緯度0大作戦

ページ名:緯度0大作戦

緯度0大作戦

監督

脚本

関沢新一
テッド・シャードマン

製作

田中友幸
ドン・シャープ

出演者

ジョゼフ・コットン
宝田明
岡田真澄

音楽

伊福部昭

撮影

完倉泰一

編集

武田うめ

公開

1969年7月26日 日本の旗

上映時間

98分

製作国

日本・アメリカ

言語

日本語・英語

『緯度0大作戦』(いどゼロだいさくせん)は、1969年7月26日に公開された東宝製作の特撮映画作品。1974年12月14日には『海底大戦争 緯度0大作戦』(かいていだいせんそう いどゼロだいさくせん)と短縮・改題してリバイバル公開された。

目次

ストーリー[]

海底火山の噴火によって浮上できなくなった潜水調査員は、謎の潜水艦アルファ号に救助され、海底2万メートルの地底世界に存在する緯度0基地に迎えられた。地底世界には地上から消えたと思われていた高名な科学者がおり、人工太陽を初めとする高度な技術文明を誇っていた。だが、その別天地にも争いはあり、マッドサイエンティストのマリク博士は、アルファ号および艦長のマッケンジーを排除しようと、虎視眈々と狙っていた。別の地上の調査隊である岡田博士親子がマリク博士に捕らえられたことを知ったマッケンジーは、マリク博士の本拠地に急行する。そこには、敵艦黒鮫号に加え、マリク博士の手で改造された半獣半人の怪物たちが待ち構えていた。

作品の成立[]

本作の起源は、1940年代にNBCラジオで放送された、テッド・シャーマン原作の"Tales of Latitude Zero"である。シャーマンは1960年代から、"Tales of Latitude Zero"の映画化を試み、企画をドン=シャーププロに持ち込んで、1967年に東宝の重役であった藤本真澄が渡米した際、日米合作企画として持ちかけ実現した。当時アメリカ映画界は制作費の安い日本との合作を、予算調達に行き詰った邦画界は日米合作による低迷打開を模索していた時期であった。なお、当初ドン=シャーププロはアンバサダープロと名乗っており、初期脚本にはそちらの記名がある。

東宝では1966年にSFメカニック映画『空飛ぶ戦艦』が企画検討されたが、本作がそれに替わった。『空飛ぶ戦艦』は円谷プロの『マイティジャック』として蘇ることとなる。

当初、アメリカ側のキャストの諸費用はアンバサダー(ドン=シャープ)、日本側のキャスト及びスタッフは東宝、製作費(公称3億6千万円、実質2億9千万円)は折半として契約がまとまり、『海底大戦争 -緯度ゼロ-』の仮題で製作発表された。70ミリパナビジョン大作での案もあったが、当時日本に機材がなかったため実現しなかった。撮影中、ドン=シャープ側の資金調達が困難となり、撮影が一時中断。契約不履行でアメリカ側のキャストが帰国すると言い出したため、ドン=シャープ側が支払うべきギャランティーと製作費は全て東宝が負担することで、撮影を再開、完成させることになった。製作費の大部分はアメリカ側キャストのギャラであり、1969年製作の東宝映画では、この作品の直後に公開された戦争大作『日本海大海戦』の予算を大幅に超える結果となった。

当初、本格日米合作SF超大作として宣伝されたが、実際の公開に当たってはテレビアニメ『巨人の星』の劇場版が併映となり、子供向け映画の印象を与えてしまい、そのためか興行成績は芳しくなかった。テレビに押されて日本映画界の斜陽が加速していた当時、ドン=シャーププロ側が受け持った莫大な製作資金を全て肩代わりしたのに、大した興行成績を挙げられなかったという結果は重く、以降、東宝は日米合作映画の製作は行わないという結論をもたらした。

日本人キャストでは、「英語の話せる俳優」を中心に人選がなされ、宝田明、岡田眞澄、平田昭彦ら英語力の優れた映画俳優が起用されたほか、元宝塚でミュージカルなどの舞台で活躍していた黒木ひかるが「黒い蛾」を演じた。また、当初岡田博士役には佐々木孝丸 が予定されていたが、体調不良で降板、日系カナダ人の中村哲 に交代した。なおこの作品は円谷英二特技監督と本多猪四郎監督のコンビは今作が最後となった。

本作は近年まで映像の二次利用に関する契約書の所在が不明であったため、ビデオ・LD化されなかったが、契約書の発見に伴い2006年にDVD化された。

海外では Atragon II の題名で公開されている。

作品の変遷[]

