ウルトラマンタロウ(内山まもる・小学五年生版)

ページ名:ウルトラマンタロウ_内山まもる_小学五年生版_

登録日:2022/05/21 Sat 21:40:35
更新日:2024/06/18 Tue 13:52:19NEW!
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本項では、円谷プロの特撮番組『ウルトラマンタロウ』の、「小学五年生」誌にて連載された内山まもるによるコミカライズ版を紹介する。



概要

ウルトラシリーズにおけるコミカライズ執筆のパイオニアとして知られる故・内山まもる氏が、
『タロウ』放送当時に小学館の「小学五年生」誌で1973年4月号から1974年3月号にかけて連載した作品。全12話。
内山氏は他にも同社の「小学二年生」において同じく『タロウ』のコミカライズを同時連載しており、
そちらは2005年に小学館のコンビニコミック、2011年に復刊ドットコムから全話収録した単行本が刊行されているのだが、
この「小五」連載版はまとまった単行本収録に恵まれず、長らく『ザ・ウルトラマン』として纏められた作品群に一部エピソードが「小二」連載版と混在して含まれるのみであった。


理由を挙げるとすれば、やはり「話の筋が陰鬱かつハード」「終盤になるにつれウルトラマンタロウや怪獣はおろか東光太郎すら全く出番が無くなる」という点だろうか。
そもそもこの漫画の主役は、侵略者「インベーダー」に父親を殺害され、自身もその身を狙われることとなった少年タケルであり、
東光太郎/ウルトラマンタロウはヒーローでありながら主人公という訳ではなく、彼を手助けするポジションに留まり続けている。
『ザ・ウルトラマン』に編入された初期のエピソード(第1・3・4話)は比較的内容が明るめで、タロウの活躍もそこそこ尺が割かれているものの、
第5話以降は一気に話の筋が暗くなり、敵であるインベーダーや彼ら配下の怪獣達のやり口も残虐かつ陰湿なものへと傾倒してゆく。
そして、話が終盤に差し掛かる第9話を境目に、東光太郎は事実上物語からフェードアウト、タロウも最終話になるまで出番が無くなってしまう。
敵も巨大怪獣の類は一切登場しなくなり、時にはメインヴィランのインベーダーすら全く出てこない話まで挟まれるようになる。


こうしたウルトラシリーズである必然性すらあるか疑問符を感じるようなハード路線が、当時の読者層にどれだけ支持されたかは今となっては不明瞭だが、
連載最終話は扉絵を含めて僅か4ページ、タケルに呼び出されたタロウによってインベーダーがあっさり全滅という非常に駆け足な展開となってしまっている。


そんなこんなで一部エピソードを除き「幻の作品」とも言える扱いに近い状況だった本作だが、
著者没後11年経った2022年5月20日に小学館より刊行された書籍『ザ・ウルトラマン 単行本初収録&傑作選』上巻に、当時連載された全エピソードの収録が叶った。



あらすじ

宇宙からの侵略者「インベーダー」は自身らの存在を察知した大堀博士を、地球侵略の邪魔になる障害として暗殺し、
その魔の手を研究データを引き継いだ息子のタケルにも伸ばそうとしていた。
インベーダーからの逃避行の最中、タケルはたまたま助けてくれた青年・東光太郎に、自身の身に降りかかった災難と、インベーダーの存在のあらましを伝えるが、
光太郎に打ちのめされたインベーダーが呼び出した怪獣アストロモンスの襲撃で、光太郎は致命傷を負ってしまう。
しかし、タケルを助けたその姿を見たウルトラの母*1によって光太郎はウルトラ6番目の弟の生命を与えられ、ウルトラマンタロウへと変身。
圧倒的な力でアストロモンスを撃退したタロウは、タケルに自身を呼び出す事の出来るテレパシー能力を与える。


