『機動警察パトレイバー the Movie』(きどうけいさつパトレイバー ザ ムービー)は、1989年7月15日に公開された日本のアニメーション映画作品。同時上映作品は「SDガンダムの逆襲」。テンプレート:ネタバレ
あらすじ[]
すべてが朱に染まる夕暮れ、篠原重工の天才プログラマー・帆場英一が、バビロンプロジェクトの要となるレイバー用海上プラットホーム「方舟」から投身自殺する。その口元に嘲りの笑みを浮かべながら…これが、すべての始まりであった。
時期を同じくして、レイバーが突如暴走する事件が多発、遂に自衛隊の試作レイバーまでが暴走事件を起こす。特車二課第1小隊は、近々正式配備される新型パトレイバー(通称「零式」)に関する研修中のため不在。単独で暴走事件の処理に追われる第2小隊の篠原遊馬巡査は、多発する暴走事件の異常性にいち早く気付いて独自に調査を始め、原因が暴走した機体すべてに搭載されていた篠原重工製の最新レイバー用OS「HOS」(Hyper Operating System)ではないかと推測する。また、同様の疑念を抱いていた第2小隊長・後藤喜一警部補は、「HOS」の主任開発者だった帆場の捜査を、本庁の松井刑事に依頼していた。
遊馬の調査の結果、「HOS」が暴走事件の原因であることが明らかとなるが、知らせを受けた警視庁上層部や政府は、有力企業である篠原重工との関係やHOSを認可した国の責任問題の隠蔽を重視し、旧OSに戻すこと(公式には「HOS」のバージョンアップと称される)で政治的決着を図ろうとする。
そしてすべての謎が解明された時、迫りくる台風に先んじて「方舟」を解体するため、第2小隊は東京湾に向けて緊急出動する。
概要[]
映画公開当時の1980年代後半は、まだパソコンの普及度が低い時代だったが、その頃から早くも「コンピュータウイルス」に着目し、映画の重要な要素として取り上げた点が高く評価されている。この種の題材を取り上げた先例としては米映画「ウォー・ゲーム」などがあるが、「トロイの木馬」型ウイルスや当時のコンピュータではまだ未熟であったGUI的なI/Fなどの先見性も高く評価されて良い。
また、オープニングの自衛隊レイバーや戦闘ヘリなどによる戦闘シーンや、後半のイングラムと零式の格闘シーンの完成度は幅広いファンを唸らせた。
本作の制作に当たっては、近未来の東京を強く演出するため下町的雰囲気の残る場所に対する綿密なロケハンが行われ、それがこの作品の名場面として常に語られる、松井刑事達が帆場の痕跡を求めて東京を巡るシーンに結実している。看板建築など近代建築史が専門の藤森照信東京大学教授から受けた影響も大きい。
その他、方舟、エホバ、帆場英一のid番号が「666」など劇中の各所に旧約聖書の要素が用いられている。
スタッフ[]
- 監督:押井守
- 演出:澤井幸次
- プロデューサー:鵜之沢伸、真木太郎、久保真
- 企画:ヘッドギア
- 原作:ヘッドギア
- 原案:ゆうきまさみ
- 脚本:伊藤和典
- 撮影監督:吉田光伸
- 美術監督:小倉宏昌
- 編集:森田編集室
- 音楽:川井憲次
- キャラクターデザイン:高田明美
- メカニックデザイン:出渕裕
- メカニックデザイン協力:河森正治、佐山善則、幡池裕行
- 音響監督:斯波重治
- 作画監督:黄瀬和哉
- イメージフォト:樋上晴彦
- 制作:スタジオディーン
- 協力者の名の中に『究極超人あ〜る』の鳥坂センパイのモデルである鳥坂(細川)司の名がある(東京都関連の資料協力)。
声の出演[]
※各登場人物の詳細は機動警察パトレイバーの項目を参照。
- 篠原遊馬:古川登志夫
- 泉野明:冨永みーな
- 後藤喜一:大林隆介
- 南雲しのぶ:榊原良子
- 香貫花クランシー:井上瑤
- 太田功:池水通洋
- 進士幹泰:二又一成
- 山崎ひろみ:郷里大輔
- シバシゲオ:千葉繁
- 榊清太郎:阪脩
- 実山:辻村真人
- 松井刑事:西村知道
- 海法部長:小島敏彦
- 福島:小川真司
- 片岡:辻谷耕史
