なあ、イヴくん。一つ尋ねたいんだが

ページ名:なに

「狂った金持ちデスゲームを好みがち」

「なあ、イヴくん。一つ尋ねたいんだが」

「なに」

「なぜフィクションの金持ちはああもデスゲームが好きなんだろうね」

「えーまあ……なんだろな、大体『人間の闇を見たい』とかそんなんばっかだったけど」

「っていうか僕には大概そっちもデスゲームの好きな金持ちに見えるけど?」

「とんでもない。あんなののどこが良いって言うんだ、ド素人の草野球だぞ」

「変な角度から否定するなあ。じゃあ、プロ選手のデスゲームなら見てみたいの」

「もちろんだ。深層級の傭兵や実働隊達が各々の思惑の為に殺し合う。ほら、ちょっと見てみたくないか?」

「……」

「どうだい?」

「なんかちょっと納得しちゃうのが腹立つな……」

「っていうかそれもうアレじゃん。天〇一武道会とかそういうノリでしょ。デスゲームじゃないよ」

「それはそうかもしれないな。ドラ〇ンボールは素晴らしい漫画だった」

「そういえばふと思い出したが、私は参加者にはなったことはあるが大して面白くはなかったよ」

「嘘でしょ現実にも居るのかよ狂った金持ち」

「グリド家の総督は最も優れたダイバーに、というしきたりでね。私を養子に拾った男が優勝したんだ」

「ねえ。羽羽都と言い、リングホルダーの家系ってそういうのしか居ないの?」

「居ないんじゃないか?大体どこも人間を悪夢を動かすための容器としか思ってないと思うよ」

「派閥抜けようかなあ。でもさ、それ、本当だとしたら大旦那とか僕聞かされたことないけど?」

「その後で彼も私が殺して地位を簒奪したからね。」

「こっわ」


「どうか今日も盗めるものがありますように!」

「なあ、イヴくん。一つ尋ねたいんだが」

「なに」

「なぜ君は貧民窟時代、盗みを生業にすることを選んだんだい?」

「……それ聞いてくるの、人としてどうかと思うけどなぁ」

「無理強いしたいほどでもない、断ってくれて構わんよ」

「はあ、別にいいよ。話す」

「あのね。僕みたいな親の居ない女の子は3つ、大人からご飯をもらう代わりの仕事の、選択肢を与えられたんだ」

「その一つが盗み」

「そう、で残りがゴミ漁りと売春ね」

「一番もらえないのはゴミ漁り。これだけで食っていけた子は殆ど見たことがない」

「まあ、そもそも商品価値が低いからな。還元される利益も相応だろう」

「それでね。一番もらえるのは売春で、中間が盗みだったよ。」

「皆の人気は売春だったよ。ご飯だけじゃなく、お小遣いもらえばお洒落だってできた」

「ふむ」

「でも僕は、そういう大人の相手をするのが怖かったんだよね」

「ね、売春宿を選んだ子ってみんなどうなったと思う?」

「当ててしまうと思うが」

「大きく出たね。じゃあ、言ってみなよ」

「そんな環境では衛生や客の質も知れているだろうからな。それでいて、医療保障のない地域で医療がどれだけ高額か」

「……当たり。」

「ほら」

「うるさい。」

「そうだよ、それでみんなこういうんだ。『元気になったらまたお客さんを取りたい』」

「膨らんだお腹をさすりながらね。僕はあんな風には絶対になりたくなかった」

「……まあ、私も同じ立場なら君と同じ選択肢を選んでいたのは間違いないだろうな」

「思えば君を拾った当初、変声期前の少年と間違えたこともあったね」

「うん。あのときは短髪だったし、『僕』って自分の呼び方も含めて、みんなそう見えるようしてきたから」

「涙ぐましい努力だ。」

「それを言ってやれば、果たして真っ当を自称する有象無象は君の仕事を指差して笑えただろうか?」

「どんな事情でも罪は罪に違いないとは思うよ。それに」

「高潔だねえ」

「それに。僕はみんなからの『可哀想』をもらいたいわけじゃない。」

「なるほど。だがしかし、それじゃあ、私からは?」

「あるの?そんな人間みたいな神経」

「近い内に取り寄せておくことにするよ」

 

 

 

 

 

 

 


「どこでも食べ放題プラン」

「たまには僕の方から質問していい?」

「もちろんだ。私の口座番号か金庫の鍵が気になるのかい?」

「教えてくれるなら教えてもらうけど」

「構わないが後で後悔はしないね?」

「……やめとく」

「フハハハハハ!!!」

「うるさいな、どつくよ」

「それで、本当は何を尋ねたいのかね?」

「グリドってスプリームだよね」

「ああ。そうだとも、公に認可を受ける程度には君達とは隔絶した存在だ」

「スプリームって超精密未来予知とか、地形変える剣からビームとか、夢界シャットダウンハッキングとかじゃん」

「そうでない人も居るけど、トップに相応しい異常な強さと指揮は持ってる」

「うむ。私にあの異能や指揮はとてもじゃないが真似できないな。まさしく神業の領域と言えよぅ」

「でグリドのは」

「足跡とお腹の風穴からいっぱい米とかワインが出る」

「自分でも彼らに勝るとも劣らない優れた能力と自負しているよ」

「絶対嘘でしょ。特心対は冷蔵庫を有り難がってスプリーム認定するわけ?」

「酷い言われようだな。足らぬを知らないね、君は」

「しかしまあ、そうだ。認定自体は保有している指輪と使役するだけのリソース量で決まったのは事実だよ」

「そこもさ、そんな運動部みたいな欲求でバケモン悪夢が使役できてたまるかって話だよ」

「そうでもないよ。まあ、由来自体は確かにごく平凡なものだが、まあ君も一応納得するとは思う」

「そうかなあ」

「父殺しだ。私は酷く貧しい出自でね、共々飢え死にするくらいならと一思いに、こう、グサッと」

「……あっさりしてるね」

「フ、だが言った通りだろう?力に必要なのは願いの中身ではなく、そこに掛ける思念の深さだからね」


 

 

 

 

 

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