父を殺したインベーダーの野望を追うタケル、彼を陰ながら支える光太郎、そして彼らを狙うインベーダー。タケルの逃避行の行方は……。



登場人物

  • 大堀タケル

本漫画の事実上の主人公。小学五年生程度の少年。
侵略者「インベーダー」の存在を察知していた父を暗殺され、その研究データを持ってインベーダーを追いつつ、自身も狙われる逃避行を送っている。
その最中、たまたま助けてくれた東光太郎と知り合い、彼がウルトラマンタロウの力を得て、自身とテレパシーで繋がってからは度々助けてもらうなど信頼関係を築くが、
当の光太郎がタロウである事は作中で終ぞ気付くことは無かった。


性格は初期こそ年相応の快活な少年らしい明るさを見せていたが、インベーダーのやり口が徐々に陰湿化していくにつれ、影を帯びたものへと変わってゆき、
親類を殺害したインベーダーであっても傷つける事を躊躇する心の甘さも垣間見えていたものの、それでもなお犠牲者を増やし続けるインベーダーに立ち向かうため、
光太郎から託された一丁の銃*2でインベーダーを葛藤の末に射殺して以降は、少なからずささくれ立った性格になってしまった。
なお、当のインベーダーの研究データの存在はいつの間にか作中からフェードアウトし、タケルはインベーダーに銃一丁で単身戦う羽目に陥ってしまう。


本漫画では副主人公的存在。
逃避行を続けるタケルをたまたま助けたところ、彼の口からインベーダーの存在を知り、その巻き添えとなって怪獣アストロモンスに重傷を負わされたが、
光の国よりウルトラマンタロウの力を得て復活、以降はテレパシーでタケルと繋がり、彼のピンチに際して度々タロウとして怪獣に敢然と立ち向かう。
この漫画でもZATに所属しており、第3話以降の出番では隊員服を着用するようになる。
タケルの事を弟の様に想っており大切にする一方、インベーダーに手をかける事を躊躇する心の優しさには若干否定的な見解を抱いているようで、
第9話ではインベーダーの誘いに罠と知りながらも赴こうとするタケルにZATから持ち出した銃一丁を手渡し、「やつらは決して人間ではない」とインベーダーを撃つ事を促した。
……そして同話を最後に東光太郎としては作中からフェードアウトし、以降は最終回でウルトラマンタロウとして登場するまで出番が一切無くなってしまう。


本作におけるヒーロー的存在であるが、タケルを知り合った家族から離れるよう促した結果その一家がインベーダーの怪獣に皆殺しにされる結果となったり、
苦渋の決断だったとはいえ怪獣に攫われた少年を助ける一か八かの賭けに失敗してしまったりと、若干迂闊な面も目立つ。
石川版じゃあるまいし「はよタケルをZATに保護してもらえ」と思ってた当時の読者は決して少なくなかったのではなかろうか


  • クロ

名前の通り黒い犬で、第5話から登場。
元々はタケルが逃避行の途中で知り合った一家の飼い犬だったが、インベーダーが操る怪獣シェルターに一家を皆殺しにされてしまい、独りぼっちの身に。
その後、第10話で再登場し、タケルと合流。彼の元に身を寄せるが、続く第11話でインベーダーの女性の正体を嗅ぎつけたため、彼女に殺害されてしまった。
しかし、その直前にインベーダー達が集合する山荘の場所を発見しており、結果としてタケルがそれを知ってタロウが駆け付ける切っ掛けを作る事となった。


  • インベーダー

本漫画のメインヴィラン。
地球侵略を目的とする宇宙人の集団で、作中時点では数百名が日本各地に潜伏している事が言及されており、看護師など社会の要職に紛れている者もいる。
作中ではほぼ全編を通して地球人と同じ姿をしているが、これは擬態であり、第9話で死亡した際に怪物然とした正体を現している。
人間態では特に超常的な能力は発揮せず、序盤に登場したインベーダーは電撃を放つ指輪を暗殺道具として行使していたものの、
以降は使役する怪獣を除けば、薬物に自動車による轢殺、爆弾などといった現実的な手段での暗殺を常套手段としている。
やり口は陰湿で、タケルが先行く街や集落の人々に紛れては、彼を狙うためだけに関わった人間や親類を躊躇なく殺害する下劣さを見せる、正真正銘の外道。


