紅い眼鏡_/_The_Red_Spectacles

ページ名:紅い眼鏡_/_The_Red_Spectacles

『紅い眼鏡 / The Red Spectacles』(あかいめがね・ザ・レッド・スペクタクルズ)は、日本の映画である。1987年にキネカ大森でのみ公開された。それまでもっぱらアニメを手がけてきていた押井守の初実写監督映画作品である。後にケルベロス・サーガと呼ばれる押井守の作品群の第1作に当たる。

目次

概要[]

当初は、声優の千葉繁のプロモーション・ビデオを作るという話だったのだが、徐々に話が大きくなりいつの間にか映画の話になった。千葉は押井が監督を務めていたアニメ『うる星やつら』のキャラクターを演じており、製作したオムニバスプロモーションもプロデューサーの斯波重治も『うる星やつら』の音響製作会社であり、音響監督であった。

出演者は主演の千葉をはじめとして、『うる星やつら』で共演していた声優やアニメ業界関係者[1]が多く参加。千葉らのスケジュールを考慮し、撮影は土、日、月曜日の深夜を中心に行われたという。スタッフも脚本の伊藤和典など『うる星やつら』の関係者が参加し、その他には日本映画学校の学生を起用した。スタッフも出演者もノーギャラで参加し、小道具もスタッフの持ち込みという自主製作映画に近い体制で、当初1000万円を予定していた予算は、オーバーして2500万円になったものの、かなりの低予算で仕上げている。

事前のアニメ雑誌等での記事では主人公が着用する特殊強化服のプロテクトギアが前面に出されて、あたかもアクション映画であるかのようであったが、実際には迫力のあるアクションはプロローグのみ、後はその後日談と言う構成[2]、映像はほぼモノクロ、台詞中心のストーリー構成という節約に勤しんだ演出となった。さらにアニメ監督である押井守らしく、事前に絵コンテを描き、それにあわせて役者が演技する形になっている。

学生時代には映画青年で8ミリフィルムで実写の自主制作映画も作っていた押井はこれを機に実写方面にも表現の幅を広げることになった。ちなみにこの方法はアニメ・実写問わず形を変えて度々使用することになり、押井の弟子と言われる神山健治のテレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』にも引き継がれている。

音楽には川井憲次が起用された。その理由は、低予算でも多彩な音を作れるという事情であったが、以後の押井作品には欠かせない存在となる。川井が作曲したテーマ曲「The Red Spectacles」は1989年から新日本プロレスに参戦したソ連出身の格闘家のレッドブル軍団、1998年から総合格闘技イベントPRIDEに参戦したウクライナの格闘家イゴール・ボブチャンチンの入場曲に採用され、本作を見たことのないプロレスファン・格闘技ファンにもお馴染みとなっている。

ストーリー[]

かつて「地獄の番犬」と呼ばれた組織の生き残りが還ってきた。何の為に? 何を求めて? 巨大な少女の看板がある夜の街。公安の追跡、伝説の立喰師との出会い、かつての仲間の裏切り。それは一体現実なのか、夢なのか……。

キャッチコピー[]

  • 正義を行えば、世界の半分を怒らせる…。(ゆうきまさみ)

元々はアニメ『機動警察パトレイバー』で使われるはずだったがイメージが合わないと伊藤和典が判断し、押井守、ゆうきまさみに相談した結果この作品のコピーとなったという。

スタッフ[]

  • プロデューサー:斯波重治
  • 原作・脚本・監督:押井守
  • 共同脚本・助監督:伊藤和典
  • 音楽:川井憲次
  • プロテクトギアデザイン:出渕裕
  • エンブレムデザイン:高田明美
  • 製作協力:鵜之沢伸・鈴木敏夫

キャスト[]

  • 都々目紅一:千葉繁
  • 鷲尾みどり:鷲尾真知子
  • 烏部蒼一郎:田中秀幸
  • 室戸文明:玄田哲章
  • 少女:兵藤まこ
  • 撞球場の中年男:永井一郎
  • タクシーの運転手:大塚康生 (声は永井)
  • 月見の銀二:天本英世
  • ホテルのフロント:及川ヒロオ