- 林原めぐみがテレビの天気予報レポーター、政府広告ナレーション役で出演している。
- 子安武人が方舟の篠原重工スタッフ、ファミレスのウェイター役、特車2課の整備員等で出演している。
こぼれ話[]
- OVAシリーズの設定に準じ、特車二課棟の所在地は大田区城南島の架空のブロックに設定されている。
- 中盤で野明と遊馬が制服のまま飲酒飲食するレストラン「GEGE」は城南島から程近い大田区京浜島の京浜島ふ頭公園付近の模様。実際には同名のレストランはそこには無いが、「LUNATIC」というイタリアンカフェがあり、劇中と同様の景観が楽しめた(2006年現在は二子玉川に移転し、店名も「LUNATIQUE」と改められている)。二課のある城南島から原付カブに二人乗りでパトカーや人の目を盗んで来られる距離の小洒落た店というと、事実ここぐらいしか他に選択肢はなかった。
- 本作の制作に当たっては、「劇場版3つの誓い」なるものが発表された。詳細は機動警察パトレイバーの項を参照。
- プロデューサーの石川光久は押井があまりにも自分の色を出そうとするあまり制作を遅らせてしまったことに腹を立て「もうあんたとは二度とやらん」と言ったそうである。しかしその後仲直りしたらしく、石川は以降の押井アニメに欠かせないメンバーとなった。
- 作画監督の黄瀬和哉の手により、劇中キャラクターの作画はキャラクターデザインの高田明美の絵柄から遠ざかり、目を小さく描き、口元や頬の下に影を描くなど、OVAシリーズのアニメ的な絵と大きく異なる写実的なテイストが加えられた。コミック版やOVAのキャラクターを見慣れたファンからは一部拒否反応もあったが、押井が推し進めたシリアスな作品世界に適したキャラクターとして評価されたのもまた事実である。本作に続く劇場版2作目ではそうした作画の傾向がさらに推し進められ、高田も当初よりそれを考慮してデザインをあげたという。黄瀬は押井アニメに欠かせない一員となり、後に作画監督として関わった『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』、『WXIII 機動警察パトレイバー3』でも本作と同様の作画スタイルが採られている。もっとも、これらの仕事のイメージが強烈な為、これこそ黄瀬作画の神髄として語られてしまう事も多いが、本来は多彩な絵柄を描き分けられる優れたアニメーターである。
- 同時上映作品はSDガンダムのアニメ作品「SDガンダムの逆襲」。この作品には「SD戦国伝」の「自衛丸」なるキャラとしてイングラムがこっそりゲスト出演している。SD体型になったイングラムが足軽+岡引のようなコスプレをした風貌になっている。ご丁寧に1号機と2号機のバリエーションが用意されていた。なんと当時は塩ビ製フィギュアやガレージキットまで発売されている。その名が示すように、表向きはあくまでジェガンのSD戦国伝バージョンという扱いだが、予てからジェガンとイングラムは同じ出渕裕デザインということで、原作者の一員であるゆうきまさみ自ら「両者の顔つきはそっくり」とネタにするほどであり、この「自衛丸」もSDガンダムスタッフの暴走と、同時上映という事でパトレイバーファンへのサービスとして登場させたものと思われる。ちなみに、これとは別に「慈絵丸」として、よりジェガンに忠実なデザインのキャラも存在し、自衛丸たちはその従兄弟にあたるという設定になっている。
- NHKの「BSアニメ夜話」で取り上げられた時にゲスト出演した出渕裕によって、「実際の帆場暎一ははるか以前に亡くなっており、冒頭で投身自殺した帆場暎一なる人物は死んでいない」とする押井案が存在した事が語られた(押井本人が同人誌などのインタビューでも語っている)。この案は周囲の反対にあって没となったが、帆場が飛び降りるシーンは象徴的に描かれ、はっきりと死亡が確認できる場面はない(「死体は上がらなかった」という台詞がある)。なお、この幻の押井案に極めて近い犯人が、押井守の影響が強いことで有名な踊る大捜査線シリーズの交渉人真下正義に登場する。
