4人によるものである[3][4]。気圧計を用いて、メンジーズはその標高を15 m以内の精度で計算した。
マウナ・ロアの地形図 (1:250,000)
マウナ・ロアは世界最大の楯状火山である。溶岩が極めて流動的 (粘度が低い) なために斜面がなだらかで、盾を伏せたような形である。激しい噴火は滅多になく、ほとんどの噴火が溶岩噴泉から溶岩流が供給されるハワイ型である。典型的な噴火では、始めに数kmにおよぶ割れ目火口が開き、それに沿って溶岩噴泉がいわゆる「炎のカーテン」として起こる。数日後、通常では活動は一つの噴火口へと収束していく[5]。
噴火は一般的に、山頂、北東に伸びる割れ目帯、南西に伸びる割れ目帯、という3つの地域で起こる。過去200年間に起きた噴火の約38%は山頂で、31%は北東割れ目帯で、25%は南西割れ目帯で起こった。残りの6%は、割れ目帯から離れた山頂の北西にある複数の火口で起こった[6]。山頂カルデラはモクアウェオウェオ (Mokuaweoweo) と呼ばれ、その直径は3-5 kmである。1,000-1,500年前、北東割れ目帯からの非常に大規模な噴火が山頂の下にあった浅いマグマチャンバーを空っぽにし、山頂が崩れたことによってカルデラが形成されたと考えられている[7]。
地震データは火山活動の源である火山の下にあるマグマチャンバーの位置を明らかにする。S波と呼ばれる地震波は液相の岩石の中を進むことができないため、マグマチャンバーは地震データに「影」として映る。この影は山頂の約3 km下にマグマチャンバーがあり、割れ目帯の下にはより小さなマグマ体があることを明らかにしている[8]。
ハワイ島の上を東から西へ吹く貿易風と、マウナ・ロアの存在がこの地の気候に強い影響を持つ。低い標高では、火山の東側 (風上) に激しい雨が降り、ヒロの都市は米国で最も降水量の多い市である。降雨が広範囲の森林を養っている。西側 (風下) ははるかに乾燥した気候を持つ。高い標高では降水量は減り、空はとてもよく晴れる。非常に気温が低く降水は雪の形で起こり、マウナ・ロア山頂は、凍結と融解が地形を形作る上で重要な役割を果たす、周氷河地域と記載される[9]。
マウナ・ロアは70-100万年前に噴火を始め、それ以来現在まで着々と成長を続けてきた。マウナ・ロアは他のハワイ諸島の火山と同様に、地球の マントルの深さから立ち上るマグマのプルームである、ハワイ・ホットスポットが作ったものである。ホットスポットは固定された位置にとどまったままだが、太平洋プレートがその上を年間10 cmの割合で移動していく。熱いマグマの湧昇は火山を作り、プレートの移動によって火山が上昇するマグマから運び去られる前に、個々の火山は数百万年にわたって噴火する。
ホットスポットは少なくとも8000万年にわたって存在し、数々の古い火山で構成される天皇海山列-ハワイ列島はホットスポットから5,800 km近くも伸びている。現在、このホットスポットは、マウイ島のハレアカラ、ハワイ島のフアラライ、マウナ・ロアおよびキラウエア、そしてハワイ島の南に成長しつつある海底火山のロイヒ、という5つの火山にマグマを供給している。マウナ・ロアはこれら5つの中で最大のものであり、キラウエアが現在もっとも激しい火山活動をしている[10]。
1984年に噴火したマウナ・ロア
マウナ・ロアの先史時代の噴火は溶岩流の下で見つかる炭の断片に放射性炭素年代測定を実行することによって広範囲に分析されている。この山の先史時代の活動史はおそらくあらゆる火山の中でもっともよく分かっている。数々の研究が示すところでは、数百年にわたる山頂での火山活動が優勢な時期に次いで、数百年にわたって活動が割れ目帯に移行し、再び山頂に戻る、というサイクルが起こっていた。2つのサイクルが明瞭に認められ、それぞれ 1,500-2,000年間続いた。この周期的な振る舞いはハワイ諸島の火山の中でもマウナ・ロアに特有のものである[11]。
記録は約 7,000-6,000年前にマウナ・ロアがほとんど不活性だったことを示している。この活動停止の原因は分かっておらず、同様の中断は他のハワイ諸島の火山には現在老年期 (post-shield stage) にあるものを除いて知られていない。11,000-8,000年前の間、活動は今日より激しかった[6]。しかし、マウナ・ロアの全体的な成長は最近10 万年にわたって遅くなり始めているように見え[12]、この火山はソレアイト質玄武岩の楯状火山構築フェーズの終わりにさしかかろうとしていると考えられている[13]。
