登録日:2018/10/14 Sun 19:22:41
更新日:2024/03/26 Tue 11:20:03NEW!
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銀河英雄伝説 イゼルローン要塞 奇術師 銀河英雄伝説の戦役 ヤン・ウェンリー 魔術師 架空の戦争 戦争 第7次イゼルローン要塞攻防戦
第13艦隊、出動する
第7次イゼルローン要塞攻防戦とは、「銀河英雄伝説」の中で行われた戦役の一つ。
イゼルローン要塞は当時、帝国軍が築き上げた難攻不落の要塞として知られ、同盟軍は過去6度にわたり要塞の奪取をはかったが、悉く失敗に終わっていた。
7度目となるこの攻防戦は、同盟軍の若き天才・ヤン・ウェンリーが、艦隊司令官としての初陣を飾る一戦となった。
●目次
【戦役に先駆けて】
先のアスターテ星域会戦において、同盟軍は第4、第6の二艦隊をほぼ喪失するという甚大な被害をこうむったが、第2艦隊幕僚のヤンの機略により、完全な敗北という結果は免れた。
これに対し、統合作戦本部長のシドニー・シトレ元帥は、ヤンを少将に昇進させると共に、第4、第6艦隊の残存兵力と、新造艦艇を第13艦隊として再編し、その司令官に任命した。
その最初の任務としてヤンに与えられたのが、帝国軍のイゼルローン要塞を攻略せよというものであった。
この人事の意図として、帝国軍の侵攻拠点の要でもあるイゼルローン要塞を奪取することで、国境の安定を図るというものがあったが、また別の一面では、国防委員長を勤めていたヨブ・トリューニヒトと不和にあったシトレが、自身の立場を強化するためという政治的意図もあった。
宇宙暦796年/帝国暦487年4月27日、ヤンはシトレの命を受けて、艦隊司令官としての初陣に出撃する。
しかしその数は、一個艦隊の半数にも満たぬ6400隻、将兵70万名余りであり、またその構成も旧艦隊の残存兵力及び新造艦ばかりであったため、「寄せ集めの艦隊」と皮肉を飛ばされた。
【登場人物】
自由惑星同盟軍
少将。同盟軍第13艦隊司令官。旗艦はヒューベリオン。
シトレ、トリューニヒト両者の思惑を察した上で無理難題である要塞攻略を引き受けた。
この戦いが、後に彼を「魔術師」と呼ばせるきっかけとなる。
- フレデリカ・グリーンヒル
中尉。副官。宇宙艦隊総参謀長ドワイト・グリーンヒル大将の一人娘。
8年前、14歳の時にエル・ファシルに滞在していた際にヤンに出会い、自分たちを救ってくれた「中尉さん」に一目ぼれしていた。
- エドウィン・フィッシャー
准将。艦隊副司令官。アスターテ会戦時は第4艦隊所属。
「艦隊運用の名人」と評されており、ヤンより艦隊運用を一任された。
- ムライ
准将。艦隊参謀長。
常識論を述べることで組織の秩序を守る役を担っており、「薔薇の騎士団」の信頼性の低さを述べている。
- フョードル・パトリチェフ
大佐。艦隊副参謀長。
司令官の考えを将兵にわかりやすく伝達することで鼓舞する役を担う。
大佐。帝国からの亡命者を中心に創設された白兵戦部隊「薔薇の騎士団」の第13代連隊長。
半個艦隊でイゼルローン要塞を攻略しようとするヤンに興味を示す。
- シドニー・シトレ
統合作戦本部長。元帥。ヤンの士官学校時代の校長。
ヤンの才覚を評価していることが第13艦隊司令官抜擢の理由ではあるが、その一方で対立する先述のトリューニヒトのほかに宇宙艦隊司令長官ラザール・ロボス元帥らに対する軍内部の派閥抗争の面もある。
統合作戦本部長付次席副官。少将。ヤンの良き先輩である史上最強のデスクワーカー。
シトレの命令もあり艦隊人事や物資に加えてユリアンのために官舎警備を強化する*1まで幅広くヤンに協力する。
ちなみにこのとき第13艦隊の人事協力として「優秀な若手の副官が欲しい」と注文をつけたヤンにフレデリカ・グリーンヒルを紹介したのはキャゼルヌ。
ヤンに軍幹部の令嬢を送って困惑させてやろうという悪戯心だろうが、キャゼルヌもフレデリカの内心までは知らなかっただろう。
銀河帝国軍
- トーマ・フォン・シュトックハウゼン
大将。イゼルローン要塞防衛司令官。
駐留艦隊司令官のゼークトとは仲が悪い。
- ハンス・ディートリッヒ・フォン・ゼークト
