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『ア・ホーマンス』は、1986年10月10日に公開された日本映画。同時上映は澤井信一郎監督作品めぞん一刻。
日本映画界を代表する俳優松田優作が、主演と同時に初の監督を務めた作品。元ロックシンガー・石橋凌の映画デビュー作品でもある。文芸作品が続いた松田優作の久々のアクション映画復帰作として注目を集める。当初、この作品は「探偵物語」などの演出をつとめた小池要之助監督のもとで撮影が行われ、松田優作は主演と同時にプロデューサー的な立場で関わることになっていたが、両者の作品に対する考え方の相違が大きくなりすぎてしまったために、小池監督が途中降板。急遽松田が自らメガホンをとることになり、脚本も大幅に改稿、以後17日間という短期間で撮影された。
初監督作品であるがゆえに作品としての未熟さを指摘する向きもあるほか、「ブレードランナー」「ターミネーター」といったハリウッドのSF映画からの影響と類似性を指摘する声もある[1]。が、ベトナム音楽、仏教思想など独特のアジアンテイストや、独特のカメラワークなどの実験的な映像、丹念な人物描写など作品的には評価が高く、アクション俳優から演技派俳優への脱皮を模索していた松田にとって、まちがいなくターニング・ポイントとなった作品として認識されている。同時に現在へ続く役者・石橋凌を発掘した作品としても記憶されるべき。
東映・キティ・フィルム提携作品。
テンプレート:ネタバレ欲望と暴力の支配する街・新宿。そこでは、大島組・旭会というふたつの暴力団組織が抗争の真っ最中であった。そこへ、記憶を失った謎の男(松田)がオートバイに乗ってふらりと現れる。
大島組の幹部・山崎(石橋)は、謎の男と出会い、その風のように自由な生き様に次第に惹かれていく。彼はその男を「風(ふう)さん」と呼び、自らが経営するデート喫茶で働かせる。成り行きから店の女の子を抱いてしまう風であったが、山崎はこれも許してしまう。
その後、風はふしぎな雰囲気をもつ謎の女占い師・加奈子(阿木燿子)に出会う。母のように加奈子を慕う風。
ちょうどその頃、大島組の組長が幹部たちの目の前で旭会の構成員によって銃撃され、死亡するという事件が発生。組長に代わって大島組の実権を握った藤井(ポール牧)は、山崎に旭会の副会長殺害を命じ、併せてその準備として覚醒剤を拳銃・現金と交換する取引も指示する。「こちらは組長が殺されているのに、なぜ会長でなく副会長を狙うのか」と不満をもつ山崎。その後旭会と手打ちをし、更に大きな縄張りを手に入れようというところまで考えている藤井の計算高いやり方に納得ができない。気持ちのおさまらない山崎は内縁の妻・千加(手塚理美)のもとへ赴き、うまそうに飯を食べる。
取引に向かう山崎の車に、いつのまにか風が乗っていた。彼は強引に手助けを申し出、追跡する警察車両を振り切ったり、襲ってきた100人からの暴走族を追い払ったりするのに一役買う。さらに尾行していた刑事・福岡(小林稔侍)につかまり、警察署で取り調べを受けるふたりだったが、決して自白しないため釈放される。取引のことをまったく話さなかった風に、よりいっそう信頼を寄せる山崎。風の生き方に共感した山崎は組を捨て、組長の弔い合戦に単身赴く決意をかためると同時に、風に街を出るようにいう。山崎と別れた風の前に、再び女占い師・加奈子が姿を現し、謎めいた言葉を残す。
「思い出したでしょ……サイゴンから北へ10km、貴方は傷を負った戦士……野戦病院の中、貴方の体温が零度Cになった瞬間から、貴方は新しい生命体に生まれ変わったの……」
その頃、藤井は部下たちに山崎を消すよう指示していた。同時に彼は、見せしめのために千加をレイプしてしまう。さらに風と接触し、山崎を消すように依頼するが、風はこれを拒否。渡された拳銃を素手でバラバラにして見せ、藤井の顎をつかんで「山崎さんに手を出したら、おまえの体を粉々に砕いてやる」と凄む。その後風は千加の前に姿を現し、「山崎さんは戻ってきますよ、あなたのところへ」と励ます。
旭会の会長が山崎によって銃撃されたというニュースがかけめぐる中、山崎は千加のもとを訪れる。その場所に、風もいた。だが、千加と風の目の前で、山崎は藤井の放った3人のヒットマンたちによって銃撃される。ヒットマンを追跡する風。ふたりを惨殺し、残るひとりを追いつめるが、ヒットマンの放った銃弾が風の胸を貫く。だが、そこに見えたのは真っ赤な血ではなく、銀色に輝き無機的に動く精密機械の集合体だった。彼は「レプリカント」とよばれるサイボーグだったのである。
銃撃現場は騒然としていた。死んだと思われていた山崎が、まだ息があることに気づき捜査員・救急隊員は浮き足立つ。救急車に乗せられる山崎、そしてそこに駆け寄る千加。風は、その後ろ姿を、ただ静かに見つめるだけであった。
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