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今急激に熱が加速しているeSports。そのシーンを支える人々にじっくり話を聞かせてもらうトップランナーインタビュー。今回は、一般社団法人 日本eスポーツ協会(JeSPA)事務局長である筧誠一郎(かけひせいいちろう)氏へのロングロングインタビューを決行した。
世界中に何千万人というゲームファンを抱えるファン・コミュニティWikiaでは、今急激に熱が加速しているeSportsをグローバル、そして日本国内でフォーカスし、盛り上げています。
今回は、一般社団法人 日本eスポーツ協会(JeSPA)事務局長である筧誠一郎(かけひせいいちろう)氏に、いちゲームファンとして、また同時に先駆者として歩んできた日本eSportsの歴史を振り返りながら、日本のeSports界が抱える課題、2020年にむけた未来動向まで、約2時間半にわたってインタビューしました。
このインタビューは2016年9月13日に行われたものです。要約せず、前編・後編でほぼ全文掲載しております。
筧誠一郎01
2016.09.16 Interview by kappapeaks
――――筧さんは、ゲームお好きなんです・・・よね?
そうですよ(笑)
もとから小学生ぐらいのころから、よくゲームをやっていましたね。アウトドアというよりはインドアな子供で。人生ゲームとか花札とか。体動かすというよりはそっち側だったのかな。
で、ちょうど高校生ぐらいの時に、まあいわゆる『テ―ブルテニス』みたいな、喫茶店によくある筐体がでてきたんですよ。それに「ドはまり」してしまいましてね(笑)
そのうちにそれが、あの日本中を席巻した1979年(昭和53年)発売の『スぺースインベータ―』になり。大学生入るぐらいかな~、それでもう喫茶店にずっーーと籠って、100円玉積んで、みたいなね。そんな感じでやってましたね。
――――時代を感じますね(笑)
そうなんですよ。それで4年生ぐらいのころに、『ギャラクシアン』っていうタイトルが出て。あのインベーダーゲームをちょっと改良したような。インベーダーみたいにたっ、たっ、たって、降ってくんじゃなくてね。斜めに降ってくるんですけど、曲線を描きながら降ってくるやつがあってね。それが多分人生で一番はまったゲームなのかもしれないですけど。
もう新宿のゲームセンターで名前が載るぐらい、はまってしまいまして。超やりこみました。一番最高得点だしたのが、何十万点だろう・・ちょっと忘れちゃったんですけど。それがね、学校の試験が始まる時間の直前で。学校の近くの喫茶店でやってたんですけどね。
みんながね、もうね「筧!もう間に合わないぞ!」と言いながら、「終われねえんだ!終われねえんだ!」って言ってね。そういうときに限って終われないんですよね。ぎりぎりまでやってダッシュで行って。それでテスト受けてまあ何とかスレスレで通ったんですけどねえ、よかったなあと。
そういうのやってて、1983年に会社入って、社会人の第一歩を踏み出すんですけど。ちょうどその年がね、ファミリーコンピュータ発売の年で。そうすると、会社員だったらすぐ買えるじゃないですか(笑)もう真っ先に買って。家でゲームやりまくってました。
『三国志』ってゲームがあったんですよ。もうあれ狂ったようにやり続けていまして。ほとんど寝てなかったですね。で、1ヶ月近くたったときに、朝の通勤電車で目の前の風景がゆがみだしたんですよね。「やばいこのままでは死んでしまう!」と思って。ただちょうどそのころクリアしたんで。よかった。これで死なずに済んだと思って。ふふふ。
そのままロールプレイングゲームとかシミュレーションゲームとかをやってて、1994年12月にプレイステーションが出て、『鉄拳』とか、『リッジレーサー』とかまあそこら辺を触るぐらいな感じですけどやってましたね。
まあゲームは、やってましたね。ドラクエ発売したから会社行かないとかね。
――――それは電通時代にですよね?
そうですそうです。いや何人かそういう人間いたんで(笑)。ドラクエ発売日は会社いなくていいみたいなね。いや、いいってわけじゃないけど。いなくてもまあしゃーないかというね。
で、それで電通にいるときに、ある時、映像事業局という部署に移ったんですけど、そんなにまだやることもなくてね。そこに視聴覚室みたいなのがあったんですよ。映像事業局なんで、映画の投資とか結構してて。映画の制作にもかかわったりして。なので、まあ大きなテレビと映像機器とがあって。
そこにあのスーパーファミコンを持ち込んでですね、接続して、朝から晩まで『トルネコの大冒険』やってたんですよ。うふふふふ!