この他にも、古川登志夫 、立木文彦 等が出演しているため、一部では「声優映画」と言われている。

主なロケ地[]

  • お台場(13号埋立地) - 紅一がヘリで逃亡するシーン。当時はほとんど何もない空き地であった。
  • 山形空港 - 山形県東根市。撮影当時「東京サミット」が開催され羽田、成田両空港の警備が厳しく撮影は不可能であった。そこで「トキワ館」ロケの際利用した山形空港が空港ロケの地になった。後部に写っている航空機は全日空の羽田-山形線で当時は高搭乗率を誇っていた。
  • キネカ大森 - エレベーターのシーン。本作が唯一公開された劇場で大森西友内にある。メインスタッフ、キャストによる舞台挨拶が行われた。現在はアジア映画専門館になっている。
  • トキワ館 - 山形県上山市にあった伊藤和典の実家の映画館。1990年代に休館、現在は閉鎖されている。
  • 新百合ヶ丘駅 - 冒頭の空港内からタクシー乗り場まで。文明が紅一を追うシーンの印象的な螺旋階段やタクシー乗り場は今でも健在だが、植え込みが育っていたり開発が進んだりしており多少印象は異なる。
  • 愛国工業工場跡 - 違法立ち食い蕎麦屋、拷問室、蒼一郎の部屋など。東京都小平市にあった。跡地はエコス小平店となっている。
  • オリエンタルホテル- 紅一が宿泊したホテル、文明配下の部隊の襲撃を受けるが撃滅。神奈川県横浜市石川町駅近くの大丸谷坂にあった。もと船員相手の「チャブ屋」とよばれた宿泊施設。「あぶない刑事」などテレビドラマの撮影にも頻繁に使用されていたが、1990年代初めに廃業。

他ケルベロス・サーガ作品との違い[]

  • 本作以外のケルベロス・サーガ各作品では、「首都圏治安警察機構」、通称「首都警」として描かれる組織が、本作でのみ「首都圏対凶悪犯罪特殊武装機動特捜班」となっている。当時はシリーズ化の予定はなく、後に設定を変更したようである(ただし、パラレルワールド的な見方も可能である)。設定上の最大の違いは、前者が国家警察(警察庁)でもなく、自治体警察(警視庁)でもない国家公安委員会直属の第三の警察力として設立されたのに対し、後者が警視庁内の一組織という点である。
  • 階級についても「首都警」では現実の警察と同様(ただし警部補から警視長までしか存在せず)なのに対し、本作で紅一らは「上級刑事」と呼ばれている。
  • プロテクトギアのデザインが本作および『ケルベロス ~StrayDog~ 地獄の番犬』と、『犬狼伝説』以降では違う。

脚注[]

  1. 漫画家のゆうきまさみ、メカニック・デザイナーの出渕裕がエキストラで参加。
  2. 肝心のプロローグと本編の間は映画『ケルベロス ~StrayDog~ 地獄の番犬』で描かれる。

fr:The Red Spectacles

Smallwikipedialogo.pngこのページには、クリエイティブ・コモンズでライセンスされたウィキペディアの記事が使用され、それをもとに編集がなされています。使用された記事は紅い眼鏡 / The Red Spectaclesにあり、その著作権者のリストはページの履歴に記録されています。


特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

龍村仁

龍村 仁(たつむら・じん、1940年-)はドキュメンタリー監督、元NHKディレクター。有限会社龍村仁事務所代表。目次1 経歴2 作品2.1 ドキュメンタリー2.2 CM2.3 その他3 参考文献4 外...

龍の牙-DRAGON_FANG-

テンプレート:統合文字『龍の牙-DRAGON FANG-』とは、2007年11月22日にDVDが発売される日本の映画。監督は久保田誠二。製作は株式会社クリエイティブ・ホールディングス。目次1 概要2 ...

龍が如く_劇場版

『龍が如く 劇場版』(りゅうがごとく げきじょうばん)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、『着信アリ』『妖怪大戦争』などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2007年3月3日から東映...