本作は戦前のラジオドラマをベースにしており、また内容検討の際ドン=シャープ側が用意したスケッチを元にしており、従来の東宝特撮作品にないアメコミ的カラーを含んでいる。また決定台本まで4稿におよび、相当の改変を経て完成作品となった。

主な変更点は

  • 潜水艦アルファ号は原作ではオメガ号、時計会社の商標を考慮して変更
  • 敵基地ブラッドロック島はザークーム島
  • ルクレチア夫人が吸血コウモリ(原案ではゾンビコウモリ)に変身し主人公を襲う
  • 黒鮫号(原案ではシャーク号)艦長黒い蛾(女性)は原案ではハルトゲ(男性でルクレチア夫人と通じる)、黒木ひかるのキャスティングが決まり変更
  • 緯度ゼロの描写で、ホットタブパーティ(男女とも全裸)で科学講義を行なう場面があったが削除。本多監督曰く「あの時代では早すぎた」との事
  • グリフォンと主人公達の肉弾戦が、実物大ぬいぐるみを必要とするため削除

などであるが、最大の変更点は、難解と評されるエンディングであった。テンプレート:ネタバレ当初、ロートン記者が救出されたのは50年後で、最期にマッケンジー艦長本人がロートンに「緯度ゼロの1日は地上の50年に相当する」と説明する。緯度ゼロ住民の長寿もそこにあることがわかる。

その後、完成作品と同様な日本版エンディングと、別のアメリカ版エンディングの製作が検討された。ロートン救出後彼は新聞記者の前で緯度ゼロの写真をスライドで紹介しようとするが何も写っていない。呆れた記者たちが去った後マッケンジー艦長本人が残り、スライドを再び映すと緯度ゼロの風景が写っていた、というもの。

これらは緯度ゼロの物語が夢であったか、現実であったかを漠然とさせ観客を混乱させる意図によるものであったが、より観客にインパクトを与えるため、田代博士やマリクの瓜二つまで登場する完成作品に落ち着いたと思われる。監督意図では「緯度ゼロはパラレルワールド」だそうである。

登場怪獣[]

グリフォン[]

  • 体長:30メートル

マリクがライオンのボディにコンドルの翼と黒い蛾の脳を移植し巨大化血清によりあっという間に30mに成長した。

コウモリ人間[]

マリクがコウモリと人間を合体させて造り上げたもの。(後に着ぐるみは『行け!ゴッドマン』のバットマンに流用される)

大ネズミ[]

マリクが造り上げたもので、その名のとおり巨大なネズミ。劇中では5頭登場。

キャスト[]

  • クレイグ・マッケンジー(α号艦長):ジョゼフ・コットン(日本語吹替え:納谷悟朗)
  • 田代健(物理海洋学博士):宝田明
  • ジュール・マッソン(地質学博士):岡田真澄
  • ペリー・ロートン(記者):リチャード・ジェッケル(声:村越伊知郎)
  • アン・バートン(α号の医師):リンダ・ヘインズ(声:平井道子)
  • 岡田博士:中村哲
  • 岡田鶴子:中山麻理
  • 姿博士(緯度0の医師):平田昭彦
  • 甲保(α号乗組員):大前均
  • マリク(科学者):シーザー・ロメロ(声:富田耕生)
  • ルクレチア(マリクの情婦):パトリシア・メディナ(声:翠準子)
  • 黒い蛾(黒鮫号艦長):黒木ひかる
  • 陳(黒鮫号乗組員):黒部進
  • グリフォン、大ネズミ、コウモリ人間:中島春雄
  • ワレン:関田裕

DVDソフト[]

  • 緯度0大作戦 TDV-16115D
  • 緯度0大作戦 コレクターズBOX TDV-16116D

参考文献[]

  • 「MONSTRUM第二号 緯度0大作戦 −その成立と作品像−」
このページには、クリエイティブ・コモンズでライセンスされたウィキペディアの記事が使用され、それをもとに編集がなされています。使用された記事は緯度0大作戦にあり、その著作権者のリストはページの履歴に記録されています。


特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

龍村仁

龍村 仁(たつむら・じん、1940年-)はドキュメンタリー監督、元NHKディレクター。有限会社龍村仁事務所代表。目次1 経歴2 作品2.1 ドキュメンタリー2.2 CM2.3 その他3 参考文献4 外...