で、そしたらそん時部長で、後に副社長になる森ってのが通りかかって、「お前朝から晩までゲームやってるけど、ゲームが好きなのか」と聞かれて「当り前でしょ!」って言って。
そうしたら、「ちょっと今ゲームで、プロジェクト制作チームを立ち上げようとしているんだけど、お前入るか?」って言われて、「はいもう喜んで!」って、そこに入って行って。エポックと電通と小学館プロダクションの3社共同で、ゴルフの「セント・アンドリュース」っていうゲームの製作をやったんですよ。それが1993年33歳~34歳の時ですね。
だったんですけど、非常によくあることなんですが、そのゲームって、セントアンドリュースで全英オープンがあるときに合わせて、合わせて発売しようとしたんだけど・・・・。
見事に間に合わなくて(笑)で、全米オープン終わってから何カ月後かに発売すると、そのころもうプレイステーションが出てしまって、時代はスーファミからプレステに移る時で、まあ大惨敗だったわけですよ。
ただ「あ、そうか電通でもゲームができるんだ」って実感できて。そっから、自分で企画立ち上げて、電通と、後2社に出資してもらって、プレイステーションのゲームをつくるプロデュースをね。していくんですが。
――――なんか凄いですね。
まー、あのころの電通ってね、やりたいっていうと結構やらせてもらえた時期なんですよね。で、それでプレイステーションで一本出したんですけど・・・。
それがね「破壊王 キング・オブ・クラッシャー」っていうゲームなんですけど。1998年11月に発売した。ひょっとして、みなさん知ってるかもしれないんですけど、、、それがまた「クソゲ―大賞」をもらう、みたいなとんでもないゲームで(笑)
3Dポリゴンの時代じゃないですか、プレイステーションだから。(参考:昔のゲーム特有のくっそ荒い3Dポリゴンwwwwww )で、3Dポリゴンでゲームを作ろうということになって、3Dポリゴンができますっていう制作会社さんをね、誰かが連れてきたんですよ。
そしたらそこ、後で聞いたら初めてだったんですよね。
――――わー出たー!まあ~、あるあるですけどね
ええ、まあよくある、あるあるですけど、アメリカ人とかよくあるんですけど(笑)。できるって言って 全然できないみたいなね。で、そういうことがあって、作ったはいいんだけど。
物を叩き壊しまくるっていうゲームなんですよ。最初は人間だったのがだんだん化け物になってって、最後は怪獣になっちゃうみたいな。目の前にあるものをどんどん 破壊するっていう、いわゆるストレス発散ゲームって感じだったんですけど・・・・。
要は、当たっても壊れない、とかね。当たってないはずなのに壊れる、とかね。
そりゃクソゲーって言われるよ。みたいな。
――――そりゃぁ、言われちゃいますね。
で、それを一本作って、でもまためげずにその後2本ぐらい作るんですよ。そして、4本目かな?関わったゲームが40万本!最終的に大ヒットを飛ばして、まあなんとかパチパチパチっていう感じになって。
だから、この頃にはそれまでゲームのプレイヤーだったのが、生産側に。プロデュースという方向にまわったっていうことが大きいですかね。
この後wiiのソフトを作ったりもして、そんな感じでずっとゲームとは関わってきていて。
で、プレイヤーとしてはそのころ、まだWiiがでる前あたりかな?(wiiの発売は2006年11月19日)ネットゲームに MMO RPGが始まって、はまっちゃうんですよ~。『リネージュ 』(2001年)ってタイトルで、これまた日本中を大席巻した。
本当にこれ寝ないでね。会社の仕事が終わると会社にずっーーーーと残って、徹夜してやってるっていうね。早く帰れないっていうか、もう帰らない。
それをやってて、わりと電通の中で「ゲームの専門家」みたいな、そういう感じのポジションになってっちゃって。「ゲーム聞くなら筧」っていうね。
で、ゲームの講演みたいなのを社内で何本もやったりしてたんですけど。
その中で1回「ネットゲームについての潮流」みたいなテーマで、電通ホールで今のネットゲームはこんなんですっていうリネージュの事例を紹介しながら、その講義をしたんです。
で、まずマーケティングの人間が出てきて「ゲームのマーケット状況」を説明して、僕が「MMO RPGの実態」みたいな話をして、僕の後ろにいた韓国からの留学生っていうか会社に来ている男の子が「韓国のゲーム事情」ってので、eスポーツの話をしたんです。
で、それが今からちょうど10年ぐらい前ですよ。46歳のころ。
で、んもう、びっくりしちゃって!聞いたことも見たこともなかったんで。終わってから 何それっていう話をして、いやこうこうこうでって教えてもらって「ええ!そんなんなってんの!?」っていう。
それから慌ててネットで調べまくったら、なんかとんでもないことに世界はなっていて。ちょうど10年ぐらい前が、今の日本ぐらいの感じですよ。イベントやると数千人の人間が集まります。で、賞金は何千万です。みたいなね。そういう状態だったんですよ。韓国だけちょっと特殊で、何万人って集まってたんですけど。
10年前は、そんなシーンがあると思わないから、もうびっくりしちゃって。
――――その後の人生を変えしまう、ものすごい衝撃を受けたんですね。
ええ、これはちょっと今まで自分はゲームを作ってきたけど、考えてみたらプレイヤーのことあんまり考えてなかったなーと。要は買ってねって言うだけなわけですよね。
ゲームを作って、買って下さいって言うだけの感じだったんですけど、これはやっぱり確かにプレイヤーをピックアップしていかないといけないなあ、と思って。
それで、2006年にeスポーツの連絡協議会みたいな、勝手な名前作って、電通内で好きそうなやつ集めて、最盛期30人ぐらいいましたかね。それで月一で勉強会をやってたんですよ。その勉強会立ち上げた中の1人が、非常にeスポーツに詳しかった。実際にeスポーツに結構携わっていた人間で そいつをお師匠さんみたいにしながら、こうどんどん調べていって。
――――ゲームメーカーさんへのアプローチはその頃しなかったんですか?
