登録日:2017/12/20 (水) 00:41:09
更新日:2024/02/16 Fri 13:09:47NEW!
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十二支の戦士VS十二星座の戦犯
『十二大戦対十二大戦』は西尾維新の小説作品。2017年に集英社より発売された。
挿絵は前作と同じく中村光が担当。
◼︎概要
『十二大戦』の続編となっており、前作とは異なる十二大戦の様子が描かれる。
第十二回十二大戦は前回で終わったのでは?と思うかもしれないが、これは別のルートにおける十二大戦であり、前作とはまた異なる内容となっている。
前作においては寝住の勝利という結末が事前に分かっていたが、今回は誰が生き残るのか、誰が勝利するのかは未知数。
前作では通常の十二大戦、つまり十二戦士による殺し合いが行われたが、今回の戦いは十二支の戦士と十二星座の戦犯に分かれて行われる。
勝利条件は「十二戦犯を全員捕える事(生死問わず)」であり、それが達成されれば生き残った十二戦士全員の願いを叶えるという破格ぶり。
『十二大戦』と同じく十二章構成であり、各章の最初に十二戦犯の来歴が書かれているが、前作と違ってその順番に死んでいったりはしない。
◼︎あらすじ
十二年に一度行われる、十二支の名を冠した戦士達の戦い。その名は『十二大戦』。
だが、その第十二回大会は十二星座の戦犯に狙われていた。
戦士と戦犯の、苛烈にして壮絶な殺し合いが幕を開ける――!!
◼︎登場人物
以下、深刻なネタバレ箇所については折り畳みにしております故、ネタバレ注意にてお願いいたします。
十二支の戦士
前作でおなじみの面々。
突然のルール変更、しかも戦士同士が殺し合うのではなく手を組むという内容に困惑ぎみ。
戦闘能力は全体的に戦犯よりも高いが、各々の事情からくる参加姿勢の差異や、一人を複数人で殺しにかかってくるチームワークを受けて劣勢となる。
- 寝住
『子』の戦士。
百通りの確率世界を同時に体験する干渉力「ねずみさん(ハンドレッド・クリック)」の使い手。
前作ではこの能力によって自分が勝利するたった1つの世界を確定させ、第十二回十二大戦の優勝者となった。
今回の十二大戦は、死んでも参加したくなかった寝住が能力をフルに使いまくった挙句に生まれた百一番目のようなものらしい。
バグやエラーに近いとの事だが、戦士全員での協力という状況は非常に魅力的なため追求したいと考えている。
『寅』や『午』の単独行動にやきもきしたり、『卯』の思わぬ協力的な態度に驚いたりしながらも、何とか無事チームを結成できないかと気を揉み続ける。
また、無数の世界軸を同時体験しながら殺し合いをしてきたせいで、少年ながらも精神性がすっかり擦り減ってしまっている模様。
それ故に、十二戦士たちが協力を検討しようとする光景だけでも感動しそうになっていた。
本物の『子』は本編開始前に殺されている。前作の『巳』と同じ枠。
作中で寝住を装い会話していたのは、死んだ寝住そのものを「お洋服」として着込んだ『牡羊』の戦犯フレンド・シープ。
- 失井
『丑』の戦士。
通称「皆殺しの天才」。何の変哲もないサーベル「牛蒡剣」による凄まじい戦闘力を持つ。
戦士サイドの主力の1人と言えるが、今回の特別ルールに対しては懐疑的。
当日会場でいきなりのルール変更、しかも報酬が全員の願い達成というあまりの破格ぶりから、今回の大戦そのものが信用に値しないとすら考えている。
『子』によれば「情報戦や腹の探り合いに強いとは言えない戦士だが、すげー直感の持ち主」とのこと。
また「鋼のようなマイペース」とも評価しており、前作での「正しい事をする方法」のくだりからもその気質は窺える。
とはいえ、事態が事態だけに皆で協力すること自体に関しては吝かでもない。
実際、冒頭の集会では司会進行役をある程度は務めてくれるに至った。
次の瞬間、『牡羊』の戦犯フレンド・シープによって首を斬り落とされてしまう。
自己紹介代わりの名乗り上げを順次していき、最後に残った『子』に名乗りを促した直後のことだった。
『子』に扮していたフレンド・シープが、まさに『子』そのものと言える気怠げな欠伸と共に完璧な不意打ちを放ったのである。
まさかの瞬殺っぷりに、十二戦士も読者も目を疑った。
- 妬良
『寅』の戦士。
自分を弱く見せるのが得意な、酔拳使いの女戦士。血でも酔えるらしい。
今回はコンビニもスーパーも放置自動車も存在しない島が舞台のためアルコールが手に入らず、素面のままで調子が出ずにいる。
元々前作でも、最初の集合時点ではアルコールを飲んでおらず常に現地調達していた。
血でも酔えるとはいえ戦闘スタイルからすれば必携のはずだが、その辺はあまり深く考えてないらしい。頭が弱いとか言うな。
彼女の目的は『丑』と戦うことだったため、十二戦士の共闘という状況には不満たらたら。
「付き合ってられねえ。あたいは好きにやらせてもらう」と早々に単独行動をとる。何という死亡フラグ。
案の定、海から突然現れた『魚』の戦犯ドクター・フィニッシュと遭遇。
素面だったのもあり雑談で時間を稼がれ、『牡牛』の戦犯ルック・ミーという増援までもが到着してしまう。
もっとも、その程度で討ち取られるほど彼女の体術はヤワではない。
だがルック・ミーの到着自体がミスリードだった。
ルック・ミーに襲い掛かろうとした瞬間、ずっと非戦闘員を装っていたドクター・フィニッシュに音もなく毒薬を注射されてしまう。
自分を弱く見せるという特技を、今回は敵にしてやられた形となった。
