柳町光男

ページ名:柳町光男

柳町 光男(やなぎまち みつお、1945年11月2日 - )は、日本の映画監督

  • 優れた作品を生み続け、数多くのファンを持つ、社会派映画・文芸映画の分野で日本を代表する名匠である。
  • 芸術選奨 文部大臣賞 受賞(1985年)。
  • 制作した劇映画6作品のうち、5作品を世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭・ベルリン国際映画祭・ヴェネチア国際映画祭)に出品している。
  • 東京国際映画祭では2回受賞(1992年、2005年)。

目次

来歴・人物[]

茨城県行方郡牛堀町(現在は潮来市)の出身。茨城県立水戸第一高等学校、早稲田大学法学部卒業。大学在学中から映画作家を志望しシナリオ研究所へ通う。卒業後に就職するも、1969年からフリーの助監督として映画撮影に携わる。東映教育映画部では大和屋竺に師事。1974年に自らの製作会社『群狼プロダクション』を設立し代表に就任(現在は、株式会社プロダクション群狼)。その後、当時日本で最大規模の暴走族であったブラックエンペラーを追ったドキュメンタリー映画の製作に着手。2年の製作期間を経て1976年に第1作『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』を発表した。安田生命ホール(現・明治安田生命ホール)での小規模公開から始まったが、評判を呼び、東映系で拡大ロードショー公開される。この第1作を中上健次が評価したことがきっかけとなり、『十九歳の地図』(中上健次の第69回芥川賞候補作)を映画化し、1979年に劇映画デビューすることになる。なお中上健次は、戦後生まれで初めて芥川賞を受賞した作家である。以降、『さらば愛しき大地』(1982年。根津甚八 (俳優)・秋吉久美子主演)、『火まつり』(1985年。脚本 中上健次)、『愛について、東京』(1993年) などで各方面から高い評価を受ける。1990年には当時の世界的スター、ジョン・ローンを主演に迎え日米香港合作映画『チャイナシャドー』を製作(原作は直木賞作家・西木正明の『蛇頭(スネークヘッド)』)。初となった海外との合作を成功させ中国、台湾、香港などへ積極的な関心を示している。2001年度~2003年度に、早稲田大学客員教授。このときの経験をもとにした映画が『カミュなんて知らない』である。2006年(第19回)東京国際映画祭 国際審査員。出身地である茨城県の「いばらき大使」、潮来市の「水郷いたこ大使」もつとめる。好きな映画監督は、溝口健二、ジャン=リュック・ゴダールなど。ノンフィクション作家佐野眞一、株式会社ボイジャーの萩野正昭社長は、同窓(早稲田大学)であり友人。

監督・出演作品一覧[]

監督作品

出演

  • 世界わが心の旅香港/ここを故郷とする友へ(NHK衛星第2テレビジョン(NHK・BS-2)/2000年2月5日放送)
  • 時代を越える溝口健二 (2006年)

監督・出演作品のデータ[]