- 本作にはイメージソングとして新旧OVA、TV版の主題歌を歌った笠原弘子による「約束の土地へ」という曲が添えられている。オリジナル音源は本作の前売りチケットマガジン(通称チケマガ)CD等に収録されているが、事前のプローモーションで使用されたのみであり、本編でこの曲が流れる事は無い。ただし、後日発売されたミュージックビデオには収録されている。同様に劇場版第二作目でもMANAによる「愛を眠らせないで」というイメージソングが作られたが、こちらもフィルム中で流れる事は無かった。さらに続く押井守監督作「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」でも樋口沙絵子が歌う「未来への約束」が制作されたが、こちらに関してもほぼ同じ扱いである。
- OVA版に引き続き川井憲次が担当した劇伴は、従来のシリーズの路線を引き継ぎつつも、本作がコンピューター犯罪をテーマとしたサスペンス劇であるという点から、打ち込みを多用したアレンジの楽曲と、パーカッションを多用したミステリアスな民族音楽的アレンジの楽曲が目立つ。作曲の際には、事前に導入されたYAMAHAのリズムマシン「RX5」の機能と音色から多くのインスピレーションを得たという。また、1998年には本作のDVDソフト化に伴なう音源の5.1chサラウンド化に際して、サウンドトラックのリメイクが行われている。これは単なるサラウンド化だけでなく、劇場公開当時はPCMシンセ等で製作されていたパートをよりクオリティの高い音色や生音に差し替えるといったブラッシュアップが図られている。だが、オリジナルの製作当時とリメイク時では川井の製作環境も当然変化しており、データの復旧やバックアップ媒体の捜索には苦心したと語っている。中には旧サントラから川井が耳コピーで音を拾って再現したものもあったという。
- 1998年の5.1chサラウンド化音声リニューアルは川井のサウンドトラックのみならず、効果音や台詞の再録音も実施されている。主要人物はもちろん、1989年録音時に端役を担当していた立木文彦や林原めぐみ、子安武人にいたるまで、ほぼ当時のままのキャストが再集結した。DVDにはこのリニューアル音声版と劇場公開当時のオリジナル音声版を同時収録している。
- リニューアル版の台詞は一部のパートで変更されている部分もある。また、オリジナル版で『シュミレーション』と発音していた個所も『シミュレーション』と修正されている。なお、このリニューアルは劇場版第二作に関しても同時に実施された。
- この映画の公開に合わせて1/60スケールのイングラムのプラモデルが「イングラム劇場版」としてバンダイから発売された。このときシリーズナンバーが1とされた。しかし造形その他に問題があったのかその後「イングラムTV版」(シリーズナンバー2)が発売した後は一切再販されておらず、バンダイの公式サイトにも記述がない(2007年現在)。このためパトレイバーのプラモデルにはシリーズナンバーが銘打たれているが、「1」の名を持つ商品がないという奇妙な現象が起きている。
- NEC PC-9801用の、HOSのオープニング画面を表示するフリーソフトウェアが存在する。
DVD[]
- 初DVD化は2004年。劇場公開版とサウンドリニューアル版の2種類の音声を収録していた。初回特典はLD大のパッケージで販売され、キャストのインタービュー記事などが同封されていた。
- その後は通常版として販売中。2と共に米国でも発売。(豪華版:89ドル99セント。通常版:29ドル99セント)
- Blu-ray/HD DVDとも2007年7月27日に国内発売された。両版ともDVDディスクが同時梱包された上で正価が1万円を超えている。
関連項目[]
外部リンク[]
- BANDAI CHANNEL 劇場版 機動警察パトレイバー
テンプレート:機動警察パトレイバー
de:Patlabor 1
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