なぜ最初から普通に戦わなかったのかと息も絶え絶えに問うと、ドクター・フィニッシュは「油断してる雑魚を殺すから面白いんでしょ?」と言ってのける。
そんな程度の低い犯罪者に殺されるなんて、正道を外れた自分みたいな戦士には相応しい最期だと自嘲しながら息を引き取った。
- 憂城
『卯』の戦士。
能力は殺した相手を「お友達」にする「死体作り(ネクロマンチスト)」。
しかし彼自身は生きている人間とお友達になりたかったらしく、今回の共闘へは意外にも乗り気。
もっとも、それが本心なのかどうかは誰にも分からないが。
余りにも怪しい風体と白々しい雰囲気から、他の戦士たちも真に受けず一触即発の空気にすらなってしまう。
そこで「死体作り」という能力を自ら明かし、彼と組む大きなメリットを提示した。
殺した相手を自陣に引き入れられることの有用性は明白で、相手がチェスならこちらは将棋をやれるようなもの。
『酉』が考えなしに(本当はあるのかもしれないが)賛同したのもあって、場の空気は一変する。
何だかんだで、戦士たちは共闘の流れへと傾いて行くのだった。
その成就を見届けることなく『牡羊』の戦犯フレンド・シープに心臓を貫かれる。
『子』に扮していたフレンド・シープによる完璧な不意打ちだった。『申』の救命活動もむなしく、そのまま死亡。
前作での自殺特攻とは状況や心情が異なるためか、今回は舌を噛んでの自死による復活は行われなかった。
- 断罪兄弟
『辰』の戦士である兄と、『巳』の戦士である弟の双子戦士。
かつては弾劾裁判にかけられ、戦犯になりかけた事もある「限りなく戦犯に近い戦士」。
実は自分達を無罪にした張本人である『天秤』の戦犯バロン・スーから戦犯側への勧誘を受けており、どちらに付くべきか思案中。
他の戦士たちよりも戦犯の情報全般に通じており、『双子』の戦犯ダブル・マインドのことが嫌い。
自分達が『辰』と『巳』の戦士なのに対し、ダブル・マインドが『双子』の戦犯として一括りで扱われているのが気に入らないらしい。
いい所のなかった前作に比べ、目まぐるしく変化する状況を冷静に見つめる思慮深さが描かれている。
単独行動に走った『寅』たちが無事ではないだろうと予想しつつも、潜入に長けた戦犯がいるため団体行動も危険とみて戦士たちからは距離を取る。
生き残るのであれば戦犯側に付くのも得策そうではあるが、戦犯側の今大戦におけるメリット*1が見えないため踏ん切りもつかない。
しかしダブル・マインドが立ちはだかったのを見て、バロン・スーの勧誘は偽りだと察知した。
『射手』の戦犯ウンスン・サジタリの矢に二人まとめて射抜かれる。
まず液体を支配できる『水瓶』の戦犯マペット・ボトルが、兄弟の武器である液体水素とガソリンを揮発・蒸発させて不発に。
『巳』が振動感知能力「地の善導」で警戒網を張るも、ウンスン・サジタリの矢は大地を振動させない。
兄弟の敵視しているダブル・マインドを矢面に立たせたのも、気を引いて他2人の奇襲を確実なものにするため。
バロン・スーが勧誘という形で情報を流していたのも、無計画かつ無軌道な兄弟の行動を制限・誘導するため。
全ては周到に用意されていたのだ。
かくして兄弟は「バラバラに戦ったら殺されると残った戦士たちに伝えなきゃ」という、らしくもないことを考えながら絶命した。
- 迂々真
『午』の戦士。
驚異的な防御術「鐙(あぶみ)」を備えている巨漢。
元々無口な男だが、今回はマジでほぼ喋らない。
『寅』と同じく、早々に戦士たちの下から離れて単独行動を始める。無言で。
モノローグすら全く無いので、どういう考えがあったのかも分からない。
まぁ鉄壁の防御ゆえ、滅多な事では倒されないだろう。
前作に続き、またしても燻し殺されてしまった。
単独行動を始めて間もなく、『牡牛』の戦犯ルック・ミーと『乙女』の戦犯アイアン・メイに敗北。
詳細は不明だが、失神状態で『寅』の前に引きずられてきている。死なないまでもズタボロにされることに定評のある絶対防御である。
その後、『魚』の戦犯ドクター・フィニッシュによって意識を奪われた操り人形と化し『未』を襲撃。
爆弾では仕留められない防御力と、その頑丈さによる突進攻撃で暴れまわるが、手持ちの爆弾すべてを使った大火災攻撃により燻されてしまう。
ぶっちゃけ酷いってレベルじゃない扱いだが、『未』の名乗りに対しては無意識ながらも名乗り返すことが出来た。
戦士としての最後の矜持を保てたといえば保てたのが救いか。
- 必爺
『未』の戦士。
手榴弾を始めとした爆発物を扱い、十二大戦の優勝経験もあるお爺ちゃん。
相変わらず、機を見るに聡い老獪さを持つ。
彼もまた単独行動を宣言するが、それは「平和主義者の『申』なら引き留めるだろうからそこで有利な条件を引き出そう」と考えてのこと。
しかし引き留めてもらえなかったため本当に単独行動を取る羽目になる本末転倒ぶりを披露。
それでも状況によっては共闘に戻ろうと、図太く考えていた。
十二戦犯の目論見を推測し、それに逆張りして行動すべきか否かなど思慮深く行動する。
全ては『蟹』の戦犯サー・カンサーに読まれていた。
操られた『午』をけしかけられ、やむを得ず手榴弾を使い果たす形で周囲一帯を焼き払い撃破。
身を守る武器も、身を隠す場所も失ったところでサー・カンサーに行く手を遮られる。
彼は十二戦犯の中で唯一『未』が知っていた伝説的な存在であり、この状況で逃げ切るのは不可能だと観念。
『午』のような操り人形にはしないでくれ、と頼んだあとサー・カンサーのステッキ傘によって撲殺された。