ハワイ先住民は何世紀にもわたって噴火を目撃してきたと思われるが、文字の記録に残っている噴火は1800年代前半からのものしかない。最初の歴史時代の噴火は1843年に起こり、それ以来33回の噴火が文書に記録されている。これら33回の噴火は火山麓を800 km2にわたって溶岩流で覆った。通常は、噴火は短期間だが激しく、数週間のうちに0.25-0.5 km3の溶岩が噴出した。
1935年に特に大きな噴火があり[14] 、それはヒロの町を脅かすのに十分な大きさの溶岩流で、航空兵力を出動させるという異常な事態を招いた。アメリカ陸軍航空隊の第23および第72爆撃飛行隊の5機の爆撃機が溶岩流をヒロからそらすために溶岩の前方に爆弾を投下した[15][16]。
1950年まではだいたい3-4年ごとに噴火が起こっていたが、それ以降は 1975年と1984年に噴火が起こったのみで休眠期が劇的に伸びている[6]。2つの最近の噴火はもっとも広範囲に研究されている。1975年の噴火は 2日しか続かず山頂で起こった。1984年の噴火では山頂から海抜2,900 mまで北西と南東に割れ目火口が開いた。この噴火による溶岩流は再びヒロに向かって急速に向かったが、3週間後に噴火が終わったときに郊外から約4.0 kmの地点で止まった[10]。
1984年3月にアア溶岩を流す溶岩噴泉
この火山は1984年以来休止している。地震活動は2002年まで低いままだったが、2002年に突然に膨張が始まって、カルデラ壁は年間5 cmの割合で離れはじめている。これは山頂の約5.0 km下にあるマグマ溜まりにマグマが補充されつつあることを示すと考えられている。この膨張は間欠的であり、時々ゆっくりになり、時には数週間にわたって停止したりする。けれども、これまでのところ膨張は常に再開しており、これは数年以内に噴火が起こる可能性が高いことを示しているように思われる。
膨張は地震活動の増大にともなって起こっている。群発する深い地震は2004年7月に始まり、この年の終わりまで続いた。地震は最初の3週間は1日に1回の割合で検知されていたが、その後しだいにその数を増し、年末には1日に15回程度になった。群発地震は2004年12月に終わり、それ以来地震レベルは穏やかに上昇しているのみである[17]。
ハワイ島を形成する5つの火山
キラウエアはマウナ・ロアの南麓に位置しかつてはマウナ・ロアの衛星火口だと考えられていた。しかし、2つの火山が作る溶岩が化学的に異なることは、それらが分かれた浅いマグマチャンバーを持つことを示す。ただし、両火山の活動パターンは相関しているように見える。
2つの火山間のもっとも明らかな関係は、一般的に一方の火山の頻繁な活動の時期がもう一方の低い活動期と同時に起こることである。たとえば、1934年から1952年の間、キラウエアは休止しマウナ・ロアだけが活発であったが、1952年から1974年の間は、キラウエアが活発でマウナ・ロアが休止していた[18]。
1984年のマウナ・ロアの噴火はキラウエアが噴火している間に始まったが、キラウエアの噴火への影響は識別されなかった。けれども、一方の火山がもう一方の活動に影響するように見えることもときどきある。最近のマウナ・ロア山頂の膨張はキラウエアのプウ・オオ・クレーターにおける新しい大規模な溶岩流が停止したのと同じ日に始まった。地質学者たちはマウナ・ロア深部のマグマ供給系に注入されるマグマの「パルス」がキラウエア内部の圧力を増大させて噴火の引き金を引くのかもしれないと示している[18]。
ハワイ島における火山噴火が死者を出すことは滅多にない。20世紀に起こった火山活動が原因の死者は1924年にキラウエアで発生した一件のみである。このとき、通常見られない爆発的噴火が飛ばした岩石が見物人に当たり、一人が死亡した[19]。マウナ・ロアは特定16火山の一つである。これは頻発する噴火と居住地域への近さに鑑みて特別の調査に値すると認定されたことを意味する。この火山の近くにある多くの町と村が過去200年に噴出した溶岩の上に構築されていて、将来の噴火が居住地域に損害を与える可能性は非常に高い。
1984年の噴火で植生の上を流れるアア溶岩流
マウナ・ロアの主な火山活動による危険は溶岩流である。ほとんどの溶岩流が人が歩くペースぐらいで前進しヒトの生命の危機を少しばかりプレゼントする。しかしマウナ・ロアでの噴火はキラウエアより激しくなることがある。例えば、1984年の噴火はキラウエアの現在の噴火が3年で産した量と同じぐらいの溶岩を3週間で排出した[20]。こうした高い排出率は比較的速く動く溶岩流を生成できる。
