登録日:2013/09/20 Fri 11:04:20
更新日:2023/08/13 Sun 08:34:00NEW!
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突然で申し訳ない。
ウルトラ怪獣や宇宙人で悲劇的と言えば何が思い浮かぶだろうか?
悲劇的な怪獣・宇宙人と言うと有名なのはジャミラであろうか。
詳細は登場回「故郷は地球」の項目を御覧頂きたい。宇宙に置き去りにされた宇宙飛行士の悲劇、人間の身勝手さを象徴するラストは今でも色褪せない。
ちょっとコアなファンからは真っ先にギエロン星獣、メイツ星人、妄想ウルトラセブンの名が上がる。
「超兵器R1号」に登場したギエロン星獣は、何の罪もないのにも関わらず人間の身勝手な都合で星を破壊され、地球へ復讐しに来たらウルトラセブンのアイスラッガーの前に花畑で絶命する……。
メイツ星人は「怪獣使いと少年」のエピソードに詳しい。宇宙人と少年の交流と差別と言う名の悲劇が印象深い。この話の怪獣ムルチもまるで金山と少年の逆鱗と怨嗟を象徴するように演出されていて痛々しい……。
妄想ウルトラセブンは何の罪もない子供たちが残酷な暴走族にはねられ意識不明の重体にされ、その子供の大切なセブン人形が少年の「暴走族をやっつけて」という願いと涙に反応、報復として暴走族に自分たちがやられた事を倍にして返し殺そうと執拗に追跡する……。
と、そういった話とは別のベクトルに悲劇的な奴もいる。
それが虫歯怪獣と銘打たれた怪獣、シェルターである。
『ウルトラマンタロウ』第13話「怪獣の虫歯が痛い!」に登場した。
【能力】
身長:48メートル
体重:3万2千トン
九州沿岸の海底に生息していたスッポンの怪獣。目の前に来たものに飛びつく習性がある。
武器は高熱火炎と噛み付き。スッポンの怪獣らしく獲物に噛み付くと離れない。
また堅い甲羅はウルトラマンタロウのストリウム光線も通さない。
(ウィキペディアより)
【シェルターの顛末】
元々九州で海で穏やかにすごしていた怪獣で魚を主食としていた怪獣だったが、ZATの軍事演習による水中ロケットを泳ぐ魚と間違えて噛みついたせいで歯に挟まってしまった事からこいつの悲劇が始まる。
前述の通り「噛みついたものを離さない」性質の上に水中ロケットが歯に挟まった痛みから大暴れ、宮崎市に上陸する。
元々シェルターに敵意もないが、怪獣を暴れさせるわけにもいかず、そもそも自分たちのせいなのでZATは出撃し水中ロケットを抜く作戦に出る。
が、主人公東光太郎があろうことか「健常な歯を抜く」大失態を演じる。
(もちろん麻酔なし…いたいいたい!)
それにより更に暴れるシェルター、遂にはタロウが出てくる事態になった。
最終的にタロウに水中ロケットは抜いてもらえたものの、シェルターは暴れることを止めず(当たり前だが歯を無理やり抜かれた痛みなんてすぐ引くわけがない)遂にZATは決断。
爆薬を積んだ水中ロケットを頭部に撃ち込まれ(地上でも使用可能だった)、憐れ爆薬と共に塵になったのである。
光太郎は、自分のせいでシェルターが歯を抜かれ倒されたことを哀れんでか、ラストで敬礼している。
【評価】
そもそもタイトル詐欺であり、こいつ自身は「虫歯」ではない。
こいつが暴れる原因が全部人間(っていうかZAT)に起因しており、それを虫歯で片づけるのはちょっとひどい。
さらに本題だが「こいつは何も悪い事してない」、これに尽きる。