なお、同士討ちに誘導された際には結構な憤りを見せていた。
前作のアニメでの描写も踏まえると、戦場でこそ老獪だが性根は好々爺なのかも知れない。
- 砂粒
『申』の戦士。
十二戦士の中でも突出した力を持ちながら、自らそれを封じている平和主義者の女性。
今回のルールは正におあつらえ向きかと思いきや、まるで自分が考えたような甘いルールだとして逆に戸惑っている。
何せ全員の願いが叶うなら戦士同士で殺し合う必要はなく、戦犯の生死を問わないなら生け捕りでも構わないのだから。
それ故に考えあぐねて後手に回り、戦犯サイドの先手必勝を許すという失態をさらす。
前日譚によると、今回の十二大戦がこのような事態になりうるという情報は入手済みだったようだが、流石に戸惑いすぎなので別の世界線の話らしい。
『亥』の叱咤激励で気を取り直してからは持ち前のリーダーシップを発揮、十二戦士たちをまとめて反撃の糸口を探る。
卓越した能力で逆境を覆していく様子は、まさに今作の主人公。ツンデレヒロインと化した『亥』も居るし。
そしていよいよ、先代の和平交渉人にして『蟹』の戦犯サー・カンサーとの協定会議に臨む。
会議中に、突然の心臓麻痺が『申』を襲った。
同じ「毒殺師」でもなければ察知しようのない、気化させた芳香成分による毒「破傷風」。
『魚』の戦犯ドクター・フィニッシュと『山羊』の戦犯ゴー・トゥ・ヘヴンが、独断で砂粒を毒殺したのだ。
しかも車椅子に乗っているゴー・トゥ・ヘヴンを盾にすることで、砂粒の人道心を刺激して咄嗟の反撃すらも封じるという周到さ。
戦犯たちは一枚岩ではなく、また交渉に乗るつもりも最初から無かったのである。
水猿・岩猿・気化猿による三態支配の力を使えば切り抜けることも可能だったらしいが、平和主義者の彼女は咄嗟にその力を使うことが出来なかった。
末期の瞬間に「十二戦犯たちが戦う理由」に思い至ったらしく、「ならしょうがないよね」と安らかな顔で逝く。
我を忘れて駆け寄ってくれた親友の『亥』に、水猿の加護という最期の置き土産を残して。
- 庭取
『酉』の戦士。
あらゆる鳥類と意思疎通できる能力「鵜の目鷹の目」を持つ。
強くはなくとも強かな彼女は、仲間意識こそ薄いものの共闘自体には意欲的。
そのマイペースさが良い方向で役立つ場面も少なくない。戦士の死体を平気で「鳥葬」したりするけど。
相変わらずバカっぽい言動で周囲を度々困惑させるが、彼女の能力は『申』率いる戦士サイドに大きく貢献した。
単なる監視や情報収集に留まらず、無数の鳥で空飛ぶ絨毯を作ったり、竜巻のごとき目くらましで複数人を脱出させたり、有毒性の鳥を攻撃手段としたり。
これには『魚』の戦犯ドクター・フィニッシュも、まるで魔法少女だと舌を巻いた。
今作においても、秘薬「ワンマンアーミー」を注入してほしいと『戌』に頼む場面がある。
そのパワーで、真っ先に逃げ出した。
こんな負け戦からはスタコラサッサだぜ。それでこそ我らが庭取ちゃんである。
しかしペンギン(鳥類)よろしく水中に飛び込んで泳ぎ去ろうとした途端、海中の水が凄まじい水圧となって溺死。
液体を支配する『水瓶』の戦犯マペット・ボトルの仕業であった。
「鵜の目鷹の目」で彼のことを知っていながら、海が大量の液体なのを見落としていたがゆえの最期となった。それでこそ我らが庭取ちゃんである。
飛んで逃げた場合は『射手』の戦犯ウンスン・サジタリに狙撃されていたと思われるが、後述の通りそれなら何とかなっていたのだ。
- 怒突
『戌』の戦士。
強力な噛みつき「狂犬鋲」を持つが、それを隠れ蓑にした「毒殺師」が本質。
素質ある子供を適切な組織へ売り飛ばす事を生業としているが、それは一般社会だと生きていけない子供を見殺しにするのが嫌だったから。
法に触れないよう気を付けてはいるが犯罪行為であり、断罪兄弟と同様「限りなく戦犯に近い戦士」と言える。
だが彼に言わせれば「戦犯と戦士の違いって何だ」といった所らしい。
『亥』を「レディ」、『申』を「ねーちゃん」、『酉』を「がきんちょ」と呼ぶ。これに対する各々の反応が可愛い。
今回の大戦では、意気揚々と臨んでいた前作からは想像も出来ないほど消極的になっている。
理由は『山羊』の戦犯ゴー・トゥ・ヘヴンと、『魚』の戦犯ドクター・フィニッシュ。彼女たちは己の手で出荷した商品であり、かつての教え子だった。
向こうが覚えているかは分からないし、覚えていたとしても恨まれている可能性のほうが高いが、とにかく色々と割り切れない。
そんなモチベーションの低さが、本来なら相性の良くない戦士たちとのスムーズな協調という形で表れることになったのは皮肉である。
教え子二人と相対した時、その心境は更に大きく揺れ動くことになった。
最終的には『亥』の銃弾が彼を貫いた。
同じ「毒殺師」であるドクター・フィニッシュが、既に投与している秘薬「ワンマンアーミー」をさらに重ね掛けしようとした瞬間だった。
それを阻止しにかかった『戌』は、ドクター・フィニッシュを狙っていた『亥』の射線上にまんまとおびき出されたのだ。
死の直前の『戌』いわく、阻止しにかかったのは「重ね掛けに成功されたら勝ち目がなくなるから」。
決して「危険な重ね掛けを教え子にさせたくなかったからではない」。
教え子に突き立てようとしたその牙に仕込んでいたのが、即死用の猛毒ではなく単なる麻酔薬だったのも、ただのミスなのだろうか。
『亥』の射線上に、ドクター・フィニッシュの前に飛び出すその姿が、まるで彼女を庇うように見えたのも気のせいなのだろうか……?
