幻の湖

ページ名:幻の湖

『幻の湖』(まぼろしのみずうみ)は、1982年に公開された日本映画。上映時間2時間44分。

目次

概要[]

砂の器』、『八甲田山』に続く、橋本プロダクション制作作品。1982年9月11日公開。原作・脚本・監督は、橋本プロ代表の脚本家、橋本忍
ヒロイン選定においては一般オーディションが行われ、出場者1627人の中から「南條玲子」が選ばれ、女優としての本格的デビューを果たした。

「ネオ・サスペンス」と称し、ソープ嬢の愛犬の死を発端とする壮大な物語が展開される大作であったが、あまりに難解な内容のため客足が伸びず、公開からわずか一週間(二週間とも言われる)で打ち切られる事となった。その際、その年の夏休み映画だったたのきんトリオの『ハイティーン・ブギ』が急遽再上映されることとなった。この映画に続いて公開されるはずだった映画は、橋本と共に『八甲田山』を作った森谷司郎監督、高倉健主演の『海峡』である。

以降、2003年にDVD化されるまで、名画座のレイトショー等でも滅多に上映されず(東宝がフィルムを出したがらなかったためと言われる)、ビデオ化もテレビ放映もされなかったという、文字通り「幻の」作品だった。また、日本を代表する脚本家であった橋本は、この作品の失敗で映画界での信頼を失ったとされ、1986年頃に2本の映画の脚本を執筆した程度で、事実上の引退状態となった。

1995年頃から、一部の映画評論本によって取り上げられるようになり、意味深とも意味不明とも取れる内容が新世代のファンにカルトな人気を呼び、現在では『シベリア超特急』(水野晴郎監督)に並ぶ日本屈指のカルト映画として、前述のDVD化をはじめとした再評価がなされている。それと期を一にしてか、橋本自身の映画人としての活動も復活しつつある。(詳細については、橋本忍の項を参照のこと)

東宝創立50周年記念作品にして、昭和57年度文化庁芸術祭参加作品。(東宝創立50周年記念映画として公開されたのはこの作品だけではない)

ストーリー[]

テンプレート:ネタバレ雄琴のソープランド街で「お市」の源氏名で働くソープ嬢道子は、愛犬シロと琵琶湖の西岸でマラソンをするのが日課であった。そんな彼女が近頃気になっているのは、葛篭尾崎の付近を走っていると時折聞こえる、哀しげな笛の音だった。

そんなある日、道子の心の支えだった愛犬のシロが和邇浜で殺されてるのが見つかった。凶器の包丁と様々な証言をもとに犯人が東京の作曲家日夏という男だと探りあてたものの、警察は頼りにならず、怒った道子は自ら東京へと乗り込む。

かつて道子の店にソープ嬢として潜入していた米国の諜報員ローザの尽力で、日夏の住所とジョギングが趣味である事を知った道子は、得意のマラソンで日夏を「倒れるまで走らせてやる」と決意する。

復讐決行の日。道子はジョギングに出かける日夏の後をつけ、駒沢オリンピック公園に入った所で日夏を後ろから執拗に煽る。しかし都会の空気に不慣れな道子はペースを乱し、スパートをかけた日夏に逃げ去られてしまった。肉体的にも精神的にも敗北感にさいなまれ、道子は公園を彷徨う。

復讐に失敗し雄琴に帰った失意の道子を待っていたのは、知り合いの銀行員倉田からのドライブの誘い、そして求婚だった。初めて琵琶湖の東岸を旅したことで暗い情念からも解放された道子は、倉田の求婚を受け入れる。

そんな折、道子は葛篭尾崎で、かの哀しげな笛を吹いていた男に出会う。男が笛の由来として話すのは戦国時代、近江の浅井長政の妻「お市」にまつわる、哀しい物語だった。男はその哀しげな笛で、織田信長に殺され葛篭尾崎に沈められたお市の侍女「みつ」の魂を鎮めていたのだ。そして宇宙パルサーである自分は、ある目的で近く大気圏外へ飛び立つのだという。

男の話を通じ、史実の「お市」もまた、大切な人をシロのように理不尽に殺されていたのを知った道子は、ただの源氏名だったお市の存在に深く共感し、涙を流す。しかし今更どうにもならない事であった。

結婚のためソープ嬢を辞めようとしていた矢先、なんと偶然にも作曲家の日夏が雄琴の道子の店に現れた。「琵琶湖に沈んだ女の恨み節を書きに来た」と道子に気づかず軽薄に笑う日夏。いまや激しい怨念の虜となった道子は、シロを殺した凶器の包丁をやおらひっつかんで日夏を追い回す。

日夏は店の外に逃げ出し、琵琶湖のほとりで過酷なマラソン対決が始まった。シロや倉田の幻にも支えられ、日夏を追って追ってひたすら追いかけた道子は、琵琶湖大橋のたもとでとうとう日夏の足を止める事に成功した。

「勝ったわよ、シロ!」快哉を叫んだ道子が日夏に包丁を突き刺した頃、笛の男は地上からはるか上空の地球の衛星軌道にいた。男はスペースシャトルの船外に出ると、琵琶湖を見守る位置に鎮魂の笛を静止させた。琵琶湖の水が枯れ果て「幻の湖」となる遠い未来までも、笛が地上を見守ることができるように。

スタッフ[]

  • 橋本忍(原作/脚本/監督)
  • 中尾駿一郎(撮影監督)
  • 斉藤孝雄(撮影監督)
  • 岸本正広(撮影監督)
  • 芥川也寸志(音楽)
  • 村木与四郎(美術)
  • 竹中和雄(美術)
  • 中野昭慶(特撮監督)

キャスト[]

  • 南條玲子(尾坂道子(お市))
  • 隆大介(長尾正信/吉康)
  • 光田昌弘(日夏圭介)
  • 長谷川初範(倉田修)
  • かたせ梨乃(淀君)
  • デビ・カムダ(ローザ)
  • 室田日出男(矢崎)
  • 谷幹一(関口)
  • 北村和夫(大西)
  • 仲谷昇(弁護士)
  • 下条アトム(平山)
  • 星野知子(みつ)
  • 大滝秀治(藤掛三河)
  • 宮口精二(長尾吉兼)
  • 関根恵子(お市の方)
  • 北大路欣也(織田信長)

  • 菅井きん
  • 杉山とく子
  • 辻萬長
  • 西田健
  • 荒木由美子(音楽事務所の受付)
  • 中村れい子(お市の方の侍女)
  • 奥野匡 (道子の客)
  • 浜田晃
  • 木村四郎
  • 青木卓
  • 伊藤敏孝
  • 坂西良太
  • 永妻晃
  • 岩城和男

外部リンク[]

  • TOHO-AMUSEMENT-PARK


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