その頃はねー、eスポーツを知って1年後ぐらいに「eスポーツとは」っていう、皆さんにお見せした資料の原型となるようなようなやつを作って、ほぼほぼ全てのゲーム会社さんと会ってはいたんですよ。「eスポーツってのが来てます、世界のeスポーツ事情がこんなになってます、業界としてみんなで取り組まないといけないと思うんです!」っていうのをやって。
ただね・・・。中にはね、ある会社の役員さんですけど「うちの会社は韓国で仕事をしているけどそんな話見たことも聞いたこともない!」って言われて。もうそういう反応がほとんどだったんですよ。「電通さんは何を仕切りたいの?」とかね。いやいやそうじゃなくて。
「みんなこのゴールに向かって走っていきましょう!絶対この潮流は世界を覆っちゃいますすよ、今から行っとかないと手遅れになりますよ」と話をしたんだけれども、ピンとこなかったみたいですね。
――――新しい文化の啓蒙に近いですもんね
そうですね。僕音楽でも同じようなことやってて。1997年にこれからは音楽配信の時代が来ると。(iTunes Music Storeのサービス開始が2003年)
レコード会社各社さんをまわって、音楽配信をこれからみんなで取り組んで行かなきゃならないと。僕音楽大好きで、その頃はゲームに加えて音楽の仕事も散々やってたんで。
でも、もう全員が決まって「筧くんねえ、音楽ってのは ジャケットがあって、手に持つっていうことが大事で、このジャケット1枚作るのに、僕らがどれだけ力を注いで、ファンの皆さんもこれを楽しみにしているか、わからんかね!」と言われて。おまけに「歌詞カードはどうするんだ!!!」って言われてね(笑)
でもね。音楽配信の時代来ちゃいますよ。と。ウォークマンだってそうだったじゃないですかと。そんな話もしてたんですけど。全然響かなくて。ちょっとね、「早すぎる」んですよ(笑)
まあ、そんなことがありつつも、ちょうどその時期です。
電通にJOCから連絡が入って。アジア室内競技大会(アジアインドアゲームズ)っていう大会でeスポーツが正式種目になってしまったと、なんだeスポーツってと。それが電通のスポーツ局に入ったんですよ。で、その時に電通スポーツ局のやつが、ああそれはよく知ってますっていうことで、JOCに返事をしたと。
で、まあ正式種目になったけれど日本で統一団体みたいなのはないねと。電通さんなんか携わる?みたいな話になって、じゃあeスポーツ協会設立準備委員会みたいなのを作りましょうというのが2007年なんですよ。
それが9年前ですよね。僕らが連絡協議会やり始めて1年後ぐらいに、eスポーツ設立準備委員会みたいのを立ち上げましょうということで、電通さんもお金使って、まあ開発費ってやつですよ、いわゆる日韓戦とかやったわけですよ。東京ゲームショウにもブース 出してね。「eスポーツとは」みたいなことをやったりとかしたんですけれども。
その後、2008年9月にリーマンショックっていうのが起きてしまってですね・・・・。
――――ああ・・・
電通もですね、さすがにあんまり売上のないものに、そうそう巨額の開発費を出すっていうのも厳しくなってきたと。
いやあ、まあ「いい加減eスポーツっていつ売上になるの?」って上司から言われる訳ですよ。「何年もやってるけどいつなんだ?お前ここ2、3年売上ないじゃないか!」と、「いや~、そうですね~へへへ」みたいな。
で、じゃあまあ開発費貰えないんならもうしょうがない、自分でやるか。みたいな感じにだんだんなってきて。
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