  • 十九歳の地図 (1979年)
    • 製作:柳町光男、中村賢一(製作:プロダクション群狼)
    • 監督・脚本:柳町光男
    • 原作:中上健次『十九歳の地図』
    • 109分 配給:プロダクション群狼
    • 出演:本間優二、蟹江敬三、沖山秀子、山谷初男、原知佐子、西塚肇、白川和子、友部正人
  • さらば愛しき大地 (1982年)
    • 製作:柳町光男、池田哲也、池田道彦(製作:プロダクション群狼、アトリエ・ダンカン)
    • 監督・脚本:柳町光男
    • 撮影:田村正毅(たむらまさき)
    • 130分 配給:プロダクション群狼
    • 出演:根津甚八 (俳優)、秋吉久美子、山口美也子、佐々木すみ江、蟹江敬三、矢吹二朗
  • 火まつり (1985年)
    • 監督:柳町光男(製作:西武セゾングループ、シネセゾン、プロダクション群狼)
    • 脚本:中上健次
    • 音楽:武満徹
    • 撮影:田村正毅(たむらまさき)
    • 125分 配給:シネセゾン
    • 出演:北大路欣也、太地喜和子、中本良太、宮下順子、安岡力也、伊武雅刀、小鹿番、藤岡重慶、小林稔侍、菅井きん、左右田一平
  • チャイナシャドー (1990年)
    • 製作:エリオット・ルウィット、ドン・ゲスト(製作:ヘラルド、丸紅、日商岩井、サンライズ)
    • 監督:柳町光男
    • 脚本:リチャード・マックスウェル、柳町光男
    • 原作:西木正明『蛇頭(スネークヘッド)』
    • 131分 配給:日本ヘラルド映画
    • 出演:ジョン・ローン、佐藤浩市、ビビアン・ウー、サミ・デイヴィス、ローランド・ハラー三世、ジョン・ダーモット
  • 愛について、東京 (1993年)
    • 監督・脚本:柳町光男(製作:「愛について、東京」製作委員会)
    • 113分 配給:パイオニアLDC、キネマ旬報社
    • 出演:ウー・シャオトン(呉暁東)、藤岡弘、戸川純、岡坂あすか(黒沢あすか)、今井雅之、宮下順子、上田耕一、オー・ヤン
  • 旅するパオジャンフー (1995年。ドキュメンタリー)
    • 監督:柳町光男(製作:ソニー)
    • 撮影:田村正毅(たむらまさき)
    • 95分 配給:フランス映画社
  • 世界わが心の旅 香港/ここを故郷とする友へ (2000年、出演)
    • NHK衛星第2テレビジョン(NHK・BS-2)
    • 2000年2月5日放送
  • カミュなんて知らない (2005年)
    • 製作:「カミュなんて知らない」製作委員会(プロダクション群狼、ワコーBugs firm)
    • 監督・脚本:柳町光男
    • 115分 配給:ワコー、グアパ・グアポ
    • 出演:柏原収史、吉川ひなの、前田愛、中泉英雄、黒木メイサ、田口トモロヲ、玉山鉄二、阿部進之介、鈴木淳評、伊崎充則、金井勇太、たかだゆうこ、柳家小三治、本田博太郎
  • 時代を越える溝口健二 (2006年、出演)
    • ドキュメンタリー作品
    • 監督:櫻田明広
    • ナビゲーター:寺島しのぶ

作品の受賞歴など[]

  • 十九歳の地図 (1979年)
    • 1979年度キネマ旬報ベストテン 日本映画部門 第7位入賞
    • 1980年カンヌ国際映画祭 批評家週間 正式出品
    • 1979年映画芸術誌 第1位
  • さらば愛しき大地 (1982年)
    • 1982年度キネマ旬報ベストテン 日本映画部門 第2位入賞。同 主演男優賞(根津甚八 (俳優))
    • 1982年(第25回)ブルーリボン賞 (映画) 助演女優賞(山口美也子)
    • 1982年(第7回)報知映画賞 最優秀助演女優賞(山口美也子)
    • 1983年(第6回)日本アカデミー賞 優秀監督賞。同 優秀主演男優賞(根津甚八 (俳優))。同 優秀助演女優賞(秋吉久美子、山口美也子)
    • 1982年ベルリン国際映画祭 正式出品
    • カンヌ国際映画祭 ある視点部門 正式出品
  • 火まつり (1985年)
    • 1985年度キネマ旬報ベストテン 日本映画部門 第3位入賞。同 主演男優賞(北大路欣也)
    • 1986年(第9回)日本アカデミー賞 最優秀音楽賞(武満徹)。同 優秀主演男優賞(北大路欣也)
    • 1985年(第28回)ブルーリボン賞 (映画) 主演男優賞(北大路欣也)
    • 1985年(第10回)報知映画賞 最優秀主演男優賞(北大路欣也)
    • 1985年(第40回)毎日映画コンクール 日本映画優秀賞、脚本賞(中上健次)、男優主演賞(北大路欣也)
    • 1985年芸術選奨文部大臣賞
    • 1985年カンヌ国際映画祭 ある視点部門 正式出品
  • 愛について、東京 (1993年)
    • 1992年ナント3大陸映画祭 最優秀アジア映画賞。同 主演男優賞(呉暁東)
    • 1992年東京国際映画祭 審査員特別賞
    • 1993年度キネマ旬報ベストテン 日本映画部門 第7位入賞
    • 1992年ヴェネチア国際映画祭 正式出品
  • 旅するパオジャンフー (1995年。ドキュメンタリー)
    • 1995年ヴェネチア国際映画祭 イメージの窓部門 招待作品
    • 台湾金馬奨映画祭 正式招待
    • ウィーン映画祭 正式招待作品
  • カミュなんて知らない (2005年)
    • 2005年東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門 作品賞受賞
    • 2006年度キネマ旬報ベストテン 日本映画部門 第10位入賞
    • 2005年カンヌ国際映画祭 監督週間 出品
    • 2005年ニューヨーク映画祭 出品