- 異能肉
『亥』の戦士。
銃火器の扱いに長け、機関銃をいつまでも撃てる能力「湯水のごとく(ノンリロード)」を使う淑女。
『申』とは因縁があり、いつか殺すと誓っているが向こうからは親友扱いされている。
実は『亥』のほうも『申』のことが大好きで、戦場でよく会うのも『申』が居そうな戦場に彼女の方から足を運んでいるから。
妹を殺してまで十二大戦の参加資格を得たのも同じ理由。前日譚では普通にカフェでいちゃついてるし。
「あなたを殺すのはこのわたくしですわ」なんていう台詞を言ったこともあるらしい。莫迦な…『亥』があざと可愛いだと…!?
作中では凄まじいツンデレヒロインと化して、『申』との名コンビっぷりを見せつける。
うなだれていれば頬を張って叱咤激励するし、倒れていれば我を忘れて駆けつけるし、その心中にはいつも『申』の姿があった。
十二戦士でも屈指の攻撃性能を持つ「湯水のごとく」によって、攻撃の要とも言えるポジションで立ち回る。
『申』を親友ではなく戦友だとして、過酷な戦線を踏み超えていった。
『魚』の戦犯ドクター・フィニッシュによって、首筋に真空注射を受けてしまう。
『戌』と戦う二人の戦犯に不意打ちを狙うが、秘薬「ワンマンアーミー」による強化感覚で『亥』の動きは把握されていた。
まんまと避けられたばかりか、その隙を突かれて真空注射による虚血状態となってしまう。
こればかりは『申』に授けられた水猿の加護をもってしても防げない。
当人も呆然とする余りにもあっけない最期だったが、短い間でも同じ戦場で『申』と共に戦い、『申』の為に戦えたことは、かけがえのない経験だったようだ。
十二星座の戦犯
今作から登場する新顔たち。
卓越したチームワークで常に多対一の状況を十二戦士たちへと強いており、全編を通して大戦を優位に進めていた。
反面、チーム行動を基本とする故に反撃されれば複数人がまとめて倒されてしまう場面も多く、また元来「生」への執着が薄い傾向にあるため脱落する時は一気に脱落する。
- フレンド・シープ
『牡羊』の戦犯。本名「メーランド・シェリー」。
願いは「お洋服が欲しい」。肩書きは「数えて殺す」。
世界に冠たる服飾ブランドの会長である父と、一流モデルの母を持ち、自身も読者モデルの経験がある少女。
(ただし余りに恥ずかしかったため、自費で雑誌をすべて回収している)
「恵まれた生まれを世界に還元しなければならない」という強烈な使命感に駆られ、十代前半から戦場ボランティアに参加。
森林限界よりも遥か高地の戦場で、国のために戦う兵士に暖かいセーターを提供するという活動を行っていた。
しかし材料となるウールが尽きた時、敵国の捕虜を殺して毛髪や皮膚、筋肉や内臓をフルに使った防寒着を作成。
それを兵士たちどころか、生き残った捕虜にも底なしの善意で無料配布したため「捕虜虐待」の罪で戦犯となった。
そんなぁ、みんな羅生門を読んだことがないの? とは本人の談。
催眠術を使い、どんな敵も百秒以内に眠らせることが出来る。
催眠の後にかける暗示と、上述の縫製スキルを合わせた「入れ替わり」が本領。
所作から思考に至るまで完全に他者のものとなり、催眠を解くその瞬間まで殺意も敵意も予備動作も一切なく行動できる。
それを最大限に活かした不意打ちで開幕から『丑』と『卯』を仕留める大金星を挙げ、次なる場面では味方のバロン・スーに擬態して登場。
和平交渉中の『申』に同様の不意打ちを仕掛けるが、今度は『亥』による射撃が間に合って蜂の巣になり死亡した。
「誰でもいいから交渉が始まる前に一人撃つ」という作戦を予め『申』が立てており、不意打ちを試みたのが丁度そのきっかけとなってしまったのだ。
- ルック・ミー
『牡牛』の戦犯。本名「ルーク・ミッシェル」。
願いは「赤ちゃんが欲しい」。肩書きは「誓って殺す」。
常にウェディングドレスに身を包み、「ここに誓います」が口癖の女性。
対戦相手と自分の遺伝子を混ぜ合わせて全く新しい戦士を瞬時に生み出す「想像認信(イマジナリー・チャイルド)」の使い手。
しかし新生児の寿命は約5分であり、どろどろに溶けた我が子をいつも偲んでいる。
戦地生まれの嬰児を自分の子供と思い込んで誘拐を繰り返し、「未成年略取」の罪で戦犯となった。
ただ、赤ちゃんでなくなれば親元に返している。意外なほど探偵能力があり、死んでさえいなければ必ず両親を突き止めるんだとか。
ネーミングセンスが壊滅的なため、勝手につけた名前は例外なく不評らしい。
一目見ただけで「あっ…(察し)」となる恐ろしい笑顔が特徴。
その奇矯な立ち居振る舞いで注意を引き、他の戦犯が本命の一撃を放つという囮役を担った。
二人がかりとはいえ『午』に勝利している以上、真っ当な戦闘力も戦犯内では高い方だと思われるが、当人は生きようとする意志を持たない死にたがりである。
最初に持ちかけた和平交渉を『申』に断られた際、味方のアイアン・メイに空飛ぶ箒から突き落とされて呆気なく落下死。
これはルック・ミー自身も承諾していた謂わば自死であり、『申』に揺さぶりをかけるサー・カンサーの作戦だった。
- ダブル・マインド
『双子』の戦犯。その星座の通り、双子の姉弟。本名は「W-2222」と「M-2222」。
願いは「選択肢が欲しい」。肩書きは「選択の余地なく殺す」。
とある軍事組織のイリーガルな人体実験によって生み出された双子の姉弟だが、一人の卓越した戦士を生み出す実験だったため双子のダブル・マインドは失敗作とされた。
