ボツリヌス菌

ページ名:ボツリヌス菌

登録日:2020/07/18 Sat 13:49:17
更新日:2024/03/28 Thu 23:05:33NEW!
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※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください


ボツリヌス菌(ボツリヌスきん)は、細菌の一種。


概要

学術名はクロストリジウム・ボツリナム


生物分類学上はクロストリジウム属と呼ばれるグループに入れられる。
クロストリジウム属に共通の性質として、動物の腸内や土の中、沼や川など、空気の薄い場所を好むことがあげられる。また、空気の多い場所では増殖できない(偏性嫌気性)。
ただし、他の嫌気性の細菌と異なり、空気のある場所でも芽胞(がほう)と呼ばれる耐久性の高いバリアを作って身を守るため、死滅することはほとんどない。また、耐熱性もそこそこ強く、中途半端な加熱では死なない。芽胞をやっつけるためには120℃で4分以上(または100℃で6時間以上)の強力な加熱をする必要がある。
ちなみにクロストリジウム属の細菌としてはボツリヌス菌の他、破傷風を引き起こす破傷風菌、カレーなどの煮込み料理での食中毒の原因となるウェルシュ菌といった著名な病原菌や、代表的な酪酸菌である宮入菌などがある。


感染経路

ボツリヌス菌はボツリヌス症という食中毒の原因となる。
主に缶詰や瓶詰め、真空パックなど、空気の少ない食べ物にいることが多い。特に自家製のものは危険性が高い。
平成時代初期までは北海道および東北地方などで自家製の飯寿司(いずし、魚を発酵させて作る食品。なれずしの一種にも分類される)を原因とする食中毒事故が多く見られた。
他に国内で有名な事例として、真空パックのからし蓮根による食中毒事件がある。


また、蜂蜜の中に稀にボツリヌス菌が芽胞として眠っている場合がある。1歳を過ぎていれば食べても問題ないが、1歳未満の乳児では胃腸の機能が未発達なため、ボツリヌス菌が体内で増殖してしまう危険性がある。
そのため「1歳未満の乳児にはハチミツを与えないように!」と厚生省(今の厚生労働省)が警告を出している。


ボツリヌス菌は魚や肉類など動物性食品を好むらしく、19世紀のヨーロッパではハムやソーセージ(腸詰め)などの加工肉を食べてボツリヌス症にかかる人が多かった。
「ボツリヌス」の語源も腸詰めを表すラテン語に由来している。
硝酸塩や亜硝酸ナトリウムはハムやソーセージなどの加工肉の見た目や風味を良くする発色剤として知られる添加物だが、それ以上にボツリヌス菌の増殖を抑制するという重要な役割を果たしているのである*1


また、きわめて稀に破傷風菌や炭疽菌のように皮膚の傷口から侵入して感染する事例や、研究所での流出事故や、バイオテロに巻き込まれてボツリヌス菌そのもの又は芽胞を吸い込んで感染するケースもある。


ボツリヌストキシン

ボツリヌス菌の最大の特徴として、世界最強の毒素であるボツリヌストキシンを産生することがあげられる。
ボツリヌストキシンが500gあれば、全人類を滅亡させることができると言われるほど危険な猛毒である。
あの炭疽菌も真っ青の超猛毒である。また、ボツリヌストキシンはフグ毒よりも1000倍は強力と言われている。


非常に強力な毒素を持つ細菌であることから、炭疽菌ペスト菌赤痢菌などと並び、テロリストが生物兵器として研究を進めている病原体の一つである。
オウム真理教でも炭疽菌とともにボツリヌス菌の研究が行われていたほどである。


ただしボツリヌストキシンは高温(100℃で10分以上)で加熱するかアルカリに漬けることで無害になる。
また、血清によって中和(解毒)することも可能。
※一応念のため書いておくと、毒素そのものは耐熱性はそれほど強くないが、ボツリヌス菌の芽胞は強力な耐熱性を持っている。


神経や筋肉に作用するという点で、同じクロストリジウム属の破傷風菌が産生するテタノスパスミン(破傷風毒素)と似ているが、テタノスパスミンが筋肉を激しく興奮させるのに対し、ボツリヌストキシンは筋肉を麻痺させるのが特徴である。


医薬品としてのボツリヌストキシン

ボツリヌストキシンは猛毒である一方で、実は美容の薬としても利用されている。主にシワ取りのための注射として使われる。
注射ではボツリヌス菌そのものは入れないため、ボツリヌス菌に感染する心配はない。
ちなみに医療保険は適用されず、自由診療となる。


ボツリヌス症

ボツリヌス菌による食中毒は毒素型食中毒である。毒素型食中毒とは、病原体が食べ物の中で毒素を産生し、それを食べることで発症するタイプの食中毒の総称である。そのため、食品の中にボツリヌス菌そのものや芽胞がなくても、毒素が含まれていた場合は発症する可能性がある。
すなわち、ボツリヌス症は感染症というより、毒キノコフグ毒による食中毒に近い。毒素型食中毒はボツリヌス菌の他、ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌、セレウス菌でも起こる。
※ちなみにサルモネラ菌や赤痢菌腸管出血性大腸菌O157などによる食中毒は、病原体が食べ物の中で毒素を出すことはなく、体内に入ってから大腸で増殖して毒素を出す、典型的な感染性大腸炎である。


