+スカビオサ-私は全てを失った
+ゲッケイジュ-裏切り
樹木に体を括られ、身動き一つとることができない。身じろぎが、ギシギシと私を絞めつけて呼吸を封じ込めていく。
だが、そんなことがどうでもよくなるくらいに、寒い。ただひたすらに寒い。心臓が、魂が、身体中が冷え渡っている。
+エリカ-孤独
+薄雪草-大切な思い出
+キンセンカ-別れの悲しみ
誰かの記憶が私に絡めとられていく。塊になった私は随分重くなって、真っ逆さまにそらから転がり落ちる。
砂が凝り固まった肉は、裂け目の大口をあんぐりと開けて、落下する私を飲み下す。
意識が感覚に繋がれる。脳髄の電気信号が私を励起し、知覚が私に世界を与える。
しかし、記憶をいくら巡らせても私は見当たらない。どこにもいない。だが、私は確かに今生れ落ちた。
最後に目玉が視界を、耳が音を私に授けた。
「はじめまして。ご生誕おめでとう」
男が花束と共に私を祝福するのを、見た。
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