存在を隠蔽され別々の場所に幽閉されたものの、双子ゆえにお互いの存在を感じ取っており、それを支えに過酷な監禁生活を生き抜く。
やがて軍事組織が崩壊して別々に救出されたのち、戦場で再会を果たした。
ちなみに『辰』と『巳』が一卵性の双子なのに対して、ダブル・マインドは二卵性。互いが互いを補うような外見をしている。
罪名は「窃盗罪」。
しょぼいと思うなかれ、盗んだものは空母と原子力潜水艦。世紀の大犯罪である。
双子の精神感応を利用したオートパイロットで自在に操れるため、戦犯の中でも攻撃規模は最大。
断罪兄弟と同じく、こちらも相手に同族嫌悪じみた対抗心を抱いている。
首尾よく断罪兄弟を仕留めたのち、ミサイルと爆撃機によって戦士たちの拠点である古城を破壊。
焼け出された戦士たちの逃走先としてわざと残しておいた洞窟に攻め込むも、中で待っていたのは先ほど撃ち込んだミサイルだった。
『酉』が「鵜の目鷹の目」で「罠っぽい洞窟」を先んじて発見。
『亥』が重火器や兵器全般に精通する知識を活かし、大規模空爆で発生していた不発弾を選り分けて改造。
『戌』がその屈強な膂力で、改造ミサイルを洞窟までスピーディに運搬。
『申』の立てた大作戦にまんまとハマり、姉弟揃って爆死した。
- サー・カンサー
『蟹』の戦犯。本名「シーザー・カエサル」。
願いは「名誉が欲しい」。肩書きは「紳士的に殺す」。
『申』の前に平和の使者と呼ばれていた男であり、地球上から戦争を一掃できる存在として崇め奉られていた。
終戦にとどまらない「完全なる和解」を交渉のゴールとしており、終戦後もしつこく交渉を続けていた結果二重スパイの嫌疑をかけられ「内通罪」で戦犯となる。
実際、手段を選ばず法律ぎりぎり*2の交渉も手掛けていたため、釈明の余地はなかったという。
実は第八回十二大戦の優勝者でもあり、当時十二歳の少年だったサー・カンサーはわずか十二分で優勝してみせた。
しかし「それを記録に残さないこと」を願ったため、その事は誰も憶えていない。
持前の交渉術と智略で十二戦士を掻き回し、戦犯サイドの参謀として辣腕を振るった。
タイマンでも、武器を失った『未』を一方的に撲殺できる程度には達者である模様。
しかし後進の『申』を相手に妥協点の見えない和平交渉を繰り広げている最中、『戌』が独断で気化毒を放ったことで毒殺された。
その顔は苦痛にまみれ、明らかに意に沿わない表情をしていた。本当に予想外だったのだろう。
ドクター・フィニッシュやゴー・トゥ・ヘヴンと対面できた時点で『戌』の中では実質的に戦闘再開となっていた事情など、彼には知るよしもない。
和平交渉自体は何かしらの作戦の内だったのだろうが、真相は明らかにならず。
- ダンディ・ライオン
『獅子』の戦犯。本名は同じ。
願いは「星が欲しい」。肩書きは「統べて殺す」。
元々は巨大国家の空軍落下傘部隊所属のソルジャーだったが、圧倒的なカリスマで人心を掌握し、国民から絶大な支持を得た上で政府を転覆させた。
しかしその後、賊軍及び反対派への苛烈な処刑が国際社会で物議をかもして政治的に敗北、「国家騒乱罪及び反逆罪」で戦犯となり亡命する。
なお、彼が去った後の国は周辺国からの侵略を受けて分割統治の後に消滅。
侵略の指揮を取っていたのは亡命後の彼だったとも言われるが、真偽は不明。
ちなみに「十二星座の戦犯」を最初に名乗ったのは彼。
しかし生来の誕生日が獅子座ではなかったため、暦を改変したとか。
十二戦犯の指揮官であり、参謀のサー・カンサーと共に彼らをまとめる中核的存在である。
ダブル・マインドに古城爆撃を敢行させ、戦士たちが近くの洞窟に逃げ込むことを確信して意気揚々と乗り込む。
洞窟に戦士たちの姿が見えなかったため「あの程度の爆撃で死んだのか」と失望しかけるが、直後に爆死するのは彼らであった。
作戦内容はともかく、自ら先陣を切って突き進むその豪胆さが災いしたと言えよう。各々が何かしらの戦果を挙げている十二戦犯の中では、最も無駄死にに近い。
- アイアン・メイ
『乙女』の戦犯。本名「アンディ・マルアル」。
願いは「ご主人様が欲しい」。肩書きは「仕えて殺す」。
常にメイド服を着ておりパッと見では可愛い女の子で、魔法少女を名乗ってもいるが性別は男。
表紙や扉絵イラストをよく見ると、胸元から(ムキムキに鍛えられた)立派な胸(筋)が見える。
厳格な男尊女卑と荘厳なレディーファースト、厳正な男女平等が鼎立する謎めいた新興国に生まれ、徴兵を避けるために両親から女として育てられた。
体制側に発覚したためペナルティとして過酷な戦場に送られるが、上官や敵軍の長へと巧みに取り入り戦闘を避け続け『籠絡の女神』と呼ばれるようになる。
その後も敵味方入り乱れて逃亡グループ「乙女座銀河団」を率いる事になり、「敵前逃亡罪、猥褻物陳列罪、その他軽犯罪多数」で戦犯となった。
魔法少女を名乗るだけあって、箒で空を飛べる。
魔術に通じていた祖母から受け継いだらしいが、竹箒と見せかけてスチール製。
静電気で埃を集めるハイテク箒のため、通販で買ったのではないかと疑っている。
ルック・ミーとの二人がかりで『午』に勝利したようだが、詳細は不明。
再度ルック・ミーを伴って今度は箒で飛び立ち、『酉』の作った鳥絨毯で飛行移動する戦士たちと接触。
和平交渉を持ちかけるも『申』に断られたため、サー・カンサーの指令通りにルック・ミーと飛び降り自殺をした。
『申』を精神的に追い詰める為だけに死んだ二人であったが、既に二人とも生きる気力など皆無で何の躊躇いもなかったという。