(厳密には、市街地で暴れ回っているのだが、それも決して人間たちに復讐心を抱いたとかの報復行為ではなく、ただあの地獄の痛みで暴走して動き回った結果で暴れたくなる気持ちも頷ける)
人間の身勝手な理屈から敵対したり殺された怪獣はタロウ初期の怪獣にはけっこう多く、他にはうばわれた卵を取り返そうと躍起になるキングトータス・クイントータス夫妻とか、とどのつまり「度を超えた大食漢だから」殺されたデッパラス、棲家を一方的に追われたために暴れる羽目になったボルケラーが居る。
しかしこいつらの場合、ある程度の人間側の事情もあったり救いがあったりはしている。
具体的にはボルケラーの場合やられた理由が「体から出す噴煙が危険で、凶暴な性質だから」に尽きるし、デッパラスも人間を好んで襲うタイプではないとは言え食欲からケチャップ工場を襲っている。また、トータス夫妻は紆余曲折の末に最後は子供と共にウルトラマンに連れられて別な星で平和に暮らしている。
…が、シェルターの場合、こいつ自身に冗談抜きで一切非は無いのに救いも無く特にドラマも無く殺されると言うあんまりな扱いであり「それはないだろ」「残酷すぎる」「後味が非常に悪い」「なんで助けなかったんだ」「ZATの力だったらタロウに頼むなり何かできたんじゃないか?」と非難・批判が殺到した。
こうなった要因の一つとして怪獣のシリーズを通して模写の変化がある。
というのも、初代『ウルトラマン』の怪獣では(当時の時代による模写の差異はあるものの)、製作者の金城哲夫の「様々な理由で怪獣が現れ、それらを退治せざるをえない」というヒーロー像を追求していた。
(昔から住んでいたが発電所の電気エネルギーを吸収することで巨大化したネロンガ、人間のいない環境で暴れていたレッドキングなど)
しかし後に加入した実相寺、佐々木により(ウルトラマンのヒーロー像の違いから)ジャミラやスカイドンといった、「特に暴れなかったり不幸な生い立ちの怪獣がウルトラマンや防衛軍などの犠牲者になる」側の怪獣が現れ、終盤にはジェロニモンなど怪獣自体が侵略の意志を持ち、『ウルトラマンA』でシリーズ初の悪の存在のヤプールが登場しその手先としての超獣が現れ勧善懲悪でない物と相互理解不可の倒すべき悪の怪獣が混ざるという矛盾した立ち位置だった。
また『タロウ』時には1期ファンから怪獣の出現理由の不明確さとそれによる怪獣の設定とドラマが絡み合っていない事が批判されており、ウルトラシリーズ以外でも『ミラーマン』『ジャンボーグA』『レッドマン」など侵略者の手先だったり、ただ倒されるための怪獣の模写が多くなっていた。(現に怪獣ブーム時に実相寺氏が「怪獣もどきであって怪獣ではないのだ」と批判している)
ある意味シェルターがウルトラシリーズの負の部分である武力の犠牲者面を強く表してしまったと言えよう。
後のシリーズ・作品では反省から「何にも悪い事してないなら怪獣との共存を選ぶ」と言う方向性にシフトしていくことになった。
ただし、これによりシリーズ内で「人間に危害を加えない怪獣は倒さないが危害を加えるものは即倒す」という、戦隊やライダーのように決まった定義や加害者側(悪の組織)が存在せず、勧善懲悪で割り切れない様々な理由で現れる怪獣に加え、超獣やスペースビーストのような相互理解不可な存在が登場し続ける為に選民的なダブルスタンダードのパターンになっており、ウルトラシリーズ全体の一つの課題になっている。
唯一の救いは「こいつの犠牲から後の罪のない怪獣の命が救われることになった」と言う事だろうか?