ボツリヌストキシンは腸管毒ではなく神経毒である。そのため、サルモネラ感染症や細菌性赤痢のような下痢や発熱の症状はみられないことが多い。


ボツリヌス症にかかると、食べ物がうまく飲み込めない、うまく喋れない、ものが二重に見える、手足の麻痺など重篤な神経症状がみられる。
最悪の場合、呼吸ができなくなって死亡することもある。亡くなる直前まで意識ははっきりしているため、患者は強い恐怖と苦しみに襲われる。
早急に血清で治療しなければ致死率は30%を超える。しかし、血清で治療できるだけ、ドクツルタケなどの猛毒キノコよりはまだマシなのかもしれない。


予防方法

ボツリヌス菌の芽胞は土の中に普遍的に存在するため、食品原材料の汚染を防止するのはきわめて困難である。
そこで、ボツリヌス症の予防のためには、他の細菌性食中毒と同様に、菌の増殖を抑えることが重要となる。


自分で缶詰めや真空パック、飯寿司などを作る場合は、原材料をしっかり洗って、芽胞をやっつけるために120℃で4分(または100℃で6時間)以上加熱しなければならない。
また、作った後は増殖を抑えるために冷凍保存しなければならない。
もっとも、十分な知識を持たない素人はそもそも自家製の缶詰めなどを作らないことが最も重要な予防法であろう。


市販の缶詰めや真空パックなどは事前に加熱処理されているため、自家製のものに比べると危険性は低い。
しかし賞味(消費)期限が過ぎていたり、悪臭がしたり、中身が異常に膨らんでいるものは絶対に食べないこと。


また、1歳未満の乳児には絶対に蜂蜜を食べさせないこと。


追記、修正お願いします。


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  • もやしもんで知ったなぁ -- 名無しさん (2020-07-18 14:37:21)
  • 自分はウロボロスだな -- 名無しさん (2020-07-18 14:48:52)
  • かもして ころすぞ -- 名無しさん (2020-07-18 14:54:39)
  • 120℃で4分、100℃で6時間、じゃあ110℃なら2時間か?まぁ、そんなことはどうでもいいが、これはどういう実用性でこの数値が設けられているのか? -- 名無しさん (2020-07-18 14:57:12)
  • ちょっと考えてみたけど、100℃の場合は沸騰ギリギリで加熱可能だけど、120℃の場合は高圧という条件がつく、って話か? -- 名無しさん (2020-07-18 15:04:08)
  • 赤子にはちみつを与えることを推奨した大手料理漫画があるらしい -- 名無しさん (2020-07-18 15:24:12)
  • 屍だ -- 名無しさん (2020-07-18 15:36:27)
  • バイオ忍者梶原 -- 名無しさん (2020-07-18 19:44:32)
  • 某料理マンガでしった -- 名無しさん (2020-07-18 19:48:22)
  • 昔あった辛子蓮根の食中毒は蜂蜜内のボツリヌス菌が原因だっけか -- 名無しさん (2020-07-18 22:13:52)
  • 喰いタンでは豚肉にハチミツ塗ったのを真空容器で加熱することで殺人の凶器に利用されてたけどハチミツ加熱したくらいで毒になるのはいくらなんでも…って思ってた -- 名無しさん (2020-07-18 22:30:26)
  • ハチミツだけじゃなくて加熱精製されていない黒糖とかきび砂糖あたりも危険性はゼロではないとか -- 名無しさん (2020-07-19 01:14:34)
  • 120℃4分はオートクレーブ使って滅菌する時の数値かな。器具(調理・医療・実験)を処理するときにやる。 -- 名無しさん (2020-07-19 02:21:14)
  • 毒素が強力と言うけど、人から人に伝染しないし、血清で治療できるから、最強(最凶)というほどでもない。むしろ人から人にうつる赤痢菌やO157のほうが総合的な危険度は上。赤痢菌のベロ毒素には血清も無いし。 -- 名無しさん (2020-07-19 09:31:22)
  • >後述するバイオテロ ってあるけど記述がない -- 名無しさん (2020-07-20 14:26:08)
  • 破傷風の項目も作って欲しい -- 名無しさん (2020-07-20 20:12:59)
  • テレビでチルド食品をレトルトと勘違いして常温保存していたせいで感染ってのを見たな -- 名無しさん (2020-07-23 23:59:53)
  • ↑7 だいぶ間違ってるぞ。ボツリヌスは真空状態で加熱しなかった場合毒性を出すから、電子レンジで加熱が義務付けられている真空容器に、加熱させないで蜂蜜入れさせることで毒性を出させた。加熱するか真空状態にしなければ蜂蜜は安全 -- 名無しさん (2020-07-24 00:12:20)
  • ゴッドハンド輝でもあったな、確か海の回か何かで -- 名無しさん (2020-07-27 18:45:18)

#comment

*1 なお発色剤は発がん性を指摘する事もあり、硝酸塩や亜硝酸Naは使わない「無塩せき」の加工肉も珍しくない……が、アメリカとかでは硝酸塩含有量の多い野菜や植物のエキスで代替しているなんてことも。それでいいのか

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