著作など[]

  • 「創造と批評のダイナミズムを」(自主映画の作家たち<特集>) - 雑誌「シナリオ」32(12) 1976年12月
  • 「日本映画の復権に向けて」(管理の文化か自己閉塞か<特集>) - 雑誌「現代の眼」20(1) 1979年1月
  • 「『十九歳の地図』を語る=柳町光男」 - 雑誌「シネ・フロント」1979年11月号
  • 「「十九歳の地図」(柳町光男監督)」(「十九歳の地図」<特集>) - 雑誌「シナリオ」36(1) 1980年1月
  • 「公開討論・映像は状況を撃てるか!」(柳町光男、竜村仁、田原総一朗) - 雑誌「シナリオ」36(1) 1980年1月
  • 「日本映画の明日を創る人々-5-」(柳町光男、八森稔) - 雑誌「キネマ旬報」(通号798) 1980年11月15日
  • 「次回作の方途を模索する作家たち--長谷川和彦、後藤幸一、柳町光男、橋浦方人 」(新しい映画世代の作家たち-2-監督篇 映画づくりの体験と方法、田山力哉) - 雑誌「シナリオ」37(1) 1981年1月
  • 監督「さらば愛しき大地」」(撮影現場ルポ、北川れい子) - 雑誌「キネマ旬報」(通号823) 1981年11月1日
  • 「柳町光男「『さらば愛しき大地』を語る=柳町光男」 - 雑誌「シネ・フロント」(第71号)1982年
  • 「「さらば愛しき大地」(柳町光男監督)」(「さらば愛しき大地」) - 雑誌「キネマ旬報」(通号835) 1982年5月1日
  • 「"茨城はこれからもこだわり続けたい" 」(「さらば愛しき大地」、対談:柳町光男、川本三郎) - 雑誌「キネマ旬報」(通号835) 1982年5月1日
  • 「「さらば愛しき大地」(柳町光男監督)」(「さらば愛しき大地」<特集>) - 雑誌「シナリオ」38(6) 1982年6月
  • 「若手映画監督の映像観--いま最も期待されている二人の映像作家がめざすもの」(対談:柳町光男、小栗康平) - 雑誌「潮」(通号279) 1982年7月
  • 「南アジアの映画を語る…佐藤忠男/柳町光男/山谷哲夫」 - 季刊「国際交流」第33号((独立行政法人 国際交流基金、1982年10月)
  • 「おすぎVS柳町光男」雑誌「シネ・フロント」(第98号)1984年
  • 「「火まつり」<特集>」 - 「キネマ旬報」(通号910) 1985年5月15日
  • 杉浦孝昭『おすぎのシネマトーク』(シネ・フロント社、1986年。杉浦孝昭はおすぎの本名)
  • 「柳町光男監督の映画を巡って」 - 渡辺了『20世紀末シネマ読本』(青弓社、1991年4月)
  • 「日本の映画監督-6-柳町光男」(インタビュー:柳町光男、田中千世子) - 雑誌「キネマ旬報」(通号1055) 1991年4月1日
  • 柳町光男「チャイナシャドー」 - 雑誌「映画芸術」(No.360)1991年冬号
  • 「愛について、東京(撮影現場訪問)」 - 山口猛雑誌「キネマ旬報」(通号1081) 1992年5月1日
  • 「「愛について、東京」を求めて-1-柳町作品のヒーローたち その系譜を探る」 - 田中千世子雑誌「キネマ旬報」(通号1084)1992年6月15日
  • 「「愛について、東京」を求めて-2-木村威夫インタビュー」 - 木村威夫 雑誌「キネマ旬報」(通号1085) 1992年7月1日
  • 「「愛について、東京」を求めて-3-藤岡弘インタビュー」 - 藤岡弘雑誌「キネマ旬報」(通号1088) 1992年8月15日
  • 「「愛について、東京」を求めて」 - 岡坂あすか雑誌「キネマ旬報」(通号1096)1992年12月15日
