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テンプレート:文学『明日の記憶』(あしたのきおく)は、荻原浩の小説。及び、それを基にした日本映画。
テンプレート:ネタバレ家庭も省みず仕事に生きる49歳、広告代理店のやり手営業マン、佐伯雅行。仕事においては大きなクライアントとの契約が決まり、プライベートにおいては娘の結婚が決まる、と順風満帆に見えた彼を突如、物忘れが激しくなる、めまい、幻覚といった不可解な体調不良が襲う。
妻・枝実子に促され、しぶしぶ忙しい仕事の合間を縫って病院を訪れ診察を受けた結果、医師から若年性アルツハイマー病という診断を下される。知らないうちに自分の体内で起こっていた受け止めがたい現実に直面した彼は、錯乱し自暴自棄になり、病院の屋上から飛び降りようとするが、医師の必死の説得により何とか思いとどまる。そして屋上から階下へ戻る階段の途中で座り込み、枝実子と話し合い、二人は涙を流しながらも病気と向き合う覚悟を決める。
テンプレート:SpoilerH病気のことを会社に隠しながら何枚ものメモを片手に仕事をやりこなそうとする雅行だが、病気の症状のせいでミスを繰り返してしまう。ついには部下の告げ口により病気のことが上司に露見し退職を勧められるが、娘が嫁にいくまでは働く父親でいたいという思いから、部長の職を解かれ資料管理課課長代理という閑職に追いやられながらも会社に残るという選択をする。雅行が最後に携わったクライアントの宣伝課長に激励されるものの進行する病気の症状にはどうしようもなく、娘の結婚式が無事終わった後、退職の日を迎え、かつての同僚や部下たちに温かく送り出される。
翌月、50歳の誕生日を過ぎた頃、娘に子供が生まれ祖父となった雅行は、同級生の喜美子のつてで陶芸ギャラリーでの接客の仕事に就いた枝実子と共に退職後の療養生活を始める。仕事が板についてきた枝実子が忙しそうに働く一方、雅行は、枝実子が書き家の中のいたるところに貼り付けた数々のメモを頼りに、家の掃除をしたり、散歩をしたり、アルツハイマー病と診断された後に通い始めた陶芸教室に通ったりしながら暮らしていく。日が経つにつれ症状はゆっくり進行し、歯磨きの仕方を忘れたり、突然会社に行くと言い出したりするようになるものの平安な日々が続く。
2年以上の月日が流れ、枝実子は喜美子から新規のギャラリーの店長を打診されそれを引き受け、また、喜美子が好意で見つけてくれたアルツハイマー病患者専門の介護施設のパンフレットを受け取る。雅行の症状はさらに進行し、枝実子がたまたま遅く帰ってきたというだけで浮気を疑ったり、突然これ以上自分のことで迷惑をかけられないと離婚を言い出たりするようになっていた。
そんなある日、陶芸教室で先生の勘違い(あるいは、雅行の記憶障害を利用した二重請求)から焼成代をよけいに払わされそうになることが引き金になり、雅行は仕事で疲れて帰ってきた枝実子に対し健常者への嫉妬心をぶつけるなど普段より激しく絡む。それを受け、枝実子もそれまで募らせてきた感情を爆発させる。雅行はなおも納まらず、陶器の皿で枝美子の頭を殴ってしまう。枝実子の頭から流れる血を見た雅行は自分に対する嫌悪や自責の念に駆られ、枝美子の慰めの言葉も聞くことができず、さらに錯乱してしまう。
これ以上迷惑をかけられないと感じた雅行は、以前たまたま家で見つけた介護施設のパンフレットを頼りに、独りで電車を乗り継ぎながら施設へ向かう。施設を気に入った雅行は、そこで余生を過ごすことを決意する。
ふと気付くと、電車でとある田舎の駅にいた雅行。なぜか見覚えのある森の中を進んでいき、さらに、幻覚で現れた若き日の枝実子にいざなわれて着いた先は古びた作業場。そこは結婚前に陶芸を習いに行った場所であり、また、妻にプロポーズをした思い出の場所だった。そこでかつて世話になった師匠と再会し、陶芸教室で作り作業場まで持ってきた湯飲みの形をした粘土を焼き上げながら師匠と二人で火を囲んで酒を飲む。
朝になり、その場で眠ってしまっていた雅行が目を覚ますと、師匠の姿はどこにもない。まるで幻想のような出来事に戸惑いつつも灰の中から焼き上がったカップを取り出し、手に持ち、昨日来た道を引き返していく雅行。ふと見ると前方に枝実子が立ち止まっているが、その横を通り過ぎようとする。枝実子に呼び止められるものの、雅行は目の前に立っている女性が枝実子だとわからない。見知らぬ女性から声をかけられたことを不思議に思いつつ、駅まで一緒に行きませんか、と枝実子に声をかける。ついに自分のことまでも忘れられてしまったことに動揺しながらも駅へ一緒に向かうことにした枝実子。歩きながらなおも雅行は枝実子に名前を問う。名前を答え、忘れられてしまったことを確信した枝実子は立ち止まり泣き出すが、すぐに気を取り直し、改めて覚悟をし直したかのように、何も事態が飲み込めていない雅行と共に帰り道を歩き出す。雅行が前日作業場で焼き、今は手に持っている湯飲みには「えみこ」と刻まれていた。テンプレート:SpoilerF
2006年9月11日、TBSラジオと毎日放送で放送。
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