しかし、物語終盤でタケルが銃を手に攻勢に出るようになった辺りから、彼らの活動にも陰りが見え始め、使役する怪獣も第8話のムルロアを最後に枯渇してしまったようで、
インベーダーの代表者達が「あくまで地球侵略に拘るか、諦めて去るか」と会議する状況にまで追い込まれてしまう。
最終的に侵略活動を続行する決断を下すも、程なくして会議を行っていた山荘をタケルに発見され、彼のテレパシーでウルトラマンタロウを呼び寄せられてしまう。
怪獣を持たないインベーダー達はタロウ相手に為す術無く蹂躙され全滅、完全に壊滅する最期を迎えた。



登場怪獣

本漫画に登場する怪獣は全てインベーダーによって操られる手駒の設定。


第1話に登場。
光太郎がぶちのめしたインベーダーによって召喚され、彼に致命傷を与えるが、ウルトラマンタロウとして復活した彼と激突し、ストリウム光線で瞬殺される。


第2話に登場。
タケルが通りすがった村に潜伏していたインベーダーによって操られて暴れるが、タケルがテレパシーで呼び出したタロウのスワローキックの一撃で首を刎ね飛ばされた。
「小二」連載版同様、映像作品における再生能力は発揮されなかった。


第3話に登場。
タケルと知り合った少年・和彦の命を盾にデータの引き渡しを狙ったインベーダーが使役。
一方的な取引に応じないタケルに業を煮やしたインベーダーの指令で病院を襲撃するが、駆け付けたタロウのヒーロー光線で撃破される。


  • アリンドウ

第4話に登場。
タケルを拉致したインベーダーを追って現れたタロウの前に召喚されるが、タロウの飛び蹴りの前にあっさり撃破され、主であるインベーダーを巻き添えにして倒された。
ちなみに第4話は『ザ・ウルトラマン』編入分における小五版最後のエピソードとなっており、アリンドウに潰されたインベーダーが恨み言を呟きつつ事切れる描写から、
この回でインベーダーの野望が挫かれたかのように錯覚してしまった読者も多いのでは?


第5話に登場。
映像作品では人類の被害者的な側面の強かった怪獣だが、漫画版ではインベーダーに操られる正真正銘の凶悪怪獣
海岸沿いの海水浴場で暴れまわって人的被害を出すのみならず、タケルが知り合い一時の交流を果たした一家をインベーダーの指令で全員惨殺する凶行を犯す。
悲しむタケルの心に呼応するかのごとく現れたタロウの怒りの鉄拳の前に沈んだ。


第6話に登場。
タケルと間違えて背格好の似ている無関係の少年をクチバシに咥えて拉致、実質人質にする形で光太郎の変身したタロウと対峙する。
タロウは少年を助けようと試みるが、それ故に戦いの長期化で周囲の被害は増し、少年もまた身体への負荷で限界を迎えようとしていた。
最終的にタロウは意を決し、バードンの下半身を狙い撃ちする形でストリウム光線を放ち撃破したが、時遅く少年は既に命尽きていた……。


第8話に登場。全12話の本漫画における最後の怪獣である。
タケルの親戚の叔父さんを殺害したインベーダーによって召喚されるが、現れたタロウのストリウム光線で原作の強さが嘘のようにあっさり瞬殺される。



追記・修正は、肉親や隣人の仇を躊躇いなく撃てる方がお願いします。


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  • インベーダーが出てくるけど石川版とは特に関係ないのか -- 名無しさん (2022-05-21 22:03:42)
  • 傑作選みたいのが出るとは聞いたけどこれ入るのは知らなくて項目見て即ポチりました。ありがとう -- 名無しさん (2022-05-21 22:08:26)
  • ↑2 ありゃドグラの魔物の親戚だからなあ…こっちのはどちらかと言うとミラーマンの、もっと言や海外ドラマ『インベーダー』のそれに近いかと -- 名無しさん (2022-05-22 09:56:52)

#comment(striction)

*1 台詞からして間違いないと思われるが、「小五」版の漫画作中にはウルトラの母の姿は一切描かれない。
*2 作中では「超小型の火炎放射器」と解説。ZATガンとは別物。

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コメント

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