走査

ページ名:走査

走査 (scan)とは、測定対象を針や電子線のような細いもので一次元的になぞったり、照射する電磁波の周波数を連続的に変えたりするなどし、それに伴い対象物の情報を得ること。一般には、テレビジョンやファックスなどの画像伝送技術において、画像を電気信号(映像信号)に変換する技術の一つとして知られる。

目次

概要[]

テレビで画像を送るには、まずカメラでレンズを用いて撮像管あるいは固体撮像素子の受光面に被写体の像を結像させ、光の強弱を電気信号に変換する。この2次元情報である静止画(フレーム)を時間軸上の1次元情報、すなわち時間とともに変化する信号の流れとして送る必要がある。

ファイル:Scan2.png

図1:テレビにおける画像伝送の原理

このため、図1に示すように受光面の平面を左から右へ、上から下まで順次なぞることで1次元情報に変換する。すなわち画面を縦方向に細かく分割し、分割した右端を直下の分割部の左端につなげて1本の「紐(ひも)」のような、1次元の信号の流れに変換する。白黒テレビではこの「紐」の各点が被写体の明るさ(輝度)を表現するアナログ量となる。

受信側では、この「紐」を画面の左右を区切りとして一本一本切り離し、もとの順番に並べて1枚の平面状の画面を再構成することになる。

この一本一本の「紐」を走査線と呼ぶ。走査線が多いほど縦方向の解像度は向上する。横方向の解像度はアナログ映像信号の場合、伝送帯域幅で制限される(走査線数・フレーム数 (fps) が一定の場合)。また、毎秒あたりフレーム数が多いほど動く被写体の動きの描写が滑らかになる。言い換えれば時間方向の解像度が向上する。

インターレース方式とプログレッシブ方式[]

テレビ放送を実用化するにあたり、伝送可能な帯域を考慮して走査線数と毎秒フレーム数を決める必要があった。白黒テレビ放送の開始時に実現可能だった約4MHz程度の帯域では、ブラウン管の画面サイズと視聴距離から必要な走査線本数を決めると、伝送可能な毎秒あたりのフレーム数が30程度になる。これでは滑らかな動きを実現するには足りないため、人間の目の残像特性を利用した飛び越し走査(2:1インターレース)方式を採用した。これは、画面を構成する走査線を1本おきに送ることにより、1フレームを二つの「フィールド」に分割して毎秒60フィールドを伝送するものである。

これに対し、飛び越し走査を行わない方式を順次走査(プログレッシブ走査)方式と呼ぶ。コンピュータ・ディスプレイでは主として順次走査方式を採用するほか、デジタルテレビジョン放送やDVD-Videoでは順次走査方式を使用することも可能である。

ファイル:Scan1.png

図2:飛び越し走査と順次走査:走査線の配置

ファイル:Scan3.png

図3:飛び越し走査と順次走査:毎秒のコマ数

図2に飛び越し走査方式と順次走査方式の走査の違いを示す。インターレース方式では左の図のように一旦実線部の走査線をたどって画面最下部まで走査し、ついで最上部に戻って点線部の走査線をたどって右下隅に達するように走査する。したがって、走査線本数が1/2の2画面に分けて送るのと同じことである。これに対し順次走査方式では右の図のように、一度に全画面を走査して送る。なおNTSC方式では走査が画面の左上隅から始まるフィールドを奇数フィールド、画面上端中央から始まるフィールドを偶数フィールドと呼ぶ。

順次走査方式で送る場合(図3右)に対し、飛び越し走査方式で送る場合(図3左)では実質的に毎秒フレーム数を1/2にした順次走査方式(図3中)と同等のデータ量、すなわち伝送帯域となる。また、飛び越し走査では図3中に比べフレーム数が2倍であるため同じ伝送量でも動画としての動きの滑らかさが劣化しないことになる。

但しテレビカメラもインターレース方式の場合、奇数フィールドと偶数フィールドでは1/60秒ずれた時刻の画像を伝送することになる。このため、インターレース方式の奇偶フィールドを1枚のフレームに重ねた場合、動きのある被写体を写すと走査線の奇偶でずれて表示される。人間がテレビ画面を視聴する場合にはこれは殆ど気にならないが、インターレースからプログレッシブへの変換を行ったり、またフレーム静止画表示を行った場合にはこのずれが知覚される場合があるので、映像制作上注意を要する。

なお、インターレースとは英語の"Interlace"のカタカナ読みである。"lace"はカーテンのレース(編む)でお馴染みの単語で「レース」(「レイス」)と読み、決して「レス」とは読めないが、"Interlace"は時々「インターレス」と誤記されることがある。複数の著名な出版社の専門書籍でも、最初から最後まで間違って記されているものが何冊も存在している。そのためかネット上でも散見されるが、「インターレス」と書くと"Inter-less"のような造語か何かと誤解され、その意味は"隙間がない"というようにも取られかねないため、インターレースの反対のプログレッシブと同じ意味と勘違いされたりして、誤解を深める原因にもなっている。("Interlace"は、その綴りの通り「間を編んでいく走査」と言う意味である。)

ノンインターレース方式[]