……だとしてもこいつ自身に救いはないが。
『ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POP Comic code』では、ヤプールの経営する歯科医の常連客として名前のみ登場している(シェルター本人は未登場)。
怪獣墓場で生まれ変わっても、虫歯に悩まされる生活までは変えられなかったようだ。トホホ……。
内山まもるの漫画版『ウルトラマンタロウ』では小学二年生・小学五年生掲載版の両方に登場。
前者では水中を平和に回遊していたところをZATの軍事演習の巻き添えになって岩雪崩に巻き込まれてしまい、報復とばかりにZATの潜水艇に襲い掛かるも、現れたタロウのストリウム光線によって倒されてしまっている。
一方後者では扱いが全然異なり、作中通しての敵役である「インベーダー」の手先として登場。主人公のタケル少年が知り合った漁村の家族を襲撃、惨殺するという映像作品とは真逆の悪逆非道さを見せた。
追記・修正はZATに一言クレーム送ってからお願いします。 byシェルター
▷ コメント欄
- コメント欄が長くなってきたのでリセットしました -- 名無しさん (2015-05-02 17:20:53)
- ムサシと大地は怒っていい、我慢しなくていいんだぞ -- 名無しさん (2015-08-30 16:00:48)
- ↑コスモスだったらデッパラスにボルギルスと同じ光線出すんだろうな -- 春風コンビ (2016-01-29 17:11:53)
- ↑いやあれでは無理だろ。ボルギルスは高エネルギーが食い物だからコスモスが生成するエネルギーで満足したけど、デッパラスは腹に溜まる物質的なモノを食ってるんだぞ?……まさかコスモスの掌から大量のケチャップ出させる気か? -- (2016-05-04 21:47:35)
- 性質の悪いコスモス信者はコスモスならどんな怪獣も倒さず解決できるとか思ってるから仕方ない -- 名無しさん (2016-05-04 22:04:52)
- コスモスはカオスヘッダーとはついに和解したけど、侵略的な宇宙人とは和解できたとは言い難いんだよな ブッコロナさんで倒したヤツのほうが多いし… -- 名無しさん (2016-05-05 01:22:03)
- だからコスモスの価値が下がるってわけじゃないけど -- 名無しさん (2016-05-05 01:27:52)
- コスモスは助けられる命は助ける、命を弄ぶ奴奪う奴等とは徹底的に戦う。でもただ助けるだけでいいのか?敵は問答無用で倒すのが正解か?って問い掛けの答えを探す物語だからな。その起点にこのシェルターがいるんだろうけど -- (2016-05-05 01:34:54)
- 最早ウルトラシリーズ全体に関わる問題だよ -- 名無しさん (2016-05-05 03:40:42)
- 流石に実相寺ひどすぎだろ。 -- 名無しさん (2016-06-29 10:57:29)
- この頃第二期ウルトラや『流星人間ゾーン』に見られた、怪獣がかわいそうになってくる過剰な暴力シーンも70年代特撮の弊害なんだと思う。 -- 名無しさん (2016-07-06 15:11:38)
- あまり話題にならないがキングストロンも同じベクトルで匹敵する悲劇性を持ってると思う。 -- 名無しさん (2016-07-20 01:19:23)
- もし再登場するなら明らかに別名変わりそうな気がするwww(マックス時のレッドキングとかみたいに) -- 名無しさん (2017-03-24 06:41:43)
- 倒される怪獣としては、弱々しすぎる設定も問題だとおもう。文面を読んでも魅力をちっとも感じられない・・・。 -- 名無しさん (2017-04-13 23:33:38)
- 模写? -- 名無しさん (2017-05-12 01:27:48)
- ウルトラマン基金の動画で、タロウが暴れるギャンゴと対峙し、足の裏に刺さったトゲが原因だと気づいて助けてあげる…というのがあったけどシェルターのときもこうであれば…と思ったものだ。 -- 名無しさん (2017-05-16 20:22:44)
- 流石にZATも反省したのか、後のヘルツに対してはメドウーサ星人の謀略にも屈せずかなり慎重な対応を取っている。「現実に悪いことをしているか、あるいは今は何もしなくても本当に悪い怪獣であると確信が持てぬ限りZATは攻撃しません。怪獣もやはり人間と同じ生き物ですから」 -- 名無しさん (2017-07-02 13:51:13)
- 正直矛盾だのダブルスタンダードだのそこまで深く考えてるっつーか気にしてる人のほうが少数派な気がする。言っちゃ悪いが「娯楽作品の裏に垣間見える問題点を指摘している自分」に酔ってる感がすごい。 -- 名無しさん (2017-07-02 19:12:54)