- バロン・スー
『天秤』の戦犯。本名「アーロン・スミス」。
願いは「罰が欲しい」。肩書きは「間を取って殺す」。
主に戦争裁判を担当する裁判官だったが、どんな裁判でもほぼ無罪判決しか出さず、罪を許すためならどんな手段でも使う。
当然そんな無茶が続くはずもなく、最高裁判官に就任して五年目で自身が訴えられる結果となり「法廷侮辱罪」で戦犯となった。
無罪にして貰っていた加害者たちも、その極端な姿勢は庇いようがなかったという。
装いからは男性に見えるが、実は男装の麗人*3。
己の象徴として天秤を持ち歩き、巨大な分銅を武器としているが失敗だったと思っている。重いし。
『申』とサー・カンサーの和平交渉に際し、交渉の立会人を引き受ける。
しかしバロン・スーは、既にフレンド・シープと入れ替わっていた。
不意打ちが失敗してフレンド・シープが蜂の巣にされると同時に、バロン・スーもまた蜂の巣死体となる。
高性能な入れ替わりトリックではあるが、対象の殺害が必要、互いが互いに入れ替わる、ダメージは同期する、などのリスクもあると『申』は分析していた。
殺害が必要なのであれば、『子』はともかくバロン・スーは味方の戦犯から事前に殺されていたという事になる。
ろくな見せ場もなく死んだものの不意打ち自体は成功寸前*4であり、ダブル・マインドのついでみたいに死んだダンディ・ライオンよりはまだマシか。
- スカル・ピョン
『蠍』の戦犯。本名不明。
願いは「名前が欲しい」。肩書きは「嫌々殺す」。
詳細不明の戦犯にして、実在すら疑われる伝説の暗殺者。性別すら不明。
罪名も不明だが、十二大戦の願いでも免罪どころか減刑ですら不可能かもしれないと言われている。
意外にも、丸文字で書かれたかのような抑揚たっぷり愛嬌たっぷりな声質らしい。
他の戦犯同様、自身の命に何の執着もない。
マペット・ボトルが『亥』を仕留めるための囮を「ダッテ暗殺者ダモン」と自ら買って出た。
地面に潜りながら接近し、身に纏う戦闘スーツのみを地中から放り出し、全裸の自身は背後を取るという挟み撃ちを実行。
その程度は想定済みと言わんばかりの斉射を受けて、蜂の巣となり死亡した。
しかし『亥』の想定は「スーツと本体」ではなく、あくまで「本体と本体」だった。
二つしかない銃口をスーツと本体に向けさせたことで、残る本体であるマペット・ボトルは『亥』への接近に成功する。
- ウンスン・サジタリ
『射手』の戦犯。本名「臼杵指足(うすき・さしたり)」。
願いは「住所が欲しい」。肩書きは「狙い澄まして殺す」。
和装と典型的なござる口調に対して、実は和食全般が苦手だったりする。
特におにぎり。素手で握ったものを食べるとか正気でござるか?
元は軍事産業コンツェルンの社員だったが、横行する不正への義憤から業界内の秘匿データを世界に向けて公開。
不正は撲滅したものの軍事兵器の設計情報や取扱説明書も拡散してしまい、数百万~一千万人もの犠牲を出した結果「機密漏洩罪」で戦犯となった。
その反省から近代兵器ではなく弓矢を使用し、並々ならぬ修練で「不射の射」を体得する。
弓矢は狙い通りに飛ぶが、人生は狙い通りにいかない男。
断罪兄弟を射殺したあとはスカル・ピョン、マペット・ボトルと共に、崖からの逃亡を図った『酉』の殺害に立ち会う。
空中飛行ではなく水中遊泳で逃げたため追撃はマペット・ボトルが行い、出番は無いかと思われたが直後に鳥の羽根を大量に吐き出す。
『酉』が秘薬「ワンマンアーミー」で冴え切った思考から、有毒性の百舌を弾丸のように口内へ飛び込ませるというエゲつない攻撃方法を編み出し、一矢を報いたのだった。
「まさか風流にも鳥で殺してくれようとは」と崖から転落、鋭くとがった岩礁に刺し貫かれて絶命した。
- ゴー・トゥ・ヘヴン
『山羊』の戦犯。本名「梧桐ヴァルキリー」。
願いは「健康が欲しい」。肩書きは「病的に殺す」。
妊娠中の母親が対人地雷によって爆死し自身もバラバラになったが、イリーガルでアンモラルな医療技術を駆使して繋ぎ合わされるという壮絶な出生を持つ少女。
この「胎教」によって地面を直接歩くことに恐怖を覚え、車椅子での生活を余儀なくされた。
母親が死に、父親は元からいなかったため、あちこちの国で売られたり買われたり攫われたりを繰り返しながら世界中を転々とする。
罪名は「違法兵器所有罪」。
世界のどこに行っても懲りずに行われている戦争行為への嫌悪感により「世界からすべての地雷を撤去する」という目標を立て、超強力な地雷を作成した為。
人間ごと全て吹き飛べば地雷も戦争もなくなって万々歳。
島中に頑張って地雷を仕掛けていたのだが、あいにく誰も踏んでくれなかった。
主にドクター・フィニッシュと組んで行動するが、心理的な盾になったり2vs1のサポート役だったりとメインを張る機会には恵まれず。
十二大戦を最後まで生き残るも「当初の予定通り」自決する。
- マペット・ボトル
『水瓶』の戦犯。本名「トーマス・B・トールズ」。
願いは「水が欲しい」。肩書きは「ウェットに殺す」。
十二戦士に憧れる少年時代を過ごし、自分もいつか命がけで戦いたいと思っていたが、故郷は政治的空白に基づく非戦闘地帯であり機会は訪れなかった。
訓練だけを続ける日々に業を煮やした結果、敵襲に見せかけた放火行為をして自分でそれを消すというマッチポンプに手を染める。
次第により大きな火災を求めるようになっていき消化しそこねて自分の故郷を焼失させ、その失敗を隠蔽するためにダムを決壊させて一帯を水に沈めた。