ファミリーコンピュータやスーパーファミコン等の古い家庭用ゲーム機では、インターレース信号の片方のフィールドのみ60Hzで飛び越し走査で表示する。もう片方のフィールドは常に黒くなっているので、無数の横線が見えることになる。古いゲーム機ではビデオメモリの容量を大きくとれなかったので、解像度を半分にすることで対応した。インターレースのフリッカー(チラツキ)がなくなり、目が疲れにくいというメリットもある。

関連項目[]


テンプレート:Tech-stub

Smallwikipedialogo.pngこのページには、クリエイティブ・コモンズでライセンスされたウィキペディアの記事が使用され、それをもとに編集がなされています。使用された記事は走査にあり、その著作権者のリストはページの履歴に記録されています。


特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

龍村仁

龍村 仁(たつむら・じん、1940年-)はドキュメンタリー監督、元NHKディレクター。有限会社龍村仁事務所代表。目次1 経歴2 作品2.1 ドキュメンタリー2.2 CM2.3 その他3 参考文献4 外...

龍の牙-DRAGON_FANG-

テンプレート:統合文字『龍の牙-DRAGON FANG-』とは、2007年11月22日にDVDが発売される日本の映画。監督は久保田誠二。製作は株式会社クリエイティブ・ホールディングス。目次1 概要2 ...

龍が如く_劇場版

『龍が如く 劇場版』(りゅうがごとく げきじょうばん)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、『着信アリ』『妖怪大戦争』などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2007年3月3日から東映...

龍が如く_〜序章〜

『龍が如く 〜序章〜』(りゅうがごとく じょしょう)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、「着信アリ」「妖怪大戦争」などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2006年3月24日にDVD...

齋藤武市

齋藤 武市(さいとう ぶいち、1925年1月27日 - )は日本の映画監督。埼玉県秩父市出身。早稲田大学文学部卒。1948年、松竹大船撮影所に助監督として入社。小津安二郎に師事する。1954年、先輩の...

黛りんたろう

テンプレート:Otheruses黛 りんたろう(まゆずみ りんたろう、1953年 -)は、NHKのドラマ番組ディレクター、演出家、映画監督。目次1 来歴・人物2 手掛けたドラマ3 劇場公開作品4 著書...

黒部の太陽

テンプレート:予定黒部の太陽(くろべのたいよう)は、木本正次による小説作品、ならびにこれを原作とする日本の映画作品。1968年公開。当時、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いている。目次1 ...

黒蜥蜴

テンプレート:文学『黒蜥蜴』(くろとかげ)は小説。江戸川乱歩の代表作の一つである。宝石等の財宝を盗む女賊と名探偵明智小五郎が対決する推理小説である。初出は連載小説として雑誌『日の出』に1934年1月号...

黒田義之

黒田 義之(くろだ よしゆき、1928年3月4日 - )は、映画監督。目次1 経歴・人物2 主な監督作品(特技監督・助監督含む)3 主なテレビ監督4 主な脚本作品経歴・人物[]1928年、愛媛県松山市...

黒田秀樹

黒田 秀樹(くろだ ひでき、1958年4月30日 - )は、日本のCMディレクター、映画監督。大阪府出身。黒田秀樹事務所代表。目次1 プロフィール2 主な作品2.1 CM2.2 映画2.3 PV3 関...

黒田昌郎

黒田 昌郎(くろだ よしお、1936年 - )は日本のアニメーション演出家。東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東映動画で「狼少年ケン」、「おばけ嫌い」、「ジャングル最大の作戦」、「タイガーマスク...

黒澤明

くろさわ あきら黒澤 明ファイル:Akira Kurosawa.jpg生年月日1910年3月23日没年月日テンプレート:死亡年月日と没年齢出生地日本の旗 東京府荏原郡大井町職業映画監督家族長男・黒澤久...

黒沢清

テンプレート:Otheruses黒沢 清(くろさわ きよし、1955年7月19日 - )は、日本の映画監督、脚本家。東京藝術大学大学院映像研究科教授。兵庫県神戸市出身。六甲中学校・高等学校を経て、立教...

黒木瞳

ののっぺらぼう鏡あべこべの世界絶対ムリ行きたない怖顔合わせおうちで暗い一番怖がりとしてもお願い申し上げください一緒よろしくね↓未来おうちで暗い見たい行きたです特に記載のない限り、コミュニティのコンテン...

黒木和雄

黒木 和雄(くろき かずお, 1930年11月10日 - 2006年4月12日 )は、映画監督。宮崎県えびの市生まれ。宮崎県立小林中学校(旧制)、宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校、同志社大学法学部卒業。少年...

黒土三男

黒土三男(くろつち みつお、1947年(昭和22年)3月3日 - )は、日本の脚本家・映画監督。熊本県熊本市出身。目次1 経歴2 作品2.1 TVドラマ脚本2.2 映画監督・脚本3 関連項目4 外部リ...

黒い雨_(映画)

黒い雨監督今村昌平脚本今村昌平石堂淑朗原作井伏鱒二製作飯野久出演者田中好子北村和夫市原悦子三木のり平音楽武満徹撮影川又昂編集岡安肇配給東映公開日本の旗1989年5月13日1989年9月17日上映時間1...

黒い雨

テンプレート:Otheruses黒い雨(くろいあめ)とは、原子爆弾炸裂時の泥やほこり、すすなどを含んだ重油のような粘り気のある大粒の雨で、放射性降下物(フォールアウト)の一種である。主に広島市北西部を...