  • 「6人の監督に聞く『それぞれの都市のとらえ方』」柳町光男、塚本晋也、長崎俊一、加藤哲、すずきじゅんいち市川準 - 月刊「東京人 (雑誌)」no.64(東京都文化振興会、1993年1月号)
  • 「「愛について、東京」<特集>」 - 雑誌「キネマ旬報」(通号1098) 1993年1月15日
  • 「『愛について、東京』=柳町光男、佐藤忠男」 - 雑誌「シネ・フロント」(第196号)1993年2月
  • 「日本映画に未来はあるか(映画<特集>)」(座談会) - 雑誌「群像」48(4) 1993年4月
  • 「「旅するパオジャンフー」<特集>」 - 雑誌「キネマ旬報」(通号1175) 1995年11月1日
  • 「眠りゆく地の精霊」(松岡正剛との対談) - 松岡正剛『同色対談 色っぽい人々』(淡交社、1998年2月)
  • <香港映画をめぐるの平岡正明との対談> - 平岡正明『キネマ三国志』(アートン新社、2001年4月)
  • 「テオ・アンゲロプロスを囲んで」(座談会 黒沢清、岸恵子、柳町光男、黒澤和子) - 雑誌「Invitation」2005年4月号(ぴあ株式会社 発行)
  • 「エコノミストCINEMA館 カミュなんて知らない」 - 園田恵子雑誌「週刊エコノミスト」(毎日新聞社、通号3802号)2006年1月3・10日
  • 「柳町光男監督インタビュー(作品特集「カミュなんて知らない」)」(柳町光男、大場正明) - 雑誌「キネマ旬報」(通号1447) 2006年1月下旬
  • 「掲載シナリオ 監督・柳町光男「カミュなんて知らない」」 - 雑誌「シナリオ」(通号691) 2006年2月
  • 「インタビュー 柳町光男--若者たちと殺人事件を相対化できた」(柳町光男、塩田時敏) - 雑誌「シナリオ」(通号691) 2006年2月
  • 「有名人が語る私の介護体験」柳町光男・舛添要一 - 雑誌「ダカーポ」(No.578)2006年3月1日
  • 「シンポジウム 日本における溝口」(阿部和重、井口奈己、柳町光男、山崎貴) - 蓮實重彦・山根貞男編『国際シンポジウム溝口健二 没後50年「MIZOGUCHI2006」の記録』(朝日選書822、2007年5月)
  • 「旬なひと 粋なひと映画監督 柳町光男さん」 - 茨城県の地域誌「月刊ぷらざ県央版」2008年1月号(株式会社ぷらざ茨城 発行)
  • 「特別寄稿 作家がつづる日本映画の魅力 恩田陸『カミュなんて知らない』」 - 『アエラムック2008 AERA MOVIE ニッポンの映画監督』(朝日新聞社、2008年2月)

関連項目[]

  • 佐野眞一 (ジャーナリスト・ノンフィクション作家)
  • 中上健次 (作家・批評家・詩人)
  • 西木正明 (作家)
  • ジョン・ローン (映画俳優)
  • 富田克也 (映画監督)
  • azur (株式会社ボイジャーの製作するテキスト閲覧ソフト)

外部リンク[]

  • カミュなんて知らない(2005)
  • 『カミュなんて知らない』学生宣伝部ブログ
  • 日経WAgaMaga 全5回の連載
  • 根津甚八のブログ 2006年09月25日付から映画「さらば愛しき大地」のエピソードあり
  • 『アエラムック2008 AERA MOVIE ニッポンの映画監督』(朝日新聞社、2008年2月)

fr:Mitsuo Yanagimachi

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