キャバレー_(小説)

ページ名:キャバレー_(小説)

テンプレート:文学『キャバレー』は栗本薫のハードボイルド小説。これを原作として1986年に映画が、2000年にミュージカルが制作された。

目次

概要[]

若き天才サックス奏者・矢代俊一を主人公として、ジャズの名曲「レフト・アローン」がつなぐ、彼と中年のやくざの代貸・滝川との奇妙な友情を描く成長物語。

初出は『野性時代』1983年8月号。本号に全編が一挙掲載されたのち、同年9月30日に角川書店から単行本(ISBN 4-04-872368-5)が刊行された。のち、1984年12月10日に角川文庫版(ISBN 4-04-150007-9)が、2000年6月18日にからハルキ文庫版(角川春樹事務所、ISBN 4-89456-704-0)が刊行されている。角川書店版の表紙は福田隆義、ハルキ文庫版の表紙は鹿乃しうこが担当している。

2000年10月には、矢代俊一と滝川との16年ぶりの再会を描いた続編『黄昏のローレライ キャバレー2』が、ハルキ・ノベルス(角川春樹事務所、ISBN 4-89456-264-2)より刊行された。

テンプレート:ネタバレ

あらすじ[]

大学生の俊一は、中小企業ながら会社社長をつとめる父を持つ、有名私大の名門ジャズ・サークルに属している才能のあるジャズ・サックス奏者だ。だが、クラシックしか認めない頭の堅い親や技術自慢ばかりの同級生に嫌気がさし、ジャズの真髄を究めるために家を出て、場末のキャバレー「タヒチ」のバンドに潜り込んでいた。

当初は、全く違った水商売の世界は目新しかったものの、すぐにその澱んだ空気に馴染んでしまい、酔っぱらい相手の演奏や三流のバンドマンとの競演に得るものもなく、仲間のバンドマンやボーイ達と変わりばえのしない毎日を過ごすようになった。

そんなある日、ジャズの名曲『レフト・アローン』のリクエストがあった。リクエストをしたのは、界隈を仕切る暴力団・小桜組の代貸として恐れられていた滝川であった。彼は演奏の後で俊一を呼び、俊一の演奏が以前にレコードで聞いた『レフト・アローン』とは違うと言った。普段はむしろ臆病なくらいだが、音楽に関することになると頭に血が昇る俊一は、偉大なジャッキー・マクリーンに劣ると貶されたと感じ、相手がやくざであることも忘れて激しく反論した。

それからというもの、滝川は俊一に対して奇妙な敬意を払うようになり、俊一の演奏を聴きに来ては、その後しばしばその演奏について語りあうようになった。滝川は音楽に関しては全く無知だが、天性の感を持っており、しばしば俊一を驚かせる指摘をしては、俊一の心と音楽の成長に少なからぬ影響を与えるようになった。

滝川、そして「タヒチ」の同僚やホステスたちとの交流によって、俊一はいつしか、ジャズにつながる人の生の愛しさと哀しみを肌で感じるようになった。そして、それがついに、俊一を新たな音楽の境地へと導くことになった。

だが、あくまで純粋に音楽に打ち込む俊一の気づかぬうちに、俊一の周囲にさまざまな人々の、そして対立する暴力団同士の思惑が影を落とし始めていた。その影はやがて俊一をも巻き込み、そのことによって滝川は、ある苦渋の決断を迫られることになるのだった。

主要な登場人物[]

矢代俊一場末のキャバレー「タヒチ」のジャズバンドのサックス奏者。19歳。やわらかな髪、華奢な体つき、細い顎、長いまつげの美少年。プロを入れても日本で五本の指に入るという名高いビッグバンドである、S大のモダンジャズ・ソサエティに、入部して1週間でサックスのレギュラーを取ったという逸材。だが、恵まれた境遇に飽き足らず、本物のジャズの魂を求めて、場末のキャバレーに自ら身を落とした。滝川「タヒチ」の界隈を仕切る暴力団・小桜組の代貸。六尺豊かの長身のたくましく、がっちりとした体格。かたぎには手を出さない、筋の通ったやくざとして知られるが、いざというときの非情でも知られ、人殺しの伝説には事欠かない。素人ながらも俊一の音楽の才能に惚れ込み、さまざまなかたちでバックアップしようと試みる。金場末のキャバレー「タヒチ」のジャズバンドのピアニスト。五十歳になりかけの韓国人。中村場末のキャバレー「タヒチ」のジャズバンドのドラマー。三十五、六歳。賭博狂で借金に追われている。浅井場末のキャバレー「タヒチ」のジャズバンドのベーシスト。三十九歳。通称源さん。女房、二人の子持ちで六畳一間暮らし。松村(政)小桜組の若頭。将来の代貸候補。三白眼の険しい顔立ちの大男。男っぷりは悪くなく、英子に惚れている。英子キャバレー「タヒチ」のNo.1ホステス。二十歳前後。俊一に惚れており、彼の初めての女性となった。久保場末のキャバレー「タヒチ」のボーイ。通称ター坊。おしゃべりで気がよく、俊一とは比較的なかがいい。

