女吸血鬼

『女吸血鬼』（おんなきゅうけつき）は、1959年新東宝製作の恐怖映画。

ストーリー[]

科学者松村の妻・美和子（三原葉子）は、島原の乱で死んだ天草四郎時貞の末裔のため、画家竹中（天知茂）により、九州の水晶の地下城塞に拉致された。彼こそ天草四郎の家臣竹中信敬であり吸血鬼であったのだ。月の光を極度に嫌う吸血鬼の隙を見て逃げ戻った美和子だったが、東京に出現した吸血鬼に再び捕まる。松村と捜索隊は、遂に竹中のアジトに踏み込むが、美和子は蝋人形にされてしまっていた。追い詰められた吸血鬼・竹中の最後は…。

• 天知茂演じる吸血鬼の正体が天草四郎本人と記述されることが多いが誤りで、四郎の遺児勝姫に恋焦がれる家臣の竹中信敬がその正体である。

解説[]

新東宝が企画委員会を設けて発表した怪奇映画第1弾で、元々は「裸女吸血鬼」の題名で公開される予定だった。映画のモチーフが実在の人物のため、グロテスクな印象はなるべく避け、照明やメイク、美術等で怪しげな雰囲気づくりをした。特に吸血鬼に扮する天知茂のメイクは、モノクロ画面のコントラストの中で迫力十分。舞台となった水晶の城塞も奥行きの深い、中世の宮殿を思わせるムードで、これは江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」のイメージを参考にしたという美術の黒沢治安の功績である。本作を成功させた中川信夫監督と黒沢のコンビは同年、怪談映画の最高傑作「東海道四谷怪談」を撮影することになる。

本作は日本初の本格吸血鬼映画であり、迫力ある吸血鬼を演じた天知茂も本邦吸血鬼俳優第一号として認定できる。しかしこの映画にはタイトルロールになっている女性の吸血鬼は登場しない。この内容にそぐわない題名が、作品や天知の位置づけをも微妙にしてしまっている。

備考[]

この作品は、前年世界的ヒットを記録した『吸血鬼ドラキュラ 』（1958年）や戦前の『魔人ドラキュラ』（1931年）等吸血鬼映画の名作の影響を受けているが、それ以外にも欧米の古典怪奇映画の影響が散見される。竹中信敬は勝姫への追慕のあまり不死の吸血鬼となり、勝姫の子孫の女性を襲うが、この設定はミイラ映画の始祖『ミイラ再生』（1932年）に酷似している。同作で怪奇の名優ボリス・カーロフが演じた古代の高僧イムホテップは、王女を追慕して現代に甦り、王女の面影を持つ女性を襲っている。また、竹中は月光を浴びると吸血鬼の正体を表してしまうが、これは吸血鬼ではなく狼男の習性である。

スタッフ[]

• 製作－大蔵貢
• 監督－中川信夫
• 脚本－中沢信、仲津勝義
• 原作－橘外男（地底の美肉）
• 撮影－平野好美
• 音楽－井内久
• 出演
  • 天知茂
  • 和田桂之助
  • 三原葉子
  • 池内淳子

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