- ダブルスタンダードも何も「可能な限り共存の道を探るが、現実的でない相手なら倒すほかない」というだけの話だろう -- 名無しさん (2019-02-14 14:56:16)
- そもそもこれ以前にも、おとなしくしてただけなのに人間がちょっかいだしたせいで暴れて理不尽に殺された怪獣って結構いるはずなのに(帰マンのダンガーとか)なんでシェルターの時にやたら槍玉に挙げられたんだろうか。 -- 名無しさん (2019-03-23 14:49:55)
- ↑前話に登場したボルケラーも同じような境遇だったし流石にやりすぎだ!って抗議があったのかもね。 -- 名無しさん (2019-03-23 15:23:23)
- ニュージェネ以降の怪獣が召喚や変身ってパターンが多いのは、野生だと避けられない「倒すべきか護るべきか」ってのを(敢えてアレな言い方すれば)考えずに済むからなんじゃないかって思う。半ば邪推入っちゃうけど。 -- 名無しさん (2019-07-28 20:59:34)
- この回の話のテーマは怪獣の悲劇というよりも南原隊員と母親との絆だから「ZATひでーなwww」と苦笑いはしたけどそこまで気にならなかった、まあ脚本にツッコミどころがあるのは70年代特撮あるある -- 名無しさん (2019-09-12 16:22:48)
- 息子はこんな怪獣とばかり戦ってる -- 名無しさん (2019-11-24 17:56:44)
- ↑4 あるいはタロウという作品自体が旧来のファンからの槍玉にあげられがちだった作品なんで、叩き台にしやすかったってのもあるのかもね -- 名無しさん (2021-02-05 22:51:25)
- 怪獣娘の方はお菓子をいっぱい食べられるくらい平和って事で -- 名無しさん (2021-08-07 21:14:04)
- …レッドマンでも見ようや -- 名無しさん (2021-08-07 21:18:58)
- 「ただし、これにより~」から「課題となっている」までの話の意図が読めない 結局何が課題なの? -- 名無しさん (2021-08-07 21:39:40)
- 各所の模写ってもしかして描写の間違いか? -- 名無しさん (2022-08-04 20:17:26)
- そもそも金城哲夫もヒドラのような勧善懲悪とは言い切れない怪獣を描いてるし、それ以前からドドンゴのように人間の都合で目覚めて暴れてた怪獣はいたぞ 大体、ウルトラマン5話のラゴンの時点で完全に人間の被害者だ ウルトラマンは序盤から人間が善で怪獣が悪とは限らない物語だったよ -- 名無しさん (2022-08-09 19:49:47)
- ↑17 いや、この記事を書いた奴の解説が偏ってるだけで、シェルターは炎を吐き、ストリウム光線を甲羅でガードするなど、かなり強い怪獣だよ だから倒すしかなかった面がある -- 名無しさん (2022-08-09 19:56:44)
- ↑10 Xの時点で普通に地球怪獣が多かったし、「人間と怪獣は共存できるのか?」がテーマになってたじゃん。宇宙人に使役される怪獣が多いのはセブンや帰りマンの後半も同じだし。 -- 名無しさん (2022-09-17 12:30:35)
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コメント
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光太郎の敬礼はシェルターじゃなくて、遠い星にいるウルトラの母にだろ
南原隊員とお母さんの別れを観て、「お袋かあ……」とつぶやいた後の敬礼なんだから
大体、この回で光太郎を始めZとしたATの面々は、別に自分たちの都合が原因で苦しんでるシェルターへの償いで事を穏便に済まそうとしたわけではなく、南原隊員の訴えで彼の故郷の街を怪獣退治の戦場にしないために平和的な解決を目指したに過ぎない
シェルターの歯を抜くヘマをやった光太郎は南原隊員には謝罪したが、シェルターに罪悪感を感じてる描写は無い
そもそも初代ウルトラマンのゴモラの方がよっぽど酷い扱いだ
万国博覧会で見世物にするため誘拐して、思ってたより強かったため麻酔が十分に効いてなかったり、落下の衝撃にも耐えて、結果として町中にまで移動して暴れたから退治されたのだ
しかも退治された後に剥製にされて、結局、万国で見世物にされた結末
正直、大人気のゴモラがこの扱いで何にも言われてなかったのに、シェルターというドマイナーな怪獣の扱いで、そこまで騒ぎになったというのは眉唾だと思う
というか、騒ぎになってたらマイナー怪獣になってないだろ
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