森達也

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森 達也(もり たつや、1956年5月10日 - )は、日本のドキュメンタリー映画監督、テレビ・ドキュメンタリー・ディレクター、ノンフィクション作家。

目次

人物[]

広島県呉市出身。新潟県立新潟高等学校、立教大学法学部卒業。大学在学中は黒沢清らのパロディアス・ユニティーに俳優として参画。卒業後は自主製作映画、演劇活動を経て、1986年テレビ番組制作会社に入社。後にフリーとなる。

テレビ製作会社時代、「テレビでは放映できない」「テレビ的には存在しないことになっている素材」に、興味を抱き、1992年に、小人プロレスのテレビドキュメント作品「ミゼットプロレス伝説~小さな巨人たち~」をプロデューサーとして企画する。(ディレクターは、後に『こどもの時間』で映画デビューする野中真理子。)

1997年、マスコミのオウム真理教に対する一方的な報道に疑問を抱き、教団の荒木浩広報部長を中心に信者達の日常を追うドキュメンタリー映画、『A』を自主制作で発表。2001年には続編『A2』を発表。それまでにない角度からオウムの実像に迫り、大きな話題となる。

一方、TVでは、フジテレビ深夜の「NONFIX」枠で、『職業欄はエスパー』(1998年)、『1999年のよだかの星』(1999年)、『「放送禁止歌」~歌っているのは誰?規制しているのは誰?~』(1999年)と、のちに伝説化するような、「視聴者自身が、無思考に安住していることを、追求する」刺激的な題材のドキュメンタリー作品を続けて制作。

また製作した代表的な作品については、その内容および内幕を書籍化している。

森が撮りたい題材が刺激的すぎるため、近年は、ドキュメンタリーを撮る機会が減り、メディアや社会問題についての論客となっている。一般的には左翼と評されることもあるが、『言論統制列島』では「僕は、思想・信条から自由でありたいというか、むしろ特定の思想・信条やイズムにどうしても埋没できない。だからね、左でも右でも、まあ、どっちでもいい」(10頁)と発言している。

代表作に映画『A』『A2』、TVドキュメンタリー『放送禁止歌』、書籍『下山事件(シモヤマ・ケース)』がある。映画美学校の講師も務める。

「日本人全体が一人で考えない」ことに危機感を感じているといい、常識とされる事項について個々が疑ってみるべきと主張している。2004年にはおんな組いのちに加入し平会員としての活動を開始。

森の著作『下山事件』と柴田哲孝著『下山事件―最後の証言』の記述内容の乖離、最近ではいわゆる“右翼の圧力による『靖国 YASUKUNI』上映中止問題”の既成事実化を各媒体で煽情する役割を担っていて、森の表現者としての信憑性が揺らいでいるのもまた事実である。

業績等[]

1998年、映画『A』がベルリン国際映画祭に正式招待される。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭にプレミア出品され、市民賞・審査員賞受賞。

『A』によるオウム真理教へのひと味異なる密着取材、超能力者、放送禁止歌謡への取材など、独自の切り口などについて高い評価を受けている。

エピソード[]