大将。イゼルローン要塞駐留艦隊司令官。旗艦はグルヴェイグ。
典型的な軍事ロマンチシズムを重んじる軍人。
- パウル・フォン・オーベルシュタイン
大佐。ゼークトの副官。
ヤンの意図を見抜いてゼークトに意見を具申するが、悉く無視される。
- レムラー
中佐。司令室警備主任。
アニメでは出番が増やされている。
【戦闘の経過】
過去のイゼルローン要塞攻防戦の戦果から、「要塞を外部から攻略することは不可能」と考えていたヤンは、要塞を内部から占領し、機能を掌握する作戦を立てる。
その実行役として選ばれたのが、帝国軍からの亡命者で構成され、同盟軍最強と謳われた陸戦部隊「薔薇の騎士団」。
しかし同盟軍の中には旧帝国軍である彼らを訝しむ者も多く、彼らがいつ裏切って帝国につくとも限らないと唱える者も多くあった。
なにしろ薔薇の騎士団の歴代連隊長12名のうち半数の6名が帝国軍に逆亡命。しかも中には戦闘中にやらかした者もいるという重い事実があるのだ。
近い出来事としては第11代連隊長リューネブルクが逆亡命に走っており、後の戦場で第12代連隊長ヴァーンシャッフェを戦死させている。
シェーンコップはこの2人に続く第13代目の連隊長だが
- かつて不吉とされていた13という数字(13代目の連隊長/第13艦隊)。
- 圧倒的戦力差かつ監視困難な状況からくる寝返りの可能性。
- 女性関係の広さが有名なシェーンコップの模範的とは言い難い私生活。またリューネブルクはかつての上司でシェーンコップも逆亡命という手法は肌で知っている。
といった点からヤン艦隊の中にも作戦の疑念・不安の声を上げる者は少なくなかった
薔薇の騎士団が裏切れば同盟軍が全滅の道を辿ることは火を見るよりも明らかだったが、ヤンはそれでも連隊長であるワルター・フォン・シェーンコップを他に手段がないため信用し、シェーンコップもまたヤンの信用する理由等も含めて意図に賛同し、作戦の実行役を担うこととなる。
5月14日、ヤンはイゼルローン駐留艦隊を誘い出すため、偽の救難信号を発信する。
この報を受けたイゼルローン要塞は、ゼークト率いる駐留艦隊を、索敵の意図も含めて全軍出撃させる。
この時、ゼークトの副官であるオーベルシュタインは、この救難信号が罠である可能性を考え出撃を断念するよう上官に具申するが、聞き入れられることは無かった。
一方、駐留艦隊が出撃したイゼルローン要塞に、帝都オーディンからの「重要な連絡事項」を預かったという帝国の連絡艦艇が、敵の追撃を振り切りながら要塞へとやってきた。
艦艇の指揮官はフォン・ラーケン少佐と名乗り、「同盟軍がイゼルローン回廊を無傷で通過する手段を得ている」情報を握っており、それを要塞司令官に伝えるためにやってきたと述べた。
シュトックハウゼンに一刻も早い面会を求めるこのフォン・ラーケン少佐こそ、帝国軍人に変装したワルター・フォン・シェーンコップその人であった。
シュトックハウゼンのもとに到着したシェーンコップらは、即座に正体を現してシュトックハウゼンを人質に取る。
シェーンコップの部下がゼッフル粒子を散布したことでシュトックハウゼンは降伏を余儀なくされ、イゼルローン要塞は同盟軍第13艦隊の手に落ちた。
ほぼ同時期に、救難信号が罠だと気付いたイゼルローン駐留艦隊は、急ぎ要塞へと引き返すが、これに対しヤンは「要塞内で兵士の叛乱が起きたが、既に占領した」と偽の情報を流す。
ゼークトはこの報を受けて即座に艦隊をイゼルローンへ引き返させる。この時、敵の意図を見抜いたオーベルシュタインが再度ゼークトに通信の危険性を説くも無視され、ついにオーベルシュタインは上官を見限って単身シャトルで脱出する。
駐留艦隊が要塞の近くまで戻ってきた時には既に要塞は同盟軍の手に落ちており、帝国軍は"雷帝の槌"2撃により、甚大な被害を被る。
その様子を、シェーンコップから「一方的な虐殺」と指摘されたヤンは、残存する帝国軍に降伏と「逃亡」を呼びかけるが、軍事ロマンチシズムに染まったゼークトは勧告を一蹴し、全軍に玉砕覚悟の突入を命じる。
「武人の心」だって?
こんなやつがいるから戦争が絶えないんだ!
敵の旗艦を識別できるか?それを集中して狙え。これが最後の砲撃だ…!