しかし終戦後、勝利国の検証によって過去の悪事が根こそぎ暴かれ「放火罪」で戦犯となる。
着用しているレインコートは防火性。
炎へと飛び込み続け、人々から賞賛され、もっとも輝いていた日々の思い出の品なのだ。
液体を操作する能力を持ち、後方から他の戦犯をサポートする役割が多い。
断罪兄弟の武器を不発させる、海中に逃げた『酉』を溺死させるなどで活躍したのち、スカル・ピョンと組んで『亥』を仕留めにかかる。
上述したスカル・ピョンの自己犠牲によって接近に成功、全身の血液を蒸発させるという切り札を放った。
ところが『亥』には『申』が水猿の仙術を施しており、液体に関する攻撃が通用しない状態となっていたため不発。
『亥』にとっても予想外の事態だったが、咄嗟に死んだふりをすることで欺かれ反撃を受けて死亡。
- ドクター・フィニッシュ
『魚』の戦犯。本名「ノクターン不二」。
願いは「モルモットが欲しい」。肩書きは「生かして殺す」。
年端もいかない子供でありながら収容所で医療行為を行い、それを見世物にされていた。
収容所の所長と結婚し、釈放されるも新郎と一族を毒殺して逃走。戦場各地の野戦病院に素性を偽って務め、世界中に名を轟かせることになるが当然違法。
裏で行っていた人体実験も露見したため、数々の「医師法違反」の罪で戦犯となった。
大人びた女医さんに見えるが、それはメイクの賜物。
年齢で軽んじられるのを嫌っており、アンチエイジンングならぬエイジング化粧品を開発している。
『戌』の手ほどきによって、彼女もまた「毒殺師」の技術を身に付けている。
水中から登場して『寅』を驚かせたが、本人にとっても予想外の鉢合わせだったらしく「マジで焦った」とのこと。
ゴー・トゥ・ヘヴンとの独断で『申』を毒殺したのは、万が一にも和平を成立させる訳には行かないから。
もっとも後述の通り戦犯たちの目的は一致しており、サー・カンサーがそれを違えるとは考えにくいため、目的というよりも手段の相違によるものだったと思われる。
『戌』を『亥』に誤射させ、水猿の仙術によって毒薬すら無効化しかねない『亥』は真空注射によって仕留めた。
十二大戦を最後まで生き残るも「当初の予定通り」自決する。
戦士、戦犯死亡の時系列とキルカウント
『子』0kill、『牡羊』によって死亡。どうやら『牡羊』自身が殺していたらしい。
『丑』0kill、『牡羊』によって死亡。
『寅』0kill、『魚』によって死亡。
『卯』0kill、『牡羊』によって死亡。
『辰』0kill、『射手』によって死亡。
『巳』0kill、『射手』によって死亡。
『午』0kill、『魚』によって死亡。直接手を下したのは『未』だが、『魚』により操られた時点で死亡扱いの模様。
『未』0kill、『蟹』によって死亡。
『双子』0kill、『申』によって死亡。作戦立案者の手柄ということだろうか。
『獅子』0kill、『申』によって死亡。作戦立案者の手柄ということだろうか。
『牡牛』0kill、『申』によって死亡。確かに『申』の決断によって死んだし、それが戦犯側の作戦でもあったのだが…。
『乙女』0kill、『申』によって死亡。確かに『申』の決断によって死んだし、それが戦犯側の作戦でもあったのだが…。
『天秤』0kill、『亥』によって死亡。
『牡羊』3kill、『亥』によって死亡。
『申』4kill、『魚』によって死亡。『双子』は2人だが1kill扱いらしい。
『蟹』1kill、『戌』によって死亡。
『酉』1kill、『水瓶』によって死亡。
『射手』2kill、『酉』によって死亡。『辰』『巳』は1人ひとりが1kill扱いらしい。
『蠍』0kill、『亥』によって死亡。
『水瓶』1kill、『亥』によって死亡。
『戌』1kill、『魚』によって死亡。誤射した『亥』ではなく、そうさせた『魚』の手柄ということだろうか。
『亥』4kill、『魚』によって死亡。
『山羊』0kill、地雷によって自決。書籍内リストでは生存扱いであり、『魚』との順番に前後性はない。
『魚』5kill、地雷によって自決。書籍内リストでは生存扱いであり、『山羊』との順番に前後性はない。
見ての通り、戦士サイドは割とボロ負けである。
半数以上が開幕からほぼ一方的に屠られているのだから、ぐうの音も出ない。
当日いきなり真逆と言っていいルールに変更された戦士サイドに対し、入念な準備とチームワークで臨んだ戦犯サイドという差はあったにせよ、それにしてもである。
とはいえ、これでも戦犯側にしてみれば奇跡のような勝利で、『魚』の見立てによれば戦犯側の勝率は1パーセント未満だったとか。
これは前作において1/100、つまり丁度1パーセントで優勝した『子』すらも下回っている。
最終盤においてすら戦士サイドの勝ち筋はまだ幾つもあった*5ことを考えると、あながち自嘲や卑下の類とも言い切れない。
キルカウントは書籍掲載の公式情報だが、下手人がカウントされていたり立案者がカウントされていたりと基準は様々。
少なくとも戦士が戦士を、戦犯が戦犯を殺したという形では一切記録されていない模様。
とりあえず、自殺まで自分のせいにされたうえ*6戦士サイドの殺害人数ツートップとかいうメンタル死体蹴りを喰らった『申』には合掌。『双子』が2人でひとり扱いになってるだけで実質トップだけどな!
余談だが、今作における十二戦士は前作で死んだ順番とは逆の順番で死んでいる。
で、そもそも十二戦犯の目的とは?