  • 立教大学時代は映画に熱中し映画サークルに所属。当時の立教は黒沢清万田邦敏周防正行らがいて自主映画が盛んだった。また本格的に俳優を志して文学座を受けるが不合格となり、青俳の研究生となるも在学中に青俳は倒産。その後は大学の映画サークルや小劇団で芝居を続け、黒沢や石井聰亙の映画にも出演した。
  • 映画作りのため京都から出てきた林海象とアパートが同じで、林からデビュー映画の出演を要請され主役の予定だったが、クランクイン直前に飼ってた猫に引っ掻かれ、傷が元で足が腫れて入院。代役に佐野史郎が起用され映画は完成。作品『夢みるように眠りたい』は大ヒット。林や佐野の出世作となった。自分には演技の才能はないと思っていたところへ、その上、運までないかと思った森は俳優の道は諦めた。なお映画撮影中に森も回復したため、警察官役として1シーン出演している。入院中の看護に当たってくれた看護婦と結婚。その後は不動産屋、商社など転職を繰り返した(ボクらの時代、フジテレビ、2007年6月10日他)。
  • 2004年に発表したノンフィクション「下山事件(シモヤマケース)」の中で、ある人物が、事件に関わる自動車の車種など著者である森に詳細に語る部分が記されていた。2005年07月、森の著作の中で「彼」と匿名で登場する取材協力者であった柴田哲孝が、『下山事件最後の証言』(祥伝社)を実名で発表。書中で森の書いた証言部分は事実ではないと指摘した。森は2006年の『下山事件』の文庫化に際し「付記」の中で、「こんな場合、おおむね語られた人よりも語った人の記憶のほうが正しい」「つまり僕は圧倒的に分が悪い」「この本に記したように柴田から聞いた記憶があるけれど、それは糺されねばならないだろう」(文庫400-401P)と、ほぼ柴田の指摘を認め、あくまでもミスに過ぎず、意図的な捏造ではないとも述べ、記憶通りに書いたことを理由に、本文自体は変更せず「謝罪はしない。なぜなら自分が間違ったことをしたとは思っていない」と述べた。文庫所収の佐野眞一の解説は、初出のPR誌「波」では、「その顛末に関しては、冒頭でも述べたように、著者自らがこれ以上ない正直さで明らかにしているので、もう問わない」と記していたが、文庫本収録時には「それについては、この本の著者がおそらく一番気にしていることなので、もう問わない」と改められている。

映像作品[]

劇場映画[]

  • A(1997年)
  • アングラ刑事(最も危険な刑事まつり、2003年)
  • A2(2001年)

TVドキュメンタリー[]

  • ミゼットプロレス伝説 〜小さな巨人たち〜(1992年)
  • ステージ・ドア(1995年)
  • 教壇が消えた日(1997年)
  • 職業欄はエスパー(1998年)
  • 放送禁止歌 〜歌っているのは誰? 規制しているのは誰?〜(1999年)
  • 1999年のよだかの星(1999年)
  • ドキュメンタリーは嘘をつく(2006年)

映画出演[]

  • しがらみ学園(1980年)黒沢清監督
  • シャッフル(1981年)石井聰亙監督
  • 神田川淫乱戦争(1983年)黒沢清監督
  • ネットシネマ『探偵事務所5』(2006年)林海象監督
    • 第7話「5のおこり」(出演:宍戸錠、森達也)

ラジオ[]

  • TOKYO FM Heart Sharing 森の朝ごはん
    • 毎週日曜日 AM6:00〜(2007年1月現在)
    • ポッドキャスト http://reco.jfn.co.jp/podcasts/tokyo/mori/

著書[]

単著[]

  • 『A』撮影日誌―オウム施設で過ごした13カ月 - 現代書館、2000年6月 ISBN 4768476872
  • 放送禁止歌
    • 解放出版社、2000年7月 ISBN 4759254102
    • 知恵の森文庫、2003年6月6日 ISBN 4334782256
  • スプーン―超能力者の日常と憂鬱 - 飛鳥新社、2001年3月 ISBN 4870314509
    • 改題『職業欄はエスパー』 - 角川書店、2002年9月 ISBN 4043625022
  • A―マスコミが報道しなかったオウムの素顔 - 角川書店、2002年1月 ISBN 4043625014
  • 世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい - 晶文社、2003年4月 ISBN 4794965672
  • ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー - 角川書店、2003年8月1日 ISBN 4048838288
    • 改題『クォン・デ―もう一人のラストエンペラー』 - 角川文庫、2007年7月 ISBN 4043625049
  • 池袋シネマ青春譜 - 柏書房、2004年3月 ISBN 4760124969
  • 下山事件
    • 新潮社、2004年2月18日 ISBN 4104662011
    • 新潮文庫、2006年10月 ISBN 4101300712
  • 世界が完全に思考停止する前に
    • 角川書店、2004年11月 ISBN 4048839004
    • 角川文庫、2006年7月 ISBN 4043625030
  • いのちの食べかた - 理論社、2004年12月 ISBN 465207803X
  • ドキュメンタリーは嘘をつく - 草思社、2005年3月 ISBN 4794213891
  • こころをさなき世界のために 親鸞から学ぶ 地球幼年期のメソッド - 洋泉社、2005年4月 ISBN 4896919092
  • 悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 - 岩波書店、2005年11月 ISBN 4004309824
  • 送還日記 映画送還日記公式パンフレット - リトルモア、2005年2月23日 ISBN 489815171X
  • 世界を信じるためのメソッド ぼくらの時代のメディア・リテラシー - 理論社、2006年12月 ISBN 4652078218
  • 東京番外地 - 新潮社、2006年11月16日 ISBN 410466202X
  • 日本国憲法 - 太田出版、2007年1月17日 ISBN 4778310357
  • 王様は裸だと言った子供はその後どうなったか - 集英社、2007年8月 ISBN 4087204057
  • ぼくの歌・みんなの歌 - 講談社、2007年10月26日 ISBN 4062141949
  • 死刑 人は人を殺せる でも人は、人を救いたいとも思う - 朝日出版社、2008年1月10日 ISBN 4255004129
  • 視点をずらす思考術 - 講談社、2008年月2月21日 ISBN 4062879301