映画[]

角川春樹事務所創立10周年記念作品として、本書を原作とする映画が製作され、1986年4月26日に全国で公開された。天才サックス奏者・矢代俊一の成長と、やくざの代貸・滝川との友情を描いた物語としての基本に変更はないものの、その結末をはじめ、ストーリーには大きなアレンジが加えられている。

キャスト[]

  • 矢代俊一:野村宏伸
  • 滝川:鹿賀丈史
  • 英子:三原じゅん子
  • 千枝古:原田知世※ゲスト出演
  • 田能倉:真田広之※ゲスト出演
  • 安原(英子のヒモ):宇崎竜童
  • 中村(ドラムス):ジョニー大倉
  • 金(ピアノ):山川浩一
  • 浅井(ベース):尾藤イサオ
  • 久保(矢代の同僚):新井康弘
  • 相馬六助(滝川の舎弟):竹内力
  • 阿久津(北憂会組員):成瀬正
  • スターダスト・ホステス:津田ゆかり
  • スターダスト従業員:杉欣也
  • 同・バーテンダー:清水昭博
  • 同・マネージャー:中村孝雄
  • 同・ダンサー:村田香織
  • レストランウエイター:高柳良一
  • スターダストの客A:中井啓輔
  • スターダストの客B:北方謙三 ※ゲスト出演
  • 総長(関東連合):丹波哲郎 ※ゲスト出演
  • 関東連合組長:千葉真一 ※ゲスト出演
  • スターダスト・マスター:夏八木勲 ※ゲスト出演
  • 関東連合運転手:永島敏行 ※ゲスト出演
  • 関東連合組員:渡瀬恒彦 ※ゲスト出演
  • パブのママ:志穂美悦子 ※ゲスト出演
  • ウエイトレス:薬師丸ひろ子 ※ゲスト出演
  • 章次(白江組組員):本間優二
  • 前川(北憂会組員):清水健太郎
  • 佐島(北憂会幹部):古尾谷雅人
  • 歌手:白竜
  • ピアニスト:原田貴和子
  • ミドリ:渡辺典子
  • 小坂井(刑事):室田日出男
  • 白江(白江組組長):原田芳雄
  • 南部恵:倍賞美津子

スタッフ[]

  • 製作:角川春樹
  • プロデューサー:坂上順・菅原比呂志
  • 監督:角川春樹
  • 脚本:田中陽造
  • 原作:栗本薫(角川文庫刊『キャバレー』)
  • 撮影:仙元誠三

関連出版物[]

書籍[]
  • 『シナリオ キャバレー』(角川文庫 / 1986年4月10日発行 / ISBN 4-04-150099-0)完成台本および撮影台本が収録されている。
  • 『キャバレー カドカワフィルムストーリー』(角川文庫 / 1986年4月25日発行 / ISBN 4-04-159509-6)映画のストーリーをスチール・フィルムにより再現した作品。
CD[]
  • 『キャバレー オリジナル・サウンドトラック』発行日:1986年4月2日発売元:ソニー・ミュージック収録曲
    1. Left Alone(作曲:Mal Waldron)
    2. Side by Side(作詞・作曲:Harry Woods)
    3. K's Bar(作曲:Yoshio Ohtomo)
    4. Now's the Time(作曲:Charlie Parker)
    5. Wrap Your Troubles in Dreams(作詞:Ted Koehler & Billy Moll 作曲:Harry Barris)
    6. Harbor Lights(作曲:Masahide Sakuma)
    7. Left Alone(作詞:Billy Holiday 作曲:Mal Waldron)
    8. Into the Night(作曲:Yoshio Ohtomo)
    9. Star Dust(作曲:Hoagy Carmichael)
    10. Peek-a-boo(作曲:Yoshio Ohtomo)
    11. Adagio(作曲:Masahide Sakuma)
    12. Left Alone(作曲:Mal Waldron)

ミュージカル[]

作者自身の脚本・演出により、本書を原作とするミュージカルが製作され、2000年6月29日~7月3日にかけて、東京・シアターVアカサカにて上演された。物語のテーマに変更はないが、矢代俊一の設定が、サックス奏者からダンサーに変更されている。

キャスト[]

  • 矢代俊一:原田優一
  • 滝川修二:水木竜司
  • 津坂英子:花木佐千子
  • 黒田五郎:中山浩
  • 松村健:佐藤和久
  • 高松茜:榛名珠利
  • 山辺勉:小川潤
  • 支配人・永山:鈴木良一
  • 三下・マサシ:大久保圭介
  • ボーイ・タカシ:俵和也
  • ホステス・ヒロミ:若旅美香
  • ホステス・ユカリ:天野恵
  • ホステス・カオリ:碇あゆみ
  • ホステス・サチヨ:飛田美紀子

スタッフ[]

  • 脚本・演出・作詞・作曲:中島梓
  • 振付:榛名珠利
  • 音楽製作:荒川泰
  • 照明:武藤聡
  • 音響:岩下雅夫
  • 美術:志田原貴子
  • 衣裳:菊田光次郎


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