十二戦犯の目的は簡単に言うと「戦争をなくすこと」。
最初にこれを発案した『蟹』の戦犯サー・カンサー曰く「戦争がなければ戦犯は生まれなかった」「戦犯とはならず者が英雄となった帳尻合わせでならず者にされた存在だ」とのこと。
そして戦争をなくす為に、戦争の中の戦争である十二大戦を台無しにしてやる、というのが今大戦における十二戦犯サイドの最終目的であった。
戦争によって生まれた英雄たる十二戦士がただの犯罪者集団に全滅させられたとなれば、十二大戦ひいては戦争の価値が大暴落する。
よしんば懲りずに十二大戦を実施しようにも、名だたる十二戦士の全滅によってその質は低下を免れないし、もはやそんな大戦に「有力者たち」が価値を見出すとも思えない。
故に『申』の努力虚しく、戦犯側は最初から何があっても十二戦士を皆殺しにする算段であった。
実は今大戦そのものが正規の大戦ではなく、戦士たちを招集するための偽の大会だった。
審判員ドゥデキャプルはドクター・フィニッシュの変装(特殊整形術)であり、「生存者全員の願いを叶える」という話も嘘っぱち。
実施時期や戦士の出場情報、招待状デザインといった運営情報はサー・カンサーが「コネ」で収拾し、可能な限りリアルな十二大戦の様相を再現したという。
『子』(に扮した『牡羊』)の言う通り、今回の大戦そのものが信用に値しないという『丑』の直感は正しかったのだ。
そして、最終的には戦犯側も全員自死を選ぶという取り決めも定めてある。
まかり間違って生き残った戦犯たちが次の戦争英雄として持て囃されることがないように、あくまで「下劣な愉快犯による最低の大戦」という体を貫くためである。
生存したドクター・フィニッシュとゴー・トゥ・ヘヴンも、自分たちの仕掛けた地雷に「うっかりはまって死んだ」という誰も憧れを抱かないような情けない死に方を選んだ。でも終戦後に他愛ない会話をしたり、『酉』の死亡確認をするために十二時間へとへとになるまで徘徊していたのは可愛かったと思います。
『獅子』や『天秤』は自業自得に近いが、全体的に十二戦犯は戦争によって人生を狂わされた者の集まりである。
戦争に溢れたこの世界から死によって解放されたいという願望は、多かれ少なかれ皆抱いていたのだろう。
そしてまた「下劣な愉快犯」である彼らは、自分たちが起こした偽物の大戦による結果を見届けることはなく、何の責任も負いはしない。
たとえ大戦後の世界が今以上に荒れ果てた戦場になるかも知れなかろうと、一足先にこの世を去って行ったのだった。
――戦士と戦犯は、ひとり残らずいなくなった。
――戦争と犯罪は、まだなくなっていない。
追記・修正はすべての戦犯を捕えてから行ってください。
エブリバディ・クラップ・ユア・ハンズ!
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▷ コメント欄
- うじゃうじゃ死んでた、寝住。ただ死ぬ、失井。勢いで死ぬ妬良。異常(な早さで)死ぬ、憂城 -- 名無しさん (2017-12-21 19:35:12)
- 緻密な策とめちゃくちゃにあっけない結末 -- 名無しさん (2017-12-21 22:04:07)
- ルックミーさんとスカルピョンは良いキャラしてただけにもっと活躍して欲しかった -- 名無しさん (2017-12-22 17:34:14)
- ジャンプ+のインタビューでバロン・スーの性別は女性で確定 -- 名無しさん (2017-12-25 12:45:24)
- これって結局『願い事そのEX“十二大戦そのものを終わらせる(無くす)”⇒確実に世界が良くなるとは限らない…という、つまり『割とどうでもいい99の~』の番外編みたいな感じなのかな? -- 名無しさん (2017-12-26 22:26:10)
- イッヌの能力って凶悪だったんやな… -- 名無しさん (2017-12-28 20:19:16)
- 戌は発動条件が噛むことで身体能力が殺し名クラスの奇野みたいなもんだしそら強いよね -- 名無しさん (2018-01-07 15:34:03)
- あっけないかつ救いのない話だったけどおもしろい。アニメ化してほしい -- 名無しさん (2018-06-21 10:42:59)
- 例えるならケリィ×12(正確には13)の恐怖 -- 名無しさん (2018-10-25 11:22:18)
- 子荻ちゃん然り姫ちゃん然り萌太君然り、西尾作品は超強キャラでも不意打ち受けたらあっさり死ぬからなぁ -- 名無しさん (2019-07-02 05:50:45)
- 前作不遇の酉・亥・戌が大活躍だったのに午さんときたら -- 名無しさん (2020-04-02 20:54:24)
- 前作の勢力側が負けるってのが受け付けられないから、先にネタバレ読んで良かったと思う。 -- 名無しさん (2021-01-15 01:58:41)
- 普通に十二大戦が行われた世界線ではこいつらどうしてんだろうな。作戦を見破られて全員撃破されて十二戦士達が圧勝したか、そもそも偽十二大戦自体行われなかったか -- 名無しさん (2021-01-15 02:28:01)
- 普通に行われたってことは -- 名無しさん (2021-10-09 01:10:26)
- 普通に行われたってことは、戦犯の企みは何らかの形で頓挫したわけで、そのまま戦犯にふさわしい人生と最期を飾ったんじゃないかな -- 名無しさん (2021-10-09 01:11:24)
- かなり一方的に見えるけど酉や虎の単独行動や午辰巳の動き次第では勝ち筋見えるのが面白いな。丑と卯なしでも戦士サイドはまあまあ強いんだなって -- 名無し (2022-03-18 16:04:42)
- 酉が残ってただけでも、最後の不意打ちはどっちも無効化できたからね… というか申がウジウジし過ぎなんだ -- 名無しさん (2022-03-18 17:22:37)
- 前作は何も思わなかったのに亥さんなんか好き -- 名無しさん (2022-03-18 18:14:17)
- 異常性並みにいかれてて過負荷並みにネガティブで悪平等並みに自己中心的だな。本当に戦争を否定したいならもっと別の手段もあったろうに、「それっぽいもので妥協」してるし。 -- 名無しさん (2022-03-19 00:28:00)
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*2 ぎりぎりアウトの意
*3 作中では推測に留まっているが、『ジャンプ+』における対談で西尾維新は「男装の麗人設定」「スカル・ピョンを除いて男女比が1:1となるように戦犯のキャラを作成した」と述べている
*4 少なくとも『申』自身は避けることが出来なかった
*5 『酉』が逃げない、『戌』が迷いを振り切る、『亥』が真空注射でなく毒薬を使われて無効化に成功する、など
*6 そうするのが戦犯サイドの作戦ではあったが、死んだ二人は元々死にたがっていたうえ自殺を指示したのもサー・カンサーである
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