共著[]

  • (安岡卓治)『A2』 - 現代書館、2002年3月 ISBN 4768476821
  • (河野義行・下村健一・林直哉・磯貝陽悟)『報道は何を学んだのか―松本サリン事件以後のメディアと世論』 - 岩波書店、2004年10月 ISBN 4000093363
  • (姜尚中)『戦争の世紀を超えて―その場所で語られるべき戦争の記憶がある』 - 講談社、2004年11月 ISBN 4062126699
  • (鈴木邦男・斎藤貴男)『言論統制列島―誰もいわなかった右翼と左翼』 - 講談社、2005年6月28日 ISBN 4062129779
  • (森巣博)『ご臨終メディア―質問しないマスコミと一人で考えない日本人』 - 集英社、2005年10月 ISBN 408720314X
  • (宮台真司・江川達也・イ・ヒョンソク・中森明夫・宮崎哲弥・松田政男)『サブカル「真」論』 - ウェイツ出版、2005年9月 ISBN 4901391666
  • (代島治彦)『森達也の夜の映画学校』 - 現代書館、2006年4月 ISBN 4768476775
  • (斎藤貴男)『日本人と戦争責任―元戦艦武蔵乗組員の「遺書」を読んで考える』 - 高文研、2007年4月 ISBN 4874983790

対談集[]

  • 世界と僕たちの、未来のために 森達也対談集 - 作品社、2006年1月 ISBN 4861820669
  • 豊かで複雑な、僕たちのこの世界 森達也対談集 - 作品社、2007年8月29日 ISBN 4861821436

関連項目[]

  • 是枝裕和
  • 原一男
  • デーブ・スペクター
  • 重松清
  • 斎藤美奈子
  • リトル・フランキー -「ミゼットプロレス伝説」に出演。2002年死去。
  • ミスター・ブッタマン -「ミゼットプロレス伝説」に出演
  • NONFIX
  • 村上賢司 
  • 秋山眞人-「職業欄はエスパー」に出演
  • 堤祐司-「職業欄はエスパー」に出演
  • 清田益章-「職業欄はエスパー」に出演
  • アニマルライツセンター - 「1999年のよだかの星」にメンバーが出演
  • 放送禁止
  • 石橋春海
  • とうじ魔とうじ-「放送禁止歌」に出演
  • 幻の名盤解放同盟 -「放送禁止歌」に出演
  • 高田渡 -「放送禁止歌」に出演
  • なぎら健壱 -「放送禁止歌」に出演
  • 山平和彦 -「放送禁止歌」に出演
  • 朴保 -「放送禁止歌」に出演。日本人名で歌手デビューしたが、韓国人名を名乗ると主張して会社に拒否され、インディーズで活動。
  • 岡林信康 -「放送禁止歌」のエンディングで岡林の「手紙」が流れた。
  • 荒木浩 - オウム真理教(現アーレフ)の広報担当者
  • 安岡卓冶 - 『A』『A2』のプロデューサー

外部リンク[]

  • 公式サイト
  • インタビュー「僕がドキュメンタリーに惹かれる理由」
  • 魂の仕事人(BIGLOBE仕事)

ru:Мори, Тацуя

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