秀嶋賢人

秀嶋 賢人（ひでしま よしひと、1954年1月24日 - ）は日本の劇作家・映画監督。福岡県福岡市出身。早稲田大学文学部英文科卒。

人物[]

高校演劇コンクールで博多山笠祭の追い山を舞台にした処女作『あの河を泳ぎぬけ』で創作脚本賞を受賞したのを契機に舞台演出や戯曲づくりに取り組み始める。早稲田大学在学中に設立した「劇団回り舞台」を卒業後も続け、『世情』『流転』『時流』といった作品で、今日の社会問題に通じる昭和3部作を上演。社会の底辺で生きた娼婦や従軍慰安婦、炭鉱労働者、在日、ヤクザの姿を通じて、右傾化する社会のあり方に警鐘を鳴らした。

その後、東宝現代劇戯曲科に入所し、演劇企画室長の渡辺保や演劇評論家の藤木宏幸、演出家の増見利清らに師事する。また、俳優養成所の講師も行う。その傍ら、教育映像・CMの企画制作会社に勤務。その後、秀嶋賢人事務所を開設し、企業での役員経験や広告の経験を生かし、地域コンサルティングやマーケティングにも従事。舞台演出を生かしたイベントのプロデュースも多数行った。

法人化後、事務所をフォア・ザ・ワン・プロジェクトと改名。いのちの尊厳をテーマにプロデュースした『北京医科大学蓼科漢方センター』は中国の学術機関と地域事業体との初の合弁事業。反戦平和をテーマに沖縄・長崎・広島を結んだ『Lives Run’98―いのちといのちのバリアフリー』では広島アリーナに一万人を動員した。

イラク戦争前にはロスの反戦ラジオ放送局KPFKやニューヨークの9.11遺族会、反戦市民新聞INDEPENDENTを取材。パレスチナやアフガンで支援活動を続け、イラク戦争に反対するNPOのJVC、JENやJHP・学校をつくる会、シャンティボランティア会とも親交を結んだ。JEN代表で日経ウーマン大賞受賞の木山啓子とも交流がある。東京普門館でイラク反戦の集い『平和への祈り』をプロデュースした。

一方、教育・社会問題を考える『生きる力を育む教育シンポジウム』をプロデュース。そこで交流を持った、社会学者宮台真司、精神科医斎藤環、教育評論家尾木直樹と教育問題、人権問題をテーマとしたWEB「OUT」を立ち上げ、大人の固定した価値観の打破を提唱する。学術博士大日向雅美、文化人類学者上田紀行、作家宮崎学らとも交流がある。

10年程前から多岐に亙った活動を整理し、主に映画監督の仕事や講演シンポジウム、自身が主宰するミニシンポの勉強会「MOVE」を通じて、社会へ変革の行動を呼びかける活動を行っている。社会派といわれる作品が多く、とりわけ、人権啓発については、これまでの啓発映画にはない斬新な視点と作品性の高さで多くの支持を集めている。人権を公民権の視点から捉え直し、同和差別や在日差別など人権差別を個別に議論し、描くのではなく、人間共通の問題として広い視座から人権や差別をみつめる。格差問題によって生まれた新たな人権侵害、差別についての情報と現状分析は映像分野で屈指と言える。いじめ・不登校・引きこもりなど思春期問題や少年犯罪、精神医学にも造詣が深く、子育て支援、家庭教育についての作品も多い。

また、身体論の視点から日本の古典文化・伝統芸能を解析する。俳優の養成にこれらの古典メソッドを応用した独自のワークショップメソッドを持ち、俳優の育成・演技指導には定評がある。演出論的には、演出家鈴木忠志が開発した鈴木メソッドの強い影響がみられるが、映像の演技に活用できるようにこれを独自にアレンジしている。タレントやグラビアアイドルなどから俳優への転進を目指す新人や若手俳優からの支持も多い。定期的にワークショップ「花塾」を開催している。

その他、三島由紀夫や二・二六事件の研究をライフワークとし、愛国心や公民権、公民意識についての政治的発言も多い。思想的には能楽の世阿弥、美術家の岡倉天心や作家サミュエル・ベケット、哲学者ガストン・バシュラール、心理学者カール・グスタフ・ユング、社会学者マックス・ヴェーバーの影響がみられる。今後は、劇場公開映画の監督や出自である舞台演出の仕事にも従事することが予想される。

これまでの代表作は『あの河を泳ぎ抜け』（福岡地区高校演劇コンクール創作脚本賞）『流転』（劇団回り舞台・東芸劇場公演）『東京芸術大学100周年』（東京芸術大学）『ロスト・オブ・マインド』（宝島社）『尾崎豊eyes』（日本コダック）『見えないライン』（すかがわ国際短編映画祭招待作品）など。

秀嶋賢人の家系[]

佐賀鍋島藩の城代家老の家系。司馬遼太郎の『竜馬が行く』に登場する、日本発のアームストロング砲の開発研究者、秀島藤之助の系譜に位置する。家紋は梅。幕末の頃、鍋島藩は西洋文明の導入に進取で、鋳造のための反射炉まで保有しており、現在で言えば、国内随一のハイテク企業だった。秀島藤之助が開発したアームストロング砲開発図面はその後改良が加えられ、藤之助の死後、製造される。維新戦争では官軍の有力な武器として活用され、その勝利に大きな貢献を果たした。長崎操練所から海援隊を興した坂本竜馬は、鍋島藩の技術力に着目し、長崎操練所で知り合った藤之助にアームストロング砲の開発を示唆した。竜馬との交流があったためか、秀島本家は現在、高知に移っている。秀嶋賢人は分家の一派で、祖父の代に福岡市に移り、以来、その系譜は福岡市にある。

佐賀秀島家は分家が多く、現在も佐賀県には秀島、秀嶋の姓が多い。戦争中は、長崎操練所以来の伝統からか海軍の軍人や本来、技術系のためか陸軍航空隊などに秀島の名が残されている。日中戦争当時、中国戦線で活躍した隼の秀島航空隊は有名。また、今日でも英学の分野や医療分野、技術系に人材が多い。

佐賀鍋島藩の菩提寺は、港区麻布十番にある曹洞宗、賢宗寺。2.26事件慰霊碑の向かいには秀島家の墓があり、秀嶋賢人が2.26事件に強い関心を抱いていることと奇妙に符号する。

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