龍の牙-DRAGON_FANG-

テンプレート:統合文字『龍の牙-DRAGON FANG-』とは、2007年11月22日にDVDが発売される日本の映画。監督は久保田誠二。製作は株式会社クリエイティブ・ホールディングス。目次1 概要2 ...

龍が如く_劇場版

『龍が如く 劇場版』(りゅうがごとく げきじょうばん)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、『着信アリ』『妖怪大戦争』などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2007年3月3日から東映...

龍が如く_〜序章〜

『龍が如く 〜序章〜』(りゅうがごとく じょしょう)は、PS2のゲームソフト「龍が如く」を、「着信アリ」「妖怪大戦争」などを手掛けた映画監督の三池崇史が実写映像化した作品。2006年3月24日にDVD...

齋藤武市

齋藤 武市(さいとう ぶいち、1925年1月27日 - )は日本の映画監督。埼玉県秩父市出身。早稲田大学文学部卒。1948年、松竹大船撮影所に助監督として入社。小津安二郎に師事する。1954年、先輩の...

黛りんたろう

テンプレート:Otheruses黛 りんたろう(まゆずみ りんたろう、1953年 -)は、NHKのドラマ番組ディレクター、演出家、映画監督。目次1 来歴・人物2 手掛けたドラマ3 劇場公開作品4 著書...

黒部の太陽

テンプレート:予定黒部の太陽(くろべのたいよう)は、木本正次による小説作品、ならびにこれを原作とする日本の映画作品。1968年公開。当時、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いている。目次1 ...

黒蜥蜴

テンプレート:文学『黒蜥蜴』(くろとかげ)は小説。江戸川乱歩の代表作の一つである。宝石等の財宝を盗む女賊と名探偵明智小五郎が対決する推理小説である。初出は連載小説として雑誌『日の出』に1934年1月号...

黒田義之

黒田 義之(くろだ よしゆき、1928年3月4日 - )は、映画監督。目次1 経歴・人物2 主な監督作品(特技監督・助監督含む)3 主なテレビ監督4 主な脚本作品経歴・人物[]1928年、愛媛県松山市...

黒田秀樹

黒田 秀樹(くろだ ひでき、1958年4月30日 - )は、日本のCMディレクター、映画監督。大阪府出身。黒田秀樹事務所代表。目次1 プロフィール2 主な作品2.1 CM2.2 映画2.3 PV3 関...

黒田昌郎

黒田 昌郎(くろだ よしお、1936年 - )は日本のアニメーション演出家。東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東映動画で「狼少年ケン」、「おばけ嫌い」、「ジャングル最大の作戦」、「タイガーマスク...

黒澤明

くろさわ あきら黒澤 明ファイル:Akira Kurosawa.jpg生年月日1910年3月23日没年月日テンプレート:死亡年月日と没年齢出生地日本の旗 東京府荏原郡大井町職業映画監督家族長男・黒澤久...

黒沢清

テンプレート:Otheruses黒沢 清(くろさわ きよし、1955年7月19日 - )は、日本の映画監督、脚本家。東京藝術大学大学院映像研究科教授。兵庫県神戸市出身。六甲中学校・高等学校を経て、立教...

黒木瞳

ののっぺらぼう鏡あべこべの世界絶対ムリ行きたない怖顔合わせおうちで暗い一番怖がりとしてもお願い申し上げください一緒よろしくね↓未来おうちで暗い見たい行きたです特に記載のない限り、コミュニティのコンテン...

黒木和雄

黒木 和雄(くろき かずお, 1930年11月10日 - 2006年4月12日 )は、映画監督。宮崎県えびの市生まれ。宮崎県立小林中学校(旧制)、宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校、同志社大学法学部卒業。少年...

黒土三男

黒土三男(くろつち みつお、1947年(昭和22年)3月3日 - )は、日本の脚本家・映画監督。熊本県熊本市出身。目次1 経歴2 作品2.1 TVドラマ脚本2.2 映画監督・脚本3 関連項目4 外部リ...

黒い雨_(映画)

黒い雨監督今村昌平脚本今村昌平石堂淑朗原作井伏鱒二製作飯野久出演者田中好子北村和夫市原悦子三木のり平音楽武満徹撮影川又昂編集岡安肇配給東映公開日本の旗1989年5月13日1989年9月17日上映時間1...

黒い雨

テンプレート:Otheruses黒い雨(くろいあめ)とは、原子爆弾炸裂時の泥やほこり、すすなどを含んだ重油のような粘り気のある大粒の雨で、放射性降下物(フォールアウト)の一種である。主に広島市北西部を...