龍が如く_〜序章〜

『龍が如く 〜序章〜』(りゅうがごとく じょしょう)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、「着信アリ」「妖怪大戦争」などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2006年3月24日にDVD...

齋藤武市

齋藤 武市(さいとう ぶいち、1925年1月27日 - )は日本の映画監督。埼玉県秩父市出身。早稲田大学文学部卒。1948年、松竹大船撮影所に助監督として入社。小津安二郎に師事する。1954年、先輩の...

黛りんたろう

テンプレート:Otheruses黛 りんたろう(まゆずみ りんたろう、1953年 -)は、NHKのドラマ番組ディレクター、演出家、映画監督。目次1 来歴・人物2 手掛けたドラマ3 劇場公開作品4 著書...

黒部の太陽

テンプレート:予定黒部の太陽(くろべのたいよう)は、木本正次による小説作品、ならびにこれを原作とする日本の映画作品。1968年公開。当時、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いている。目次1 ...

黒蜥蜴

テンプレート:文学『黒蜥蜴』(くろとかげ)は小説。江戸川乱歩の代表作の一つである。宝石等の財宝を盗む女賊と名探偵明智小五郎が対決する推理小説である。初出は連載小説として雑誌『日の出』に1934年1月号...

黒田義之

黒田 義之(くろだ よしゆき、1928年3月4日 - )は、映画監督。目次1 経歴・人物2 主な監督作品(特技監督・助監督含む)3 主なテレビ監督4 主な脚本作品経歴・人物[]1928年、愛媛県松山市...

黒田秀樹

黒田 秀樹(くろだ ひでき、1958年4月30日 - )は、日本のCMディレクター、映画監督。大阪府出身。黒田秀樹事務所代表。目次1 プロフィール2 主な作品2.1 CM2.2 映画2.3 PV3 関...

黒田昌郎

黒田 昌郎(くろだ よしお、1936年 - )は日本のアニメーション演出家。東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東映動画で「狼少年ケン」、「おばけ嫌い」、「ジャングル最大の作戦」、「タイガーマスク...

黒澤明

くろさわ あきら黒澤 明ファイル:Akira Kurosawa.jpg生年月日1910年3月23日没年月日テンプレート:死亡年月日と没年齢出生地日本の旗 東京府荏原郡大井町職業映画監督家族長男・黒澤久...

黒沢清

テンプレート:Otheruses黒沢 清(くろさわ きよし、1955年7月19日 - )は、日本の映画監督、脚本家。東京藝術大学大学院映像研究科教授。兵庫県神戸市出身。六甲中学校・高等学校を経て、立教...

黒木瞳

ののっぺらぼう鏡あべこべの世界絶対ムリ行きたない怖顔合わせおうちで暗い一番怖がりとしてもお願い申し上げください一緒よろしくね↓未来おうちで暗い見たい行きたです特に記載のない限り、コミュニティのコンテン...

黒木和雄

黒木 和雄(くろき かずお, 1930年11月10日 - 2006年4月12日 )は、映画監督。宮崎県えびの市生まれ。宮崎県立小林中学校(旧制)、宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校、同志社大学法学部卒業。少年...

黒土三男

黒土三男(くろつち みつお、1947年(昭和22年)3月3日 - )は、日本の脚本家・映画監督。熊本県熊本市出身。目次1 経歴2 作品2.1 TVドラマ脚本2.2 映画監督・脚本3 関連項目4 外部リ...

黒い雨_(映画)

黒い雨監督今村昌平脚本今村昌平石堂淑朗原作井伏鱒二製作飯野久出演者田中好子北村和夫市原悦子三木のり平音楽武満徹撮影川又昂編集岡安肇配給東映公開日本の旗1989年5月13日1989年9月17日上映時間1...

黒い雨

テンプレート:Otheruses黒い雨(くろいあめ)とは、原子爆弾炸裂時の泥やほこり、すすなどを含んだ重油のような粘り気のある大粒の雨で、放射性降下物(フォールアウト)の一種である。主に広島市北西部を...