マウナ・ロアに起こった2つの噴火は村を破壊している。1926年、ホオプロア・マカイ村 (Hoʻōpūloa Makai) は溶岩流に飲み込まれた。1950年、マウナ・ロアでこれまで観察された中で最も量が多かった噴出は海に向かって競争する複数の溶岩流を送り出したホオケナ・マウカ村 (Hoʻokena Mauka) は1950年6月2日に前進する溶岩流によって破壊された[21]。ヒロは一部が1880年の噴火からの溶岩の上に構築され、さらなる溶岩流の危険にさらされている。1984年の短期間だが激しい噴火では溶岩流がヒロに向かって流れたが、噴火が止まったとき、それはどの建物にも到達してなかった[22]。
マウナ・ロアでの大きいが滅多に起こらない危険は火山山麓が突然崩落する可能性である。ハワイ諸島の山の側面の大きな部分が深い断層によって徐々に滑り落ちることがある。最もよく知られている例はヒリナ地滑りである。ニノレ・ヒルズにはもっと古代に起こった例がある。ときどき、巨大地震は山麓の崩落の引き金となり、大規模な地滑りを作って津波を引き起こす。マウナ・ロア西麓にあるケアラケクア湾はこのようなイベントによって作られた。ハワイ列島に沿って多数の海底地滑りがあることが海中調査によって明らかになっており、2回の巨大津波が起こったことが分かっている。20万年前にモロカイ島は75 mの津波を経験し、10万年前にラナイ島を高さ325 mの巨大津波が襲った[10]。
地滑りにともなう危険の最近の例は1975年に起こった。この時、ヒリナ地滑り (Hilina Slump) が突然数m動いた。これによりマグニチュード7.2の地震が起こり、数mの高さの津波を起こした[23]。
マウナ・ロアに設置された傾斜計。山体の輪郭の非常に小さな変化を測定することによって噴火を予知するのに使われる。
ファイル:Mauna Loa Carbon Dioxide.pngマウナロア観測所で測定された大気中のCO2濃度。
マウナ・ロアは集中的に監視されている火山である。ハワイ火山観測所 (HVO) は1912年にハワイ諸島の火山を観測するために設立され、HVOはマウナ・ロアと他の火山の噴火が差し迫る時期を予知するのを助ける多くの技術を発展させてきた。
最も重要な計器の一つは地震計である。ハワイ島に設置された60個以上の地震計は1週間に何百回も起きる小地震の強さと位置を測定する。地震波噴火が実際に始まる数年前に増加し始める。1975年と1984年の噴火はいずれも深さ13 km以下の地震活動の増加が1、2年前に先行した。
別のタイプの地震活動が噴火の数時間前に起こる。いわゆるハーモニック微動は、突然の衝動である普通の地震活動と違って連続的な「鳴動」であり、地下のマグマの素早い動きによって引き起こされると考えられている。火山微動は普通は噴火が差し迫っていることを示すが、地表に達しない浅いマグマの貫入によって起こることもある。
地下で起こっていることを示すもう一つの重要な指標は山の形である。傾斜計は山の輪郭の非常に小さな変化を計測し、高感度装置は山の各ポイントの間の距離を測定する。マグマが山頂と割れ目帯の下の浅いマグマ溜まりを満たすにつれて、山は膨張する。カルデラを差し渡すラインの調査は1975年の噴火の前年に76 mmの直径の増加を計測し、同様の増加は1984年の噴火の前にもあった[10]。
マウナ・ロアは全球大気監視計画や他の科学観測による大気モニタリングにとって重要な場所となっている。マウナロア太陽観測所 (MLSO) は海抜3400メートルの北側の斜面に建設されており、太陽観測において優れた結果を残している。NOAAマウナロア観測所 (MLO) はそのすぐそばにある。MLOは局地的な大気の影響を受けない高度に位置していることを利用して、温室効果ガス二酸化炭素を含む、全地球的な大気の観測を行っている。測定値は火山からのCO2放出量を調整される[24]。大気中の二酸化炭素の割合の計測は1958年から行われており、地球温暖化に関するデータが収集されている。2006年10月から、マイクロ波背景輻射非等方性観測アレイ (AMIBA) が宇宙の起源を調査している。
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