やはり男はツイていなかった という小噺 タスクだいぶあとまわし

ページ名:どうにも 渦に巻き込まれたのは男一人だけでもないようで

気がつくと俺は椅子に縛られていた。麻袋のようなごわごわした触感が顔を覆い、まだ眼は光に慣れず景色を曖昧な輪郭で埋め尽くしている。立ち込める独特の薬臭さが、最悪の想像を俺に巡らせた。「室長」に見つかっただけなら恐らくこうもすることはない、……「処理班」の処理場がここであったとしたら。血の気が瞬時に失せていく。

すすり泣く女の声が聞こえ始めて、ようやく視界の幾許かが蘇る。目の前に立つ男と、震える女。女の顔には確かな見覚えがある、アレは藍沢だ。……男のほうはあまりにも近すぎて、椅子に座った状態だと口元で見切れている。

 

「おや、どうして泣くんだい。藍沢ちゃん。僕に女の子を泣かせる趣味はないんだけどぉ?」

「黙ってちゃなにもわかんないよ。ねえ?」

「ねえ」

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