その主張はヤンを激怒させ、3度目のトールハンマーをゼークトの旗艦に照準を絞って発射。
ゼークトと随行する千隻程度の艦艇を文字通り「消滅」させた。
司令官を喪った帝国軍の残存艦艇は敗走し、ヤンは味方を一隻たりとも失うことなく、イゼルローン要塞の占領に成功した。
【影響】
「イゼルローン要塞陥落」の知らせは、帝国軍中枢に激震を走らせ、当時の皇帝フリードリヒ4世は、国務尚書のリヒテンラーデ侯爵に説明を求めた。
帝国軍三長官は揃って辞表を提出したが、同時にイゼルローン駐留艦隊の唯一の生存者であるオーベルシュタインに、任務放棄と要塞失陥の全ての責任を負わせようとした。
それを見越したオーベルシュタインは、ラインハルト・フォン・ローエングラムに自らを売り込みに行き、その才覚を買ったラインハルトによって免責とされている。
ヤンは、その鮮やかな手腕による戦果から、「奇跡のヤン(ミラクル・ヤン)」「魔術師ヤン(ヤンザマジシャン)」と称され、一躍自由惑星同盟のスターとなった。
シトレは「この作戦が成功すればイゼルローン要塞の武力を背景に帝国と和平協定を結び、つかの間ではあっても有意義な平和が到来する」と期待したが、結果としてこの戦果は同盟軍最高評議会に勢いを与え、「帝国領侵攻作戦」へと発展してしまうのである。
【メディアミックス作品ごとの変更点】
OVA版
原作との最大の違いは、シェーンコップによる要塞制圧時に、シュトックハウゼンの部下であるレムラー中佐が起こした、要塞機能の一時凍結である。
これにより、要塞の中枢コンピュータを武力制圧する必要が出たため、原作よりも占領に時間がかかることとなってしまった。
この時、駐留艦隊も囮に気付いて引き返し始めていたため、ヤンはイゼルローンに肉薄しながら、ゼークトに「要塞は既に占拠した」と偽の情報を流し、少数艦隊であることを活かして要塞内に主力部隊が既に入港していると見せかけていた。
また、駐留艦隊へのトールハンマー発射も2回のみで、1回目の発射→シェーンコップの指摘と降伏勧告→降伏拒否と突入開始→2回目の発射でゼークト消滅という流れとなっている。
道原かつみコミック版
シェーンコップがシュトックハウゼンを人質にして牽制しつつ、帝国軽巡航艦内で待機していたリンツ率いる装甲擲弾兵部隊がメインシステムを抑える展開になっている。
ヤンは要塞内部の資料から内壁の薄さを見抜いており*2、リンツの部隊は軽巡主砲と強襲揚陸艦で内壁を破り宇宙港から内部に侵入。
混乱する帝国兵の中にゼッフル粒子を散布し、火器を封じた上で白兵戦で突き進んでいく。
追い詰められた帝国軍はサブシステムに切り替えて時間稼ぎをしようとするが、薔薇の騎士団はこれも想定内であり逆にシステムに細工しやすくなったと喜ぶ。
要塞機能を抑えた薔薇の騎士団は空調から催眠ガスを流し、難攻不落のイゼルローン要塞の無力化に成功したのであった。
またシェーンコップが偽称するラーケンの階級が少佐から大佐に変更、
レムラー中佐の名前が出ない(「シュトックハウゼン閣下は死を恐れない!人質の意味はないぞ!!」と豪語する帝国士官はいる)、
ヤンが薔薇の騎士団の起用をキャゼルヌに伝えると「あの問題集団を使うのか!?」と驚いており、キャゼルヌも良い印象は持っていなかった様子など、
細部に道原コミック版独自の描写がある。
アニメ「Die Neue These」版
フォン・ラーケン少佐に扮したシェーンコップが、シュトックハウゼンと面会する前に、レムラー少佐からIDチェックを受けている。
この時、レムラーはフォン・ラーケンを怪しんでわざと「IDを認識できない」*3として、彼らの正体を暴こうとした。
睨み合う2人だったが、結局しびれを切らしたシュトックハウゼンがID認識を無視して面会を求めたため、結局要塞は占拠されてしまった。
beforカストロプ動乱
nextアムリッツァ星域会戦
追記や修正する部分がありましたらよろしくお願いします。
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- これオーベルシュタインが指揮権持ってたら負けてたんだよな……舞台版の「オーベルシュタインはヤンの意図を完全に読んでおり、利用するためにわざと怒らせるような言い方をした」という解釈は面白かった -- 名無しさん (2018-10-14 21:18:51)
- 余りにもヤンが鮮やかに勝ち過ぎて、その後の同盟滅亡にも繋がった作戦。まあ滅亡は遅かれ早かれ…の話かもしれんけど。 -- 名無しさん (2018-10-15 22:34:23)
- 失敗していた方が同盟的には良かったな。ヤンも引退できてたろうし -- 名無しさん (2018-10-21 13:41:59)
#comment
*2 「要塞内部に入り込まれることは想定していないから帝国は機密漏洩もあまり気にしないし、内部資料を手に入れたからこそ同盟は要塞奪取に熱が入った」とヤンは推測している。
*3 なお実際にはIDチェックはパスしており、有効なものと認識されている。帝国軍の艦や制服ばかりか実際に通用するIDまで用意できたキャゼルヌって、一体…
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